よく写真のセレクト方法や、撮影時の追い込み方について聞かれる事が多く、いつか書きますと言いながら気づけば一年くらい経過していたので今回は一例を書いてみたいと思います。言うまでもなく、これは正解のある類のものでもなければ、撮影時はここまで明確に考えているわけじゃないので後から思えば…の域をでない代物ですが参考になるようであれば嬉しいです。
撮影の大まかな流れ
これは自宅で撮影しているシリーズからですが、曇り男の自分としてはめずらしく天気が良く、光と影で遊んだような写真ができるかなとワクワクしながら撮影した一日。基本的に、撮影はざっくり以下のような流れになることが多いです。このあたりは深掘りすると色々書くことはあるのですが、この記事のテーマと異なるのでざっくり書いてみます。
また、しつこく言いますが、あくまでオーソドックスな流れというだけで、実際の撮影では半分以上、その場のフィーリングで決まることのほうが多いです。モデルの方が自由に動いてくれたり、撮っていくうちにわかっていったり、予想外の何かが起きてくれたり。などなど。そして人によって好みも千差万別なので、あくまで正解ではなく、自分のやり方程度にとどめておいてくださいねっ
柔軟性が何よりも大切です。
また、基本的に自分はイメージが決まっていれば撮影自体は早いので、あんまり無駄に撮影はしない方だと思います。
これから一連の流れを見せますが、これは撮影した
- モデルのポジションを決定。
- 構図を決定。
- 顔の向きやポーズを微調整。
- その他微調整。
- 次の撮影へ
という一連の流れが含まれています。
1. モデルのポジションを決定。
まずは何処に位置してもらうか決めないとはじまらないので、光を読みながら場所を決めます。
2. 構図を決定。
そこから、予想していた光の状態を確かめつつ背景などを考えながら構図を決定します。
このフレーミングで自分的に落ち着くポイントを探すことが多いです。
ここではじめてファインダーをのぞくので、ポジションが予想とあっていたかどうかを確認するフェーズでもあり、同時にモデルにとっては撮影開始の合図とも成りえますね。
3. 顔の向きやポーズを微調整。
基本的にはモデルの方に自由に動いてもらってますが、光の状況や自分なりの狙いがあれば、その狙いに向かって微調整を行います。
4. その他
撮影を進める中で気づいたポイントや軌道修正をはかりながら追い込んでいくイメージです。
5. 次の撮影へ
ある程度撮れたと思ったら、次の構図やポーズなどに移ります。
場合によっては 1. モデルのポジションを決定 はそのままで、顔の向きやポーズ、構図だけ変えたりも。
構図の確定からセレクトまで。
では上の流れを実際にみてみましょうか。
影を効果的にみせつつ心地よい構図を探す。
これが実際に撮影した一連の写真です。矢印の順序で撮影しています。
今回は、窓際に座ってもらい、窓からたまに風が吹くとカーテンのレースとそれによって起きる影がおもしろい効果になってくれたので、それを狙ってみました。
まずはモデルに座ってもらって構図を決めます。この時点では特にシャッターは切っていません。
ただファインダーを覗いているだけ。
a. モデルのポジションを決定。
特に意味もなく、座ってもらったので、風は吹いていませんがカーテンが近づけばおそらく影が出来るので風が来るのを待ちつつ、おそらく露出の確認も含めシャッターを切りました。ここでファインダーをのぞいてみると、光の感じがおもしろくない事に気づきます。
ちなみにこの時点で、撮影の大まかな流れで触れた1と2は終わっています。
残りの写真は、3と4の繰り返しです。
b. 向きを窓の方に変えてもらう。
実際に撮ってみると、レンズが少し上からすぎる気がしたのと画像中にあるように
- 髪のハイライト
- 光の当たり方
に不満がありました。しかしこれは風がきてカーテンが近づいてくると変化するポイントなので、とりあえず大人しく風を待つことにしてみます。
c. 風がきて狙っている状況での明暗がわかった。
実際に風がふいてカーテンが寄ってきました。
これによって構図がカーテンによるフレーム効果でしっくりきた感じがします。
風が来る前に、先ほどの写真を反省して構図を少し修正したっぽいですね。(覚えていない。)
