都市風景・建築・土木構造写真における昼間長時間露光撮影

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皆さん、こんにちは。タカウエ(@Akira_TAKAUE)です。
この度はここ「ヒーコ」にて執筆させていただくこととなりまして大変光栄に思っております。
私はもう20年以上建築・土木構造物(橋梁)に関するメガプロジェクトの世界にて技術者として務めさせて頂いておりますが、それに起因しまして、自身の携わったメガプロジェクトを仕事にて撮影する傍ら、2009年より本格的にいわゆる「建築系ファインアート・フォトグラフィー」を始め、今も無粋ではありますが建築や橋梁そして都市風景全般を撮り続けております。

当然のことながらこの建築・土木構造写真も大変奥が深く、お話させていただきたい項目は山ほどあり、いつしかこの分野の体系化された撮影手法なども連載させていただきたいと思っておりますが、一先ず一呼吸おきまして、私が2011年頃から積極的に取り組んでおります「都市風景・建築・土木構造写真における昼間長時間露光撮影」に関して、アートギャラリーでの私の個展や東京カメラ部写真展そしてSNSにおいて写真を始めたばかりの方からプロ建築カメラマンの方に至るまで、多くのコメントそして技術的な御質問を頂戴しておりますので、「ヒーコ」での初回連載コラムとして少々ページを拝借しお話させていただきます。
ここで、具体的な撮影手法や作例についてお話しする前に、まずこの第1回では序論として都市風景・建築・土木構造写真全般に関わることについて簡単にお話しいたします。

都市風景・建築・土木構造写真における昼間長時間露光撮影

都市風景・建築・土木構造を撮影することの魅力

私が考えるに、都市風景における被写体とは、一部の計画都市を除き、その大部分は或る地域にて「人間生活」が行われてきた結果生まれたものです。それらの構造物は、考えうる様々な外乱(外部および内部荷重)に耐えるよう、多くの技術者により安全性が確保されています。それらは単独で、そして時には複合的に計画・解析・設計が行われます。もちろん、構造物の利用者がスムーズに人間生活を行えるような配慮もされています。

一方で、構造物を技術者から受け取った構造物の管理者は、利便性や商業的価値をより向上させるため、その構造物の外観やテクスチャーを独自の狙いで変化させていきます。そのため都市風景とは、人間社会で最適化され、構造性、利便性、商業性、景観性といった地域を取り巻く様々な要素が収束された人工的風景だと定義できるでしょう。従って、その一角もしくは範囲を切り取ることは、単に人工構造物の配置や外観を記録することだけではありません。人間生活の歴史や独自の文化までをもメッセージとして切り取ることにつながり、写真撮影においても極めて有意義な被写体であると考えています。

モノクロかカラーか

モノクロかそれともカラーか、これは本当に永遠のテーマで、こと建築・土木構造写真におけるファインアートフォトグラフィーの世界も例外ではありません。しかしながら私はこう考えます。例えば自然風景に溶け込む都市風景を表現する場合、自然の豊かな色彩やデリケートな色彩の変化といったものが、カラー撮影で可能です。色彩に特徴があったり、テクスチャーが色彩光に敏感に反応しているような構造物はカラーによる作品表現を選択してもよいでしょう。ただし、色彩的に特徴のない構造物や、背景においても色彩に頼る理由が見当たらない構図に直面した場合、モノクロを選択すれば写真としての構図、入光と構造物の外壁に反射したモノトーンでの階調表現、そしてその主題を強調する背景等をテーマ化して先鋭化できるとともに、ファインアートとして非現実性までもが主題化してくることとなります。

長時間露光による表現の可能性

通常、昼間の撮影では主として1/200秒から1/800秒のシャッタースピードにて一瞬を切り取ることとなりますが、そもそも構造物群は動くことがありません。そのため一瞬に拘る必要はなくシャッタースピードを遅くすることで、比較的長い時空を切り取ることが可能です。

例えばあなたが風の強い日に或る街角にたたずんでいる、という場面を想像してみてください。肌で強い風を感じるとともに、肉眼でも視認できるダイナミックに流れる雲と微動だにしない構造物に直面している、という場面を想像できると思います。また、遠くにたたずむ構造物を見た場合、背景にある空や雲は、主要な被写体である構造物とは別の二次的な被写体にすぎない、いわゆる「構造物にとって自然はノイズに過ぎない」と定義できるコンセプトもあるかもしれません。そのような状況を長時間露光にて撮影することにより「時空の変化」を自由に操り、「時間軸という縦のレイヤーを写真の中に封印」することができれば、被写体とそれを取り巻く環境(上記で想像しましたね)を撮影者が意図したコンセプトで表現できるでしょう。

私は計画者や技術者がある一定のコンセプトに基づいて計画・設計したその構造物群のありのままの姿のみならず、時にはあるべき姿をパッキングしたいと考えています。そのため、その「時間軸という縦のレイヤー」にて封印した自然条件やその他の道路付属構造物との融合は「生きた静物写真」としてパッキングされることにつながり、都市風景を撮影する上での重要な要素の一つと考えています。

以上のような都市風景における長時間露光撮影による表現のバックグラウンドは、建築・土木構造物の計画理論や景観理論にまで及ぶこととなるため、お話したい基礎理論全般に対してまったくもって紙面の都合上到底およぶことなく、この詳細についてはまた別の機会を設けさせていただきたいと思います。それはさておき、このような背景を留意しながら、次回第2回から昼間長時間露光撮影の具体的テーマのお話へと移っていきたいと思います。

それではまたお会いします。

アキラ・タカウエ