あなたの色を見つけよう!映画から学ぶポートレート写真の配色について

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さいきんまた映画熱があがってきています。Filmarksにちょくちょくレビューを掲載していますが、やっぱり良いんですよね。遠回りで創作意欲が刺激される感覚。エンターテイメントとして時間を忘れて楽しむ傍ら、やっぱり何か作りたい!という気持ちがわいてくるんですよね。

映画から学ぶ写真のカラー

自分の写真は、よく色が特徴的だと言われるのですが、良いか悪いかは別として色の調整に殆どの時間を費やしているという点は事実としてあります。

おそらくRAW現像における殆どの時間は色の調整に使っているんじゃないかなあ。長時間モニターをみすぎて、後から見たら狂っていたなと思うこともしばしばなんですけど、とにかく納得のいく落とし所を探したいと思ってやっています。何かに近づけようと思っているわけではないので答えのない正解を探して長時間費やすこともしばしばです。

しかし自分の中でしっくりくるような正解は、おそらく何処かから得たイメージだと思うんですよね。

自分の場合、それはきっと映画なんですよ。今日は、カラースキーム的に影響を受けた映画をいくつかご紹介します。

映画のカラリスト

そうそう、ご紹介の前に小話ですが、映画やMV、CMなどにはカラリストという役割の人がいます。

おおくの写真のようにフォトグラファーが全てを担っているわけではなく、色を専門で扱う人がいるのですね。その人が監督やスタッフと調整して全体的なカラースキームを決定します。色彩のプロフェッショナルとして、伝えたいイメージや表現したい状況、物語全体のトーンなどを考えて色を決める役割です。優れたカラリストというのは、ひと目見て圧倒的な調和を鑑賞者に提示してくれるので、たいへん重宝されるみたいですよ。

また、監督によっておそらく好きな色合い、表現したいカラースキームに傾向がある方もいます。
後にご紹介しますが、こういった監督は複数作品にまたがって、その人を象徴するような色合いである場合も多く、何か良いなと思う映画があればその監督の他の作品を観てみるのも面白いかもしれません。
もちろんカラリストで探しても良いです。

色合いに影響をうけた映画

ということで、影響を受けた映画をいくつかご紹介します。

オンリー・ゴッド

via http://www.imdb.com/title/tt1602613/

まず外せない映画ナンバーワンがこれでしょう。
なかなか心臓に突き刺さるショッキングな映像にも関わらず、ワンシーン残らず全てが美しい。
嫉妬を覚えるレベルで美しすぎるんですよ!

次に紹介する映画もそうなのですが、監督のニコラス・ウィンディング・レフンという人は、いま最もオレを熱くさせてくれる監督と言っても過言ではないかもしれません。
カラースキーム的なところでいうと、ワンシーン残らず美しいです。
構図も美しいし、映像もとにかく美しい。

自分が好きなのは端麗な美しさというよりも、生々しく何かを連想させるような美しさなのですが、そういった点においてはもう比類ない次元です。いや、それは言いすぎかも。

ただ、ストーリーは悪魔的だし、おすすめはしません。
映画の中で繰り広げられる会話は、全員分を一日で暗記できるレベルのボリュームしかないですから。
あ、でも個人的にはこの映画は大好きですよ。

赤と青がまばゆい、東南アジアのネオン街。色に狂わされるような思いになります。

実はこの監督は色覚に障害があり、あの高彩度と高コントラストでないと色を上手に判断できないそうです。
それもあり、あの激しく情熱的な赤に彩られた独特のカラースキームになるんですね。
本人の障害は残念でしかないですが、それを糧にしてこういう創作につなげている点も素晴らしいとしか言いようがない。

例えばこの写真なんかはちょっとしたテスト撮影ですが、オンリー・ゴッドを意識しています。

ネオンデーモン

via http://www.imdb.com/title/tt1974419/?ref_=tt_rec_tt

こちらのネオンデーモンも、オンリー・ゴッドに引き続きニコラス・ウィンディング・レフン監督の作品。
この映画の映像も素晴らしいです。
ほんとうに隙がない。

おいそれと人にはすすめられない衝撃的なヴァイオレンスなのですが、あえてすすめたい。本当は映画館で見ていただきたかったですが、もう上映終了しているので、できればアフタヌーンティー片手にお一人で。自分は映画館に友人と見に行きましたが、鑑賞後に8時間位喫茶店で朝まで語っていました。

この映画で撮影監督をつとめた方のインタビューをいくつか拝見したのですが、50年以上前のレンズをどうにか手に入れて、フィルターワークなどを駆使して撮影したそうです。

色々なレンズを試した結果、どうしてもそれでなければ駄目でどうにか手にいれたんだとか。ものすごい情熱ですよね、しかも最新のものを使っていくわけではないのです。いまの高精細なレンズでは写りすぎるからと笑

みていただければわかりますが、我々が写真で行うようにワセリンを使ったりアナログな手法でボケをつくったりフレアをだしたり、幻想的な映像美を実現しています。テクニカルな意味ではどちらが鶏でどちらが卵かはわかりませんが、見とれてしまう。

観ながら心のなかで「ここ!!!ここー!!!」って叫び続けてました。
なにがココなのかわからないんですけど。こんな写真を撮りたいなと思ってしまいます。

セブン

via http://www.imdb.com/title/tt0114369/?ref_=fn_al_tt_1

こちらはデヴィット・フィンチャー監督の名作。
ミステリーになるんでしょうか、当時中学生だった自分にとっては衝撃でしたね。
記憶にある限り衝撃のラスト!的なコピーの走りはこれなんじゃないかな?

