写真と生きる | 護あさな×黒田明臣 対談「フィルムの距離感は、片思いと似ている」

今回は女優をする傍らで趣味として写真撮影を楽しんでいる護あさな氏と、ヒーコ黒田明臣による対談をお届けします。

護あさな×黒田明臣対談「フィルムの距離感は、片思いと似ている」

写真を始めた理由

[黒田]

前々から、俳優さん同士写真を撮りあっているのとかってすごく良いなと思っていたのでそのことについてお聞きできるのが嬉しいです。
独特の世界観で切り取られている護さんの写真のルーツや背景といったものがとても気になります。というか趣味というクオリティを越えている様子に驚きました。なので今回は聞きたいことがいっぱいあります(笑)。よろしくお願いします。

まず、なぜ撮っているんですか?(笑) しかもフィルムで。

[護]

私も謎なんですけどね(笑)。
もちろん、デジタルだったり一眼レフだったり、色々と撮る個体は何でもあると思うんですが、たまたま撮影の現場でフィルムカメラの「写ルンです」が流行っていたんですね。その頃はまだ写ルンですがブームになる前ですね。

[黒田]

謎なんですね(笑)。
どれくらい前なんですか?

[護]

一昨年の春、夏の頭くらいですかね。みんなで撮って遊んでいて、写ルンです良いなぁと思って。最初は友達と撮り合うだけというか、作品撮りとかではなくてふざけた延長で「作品っぽいの撮ろうよ」みたいな感じでした(笑)。

[黒田]

ポケットから出してパシャですからね(笑)。

[護]

フィルムで言うと川島小鳥*さんだったりとか、若い方達とかがフィルムの写真をメインでやってらっしゃってますよね。私はただ最初は遊び、それがきっかけですね。

[黒田]

きっかけは仕事の現場で流行っていたということですね。

[護]

そうですね。

アートに触れていた幼少期

[黒田]

じゃあバックグラウンドとして、写真に関連したものがあったりとか、仕事で何かしら作品を作って表現するような事をされていたとかいうわけじゃ無いんですか?

[護]

根本で言うと、母が画家なので、アートというもの自体は小さい頃から画集が置いてあったり、いろんな絵の模写が家に飾ってあったりして、自分自身も絵を描いたりしていました。
そんなこともあったので、アート自体は元々、親しみのあるものでした。父も普段はエンジニアをやっているんですが、趣味でフィルムカメラとか撮って、家族で記念写真をいっぱい撮っていたんですよ。そういうことがありまして、改めて触れてみたら面白いなと思ったんです。父にカメラのことを聞きに行ったりしましたね。たぶんポイントはあったんだと思うんですけど、たまたま数年前にきっかけが偶然、重なったというか。

[黒田]

それは結構、納得感ありますね。

[護]

本当ですか?納得してもらえなかったらどうしようと思っていました(笑)。

[黒田]

謎は解けたというか。自分は写真を仕事でやっているんですけど、3年前くらいまで全然関係ないエンジニアの仕事をしていて、カメラは趣味でやっていたんです。そしたらなぜか仕事になっちゃったんですけど(笑)。
自分もけっこう突飛というか、なぜそうなったのか説明しづらい感情の変化みたいなもので写真が仕事になったので「みんなはなんでなんだろう」みたいな疑問が常にありまして、護さんは表現の活動とかされていて、そこで紐づくものだったのかなと思っていたんですけど、どちらかと言うと生まれと言うか、環境で下地はあったんでしょうね。

[護]

そうですね。
環境と言えば…私はカンボジアのハーフなんです。

[黒田]

カンボジア?アンコールワットのですか?

[護]

そうです。カンボジアの家族って、昔はカンボジア大使館の中にアパートみたいなところがありまして、そこに住めたんですよ。
小さい時だからそう思っていただけなんですけど、森の中の一本道の石畳をずっと抜けていくと、奥に一棟だけ石造りで、ワンフロアに1家族しか住んでいない、5階建てのアパートがありまして、家族でそこに住んでいたんですよ。

[黒田]

子供の時ですか?

[護]

そうです。それがとても印象的で、1部屋は母のアトリエになっていました。今はカンボジア大使館の中を立て直すということで、母の実家に引っ越して住んでいるんですけど、母の実家なので基本的にどの部屋も全部アトリエみたいな感じで。そういう環境でした。

[黒田]

創作物向き合うのが日常的だったというわけですね。

[護]

そうですね。ですので、母が個展用に書いた絵を「どう?」とか聞かれたり、モデルになることもあったりしますし、兄も音楽をやっていたりとか、みんな自由なんですよね。

[黒田]

自由というか、クリエイター一家というか、芸術一家みたいな感じですね。

[護]

良く言えばそうですね(笑)。

[黒田]

一般家庭に比べたらだいぶ違う気がします。(笑)
カンボジア大使館ってどこにありますか?

