カメラマンであり、イラストレーターであり、文章が書けて、企画も手がけている、凄腕マルチクリエイター、わたらいももすけ(@momosuke_art)氏の写真家の面にフォーカスして、すーちゃん(@iamnildotcom)が写真と機材の関係性について伺います!
カメラは表現の道具にすぎない。わたらいももすけ | 写真家の機材
わたらいももすけ
経歴
2015年4月IT企業にインフラエンジニアとして就職。趣味でイラストや写真を作りSNSに投稿していたところ、仕事をもらうようになり、2018年1月よりフリーランスクリエイターとして独立。現在は「企画から制作まで一貫してできるクリエイター」として多くのエモい企画を立案から制作まで一貫して行なっている。イラスト/写真/映像/ポエムなどマルチにコンテンツを制作。自身のSNS累計フォロワーが10万人を超えており企画×制作×発信が出来る唯一無二のクリエイターとして注目を浴びる(予定)
近年の実績
【Exhibition】
2019年2月23〜24日 わたらい展 開催
SNS企画
#夜女子
#ぶかぶかと女の仔
#バイバイ彼女
撮影機材
写真用機材
- カメラ
- SONY α7 III
- レンズ
- SONY Planar 50mm F1.4 ZA
- CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 MMJ
- SONY FE 16-35mm F2.8 GM SEL1635GM
- Speedmaster 50mm F0.95
- ストロボ
- WITSTRO AD200-TTL
- HD
- smallHD Focus
- 他機材
- NDフィルター
- Vaseline
- JBL CHARGE3 Bluetoothスピーカー
- 三脚
- スタンド
動画機材
- カメラ
- SONY α7 III
- SONY α6500
- レンズ
- SIGMA 35mm F1.4 DG HSM
- 30mm F1.4 DC DN
- コンデンサーマイク
- NTG4+RODE
- HD
- smallHD Focus
- 他機材
- 三脚(Manfrotto)
- NDフィルター
- 雲台
- PILOTFLY H2 電動ジンバル カメラスタビライザー
- スタンド
写真撮影でよく使用する機材とその理由
初めまして、ではありませんが、こうやってお話するのは初めてになりますね。いつもSNSを見ながら、どんなひとなんだろうと気になっていました。この機会にいろいろとお話を伺えたらと思います。よろしくお願いします!
それでは、早速「よく使用する機材とその理由」について、伺っていきたいです。
よろしくお願いします!
まず、カメラはSONY α7 IIIです。理由は、EVF(電子式ファインダー)である事と、連写や手ぶれ補正機能が高く、機能的・技術的な面が気に入って使用しています。
この50mmレンズがアツい
次にレンズですが、よく使用する3つの50mmレンズがあるのでそれぞれ説明します。
中古で購入した「CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 MMJ」。このオールドレンズは、ちょっとレンズが曇ってるし、カビもある。でもそれがソフトフィルターみたいな効果を生み出していて、光が滲むのが好きなんです。でも、オールドレンズって一点ものじゃないですか?なので、写りが似ている「SONY Planar 50mm F1.4 ZA」を使っています。こちらは周辺にいくにつれて減光が激しい写りで、独特の味が出ます。とろけるようなボケもいい。ただ、埃とかカビによるにじみが足りない。
なのでVaseline(ワセリン)をフィルターに塗ってオールドレンズの感じに近づくように工夫しています。この方法なら、他のレンズでも同じように作品が撮れると思います。
中一光学の「Speedmaster 50mm F0.95」は丸ボケの形も好きですね。見たことのないゴーストが出たりするのも面白いし、F値0.95っていうのも珍しくて気に入ってます。皆と同じような写真を撮りたくないので、レンズも一癖のあるものを選ぶ傾向があります。
レンズを変えても工夫することで同じような写りが再現できるんですね!
