金澤正人 写真展「Avsökning|Naken」× 池谷友秀 インタビュー

資生堂の広告写真を手がけている金澤正人氏の写真展「Avsökning|Naken」のテーマやその想いについて、ファッションや広告写真を中心に活動されている池谷友秀氏がインタビューしました。icon連動企画として、エキシビションレポートを掲載します。

金澤正人 写真展「Avsökning|Naken」× 池谷友秀 インタビュー

[池谷]

iconチャンネルの池谷です。
今日はピクトリコ ショップ&ギャラリー表参道で開催されている(※現在は終了しています)金澤正人さんの写真展「Avsökning|Naken(アブソクニング ネーキン)」に来ています。
よろしくお願いします。

[金澤]

よろしくお願いします。

展示のテーマ

[池谷]

今回の、展示のテーマは何ですか?

[金澤]

「Avsökning」というのはスウェーデン語でスキャニングという意味です。今回の展示している写真は全てペンライトで暗闇の女性にたいして光を当てながら撮影しています。
そういった撮影してる行為とか光で物質を読み取っていくようなところがスキャニングをしてるような感覚を覚えたんですね。
そういう感覚になったので、我々が眼にしているものとか周りの環境はデジタル化されているけれども、実は人がものを見るという行為でさえも、もしかしたら脳内でデジタル化しているんじゃないかと。そういうことを考えてしまった。
0と1の間にあるもの。光の当たっているところとあたっていないところ、黒になるようなところも実は脳内で形づけてリアルに補完・イメージしているなと思い、デジタルとアナログとの融合をテーマに、今回写真展をやってみました。

[池谷]

タイトルをスウェーデン語にした理由も気になります。

[金澤]

スウェーデン語にした理由は単純に今回の写真展の前にハッセルブラッドジャパンギャラリーの方でも同じテーマで、花をモチーフにやったんですね。
ハッセルさんでやるということもあるしハッセルのカメラで撮影したので、スウェーデンのメーカーという事もあるしスウェーデン語がいいかなと。
このタイトルなんだろ?と言われたら会話も膨らむし。笑
今回の写真展と融合するといいなあと思いそうしました。

[池谷]

写真集がここにあるんですけど、花の写真もありますよね?

[金澤]

うん、ある。これも今回の展示している写真と同じようにレーザーポインタで撮っていて。
黒と白との部分しかないんだけど花の形が見えてくるというような面白さもありましたね。
花のほうが花びらなので素材が薄いというのもあって光が透けていっちゃってもう少しリアルには見えて来てしまうんだけど。見える部分と見えない部分との間で想像する部分が出てくるんじゃないかなと思います。
そうでなくても、単純に光が綺麗とかでもいいんだけど、そうやって皆さんに見てもらえたら。

[池谷]

うんうん、やっぱり花のほうはディテールが出てますもんね。

[金澤]

ある程度ディテールが出てないと花って分かりにくくなってしまう部分もあるので、ヌードとはちょっと変えて撮るという事はしましたけど。

[池谷]

なんか0と1の間というかファジーな空間を表現したのかなと思ったんですけど、合ってますかね?

[金澤]

合ってますね。
見えない部分をどう想像するかというのが写真の面白いところであったりするので、それは直接的というかダイレクトに面白いアイディアでっていうのは今回そういった作品の本質みたいな所かもしれないです。

世の中の風潮と作品について

[池谷]

世の中的には今、白黒はっきりしたいみたいなそういった風潮があると思うんですけど、それに対してはどう思います?

[金澤]

なんか会社でもそうだけど、こうでなくちゃいけないとかが多くなってきていると思う。
そのためのアプローチはなんかこう、昔はこうなっちゃったけど良いかみたいな所とかあったけど、今はこうする為にはこうしないとって道筋が細かく求められている気がする。社会的にもアートシーンもそうだし。
もう少し、人が想像してなにかしらもっと頭のなかで妄想を繰り広げて、頭のなかで楽しいようになるといいけど、もっと直接的すぎちゃうなあと。
なんというか…、こんな難しい話をすると思わなかったけど(笑)

写真も、分かりやすいものが最近ちょっともてはやされていますし。
作家性みたいなところとか、この人の考えはなんだろうとか、どうしてこういう作品が生まれていったんだろうか、とかそういったバックボーンみたいなところを想像すると楽しかったりするんだけど。
花が綺麗とか草が綺麗とか女の子が可愛いとかそういう直接的なところで表現が完結してしまっているのが勿体ないというか、これだけ情報がありふれた世の中になっているから、その情報をどのように取り入れてアウトプットしていくかも、より考えられる時代だけど、なんか直接的すぎるものが増えていると感じますね。