[護]

赤坂の東北新社とか、TBSとかの近くですね。

[黒田]

それでは駅前ですね。うちの実家の周りに大使館がいっぱいあって、そのうちの一つかなと思ったんですけど。

[護]

だいたい似たような感じですね。

[黒田]

子どもながらに身近ではあったので、行ったことはないですけど想像できるんですよ。石畳で真っ白い塀に敷地があって、外から見る感じでも「日本じゃないでしょこれ」という。確かにあの中に住んでいたらちょっと普通じゃないですね。

[護]

ちょっとしたファンタジー体験じゃないですけど(笑)、5歳までしかいなかったので、自分の中で美化しているのかもしれません。

フィルムで人を撮る理由

[黒田]

まあまあ、でも三つ子の魂百までみたいな話もありますからね。写真を始めて、継続的に趣味としてって言ったらアレなんですけど、表現活動を楽しんでやられていると思うんですけど、フィルムで人を撮っているではないですか。なんでなんだろうと気になっていまして。

[護]

なんでですかね。難しいですね。20歳くらいの時は、デジタルをよく使っていたんですよ。趣味として1台くらいは持っていてもいいんじゃないかくらいの軽い気持ちで、友達同士で「持とうよ」みたいな。
ただやはり重たくて、持ち歩かなくなりました。カメラから一度は離れまして、何もしていなかったんです。写ルンですの話に戻るんですけど、現像を待っている時間ってもどかしいじゃないですか。待つ時間もあるし、久しぶりに触ったカメラが写ルンですという古典的ではあるものの誰でもきれいに撮れるカメラということと、距離感に惹かれたというか。

人を撮っているのは、基本的に女の子の顔が好きなんですよ。そう言うとちょっと偏見がありそうですけど、絵画みたいなもので、メイクの本とか女の子の写真集とかの収集癖がありまして、1メートルとか75センチまでしか近づけない距離っていいなって思っていまして。

[黒田]

距離!!!言うことが違いますね。かっこいいです。

[護]

根がロマンチストなので(笑)、なんかとてももどかしいなと思いまして。

[黒田]

共感ではないですけど、理屈は面白いですね。

[護]

写ルンですがあれだけブームになっているのって、もどかしさとか、回顧というのがあるって言われていますけど、私は距離感だと思っています。近すぎるとピントが合わずその子のことが見えなくなったり、でも離れると全体が写ったりしますよね。友達以上恋人未満、片思いみたいな距離感がいいなと思っています。

[黒田]

確かにその距離感に強制されてしまうということはありますね。

[護]

絶対に近づけないという、片恋のほうが美しいというものもあると思います。T2も70センチだったかな、くらいまでしか近づけないですし。

[黒田]

1メートルか70センチですよね。

[護]

たぶん70センチですね。
ですので、ちょうどいいなと思っています。

[黒田]

脳みそがちょっと変わっているんですね(笑) 普通の人って、そんな発想します?

[護]

難しいほうが楽しいみたいな感じです。

[黒田]

いやー、かなり衝撃的な感性です。もどかしさというのは、あまり考えたことがありませんでしたが、そういう考え方もあるんですね、面白い!

[護]

黒田さんは今、フィルムもやっているじゃないですか。なんでなんですか?圧倒的にデジタルのほうが便利じゃないですか。

[黒田]

自分の場合は全然違うんですけど、探究心というか知的好奇心みたいなものが強くて、写真がうまくなりたいんですね。言い方は悪いですけど、シャッター押すだけじゃないですか。参入障壁の低い趣味だと思っていて。例えば絵とかって、落書きでもスキルがないと書けないじゃないですか。
写真は万が一、いい条件がそろってシャッター押しちゃったら、素人でもいい画は撮れてしまうんですよね。

[護]

万が一(笑)。

[黒田]

でも、圧倒的に魅力的な写真を撮る人達がいるわけじゃないですか。沢渡 朔*さんとかもそうですし。ということは何かあるんだろうなと思って、それを知りたいんですよ。それでデジタルから始めて、やっていくうちに歴史を学んで、フィルムだった頃の気持ちになってやってみないと見えないものがあるのではないかという期待と、やらずに判断できないということで始めました。
理屈では説明できない感情なんですけど、やっていたらちょっと面白くて、フィルムとデジタルを併用しているんですよね。仕事は広告とかが多いので、フィルムで撮る理由はないんですけど。作品とか雑誌の現場だとフィルムでもOKの場合もあるんで、両方で撮ってやっている感じですね。だからフィルムを使う理由は全く違うと思います。
もどかしさという点は、グサッときました。なぜ思いつかなかったという。とても分かるというか、「おー」ってなりましたね。

普段からそんな風に考えているんですか?