当時の衝撃もあって、この映画の色合いにはかなり影響をうけています。
イエローとグリーンに寄せた色調で、ひたすら陰鬱な雰囲気が流れています。
雨の描写なんかも特徴的で、写真などのスチールでみると一見やりすぎかのようにみえる風味なんですよ。

30代になって写真をはじめてから何度か見直していますが、スチールではやりすぎにみえた色合いも映像でみるとそうでもないんですよね。それだけ世界観として完成しているというか、クオリティの高さというのをまじまじと感じさせられる感覚です。

狙ったわけではないのですが、例えばこの写真なんかはセブンのカラースキームに近いものがあります。

ゴーン・ガール

via http://www.imdb.com/title/tt2267998/?ref_=ttmi_tt

こちらもデヴィット・フィンチャー監督の作品。
彼の作品は年代によって、カラースキーム的にはだいぶ変わります。
ゴーンガール、ソーシャルネットワーク、ドラゴン・タトゥーなんかだとだいぶリアリティのある色味になった印象。

それでもこのゴーンガールは特筆すべき美しさですね。
映画自体の素晴らしさもそうなんですが、とにかく映像美がすごい。
ドラゴン・タトゥーもかなり良いのですが、どちらかというとゴーンガール。

セブンほどの極端さはないものの、湿度があって見とれてしまう色合いなんですよ。

最近のフィンチャー監督の作品だと、毎回特に思うのは、サスペンスシーンがキレイすぎるんですね。
残酷で目も当てられないシーンなはずで、グロイのや怖いのが自分は苦手なはずなのに、ものすごく印象的。
構図も色合いも鉄のような質感で美しいです。

ゴーンガール後半のシーンなんかは今でも思い出せます。
映画というのは、どうしたってある種のエンターテイメント性があるので、音楽なり効果音なり構図なり演技などで大仰に示さなければならないようなポイントがありがちなのですが、フィンチャー監督のそういう盛り上げるべきサスペンスシーンこそ、淡々と事務的に描かれる事が多いです。

こういう表現をみて、実際にこういう事が起きている現場では、ドラマチックな音楽も恐怖を煽るような効果音もなく、淡々と静寂の中で進んでいくはずだろうと連想します。

良いシーンは後から反芻しても思い返せるんですよね。

007 スペクター

via http://www.imdb.com/title/tt2379713/?ref_=nv_sr_2

今度は007から。
スカイフォールも良いんですが、記憶に新しいのはスペクター。
公開当時、PENで007特集をやっていて、スチール写真がいくつか紹介されていたのですが、それがまた良かった。

007シリーズは全く興味がなかったんですがダニエル・クレイグがボンド役になってからはハマったんですよ。あの軟派なイメージから一気に硬派なボンドになっている点がすごく好きです。これは原作により近い設定らしいですが、硬派な男性像が好きなので生まれて初めてこの言葉を使いたいと思います。オレ得。

カラースキーム的な話からはズレてしまいましたが、この映画のカラースキームも非常に良いです。イメージとしてはベージュとグリーン。全体的に暗いながらも暖かみのある色で統一されています。

この写真は、カラースキームはそうでもないのですが、スペクターをみたあとにインスピレーションをうけて撮影した写真です。

キャロル

via

そして最後、キャロル。これは昨年公開の映画では外せない一作。

映像も音楽も演技もプロップも全てが最高峰。映画評論家の町山智浩さんいわく、1950年代を生きた人が観ても当時を思い起こさせる寸分たがわぬ世界観が表現されているそうです。おそるべき徹底具合ですね。

街の灯の使い方が非常に美しく、写真においても一つ一つの光を大切に使っていきたいなあと、ある種の反省すらさせるライティング。雨の中でタクシーに乗っているシーンなんかは本当に美しいです。この映画も赤とグリーンが特徴的に使われているのですが、その二色を使用したカラーグレーディングは人物と合わせた時に難しい色合いという印象が強く、それを考えると非常にバランスが良いんですね。

一歩間違えると極端なトーンに落ちていってしまいそうなところを、絶妙なところでキープしている感覚。

こういうバランス感覚が色彩を扱う上では大切だと思っているので、非常に参考になります。

まとめ

ということで、思ったより紹介してしまいましたが、参考になったかしら。

観たことのある人はおっと思うところもあったかもしれないですね。もし未見の方がいたら是非みていただきたい。ところで、自分の写真をみてウォン・カーウァイ監督の作品を彷彿とさせると言われたことが過去に何度かあります。それも別々の人から。残念ながら自分は彼の作品を一つも観たことがなく、今のところイメージがわからないのですが、カラースキームにはある種のパターンがあるので知らないところで近いものがあるのかもしれないですね。

近いうちに観てみようと思います。

他にもオススメがあったら教えて下さいね。

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