50mm以外を使わない理由
3本の50mmをメインで使っているのは珍しいですね。広角レンズや望遠レンズを使いたくなったり、必要性を感じたりはしませんか。
50mm以外も仕事では使ったりします。でも基本的に作品撮りのときは50mmが好きですね。そういう縛りって「自分らしさ」につながったりして後に話しますが、それが「世界観」につながったりするわけです。
「SONY FE 16-35mm F2.8 GM SEL1635GM」は持っていて、これは仕事でたまに使っています。実を言うと、欲しかったのは「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA SEL35F14Z」なんです。ただ、50mmも35mmも現場に持って行くとなると、レンズが増えすぎる。超広角から標準域までカバーできる画角を考えて購入しましたが、僕には合わなかったかな。完璧すぎる感じがして、手に余るといいますか。
私は50mmと28mmを使用する事が多いのですが、50mmだけでいくっていうのはかなり突き詰めているのかなという印象です。
カメラ遍歴
機材はずっとSONY
わたらいさんのカメラ遍歴を教えてください!
初めてカメラを購入したのは高校2年生の時で、SONY NEX-5Rです。この時からずっとSONYを使っています。その後、20歳くらいでα6000を購入して、写真を仕事にしようと決めたタイミングで今使っているSONY α7 IIIを購入しました。
途中、他メーカーのものも借りてみたりして使ってみたのですが、SONYのEVF(電子ビューファインダー)に慣れきっていたので、他社のOVF(光学ファインダー)は扱いづらさを感じました。
SONYのカメラを使い続ける理由は、技術的な側面でめちゃくちゃ助けられているからです。写真なら連写速度、動画なら手ぶれ補正などです。SONYのデメリットとしては、操作性と描写が硬さがよく挙がるのですが、僕はもともとSONYユーザーだったこともあり、操作性は気になりませんでした。描写はレタッチでどうにでもできるので、問題ありません。写りよりも、性能の高さでカメラを選んでいます。
あと、個人的に良いなと思っているのがデザイン。まわりからは聞かないけど、僕はSONYのミラーレスの見た目がすき。昔ながらのカメラっぽい感じがあります。
わたらいさんは生粋のSONYユーザーだったんですね。
現場のテンションが爆上がりする外部モニターの使い方
外部モニターを使用されている理由は?
メリットはいくつかあるんですけど、いちばんは、現場のみんなのテンションを爆上げできるって点。外部モニターは機種によってLUT(ラット)と呼ばれるフィルターのようなものを充てられるのですが、これで事前に僕がライトルームやフォトショップで作った「プリセット」をLUTに変換してモニターの中にいれておくと、現場で簡易的な「現像後の写真」のモニタリングができるんです!モデルさんは、現像した状態の写真がその場で見られると「わあ!すごい!!」って驚いてくれる。そういった反応があると、こちらも嬉しいですよね。
あとは、ファインダーを覗かなくてもいいから、モデルさんと目線を合わせられることです。カメラを向けられている、って圧迫感はないほうがいいですから。
とくに素人モデルさんの場合、現像した状態がわからないと思うので、ラットを使ってプリセットを当てるのはすごく良い方法だと感じます。
熱量、エネルギー、動きを表現するためのNDフィルター
NDフィルターを使用する理由について、教えてください!
動画撮影の時にシャッタースピードを50分の1に固定にすることが多くて、写真も動画も同じ設定で撮るためにNDフィルターを使ってます。
作品を撮るさい、シャッタースピードは結構遅めに設定しています。写真であっても動画であっても、その場の熱量、エネルギー、動きを切り取りたい。躍動感やエネルギーを表現するために、あえてブレを残します。
わたらいさんの作品のブレがどういう考えで生まれているのか、わかった気がします。
ストロボは日光を表現したいとき
ストロボはどういった状況のときに使用していますか?
作品ではあまり使いませんが、例えば曇りの日や室内で日光を表現したいときには使います。日光を表現したいときには、このAD200がいちばんコンパクトでパワーがあるので重宝してますね。
ストロボはコンパクトさと性能で選んでいるわけですね。
共感性の高い写真とボケの関係
作品を通して大事にしていることはありますか?
共感性を高くすることです。見た人が感情移入できるような作品を作りたい。だから、僕の写真は人の顔がボケていることが多いんです。はっきり写っていると、見た人にとって「知らない人」の写真になってしまいます。モデルさんの顔も写しつつ適度にボカす、といういい塩梅を探っています。そのために機材は必要ですね。
わたらいさんの作品作りに欠かせないボケや滲みを生み出すのが今使っている機材なわけですね。
動画用機材はなるべくコンパクトに
写真の機材についてはこだわりもだいぶお聞きしましたが、動画にも写真と同じ機材を使ってますか?