少し顔の部分のハイライトが強すぎる気がしたので、ここでシャッタースピードをあげて露出を落とします。(マニュアルモードの為)
光の当たり方もイメージ通りだったことがわかりました。あとは風が吹いたタイミングで、好みの表情とカーテンや光の感じが抑えられるまでトライです。
d. モデルには目をあけて空をみるように指示
せっかくの順光なので、目の色が明るくなることを期待して空をみるようにお願いしてみました。
しかし、見た感じ少し目に力が入りすぎている感じもしたので、心のなかで法華経を唱えてもらうことにしました。
それともう一つ、カーテンの動きは流動的なので、これはもう良いタイミングでシャッターを押す以外に術はないかなと、構図や露出を追い込むことに神経を使っていたと思います。
e. 法華経が効いている程よい脱力感
f. 法華経により安眠
法華経が効きすぎたのか、もはや寝ています。小粋なジョークで目を覚まして頂きつつ、同じ風のなかでもう一枚。
g. トリミング前提で少し広めに引いて撮影
少し構図が窮屈だったら後でトリミングできるように少し引いてみました。
しかしここは自分のミスで、少し構図が上に寄ってしまいます。
写真上部に隙間があいてしまってあまり引けていない。
後ろには本棚があるので当然の結末でした。
しかしカーテンの位置が丁度よかったため、顔の部分の明暗差は程よい感じでした。
トリミングをしてこちらを採用する事もできますが、目線が少し意味ありげすぎる感じもしたので、引き続き撮り続けます。
h. 構図を戻して撮影
先ほどの撮影で構図がブレたので、引こうと欲は見せず潔く元々の構図に戻して撮影。
全体的に良い感じに見えますが、髪の影になっている部分の暗さが気に入りません。
またこれはシャッターを押したタイミングがあまり良くなかったのですが、目の力具合も少しイメージと違いました。
しかし今回のカーテンは、ダイナミックに明暗差があって好みの感じです。
i. カーテンのダイナミック感を活かす。
先ほどのカーテンのダイナミック感じ気に入ったので、少しカーテン側に寄って立体感をみせつつ撮影してみました。
モデル後方の光の射し込み方も好みな部類です。
しかし顔の輪郭が構図に対してまっすぐになってしまったので、カーテンのダイナミック感が失われているような気がします。
ここは先ほどのように斜めだった方がカーテン折り目の向きとも合って良かった気がします。
ですが、まあこの数枚の中から使える一枚はあるだろうと思ったのかここでこのシーケンスは終了しています。
セレクト
最終的に、e. 法華経が効いている程よい脱力感をセレクトしました。
f. と g. 以外は、どれを選んでも良かったように思えますが、振り返ってみてあの脱力感が一番印象的だったんだと思います。
こういった風の動きの中で撮影したり、動きものと合わせて撮影する場合なんかは特に、色々やってみたけど最初の一枚に落ち着くと言ったケースもありますね。
後半の、ダイナミックなカーテンの感じも良かったのですが、被写体はカーテンではなくモデルなので虚ろな目を選びました。
ボツ写真
候補写真
しかし、e. 法華経が効いている程よい脱力感画像内の注釈にも書いてある通り、この写真がベストショットというほど気に入っているわけではありません。いくつか気になるポイントは残ったままなので、それらはRAW現像とレタッチで修正しました。完璧になおせたわけではないので、永久保存版写真とまではいきませんでしたが、それなりにこの影の感じと虚ろな目が気に入っているのでこれで良しとします。
仕事で撮影するような広告やブツ撮りなんかでは理想の一枚を求めてとことん追い込んでいくことも多いのですが、こういう撮影では限られた撮影時間の中で出来るだけ多くのパターンを撮影したので、程よい追い込み具合でたくさん撮ることを心がけているという部分もありますね〜。
つぎは気が向けば、構図を追い込んだケースをご紹介します。
ポートレートプリセットはこちらがおすすめ!
黒田明臣氏が手掛けたプリセットは、丁寧に調整された色合いとコントラストが高次元のバランスで両立されており、いとも簡単にあなたの写真をハイクオリティな一枚へと変身させます。あらゆるシチュエーションや光に対して、高い汎用性と柔軟性を兼ね備えております。