RAW現像とレタッチはどこまでやるべきか。LightroomとPhotoshopを使って自分のイメージしたポートレート写真に近づけよう

こんにちは。Toru TANNO @tang40です。
冬も終わろうかというこの時期、なにかと話題の多い写真界隈でございますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
僕はもうすっかり寒いの飽きちゃって、おうちでレタッチに勤しんでおります。
で、今回は番外編。どこまでが現像でどこからがレタッチという線引き? というよくある話題に混乱をもたらすべく立ち上がってみました。(←座ってろ)

RAW現像とレタッチはどこまでやるべきか。LightroomとPhotoshopを使って自分のイメージした写真に近づけよう

「良いデータ」とは

今回も写真はもちろん、あきりん a.k.a. 黒田明臣さん撮影! ということでいろいろ作例に使わせていただいているのですが、やはりとても「良いデータ」なんですね。
データの良し悪しというとなんだかコムズカシイ話になりそうと思うかもしれませんがとても単純なことなのです。
撮影者の意図がしっかりと写っていて、なおかつ(データ的に)破綻していない。
例えばフラッシュ直当てのコントラスト高め&硬調な写真でもしっかりとトーンがあって黒潰れも白飛びもない、とか。
フラッシュ直当ては意図の部分で、トーンが残っているというのはデータの良し悪しの部分と考えてみてください。

RAWデータを画像にするのが現像

意図を充分に反映させたうえで上質なデータを得るためにRAWデータを記録するという選択をするのはアウトプットの質と労力の両面から効果的です。
ですが、あとからどうにかするからRAWで撮っとくというのはつまらない結果への最短距離です。
RAWで記録するからこそ、あるいはレタッチで仕上げることを前提にするならば「最終的なアウトプットから逆算して」撮影時に決めなければならない要素は多いのです。
つまり、できることが多い=自分で考えて決めなければならないことが多い、ということです。
職業としてレタッチャーを目指すのであれば状態の良くない写真のリカバリーはとても大事な技術ですけれど、写真を撮るみなさまにおかれましてはできる限り目指す写真にとって良い状態で記録することを気にかけて頂ければと願う次第でございます。

どこまでがレタッチでどこまでが現像?

どこまでが現像でどこからがレタッチという線引き、個人的にはしなくていいと思うのですが、
現像=Lightroom、レタッチ=Photoshop みたいな線引き。
あながち間違いではないところが余計に理解を妨げるところがあってこれはちょっと筋がよろしくない。
RAWはまだ画像ではないデータです。RAWデータを画像にする(記録された符号に対して画像として表示するための解釈を与える)のが現像です。
画像(psd tiff jpeg等々)にたいしてする処理は同様の効果をもたらす作業だったとしても現像とはいいません。
Lightroomは現像機能と画像処理機能をシームレスに統合することで使いやすく高機能なインターフェイスを実現しています。
Photoshopには現像機能はなくCameraRAWというプラグインを使用して現像をします。
つまりPhotoshop自体は画像処理に特化したアプリケーションと考えられます。
現像モジュールやCameraRAWを使って画像(psd tiff jpeg等々)に手を加えることもできますので、
少々乱暴ではありますが、使う機能や結果ではなく作業の対象となるデータの種類によって現像/レタッチと呼び方が変わるというのが実用上は正解と考えて良いのではないかと思います。
よけいにわからなくなった、という方は「RAWデータを画像にするのが現像」と一言でおぼえてしまいましょう。

レタッチはどこまで対処するべきか

ところでレタッチというと皆さんが思い浮かべるのは記事冒頭の写真のような感じでしょうか。

こちらの写真では鼻とメイクとライティングに手を入れてみました。
(仕上がりの感じだとちょっとメイクのわりに服がカジュアルすぎないか? という気がするのですが…。服を合成するとかいうのは別の機会にとっておきまして)
レタッチャーならずとも被写体になった方からのリクエストなど「こんな感じに」「もっと鮮やかに」「〇〇みたいに」等々、レタッチのリクエストは少なからずあるようです。
「〇〇みたいに」とか、「もっとこんな感じ」っていうリクエスト、よくあるといえばよくあるのですが、みなさんはどう対処していますか?
度重なるやり直しやら、やっぱりこうして等々「どこまで対処すればいいの?」という話題になることが少なからずあるようです。
※プロフェッショナルな皆様におかれましてはこれ単純に進行管理やら受注要件の話だったりするのでスルーしてくださいね(笑)