[護]

家族にも今年の初めにお正月に集まった時に、「写ルンですで撮っているんだよね」って言ったら、「なんでそんなコスパ悪いことをやっている?フィルムやるならちゃんとフィルムでやったほうがいい画が撮れるよ」みたいに言われたんですよ。

[黒田]

至極真っ当な意見ですね(笑)。

[護]

そう言われたんですけど(笑)、そこはちょっと小賢しいところがありまして…最近、森川葵*ちゃんとかを写ルンですだけで撮ったオムニバス写真集が売っていたの知っていますか?

[黒田]

展示をやっていたやつですかね?

[護]

そうですかね?9人の女優さんを、9人の写真家の方たちが、写ルンですだけで撮ったオムニバス写真集が出たんですよ。
去年から使い出した時に、絶対に写ルンですがバズってるから、写ルンですだけで撮ったらそれが注目されるだろうという考えからです。自分を売り込んでいかないといけないので、「写ルンですだけで撮っていたら絶対どっかに引っかかるから」って親に言ったんです。「今年、誰かが写ルンですで写真集を出すから」って力説していたんですよ。
そしたらやはり出まして、どんどんやっていかないと先に手をつけた人に持って行かれちゃうぞという計算高いところがあったりします。

[黒田]

わかるというか大事ですね。

[護]

フィルムをやっている女優さんって多いじゃないですか。

[黒田]

そうなんですか?

[護]

モデルさんとかも敏感だから多くて、持っている子が多いんですけど、負けず嫌いなので、それならタレント業をやっている中でも、ある程度、抜きんでたほうが楽しいのではないかと思いまして。

[黒田]

そういう考えで良かったです。

[護]

というのもありますし、やっぱり単純に面白いという理由でもありますね。

人物を撮る大変さ

[護]

人物を撮っている話に戻ると、最初はT2と写ルンですだけで撮っていたので、全く寄れないんですよ。画が決まってしまうんですよね。もう大変で、なんで人物を撮っているんだろうって思うんですけど。

[黒田]

はい、そこはやっぱり考えたらそうなるんだろうとは思いますけど、謎というか気になる部分です。(笑)

[護]

そうなんですけど、風景と一緒で、人ってまったく同じ表情は二度と生まれないと思っています。そういうのがとても面白かったというか、絵画的というか、人物画が昔から好きだったので、メイクしたり、服も自分で用意したりしています。アシスタントがいないから足でレフ板を支えて撮るみたいな感じです。

[黒田]

頑張っていますね。

[護]

赤字も赤字です。趣味ですね。

[黒田]

フィルムだとランニングコストかかりますからね。

[護]

だいたい1000円くらいのフィルムだったとして、自分ではしないのでネットで現像を出して、1本450円とか500円くらいですね。「はー」って思います。

[黒田]

データでスキャンしているだけですか?

[護]

そうですね。

[黒田]

どこに出すんですか?

[護]

今いろんなところに出して試していて、メジャーだとポパイカメラ(自由が丘)とか、あとは…現像フラッシュ店とかですね。
見つけたきっかけは「現像 激安」って調べて一番最初に出てきた現像フラッシュ店というのがありまして「よし、そこに頼もう」と思いまして(笑)。続かなかったら意味がないので。

[黒田]

自分もポパイカメラさんに頼む事が多いです。若干高いですけど。

[護]

人気があるので、仕上がりまでも日にちがかかっちゃうみたいです。

[黒田]

2週間とかかかりますね〜。自分は現像の感じが好きでよく使っていますが(笑)

[護]

2週間は待っていられないので、ちょっと無理かなと思いまして。フラッシュ現像店は月曜に出して金曜の夕方に届くので良いんですよね。もどかしさも、こじれちゃうと駄目なんです。

[黒田]