[池谷]

この間知り合いのアーティスト(Aki Inomataさん)の方がヤドカリに3Dプリンタで、ヤドカリのヤドを透明のアクリルでつくってヤドカリにわたすっていうのをやっていて、そのアクリルで作ったヤドの形を教会にしたり、NYの町並みに作ったりしているんです。
なんかその人は自然に半分くらい任せてるんですよ、それって宗教観とかも関係あるのかなって。
西欧の人だと自然もコントロールしたいみたいな宗教観があるんですけど、でも半分自然に任せてファジーなところをつくるのは日本の独特な感性なんじゃないかなって言っていて、知り合いのイタリアの人も同じことを言っていて、それとこれ(展示のテーマ)ってリンクするんじゃないのかなぁと思って。

[金澤]

なんかこう輪廻とか、生まれて価値が与えられて時間が立つとともに滅びて、また再生してみたいな。
もしかしたら池谷さんの作品もそうだけど、水中ヌードだと、どこかに死生観みたいなところを感じさせるんですよね。黒バックだからかもしれないけど。
死を感じさせられる。生きるということはなんなのかみたいな、僕の考えだけど。
そういったことって、何処か日本人的な感覚なのかなって。
ヨーロッパの人はもっとダイレクトに水の中に入ってザ・ビューティー写真とかやりそうだけど、日本人は心の奥底に在る死みたいなものを感じるなあと。
今回の作品も見えてこないからこそ生まれ変わりの途中だったりとか、生命のこれから生まれていく過程みたいなものもどこかにあるのかなとか。

[池谷]

わかりますね。ちなみにシャッタースピードを20秒くらい?開けて撮っていると思うんだけど、ズレるじゃないですか、やっぱり。
そこを許容するあたりも日本人ぽいのかなって。
他の国の人だったらきっちり合わせそうなので。

[金澤]

そうそう、そこらへんの要は心のゆらぎとか時間の経過とかを表現したい感じなんかは日本人なのかなと思います。

[池谷]

他は真っ黒なのにそこだけはズレているっていうのはそういう感じがしました。

[金澤]

そうですよね。まあ撮影中は気にしていなかったんですが(笑)
撮り終わった時にこのブレは良いなとかズレはいいなと思って今回は撮ったら撮りっぱなしでトリミングも何もしていなくて。
何もしていないほうが良いなあと思ったんですよ。
あえて漏れちゃってる光もそのままだったりとかしてますね。

撮影している風景はちょっと変態的な感じだったりするんだけど(笑)

[池谷]

それが良い(笑)

[金澤]

これはもちろんモデルと僕だけだと無理な撮影なのでアシスタントがいて、僕はポージングをモデルに指示してピントを合わせ、アシスタントをカメラの後ろに立たせて僕が電気を消してモデルの側面にペンライトを持ち、シャッターはアシスタントに切ってもらっていました。
アシスタント曰く、暗闇の中で女性に光を当てている様はものすごく変態的だったみたいです(笑)


※「変態的」という表現に笑い合う二人

[池谷]

それを想像するだけで面白い(笑)

[金澤]

これは自分も流石に変態だなと思ったんだけど 、モデルさんの足を開かせて下に潜り込んで撮ってみた時、さすがにこれはダメかなと思って一回で辞めた(笑)
なんかこう、女の人の股の下から光を当ててる様は変態的だったなと(笑)

今回は、三人のモデルさんを撮影したんですけど、なんか微妙にポージングの撮り方とか身体のラインとかそれぞれ違うので、今見るとどれがどの子だったのかわからなくなってしまっていて(笑)
一人のモデルだったかなと思いきや三人だったりするんだけど、でもよく見るとこの子とこの子は違うなとか面白さもあるんですね。
最初の三枚を顔にしているのは三人のモデルを使っているのだと分かってもらうためです。あと、フォルムだけを撮っているんだけども、もしかしたらモデルからも何か出てくるように…。

[池谷]

三人って一人ずつ撮ったんですか?

[金澤]

そうです。

[池谷]

一部の写真は二人かなと思ったんですよね。

これからの展望

[池谷]

なんかこれからの展望とか、次こういうのやりたい事とかって、ありますか?