「どこまで対処すればいいんだろう」っていう線引きの問題なんですが、
ポートレートに限っていえば「フォトグラファー(被写体)のクリエイティビティ」「被写体のコンプレックス」に応じて写真を整えるのが一つの指針になるのではないでしょうか。

「被写体のコンプレックス」について

「クリエイティビティ」につきましてはご自分の胸に手を当てて頂くとして、「被写体のコンプレックス」なんですがこれは本当に千差万別です。
頬骨が目立つ、人中の形状、髪の毛の生え際、左の瞼とか。
他人から見たら魅力としか思えないことでも御本人にとっては耐え難い欠点ということは珍しくありません。
できれば撮影前に聞き取りをしてメイクやアングル、ライティングなどを(撮られる側の不安を減らす意味でも)検討しておくのが良いのですが、そのうえでレタッチで対応するという選択肢ももちろんあります。
「被写体のコンプレックス」をどう扱うか。フォローするのか、逆に強調するのか。
コンプレックスに気づかず仕上げちゃうと単に無神経な人だと思われてしまうので気に留めてみてください。

その場に居た人たち(被写体をナマで知っている人たち)に見せる写真なのか、その場を知らない(被写体を写真/映像でしか知らない)人たちに見せるの写真なのか。
リアリティとフィクションのさじ加減を決めるのはディレクションによって異なります。
「着地点」とか「落としどころ」とか言いますが、その写真で実現したいことは何かを明確にすることが第一歩です。
テクニックとかじゃなくて。自分が何を考えてその写真を撮った(選んだ)のか、写真は記録といいますがご自身の判断の記録という意味では本当にその通りだと思います。
考えたこと、想像したこと、望んだこと、記憶に残ったこと、フレームの外で起きていたこと、そんなあれこれを「その場に居なかった人たち」に伝えられる写真にするというのを目標にしてみてはいかがでしょうか。

レタッチでメイクしよう

まずは現像から

前ふりが長くなってしまいましたが作例にいってみたいと思います。
元の写真はこんな感じです。元の写真といいました前述のとおりRAWデータは画像になる前のデータですから、正確には「アプリケーションが暫定的に現像してプレビューを作成した状態」です。

現像前のプレビュー

現像設定済

顔のレタッチはメイクさんになったつもりで

「顔のレタッチはメイクさんになったつもりで」やってみましょう。つもりですよ、つもり。
気分はメイクアップアーティスト♪くらいの感じで。(本職のみなさますみません!!)

写真だと思わずに「実物の顔を触る」ように立体をイメージするのがコツです。
このメイクさんごっこ方式(なんだそれ)には、以下に挙げるようなメリットがあります。

  • やりすぎ、というか塗り絵っぽくなるのを避けられる。
  • リアリティの境界線が明確になる。(付け毛はアリ、インプラントはナシとか)
  • 質感、温度感を意識しやすい。(触った感じをビジュアルに落とし込むのがキモ)

こういうわりと大事なことなのだけれど写真上でいじくってると忘れがちなポイントに意識が向きやすいので是非お試しくださいませ。

Before

では早速… 先ほど現像したこちら。

この作例では「メイクさんと照明さんが参加した撮影みたいに」という仮のリクエストを想定。
「被写体のコンプレックス」を“鼻の形”、「フォトグラファーの創造性」を“ポージングとボケ”に設定してみました。
フォルムの変更は“鼻の形”だけ。あとはこれくらいならメイクと照明でつくりこみ可能かな?という範囲で(推測ですけど)仕上げてみました。
あまり手の込んだことはしていないのですが印象は随分変わったと思います。

メイクしてみた

ライティング+リップの色変え

ふたつを重ねてマスクとレイヤーの不透明度で調整

「メイクしてみた」と「ライティング+リップの色変え」を重ねて不透明度で調整♪

レタッチではなく現像はどのくらい処理すればいいの?