そこは人の好き嫌いというか、好みがあるところですね。人を撮るとかというのも、さっきの話に共感できるんですけど、写真って芸術であり我々は表現活動としてやっている側面もありますけど、最初は記録から入ってきたものですよね。写実的に絵を書ける人が、ビジョンを思い描いたものを描く以上のことを写真でやるにはどうしたらいいのか、写真は勝てるのか、みたいなことを考えた時期がありました。
昔はラフを描いて写真を撮るというのをやっていたんですけど、それが空しくなってしまった時期がありまして。でも写真を撮りたいんですよね。それはなんでだろうと思った時に、一瞬の顔を盗み撮っているというか、そういうところに惹かれていたんじゃないかなと思ったらとても納得がいきました。特に人を撮っていると、面と向かって顔を見ていたら「この人こういう顔だな」と思うんですけど、写真で撮ったら全く違かったりするじゃないですか。そういうのはとても好きというか面白くて、のめりこんでいったんですよね。人を撮るのは楽しいなというか。

[護]

人は応えてくれるじゃないですか。人間だなって感じますよね。人を撮りたいって思う欲求は人間だけじゃないですか。

[黒田]

確かにそうですね。いや〜、面白いですね。納得感がありますね。
昔はどうだったかわからないですけど、自分がカメラを買ったのも旅行用とか、税金対策のノリで買ったんですよ。今みたいに夢中になることもなくて、ちょうど3年前に初めて展示に出て、それがポートレートに関する展示で、そこからハマったんですよね。当時、英語を勉強する時にカウチサーフィンというので、外国人のバックパッカーとかを家に無料で泊めていた時期がありまして、記念に写真を撮らせてもらっていたんです。それで人を撮り始めて、展示に出して、人を撮る楽しさを知ってから、一気に今に至るみたいな感じです。人を撮るということは魔力があるというか、魅力がありますね。

[護]

不思議ですよね。20歳くらいの時にグラビアを1、2年くらいやっていたんですけど、人を撮っておいてなんですけど、私は写真を撮られるのが本当に苦手で。たぶんグラビアをやっていた時、いろんなカメラマンさんにご迷惑をお掛けしていたと思います。「こいつ、ポージングができないな」って絶対に言われていたと思うんですけど。
でもその中でも相性のいい方、出来上がりを見て自分でも納得する人ってやっぱりいて、その中の一人が*中村昇さんという方でした。

[黒田]

へ〜。

[護]

グラビア撮影が終わった後って、だいたい2時くらいには終わってしまうので、みんなで帰りにどこかでご飯を食べて、「今日はどうだった」とか話をしたりするんですよ。
それである撮影の時に、ちょっと大人になってグラビアを離れてからもう1回撮った時に、「今日はこの本のイメージであさなを撮った」って言われたんです。中村昇さんの撮る写真は映画っぽいというか、写真だけどストーリーがあるような、「この子ってどんな生活しているんだろう?」という護あさなじゃない、二次創作的な撮り方をするんですね。私はそれがとても大好きで、西加奈子さんという小説家の方の「窓の魚」という本があるんですが「今日はこの登場人物たちのイメージであさなを撮った」って言われて出来上がりを見たらとてもきれいに撮って頂いていて、びっくりしました。信じていましたけど本当にびっくりしました。

その撮り方って面白いなって思いまして、それを思い出してからはさらに楽しかったですね。人物を撮るのも、いわゆる写真って一般的に撮っている方は背景がぼけていたりするじゃないですか。そうではなくて、脚本的に最初にプロットを作って、でポーズとか雰囲気とか、雑誌みたいなものを自分で形成してから、頭に残しておいて現場で撮るんですよ。メイクとかも書いておいて、こういうイメージで、あの家に住んでいるみたいな。

[黒田]

それを出来てしまうのが、すごいですよね。

[護]

いえいえ…、あとイワタさん*という写真集プロデュースをされている方もご自身でも趣味で撮られてて。イワタさんもどっちかって言うと人を撮るのが好きな方だったので、ターニングポイントにいた人たちが皆アーティストな考え方だったという事もあり、そこからの影響も大きかったりするのかもしれないですね。

[黒田]

イワタさん!面識はないのですが前回このコラムにご登場いただいた笠井爾示さんの写真集をプロデュースされていたり、周りに共通の知人がけっこういましてよくお話を伺います。そういう方々から影響を受けたというのはとても納得できますね〜。

[護]

本当ですか?大丈夫かな。

[黒田]

