水の表情すらも切り取るポートレート撮影術!謎のベールに包まれた撮影現場を潜入レポート!

ショベさん(@shovel_chopper)の水撮影をこの目で見てみたい!という欲求を持ったヒーコ編集部員が撮影に突撃レポートしてきちゃいました!快く了承いただいたので、余すことなく、撮影の全てをここに記録していきたいと思います。撮影術や考え方など、今まで知ることのできなかった部分まで迫りました!

水の表情すらも切り取るポートレート撮影術!謎のベールに包まれた撮影現場を潜入レポート!

嵐の前の静けさ

我々編集員がスタジオに到着すると既に撮影が始まっていましたが、まだ水は使っていませんでした。現時点では全く水の気配を感じませんが一体どこから水が湧き出て来るのでしょうか。

この時のライティングは、モデルの後ろからストロボを当てていてとても幻想的!心なしか水を使っていなくても瑞々しさの様なものを感じますが、これからどのように撮影が変化していくのかワクワクしますね!

水撮影スタート!

水撮影用のスタジオが15cmほどの水に満たされ、そこにライティングを組みモデルさんを配置して撮影がスタート!

撮影に使う機材はこちら。

  • ライティング機材
  • カメラのリモート操作用リモコン
  • 大小それぞれのステンレスボール
  • どうやらこのハンバーグをこねる時に使うような普通のボウルで水を投げているようです。他に特別なアイテムは特に見つかりませんね…。

    水撮影の際の絞り値について

    ちなみに、水の世界を表現するためには絞りの値が重要らしく、基本的にはf8〜11まで絞って撮っているらしいです!その理由は、絞りを開けて撮ると水がボケて何かよくわからなくなってしまうからだそう。特にカメラの近くまで飛んできた水はボヤッとなってしまいますもんね。

    「水」の妙

    ボールですくった水をモデルさんの前を通過するように投げ、それに合わせてタイミング良くストロボが光ります。

    ん?!想像していた水の形と全く違う!!!ボールで水をすくって投げているだけなのに、水が円を描いてその中に薄い膜が張っているように見えます!

    実際に撮れた写真がこちら。

    すごい!水が自ら意思を持ってモデルさんを守っているようでもありますし、モデルさんが水を操っているようにも見えます!水のエッジ部分はストロボによって光輝いていますが、モデルさんの前に薄い水の膜が張っていることがお分かりいただけるでしょうか!形を歪めすぎることもなく隔てた向こう側の景色を妖艶に写しだしています。他にも、細部まで見てみると水の表情が本当に豊かでどれだけ見ていても飽きることがないですね…。

    水撮影は、モデルさんの表情と水の表情が噛み合った1枚を撮るために何度も何度も繰り返すことが普通とのことですが、この写真はなんと10回目で撮れた1枚です。10回だけでこんなに撮れるなんて…。逆に言えば、どれだけ投げても撮れないときは撮れないということでしょうか。通常の撮影(水撮影が異常というわけでは決してないのですが)とは別の部分で写真の良し悪しが左右されるため試行回数はどうしても必要とのことでした。

    スタッフも水投げに挑戦!

    撮影の合間に編集スタッフも見よう見まねで水投げに挑戦させていただきました!しかし、先ほどのような膜を張った水の形にはならず、ただただ水の塊が飛んでいくだけで全く上手くいきません…。そればかりか、水を投げるたびに1割ほど自分の方向にリターンが来るので数回投げるだけでびちゃびちゃです…。

    するとショベさんから『水をリリースする直前に手首を捻ることで水の形を変えられるよ』とアドバイスをいただいたので早速チャレンジ!

    After

    すごい!本当に水の形を変えることができました!!日常生活にあるアイテムがまさかこんな形で活用できるなんて思ってもみませんでした。皆さんも、機会があればお風呂場やお庭等でぜひ試してみては?

    ちなみに、水撮影愛好家の中では手首を捻る方向によって『外派』『内派』に分かれるようです。奥が深い世界だってばよ…。

    水波形タイプ一覧

    さらに、投げ方や水の形によってもタイプ分けができるらしく、

    水波形タイプ一覧

    • 膜型
    • アーチ型
    • 雨降らし
    • 人当て
    • 横スライド型
    • 縦スライド型
    • ドラゴン型(アーチ型の応用)
    • 水シールド型(幕の中に波紋を生み出す)
    • etc

    様々な投げ方や形を組み合わせることで、水の表情を無限に引き出すことができるようです。深すぎるぞ水撮影の世界…!

    アクリル板で水の世界をフレーミングする

    今回はさらにアクリル板を使用し、そこに水を当てることで新たな表現を探っていきます。当てるものや角度によって水の表情は大きく変わるため、度々自分でも全く予想のできないものが生まれるとのこと。

    モデルさんの後ろからアクリル板に当たるように水を投げ、同じくリモートでシャッターを切っていきます。

    やばい…かっこいい…!先ほどとはまた雰囲気が変わってアクリル板の規則的な形と水の流動感が合わさることで、何とも言えない世界観を表現しています!!!飛び散った水も玉になるものもあれば膜として飛んでいくもの、滴るように流れるもの、多種多様で本当に面白いです。

    撮影中に気づいた修正ポイント

    しかし、ショべさんは気になる部分がある模様。どうやらモデルさんの肘辺りとアクリル板の隙間に水が溜まってしまい「ブヨっと」した感じに見えてしまうところが気になるようです。

    ん、確かによく見てみるとそうですね!

