コンセプトが魅せる建造物の長時間露光撮影

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皆さん、こんにちは。タカウエ(@Akira_TAKAUE) です。
前回では都市風景・建築・土木構造写真における昼間長時間露光撮影における序論として、その魅力や表現の可能性についてお話させていただきました。
今回から昼間長時間露光撮影の具体的要素へと徐々にお話のテーマを移させていただきたいと思います。

コンセプトが魅せる建造物の長時間露光撮影

長時間露光とは

長時間露光とは、一般的にまさに読んで字の如く数秒から数分、ときには数時間など比較的長い時間シャッターを開けて撮影を行う手法です。
特に夜景撮影ではこの定義に対して直接的に当てはまることとなり、或る暗い被写体を正確に撮影することにおいて、ISO感度と入光の関係から技術的に必要となる撮影手段です。
例えば、なんら副次的効果が考慮されていない都市夜景撮影を主たるテーマとした場合、カメラ設定を「F8 / ISO100」と一般的な設定とした結果、露光時間が「15秒」となった撮影においても上記の手段にそのまま当てはまります。

シャッタースピードで一瞬を切り取る撮影手法

しかしながら、このテーマにおいて撮影を行った限り、「この都市風景夜景撮影は長時間露光によって撮影を行った」、と撮る側も見る側もあえて説明もそして認識をもしないでしょう。
なぜなら、それは暗い被写体を撮影することが主たるテーマであり、ISO感度と入光の関係上、技術的にどうしても必要となるため15秒の露光時間を選択した(或いは「された」)に過ぎないということとなり、昼間においてカメラ側が設定したシャッタースピードで一瞬を切り取る撮影手法の延長に過ぎないことを撮る側・見る側ともに理解しているからでしょう。

コンセプチュアルな長時間露光撮影

一方、同じ夜景撮影においても車両や星の軌跡などの長さや強さを調整したい時や、環境光が燦々と渦巻く昼間において、例えば渋谷の交差点にて人々の流れにブラー(被写体の動きによるぼかし)を入れたい時などのように、「時空の変化」を操り、「時間軸という縦のレイヤーを写真の中に封印」することがその作品における副次的効果である場合においては、撮影者が写真に取り込みたい様々な観念やセンス、そしてある一定の概念が意味を成して写真の中に包含されることとなるため、上述した一般的な長時間露光撮影から一歩進み出た、いわゆるコンセプチュアルな長時間露光撮影であるといえるかもしれません。

このように、長時間露光撮影とその結果に秘めるこれらの考え方は、都市風景・建築そして土木構造撮影におけるコンセプチュアルな昼間長時間露光撮影に大きな影響を及ぼすため、どうかこの考え方を一旦心に留めていただき、以降の項目に進んでいただければと思います。

都市風景・建築・土木構造写真における昼間長時間露光の意図

建築構造物は動くことがない

そもそも建築構造物は動くことがありません。
そのため一瞬に拘る必要はなくシャッタースピードを遅くすることで、短い時空から非常に長い時空までをも写真に取り込むことが可能です。
従って、上述した「コンセプチュアルな昼間長時間露光撮影」を行った場合、私たちが日常生活において常に目にしているこれらの被写体とそれを取り巻く環境が全く異なる様相を呈した姿へと変貌していきます。

「都市風景・建築・土木構造写真」においてのオリジナリティー

例えば、構造物にとっての自然現象(雲、大気、水)やその他の動体(人・車両)を抽象化し、都市風景全体や構造物を被写体として先鋭化させる意図を主たるコンセプトとした作品を制作するための撮影手段も考えられるでしょう。
一方これとは逆に、この動体を効果的に用いて、都市風景をダイナミックに表現することも考えられるとともに、これらの中間的もしくは複合的に取り入れた表現も可能となるでしょう。
このように時間軸という縦のレイヤーを十分に利用し「生きた静物写真」としてパッキングすることは、ストリートや自然風景写真と異なり誰が見ても同じ風景・被写体であろうと考えられている「都市風景・建築・土木構造写真」においてもオリジナリティーが向上し、撮影者の観念やセンスが包含された写真表現が可能となるかもしれません。