こちらが想像していた通りというか、先に答えてくれたので、筋が通っているんだなという印象が強いです。ストーリーを感じさせる写真って、自分の中でもテーマにあるので共感しているというか、好みの話で良し悪しじゃないじゃないですか。
ただ単純に撮るにあたって、ただいわゆるポートレート的な、背景をぼかして被写体を強調とか、その人を一番かわいく写そうとか、人柄を写そうとか、関係性を写そうとかそういうことには興味なくて、写真を見て連想してもらいたいというか、目線を見て、カメラマンがいて、モデルがいるんだなという写真には興味ないです。

[護]

ストーリー性のある写真

[護]

フィルムカメラに関してはストーリー性を求めてしまいますね。

[黒田]

ストーリーを感じさせる写真って、自分の中でもテーマにあるので共感できます。そういうのって好みの話で良し悪しじゃないじゃないですか。ただ単純に撮るにあたって、普通にポートレートで背景をただボケさせるとか、その人を一番かわいく写そうとか、人柄を映そうとか、関係性を写そうとかそういうことには興味なくて、写真を見て背景を連想してもらいたいというか…、目線を見て、カメラマンがいて、モデルがいるんだなという写真には興味ないです。

[護]

わかります。

[黒田]

なんか背景にはストーリーがあるぞという、そういう写真が好きで。一体この状況は何なんだろう?と連想させるような。護さんはそういう写真を撮っているじゃないですか?

[護]

どうですかね。撮れているのかはわからないですけど。

[黒田]

最初に見た時に、そう思ったんですよね。何者なんだって思いました。護さんは今までも活動されてきたと思うんですけど、自分はひきこもりで世の中を知らなくてですね。後からいろいろ調べさせてもらったんですけど、謎しかなかったです。趣味でやっている、フォトグラファー、ポートレートフォトグラファーとかでも、そういう写真を撮る人ってけっこう少ないですよね。日本ってグラビア的な写真が多いと思っていて、被写体と向き合っている?写真がすごく多いように感じるんですよね。
それはそれでいいんですけど、映画的な写真をあんまり見ない印象だなあと感じている中で、護さんの写真はちがったんですよね。「これはプロットというか、設定なり背景とかがあるんだろうな」って感じられる写真でした。そういうのが好きなんですよ。
道端のアンティークな椅子に座っている日中の写真とかあるじゃないですか。あれも「なんなんだろ、これ」みたいに思います。
そういうところにちょっと普通に撮っているというより、ストーリー性が強い写真だなと思いまして、聞きたかったんです。

[護]

私は何かが秀でているわけではないと思っていて、良く言えば万能選手、悪く言えば取り柄が何もないんですね。母は小さい頃から神童って言われていて、小学生で大人のクオリティの絵が描けるくらいの人だったり、父はとても頭が良くて国から「日本の大学に行ってこい」って言われて奨学金とかで来ている人なので優れていますし。一番上の兄は、高校も大学も海外に奨学金で行って、今は外資系でバリバリ稼いで、マンションを買って車を買って子どもが居てというサクセスストーリーを歩んでいる天才なんです。二番目の兄は音楽をやっていて、その兄も中学生くらいから自分でバンドやったりしましたし。母のお母さん、おばあちゃんも社交ダンスの先生をやっていたり、80歳なんですけど今でも大会に出たりしているような。

[黒田]

どんな一家なんですか(笑)。

[護]

みんなすごいです(笑)。お父さんとお母さんは美形なんですよ。私は普通なんですけど、二人は整っているなって思うんです。ですので、いろいろコンプレックスがあって…、引きこもりになったのも唯一、私だけだったんですよ。アニメとかゲームが好きで。でもなんとなく許してくれていて、「幸せに生きればいんじゃない?」みたいな感じでした。

[黒田]

そういうコンプレックスを聞いていると、言葉を選びますけれども。
いい意味で比べる相手が高いところにいるというか、自分と誰かを比べた時に、下を見て自分を安心させる人もいるわけじゃないですか。そういうことをしない強さがあるんじゃないですか?ストイックというか。

[護]

大変なんですよ。出せない時とかあります。自分の基準に達していない宿題とかが出せないんですよ。わかりますか?