    その部分を修正するためにモデルさんへの指示をし、その後何度何度も水を投げ、シャッターを切り続けます。その結果…。

    先ほど懸念していた部分は見事に解消され、これまたなんとも素敵な一枚に…!

    水撮影に限らずですが、現場でいかにミスに気づくことができるか、そしてそれを修正できるかということを常に考えて撮影に臨んでいるそうです。

    個人的には先ほどのカットでも満足して終了してしまいそうですが、より突き詰めてよいものを作っていくためにはこういった作業は間違いなく必要ですね…。
    ちなみにこちらの修正をするために水を投げた回数はなんと196回…!
    1枚のために絶対に妥協を許さないその姿勢に圧倒されます…。

    ライティングに合わせた水の構築

    お次はスタジオ内の白ホリエリアにてプロジェクターの淡い光と水を使った撮影!先ほどとは異なり瞬間の水ではなく流れるような水の波紋を切り取っていきます。

    先程とは違い柔らかい作品に仕上がってます。

    ちなみに、ショベさんは撮影前の打ち合わせというものをあまりすることがないらしく、現場で臨機応変に決めることが多いとのこと。水という再現性の少ないものを扱っているからかそのスタイルには納得がいきますね。

    これを撮ろう! と思って撮影に行ったら案外イマイチ…という経験は皆さん誰しもあるかと思うのですが、そういった時にもショベさんは元の発想をキッパリ捨てて、ダメだと思ったら臨機応変に、持っていたイメージに固執しないということを常に意識しているそうです。

    いざ水の中へ

    ここで先程のアクリル板が再登場!今回はモデルさんとカメラの間に設置して、水を優しくかけたり、揺らしたり…。

    その結果生まれた写真がこちら。

    いや、これはもう完全に水の中でしょう。でもしっかりモデルさんにピントあってるし、でもでも水の波紋で崩れてる部分もあるしで、撮影現場を見ているのにも関わらず未だ若干混乱してしまいます。先程のアクリル板撮影とは全く別の形での水のアプローチですが、『水』というテーマ一つでここまで違う作品が生まれるものかと思わず膝を打ってしまいます…。

    ちなみにアクリル板は撮影に応じてスタジオスタッフの人が改造をし、最終的に第3形態まで進化をすることになりました。さすがコスプレ撮影をされている方は物作りの心得がすごい!

    モデル情報
    Model:じま太(@wooper8looper
    Profile:2018年3月までのおよそ2年間、ポートレートモデル・商業モデルとして活動。ポートレートモデルとして:写真展や写真集、フォトテク・CAPAなどに掲載。商業モデルとして:ニッセン、大東電器、コーナン様など。現在はコスプレイヤーとしてひっそり活動中。

    今回の撮影まとめ

    • 料理用のボウルで水を投げる職人技がすごい
    • 水撮影は基本的にf8〜11まで絞る
    • 水をどれだけ投げても撮れないときは撮れない
    • 水撮影は運要素も含まれている
    • 水を投げる時は、リリースする直前に手首を捻るのがコツ
    • 表現に応じた水の形を選択することで世界が広がる
    • 現場で修正できることを見逃さずに対応
    • 臨機応変に柔軟に対応することが大切!
    • 1枚のために試行錯誤をやめない

    次回へ続く!

    今回は水撮影という全く未経験の撮影に同行させていただき、本当に貴重な体験となりました!ショべさんの水撮影に対するひたむきな姿勢や現場での臨機応変な対応力など、勉強になる部分は余るほどありました。なんと次回の記事では、水撮影の機材や心構えなどあれこれ聞いてきちゃったのでそちらをお届けする予定です!

    スタジオ情報

    studio 雫

    今回お邪魔したのは都内でも数の少ない水の使えるフォトスタジオ!機材などの貸し出しもしてくれるので、水撮影してみたいんだけど…という方にオススメだそう。なんといってもスタジオにお菓子があったのが嬉しいポイントでした。

    studio雫 

    告知情報

    過去写真集通販サイト

    写真集はこちら

    過去写真集通販サイト。過去の記事で紹介した写真の撮影方法を書いた解説本付きの写真集もあります。

    コスプレ写真展 Layers


    コスプレ写真展 Layers(http://layers.daredevil.jp/)に参加します。

    【日付】
    2019年4月17日(水)~21日(日)11:00〜19:00

    【場所】
    海岸通ギャラリー・CASOにて開催。
    〒552-0022 大阪府大阪市港区海岸通2丁目7−23

    海岸通ギャラリー・CASO

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    空と水で表現する世界。アマチュアカメラマンがポートレート撮影に全身全霊を注ぐ理由。

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