昼間における長時間露光に必要な機材

ここで一旦閑話休題ということにて、昼間における長時間露光撮影に必要な機材についてお話いたします。
カメラ本体やレンズはさて置き、フィルター等においても決して安価な製品ではありませんし、昼間長時間露光を始めた頃は恐らくトライアル&エラーの連続かと思われます。従って、今後このようなコンセプチュアルな撮影を行ってみたい!と思われる方はどうぞ参考にしていただければと思います。(本誌ではメーカー名については伏せさせていただきます。)

三脚

都市風景の長時間露光撮影、特に5分を超えるような超長時間露光における大敵は「風」そして「振動」(活荷重および群集荷重振動:走行車両や人による三脚設置部分の振動や常時振動:様々な外乱による三脚設置部分の振動)です。
大変ありがたいことに都市風景撮影では風景写真家の方々が果敢にも挑まれている海や川への入水など、波などへの対策は一般的には必要ありませんので、比較的軽量な三脚が適用可能ですが、やはりこの風や振動対策のため小さなストーンバッグを取り付けることができるエンドフック等が付属した三脚がベストです。
私はカメラ、レンズさらにはパノラマ雲台が乗っても安定するギリギリのキャパシティーを持つ比較的軽量な三脚を常時使用しています。

レリーズもしくはリモコン

露光時間30秒以内では2秒セルフタイマーでの撮影も可能ですが、バルブ撮影による30秒を超える長時間露光を行う場合は当然必須となります。
また概ね焦点距離が50mm以上にて昼間長時間露光撮影を行った場合、シャッターによるぶれや風による振動に対してさらにセンシティブになるため適宜撮影テーマに基づいて選択することになります。

NDフィルター

まさしく減光を行うためのフィルター(Neutral Density)です。
このフィルターには番号が付記されており、例えばND4ならば光量は1/4、ND400であれば1/400となります。
一般的にはネジ式にて対応可能ですが、前玉が大きく飛び出ている広角レンズやシフトレンズではホルダー式を使用することになりますす。
減光段数については別途次回以降にてお話させていただくとして、私はND1000、ND8、ND16、ND100(角形にてND64)そして非常時のためにND400を撮影時には常時携行しています。
このように多くのフィルターを携行している理由としては、回折現象を回避するためF値はカメラの適正値(私の場合F8もしくはF11)に固定することをプライマル・コンディションとし、撮影時における入光に対するフィルタリングワークとISOの微調整を主たるワークフローとしているためです。

私の場合、主たるテーマが都市風景・建築および土木構造物であるため、その構造特性や構成する部材の詳細部そして外観のテクスチャまで詳細に表現したいという意図からこのようなワークフローを採用しておりますが、このテーマではない場合。その限りではないでしょう。
また、入光が刻々と変化する朝夕においては煩雑なフィルタリングワークが必要となってきます。

ステップアップリング

広角レンズなどにて150mmの角形フィルターをホルダー式にて使用する場合は問題ありませんが、通常のネジ式フィルターを2枚以上重ねて使用する場合、厚枠によりケラレが発生します。
そこで保有しているレンズのフィルター径すべてについて上記のフィルターを購入した場合、携行重量も重くなりますしなによりコストが莫大なものとなります。
ここでステップアップリングは比較的安価で保有しているフィルターを様々な場面で適用が可能となります。私は概ね2段アップのステップアップリングを用意しており場面によって同じフィルターを当該リングを介して別のレンズに適用しています。

遮光用フード

昼間長時間露光では、当然環境光のなかで撮影するためカメラ内部に様々な光が入ってくるとともに、特にホルダー式ではフィルターと前玉との間に光が入ってきます。
これをどのように制御するかも昼間長時間露光撮影を成功させるための大きな要素の一つとなります。
手ぬぐいなど比較的やわらかい布などにより的確に遮光できるものを携行するのがよいでしょう。

以上、今回は私が取り組んでおります都市風景・建築およびお土木構造写真における「コンセプチュアルな昼間長時間露光撮影」の考え方やその撮影手法の意図、さらには撮影機材についてお話させていただきました。
次回では、今回お話させていただいた内容や撮影機材を使用した写真をご覧いただきながらお話しさせていただきたいと思います。

それではまたお会いします。

アキラ・タカウエ

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