[黒田]

わかります(笑)。

[護]

最初は写真もSNSにあげるのがとても怖かったです。別に誰も評価していないし、期待もしていないんですけど、自分がお世話になった人たちのビジョンがあるんですよ。その人たちに並びたいとかではないんですけど、何かやろうと思った時に、自分の何が使えるかを考えた時に、育ってきた環境と、絵コンテが描けること、メイクが好きなこと、これも絵と共通していますが人にメイクができること、ファッションが好きなこと。あとは、何が他の方と違うかって言うと、自分が撮られていたことがあるので、撮られる側の気持ちがわかることですね。「これ苦しいんだよね、ごめんね」という。

[黒田]

それは大きいですよ。

[護]

大きいですね。ですので、基本的に修正はしていないものを載せているんですけど、「不細工に写ったらごめん」みたいな感じです。
でも周りにいる誰よりも、きれいだと思って撮っているんです。あとグラビアって、基本的に全部、用意されているんですね。常にカメラマンと自分が主役という現場なので、映画とか現場みたいに待ったり、誰かを優先させたりすることがなくて、メイクとかも含めて全て用意してくれているんですよ。あとは心一つだけで行くので、その環境ってとても心地よく仕事をさせてもらえる現場だなと思います。ですので、写真を撮る時はなるべく衣装もメイクも全て持って行きます。大変なんですけど、モデルが何も持っていなくて来るほうがやりやすいと思います。

[黒田]

全部ディレクションして、もう終わりまで後は流れに任せてみたいな感じですね。

[護]

「ご飯も全部用意するからね」という感じです。

[黒田]

そういうケアというか、気の利かせ方とかって、写真に影響してきたりもするじゃないですか。そういうところも効いていると思うんですよね。

[護]

友達を撮っていることが多いので、仲良くなり過ぎちゃうと、表情を作ったりするのが恥ずかしくないですか?

[黒田]

頼むのも恥ずかしいし、逆に壁がありますよね。

[護]

そうですよね。でも、すっぴんで来てもらって、「これ着てもらおう」って着替えてもらって、「メイク始めるね」って言ってメイクしていくと、こっちが本気で撮りたいんだというのが伝わるので、相手もいい意味で仕事として緊張感をもって向き合ってくれるんですよね。ですけど、そこには他の人よりもちょっとした親しさがあって、1歩踏み込めることがあるので、それが面白いですね。

[黒田]

距離感をうまくコントロールしていますね。

[護]

やっぱり写真を撮られ慣れていない人もいるので、その場合はとにかく最初に遊びます。普通に遊んで、撮って、うまくない写真を量産して、現像して、癖を調べ、利き顔を調べ、という感じです。

[黒田]

つまり二回、撮るということですか?

[護]

一回は遊びで撮るみたいな感じです。

[黒田]

熱量がすごいですね。やり方に性格が出てる(笑)

[護]

できないくせに、完璧主義者なんです(笑)。

[黒田]

性格が似ているというか、共感できる部分が大きいので、言っていることはわかりますね。ただ自分は全く異なるアプローチを撮っているんですけど。

写真のスタイル

[護]

みんな撮影の時ってどんな感じなんですか?撮影しているところを見る機会ないじゃないですか。

[黒田]

自分のは参考にならないと思いますけど、仕事の撮影で編集の人に言われたのが、「黒田さんの撮影は能みたい」って内容で(笑)
本当に理解不能だったんですけど。スタスタスタと目の前に行ってパシャッて盗撮のように撮って、「はいはい」って言いながら去って行く。そしてモデルに全く興味がなさそうって(笑)
だから全く参考にならなければ、ちょっと普通じゃないみたいです。

家柄は普通なんですけど、厳しいところは厳しくって、両親は仕事をそれなりに頑張っている人たちなんですけど、自分はそこまで頑張らなかったんですよ。
ただ、完璧主義じゃないですけど、やるならとことんやるみたいなのは昔から性格としてあって、なので元々は文系の人間だったんですけど、仕事でやっていたエンジニアリングというのは完全に理系の世界なんですよね。それで合理的に、論理的に、かつかなり大きいサービスだったりするので、絶対にミスがないようにというのをやっていて、その一方で右脳という写真的なところをやったりしていましたし。全てにおいて凡人だと思っているんで、やるからには全力でやらないと、自分が納得するものにはならないんですよね。けっこう自分の身の丈に合わないものを望んで、常にやっているので、そこに対する集中力とか熱量の入れ方みたいなものは異常なものがあるみたいです。

[護]

そうなんですね。

[黒田]

多分護さんも完璧主義というか、やるならとことんやっているわけじゃないですか?そういう気持ちはとてもわかります。
ただ、アプローチの面で言うと、SNSとかも、撮ったら恥ずかしいというか、正にさっき言っていたような、誰に求められているわけでもないし、なぜ出すんだみたいなことですよね。ただ、せっかく撮ったし、言い方は悪いですけど、自分の場合は上手くもないしなんでもない写真ですけど、「今の自分はこのレベルだ」という自戒の意味も込めて、とりあえず出しておこうみたいなところをやって、それで恥ずかしかったり、後で見たら「この写真はな…」とか思いながら出しているんですけど、それによってどんどん前に進むことを目的として、SNSを活用してるという経緯はありますね。
そういう出し方とかマインドの部分は違いますけど、同じようなことを今までやって、写真で食べていくという感じになったので、少なくとも自分なんかより素質というか、環境みたいなものは揃っていると思うので、このままその熱量で続けていったらとんでもないところにいきそうな気がします。