変えています。動画だとSONY α6500を使うことが多いです。レンズは「16mm F1.4 DC DN」と 「30mm F1.4 DC DN」。なるべくコンパクトにしようと考えています。ジンバルは「PILOTFLY H2 電動ジンバル カメラスタビライザー」、三脚はManfrottoという会社のもので、このあたりは特にこだわりはありません。コンパクトかつ性能がいいものを探して行き着いた機材になります。
動画は取り直しが多いのが一般的なので、僕は「早い、安い、高品質」を目指していて。そのためには準備、撮影の時間をできるだけ短くすることが大事なんです。機材の取り回しやすさを重視していたら、今の機材になりました。足りないものは現場でレンタルしたりもします。
全体の動きをスムーズにするために、機材の取り回しやすさが大事なんですね。
フィルム効果で写真を「かけがえのない一瞬」に演出する
いま気になってる機材があれば教えてください!
フィルムカメラ。実際には使ったことがないのですが、フィルムへのインスパイアが僕の写真に強く表れていると思います。現像でフィルムに寄せるのですが、これには理由があって。ひとって、その写真がフィルムで撮影したように見えるだけで、かけがえのない瞬間が偶然撮れた、ってふうに勘違いするんです。僕が写真をフィルム風に仕上げている理由ですね。粒子が入って、情報が曖昧になりがちなのも愛おしいです。
なんとなく雰囲気でフィルム風に現像するひとも多そうですが、そんな考えがあったとは知りませんでした。
海外ユーチューバーから技術を学ぶ
写真や動画は独学だそうですが、どこから学びましたか?
一番多いのはYoutubeです。海外のユーチューバーから情報を仕入れることが多くて、彼らが作った動画を参考に、日本人受けするようなアレンジを考えたりします。ヒーコもめっちゃ見てますよ。海外のユーチューバーやサイトを見る理由としては、情報の早さですね。こういうカメラが出た、っていう情報が日本より早いので、よく見ています。
わたらいさんにとっては、いちばんの学び場がインターネットなんですね。
安いカメラと機材でも写真は撮れる
「良い写真」と「機材」は関係あると思いますか?
あまり関係ないと思う。たとえば、今の僕の機材をミニマムな構成で金額に換算したら、約35万円になりますが、中古のAPS-Cと激安の単焦点で揃えたら、同じような写真が4万円で撮れるわけです。自分の撮りたい写真を表現するのに、機材は重要な要素ではあるけど、良い写真を撮るために良い機材が必要だとは思いません。
カメラや機材は、自分の表現をより理想に近づけるための道具であり、写真の良さそのものとは関係ないものと考えているんですね。
良い写真には「他人の評価」も重要
自分にとって「良い写真」とはなんですか?
自分と周りの評価がともに高い写真が「良い写真」だと思います。自分のレベルを上げるためにも、そう考えるようにしています。
僕は自分の作品で「世の中のひとを驚かせたい」という気持ちが強いので、自然と自己評価よりも他人の評価が優先的になっているんです。僕の中では、良い写真を作るうえで「人の評価」も重要な要素の一つですね。
世の中のひとを驚かせたい。なんともわたらいさんらしいです。
脳みそのイメージが具現化できるレタッチソフトがあればいいのに
理想的な撮影機材はありますか?
現行のものでなくてもいいのだとしたら、目で写真を撮れるようになったらいいなって思います。それから、脳みそのイメージが具現化できるレタッチソフト。これは極限ですが。頭の中のイメージを具現化できるなら、イラストでもいいです。なんでもいい。
それ、最高です。
「写真という道具」を作るための道具がカメラ
自分にとってカメラとはなんですか?
この問いに対しては、明確な答えを持ってます。写真とは、という問いに対しての答えでもあります。僕の中で「写真」は自分の表現したいものを表現するための道具でしかありません。その「写真という道具を作るための道具」が、カメラです。だから僕は、写真には執着していません。僕のコンテンツがかならずしも写真である必要はどこにもないんです。まず最初に表現したい思想があって、そのための手段、ツールがあると思います。一番自分の向いてる表現方法を探したときに、出てきたものが写真であり、カメラだった。イラストも描いているけど、比較的時間がかかるので、その点写真はすぐにSNSにアップできるのがいいなと感じます。
カメラはわたらいさんにとって、写真という道具を表現するための道具。道具の道具。自転車の車輪くらいのものということになりますね!