Lightroomを使った現像方法

レタッチではなくて現像、っていうとこのくらいの処理?
Photoshopを使っておりますがLightroomでも普通にできますね。

ストレート現像

明るめに現像

設定はこんな感じ

Lightroomの設定はこんな感じです。

トーンカーブを使って肌を暗く調整

トーンカーブで肌の部分を少し暗く調整します。

背景を暖色系に。レベル補正とマスクを使って調整

背景を暖色系に。レベル補正とマスクでざっくりと調整。

撮影時に済ませるか後処理で行うかを考えよう

ありふれた日常系(?)
人物を寒色系にしつつマゼンタを残して健康的に、部屋を暖色系にすることで人物を浮き立たせてみました。
これ、ライティングだけで同じことできますね。大事なことです。
レタッチの工程を見直すというのは撮影時にできること、できないことの判断力を養うとても良い機会なので、
現像しながら「これは撮影時に済ませるのと後処理で行うのとどちらが良い結果になる?」というクエスチョンは常に頭の隅に置いて作業してみてください。
画質の面だけではありません。撮りたい写真のイメージにとって最良の選択は何か、ということを常に考え続けることは決して無駄ではありません。

カラーコレクションについて

最高の表情、最高のシャッターチャンス、こういった後処理ではフォローできないシーンで「横切る酔っ払いのおっさん」。←気にせずにシャッターを押して「おっさん」にはレタッチで消えて頂く。
多少光のコンディションがよくないけれど良いコミュニケーションによって生まれた素敵な雰囲気。←レタッチで光を再現し撮影時には被写体の質感をデータに残すアンダーな設定で撮る。

いいタイミングを逃さない為の判断の引き出しが多ければ撮れ高もきっと良くなります(たぶん…)
カラーコレクションって聞いたことありますか?
RAW現像(JPEGでもOK)もレタッチも含めて色や明暗、トーンをコントロールして写真を仕上げる作業をこう呼んだりします。
一例です。

カラーコレクションの一例

RAW現像

調整レイヤー「露光量」のオフセットで少しゆるふわ(?)に

トーンカーブを3枚使って色調補正

トーンカーブを3枚使って色調補正(カラーコントロール+中間からローの階調+ハイの階調)

ハイパスでシャープネス補正

おまけ

かなり作り込んだレタッチと言える程の作業内容の例

だいたい仕上がりのイメージができるところまでできちゃいます。
ここまで見ていただいたところで、この作例。見た目には現像+アルファくらいの違いしか感じられないと思いますが解説しようとすると、とてもコムズカシイお話にお付き合いいただかなくてはならないたくさんの工程を経ております。
作業内容から見れば現像ではなく、かなり作り込んだレタッチの範疇。

Before

After

これはレタッチ? それとも現像?

モノクロにしちゃうと境界線変わったりしませんか?(笑)

カラーver

モノクロver

やってみてね♪

どこまでが現像でどこからがレタッチという線引きに拘らず、目的とするイメージを目指して最良の選択を積み重ねるというのが上達の近道ではないかと思いますがいかがでしょうか。

今回ご紹介した方法で実際にやってみたら是非、#ヒーコで載せて見せて下さいね♪

バックナンバー

Photoshopという道具 | ポートレートレタッチ編 第一回

肌のレタッチを学ぼう!Photoshopでポートレートレタッチ

Photoshopでポートレートを映画風にレタッチしてみよう!

ポートレートレタッチテクニック!構図を活かしたレタッチをしよう。

トリミングを効果的に使った、Photoshopでのレタッチテクニック!

Pocket
LINEで送る

0 replies on “RAW現像とレタッチはどこまでやるべきか。LightroomとPhotoshopを使って自分のイメージしたポートレート写真に近づけよう”