[金澤]

普段広告でビューティーの世界をやっているので、こういった作品に関してはそういった広告的な手法とか要素を抜きにしてちょっとやったことないな、誰も見たことないなっていうのを作品化していきたいなといつも思っています。
それがどういうテクニックかとか、どういう感性かとかいうのは今後アイディアを練って色々やるんですけど、頭のなかでこういうの楽しいのかなというのはありつつ…。
30年くらい会社(資生堂)に入って経つんですけど、大概のことはしているなと思っていて。
自分がしたことのないことをしたいなといつも思っています。
実はこのペンライトもずっと遡ると、池谷さんと最初に出会った「裸って何?」展でやっていたりとかしていて。
そのちょっと前にもモデルさんの歯が光ってると良いなあと思って、パシャッと撮って何秒間かシャッターを開けている後に歯に対してペンライトを当て続けたり。

[池谷]

モデルが赤く光ってると面白い、っていう感性が面白い(笑)

[金澤]

それで結構面白いのが撮れて発表していたりしてましたね。
大昔に懐中電灯でライトペインティングをしていたから、過去の引き出しを、使っていたパーツ毎にまとめ合わせて何か新しい表現ができないかなと思って。
新しい表現は誰かがやっているなという感じはするんだけど、自分が経験したちょっとずつをつまんでいくと新しかったりするんだよね。
ゼロからというよりも、自分の30年やってきたなかで、20何年前にこういうこと をやっていたなあと思い出しながら今やっている事とくっつけてみたりすると面白いものが作れたりする。
次はどうしようかなーと、30年の引き出しを整理しながら考えていますね。ヌードはやりたいです。

[池谷]

まあヌードは普遍的なテーマ、モチーフなんで。
時代が分からないというのもあるし、10年-20年後でも通用する。良いと思います。
ファッションしちゃうと時代が分かるし、古さを感じさせてしまったりするし。

[金澤]

うんうん。

写真集について

[池谷]

では今後に期待して…、ちょっと告知もお願いします。

[金澤]

本展「Avsökning|Naken」はハッセルブラッド・ジャパン ギャラリーと同時開催となり、限定の写真集も刊行しています。
この写真集はオンデマンドで作りましたが。10月中なら、写真展の会期後も注文は受け付けていますので。
あと、展示作品も販売しています。まだ多少残っているので是非お買い求めください。

[池谷]

では、今日はありがとうございました。

[金澤]

ありがとうございました。

プロフィール

金澤 正人


1967年 東京生まれ。1988年 東京工芸大学短期大学部卒。同年(株)資生堂宣伝部(現 宣伝・デザイン部)入社。以降、同社の数多くの広告に携わる
作品:http://www.shiseidogroup.jp/advertising/work/sort/creators/kanazawamasato/

池谷 友秀


1974年 神奈川県小田原出身。2001年 東京総合写真専門学校卒。2002年 キャラッツ勤務を経て独立。広告、CDジャケット、エディトリアル撮影を中心にムービーも手掛ける。また作家として海外での数多くの受賞、展覧会開催や国際アートフェアに出展。
ホームページ:http://tomohide-ikeya.com/

iconチャンネルとは

iconチャンネルは、池谷友秀氏が開始したYouTubeでの動画プロジェクト。
インタビューや対談、撮影メイキング映像、プレゼンテーション、そして今回のようなエキシビジョン紹介などが配信されています。

動画はYouTubeから

iconチャンネルで収録されたインタビューの動画がノーカットで公開されています。ぜひご覧ください。

写真集の購入をご希望の方

限定写真集「Avsökning|Naken」を購入をご希望の方は、金澤氏に直接ご連絡いただく他、ヒーコでもお受け付けしております。
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ピクトリコ ショップ&ギャラリー

ピクトリコ ショップ&ギャラリー表参道では、ギャラリースペースの展示希望者を募集しているようです。
オープンキャンペーン期間として、2018年3月31日ご利用分まではオトクな金額でのご利用が可能になっています。
作品展示や発表など、この機会に是非ご応募ください。

営業時間 火曜日 ~ 土曜日(定休日 日曜日・月曜日) 10:00 ~ 19:00
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-14-5 Cabina表参道 1F
Tel. 03-6447-5440 Fax. 03-6447-5441

http://www.pictorico.jp/shop/

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