[護]

いやいや、熱量が続くかですよ。
周りに恵まれているというか、周りに「撮っているんだったら本にしたりお金を稼ぐ方法を考えたほうがいい」って言われることがプレッシャーになってくるんですよ。
私は売れるとかではなくて趣味で楽しく撮っているものなんですけど、人はお金儲けを考えるじゃないですか。例えば、とてもきれいな子がいて「モデルやればいいのに」みたいに言うじゃないですか。そういう軽い気持ちなんですよ。でも本人にとっては、「う…」ってなってしまうんですよね。それで食べている人がいる以上は、私のほうが邪道だと思ってしまうこともあって、勝手に自分で自分にプレッシャーをかけていますね。誰もより良くなれなんて思っていないんですけど。

[黒田]

そうですね(笑) 自分も色んな先輩に写真やめるんじゃないかって心配されてます。言われているようにプレッシャーは自分のために大切ですよね。

[護]

そうですね。下手になっていたら、悔しいじゃないですか。

[黒田]

そうですね。昨日よりもマシになろうという365日ですね。しかも自分の場合、元々は全く違う仕事をやっていて、途中からプロカメラマンになったことを負い目に感じていて。ずっと何十年も写真をやってきた人たちもいるわけじゃないですか。その人たちに負けないように倍は努力しないといけないと思っていますし。
それで例えばいろんな仕事を頂いて、人に教えたりとか、そういう仕事もあるんですけど、やっていいのかなと思う時もありますし、でもそこは割り切るというか、「カメラマン」じゃなくて、自分の名前で生きていくしかないというか。そういう意味だと、世の中的にも個人を評価する時代になっているというか、そういう意味も考えると、護さんも写真を撮っているという点と、女優・タレントとしてやっているというところをうまくミックスできて、全てを活用できる道みたいなものがあるんじゃないかなという気はしますけどね。

次にやりたいこと

[黒田]

次はこれがやりたいなとかって展望でもビジョンでも、そういったものはありますか?

[護]

そうですね、次はミュージックビデオを撮りたいなぁと思っています。

[黒田]

動画ですか?

[護]

動画も撮ろうと思っています。いろんなことに興味があるんですよね。みんなもいろいろやっていますし。自分が撮ったらどうなるかなって思います。

[黒田]

それは思いますね。けっこう映画が好きなんで、ミュージックビデオを撮りたいなって思う部分もありますし、表現したいというのもありますけど、年のせいなのか新しいこと覚えるのが段々と億劫になってきたというか(笑)。

[護]

同じです(笑)。なんかもういっぱい言い訳して、「私は編集しないで載せているんです」とか言っていますけど、単純にパソコンが苦手なだけでめんどくさいんですよね。

[黒田]

フィルムはね、そのままでいきますからね。

[護]

自分の好みとか色味を見つけてしまえば、はめていくだけなので楽かもしれないですけど、それまでがもう大変です。

[黒田]

自分はほとんどそこの学習に費やしている気がしますね。自分の好きな色とか雰囲気があって、それを出すためにPhotoshopとかLightroomとかいろいろ練習というか勉強とかしてやっています。ただ人の造形を変えたりはしないですね。顔を小さくしたり目を大きくしたりというのは一切しないです。色とかはフィルムではやらないですけど、デジタルなんかは変えたりします。そこで自己主張している部分はあると思います。

[護]

そうだと思います。「この写真、誰々さんっぽいな、やっぱりそうだ」みたいな。

[黒田]

フィルムですけど、護さんっぽい写真もありますね。
複数人を撮っているのとか、映画とかストーリーを連想させられるんですよね。毎回プロットを作っているんですか?