世界観を持つと、仕事がたのしくなる
わたらいさんの作品にはどれも世界観があるように感じます。世界感を持つこと、つくることについては、どう考えていますか?
現代は、クリエイティブをするための敷居が低くなってますよね。カメラだって、昔はフィルムなんか高くて買えなかったけど、今は誰でも始められる。
誰でもなんでもできる時代になりつつあって、マルチクリエイターはどんどん増えてくるはずです。その中で大事なことが、世界観を持つことだと思います。ただのマルチクリエイターって、便利な何でも屋さんと変わらないんです。でも、世界観があれば、そこに投資してくれる人が現れる。その世界観に対して、クライアントが仕事をくれるようになるわけです。そうすることで、デザイナーでありながらアーティストに近い存在になれる。自分だけの世界観が作れたら、好きなことが仕事になります。
マルチクリエイターのわたらいももすけ、というキャラクターもまた、表現のための道具なんです。カメラや写真と同じです。わたらいももすけの本垢しか見てない人は「こんな風に色々試行錯誤して設計している」なんて風に思ってない人も多くて、それも面白いですよね。
世界観を持つことで、マルチクリエイターわたらいももすけが成立しているわけですね。
今回は予想以上に深いお話をたくさん聞くことができて楽しかったです。本日はどうもありがとうございました!
作品ギャラリー
まとめ
- 世界観を出すためにレンズも一癖のあるものを選ぶ
- 50mmという縛りをすることで「自分らしさ」を作る
- 外部モニターを使って現場のテンションを爆上げする
- 熱量、エネルギー、動きを表現するためNDフィルターを使う
- ストロボはコンパクトさと性能で選んでいる
- モデルさんの顔も写しつつ適度にボカすことで、共感性を高くする
- 動画用機材はなるべくコンパクトに
- フィルム効果で「かけがえのない一瞬」に演出する
- 海外ユーチューバーから技術を学ぶ
- カメラや機材は、自分の表現をより理想に近づけるものである
- 自分と周りの評価がともに高い写真が「良い写真」
- 自分だけの世界観が作ることが大事
撮影機材一覧
使用カメラ
使用レンズ
- SONY Planar 50mm F1.4 ZA
- CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 MMJ
- SONY FE 16-35mm F2.8 GM SEL1635GM
- Speedmaster 50mm F0.95
- SIGMA 35mm F1.4 DG HSM
- SIGMA 30mm F1.4 DC DN
他、撮影機材
- WITSTRO AD200-TTL
- smallHD Focus
- Vaseline
- JBL CHARGE3 Bluetoothスピーカー
- Manfrotto製品
- PILOTFLY H2 電子ジンバル カメラスタビライザー
エモい作品の底には思想があった
わたらいももすけさん。お会いするまでは「エモい写真、エモいイラスト、エモい詩」をつくるエモさの達人、SNSの有名人、という印象だったのですが、実際にお話してみると、その思考の深さに圧倒されっぱなしでした。写真は、自分のしたい表現をするための道具であり、カメラはその道具を作るための道具である。痺れました。
世界観をつくる、ということについても語ってくださいましたが、これからの時代、どの仕事のクリエイティブにもかかわる話だったのではないでしょうか。SNSでの感情の入ったつぶやきも、わたらいももすけ的世界観を表現するための1つのピースだったのかと考えると、驚きが隠せません。
おまけ
今回、わたらい宅にお邪魔して取材させていただいたのですが、部屋がおしゃれすぎました!ちなみに、本人は最初「部屋汚いんで〜」と言っていました。実際お邪魔するとすごく綺麗だったので騒いでいたところ「すーちゃんは普段どんな汚部屋住んでるんですか」って笑顔で言われました。マルチクリエイターわたらいももすけ、毒舌も持ち合わせているようです。さすがです。
お仕事について
エモい企画なら僕にお任せ!
ティーンを対象としたエモい企画やクリエイティブ、SNS上でのプロモーションについてご相談いただければ幸いです。詳しくはこちらから。