[護]

初めての時は作っていなかったんですけど、だいたいどういう服を着せたいかとか、雑誌のなんとか特集とかってあるじゃないですか?まずイラストを最初に書いて、それに似た服を下北沢とかに探しに行くんですよ。古着で、自分も着られて、衣装になりそうなものを買って、揃えて、って感じですかね。
普通に文字だけ先に起こします。ぶっ飛んでいる例だと、魔法少女ミノリちゃんという女の子がいたとして、魔法のステッキはなんだろうって考えて、引きこもりでゲームをやるからコントローラーをステッキにしようとかですね。魔法少女になりたい、コントローラーを持っている、でも何者でもない、そういうのをひたすらコンセプトボードみたいに文字だけ起こす時もあれば、絵から入る時もあります。後はひたすらそれに合う音楽を探して、自分の中でちょっとしたミュージックビデオというか、ショートストーリーを撮っているみたいな感じです。

[黒田]

だからですかね。シーケンスがありますよね。

[護]

そうですよね。どの順番で出そうかとか、並べ替えもとても悩みます。

[黒田]

そこは難しいところですね。そういう意味でもそれを理想的に出せるのが写真集だったりWebサイトだったりとかですよね。そういう作品がWebなり紙で見られる何かがあると、プロモーション的にも合理的でいいと思います。映画が好きなのかなと思ったんですよね。一個のアイディアから、どんどん連想されるものを組み合わせていって、矢継ぎ早にいろいろなことがつながっていきますよね。

[護]

たぶん生きてきた27年間の中で、自分が好きなものに当てはめて撮っているんだと思います。そうすると、いつかは枯渇してしまうんですけど、でもその代わりに新しいものはどんどん生まれてくるので、なるべく外に出ようと思うんですけど…家が大好きで(笑)。

[黒田]

わかります。でもそこは逆ですね。自分は元々、自分にあったもので写真を撮っていたら、狂った感じにしかならなくて、あんまり良くないなと思いまして、他からインスピレーションを得ることが増えましたね。昔に撮った写真とか今になって見るとひどいですね(笑)。
友達で青く塗れる人を探して、青く塗って新宿を歩いていたりとか(笑)。

[護]

何を思ったんですかね(笑)。

[黒田]

本当に意味がわからないです(笑)。
その時は面白いなと思ってしまったんですね。「新宿でブルーマンを発見した」とかツイートされていて。物議を醸し出しそうじゃないですか。自分でも意味がわからないですね。

[護]

面白いですけどね。
でも初めて見て、これをプロフィールのページに載せていたら、「どういう方だろ」って思うかもしれないです(笑)。

[黒田]

なりますよね(笑)。ですので、封印しているんです。

[護]

逆に出してほしいですね。今、自分が好きなものだけ撮ったらどうなるか。

[黒田]

そのターンはほしいですね。当時は別にやりたいことやっただけですからね。人生は長いというか、割と寿命は短いと思うんですけど、そのうち本当にやりたいことだけやりたいなとは思っています。
護さんは撮っている写真とか、他の普通に写真を撮り始めた人と比べて、筋が通っているというか、コンセプトとかワークフローみたいなところがしっかりしていると思うので、紙にまとめるとかそういうのがあっても割とすんなりいきそうな気がするんですけど、あんまり興味ないですか?

[護]

したいなとはもちろん思いますけれども、せっかくフィルムの写真ですし、それこそ本にしたほうがいいと思うんですが…、自分でやったらどれを削ればいいんだろうとかまとまらなくなりそうです。
でもやっぱり調べたりとかはしますよ。去年から約1年間、撮ったミキちゃんという女の子は、「せっかくだからまとめたいね」とは言っていたんですが、「自費出版でいくらかかるのかな?」なんて言っています。

[黒田]

展示とかどうですか?

[護]

母が毎年12月に個展をやっているので、「本を出したいんだったらそこで売っていいよ」とは言ってくれていて。作るにしても売る場所はネットでもどこでもあるなとは思っているんですけど。

[黒田]

回収できると思いますけどね。

[護]

わかんないんですよね。お金を稼ぐことは脳みそに入っていないんです。

[黒田]

確かに自分もやったことないんで、無責任に言っていますけど。周りの話を聞く限り、カメラマンは自費出版して、展示やって、販売して…みたいな人も多いですよね。自分はそこに興味がないしお金も別に積んでほしいとは思っていないのですが。
興味はあるんですね?

[護]

興味はもちろんあります。単純に自分が欲しいです。本になったものを見てみたいです。

[黒田]

記録用にですかね。

[護]

1年毎の成長記録じゃないけど、あったら面白いなと思います。

[黒田]

撮った写真は、デジタルでスキャンしたデータを持っているんですか?プリントはしないんですか?

[護]

最近はプリントもしてもらって送ってもらいますけど、最初は高いと思って、データだけでいいやと思っていました。

[黒田]

なんであんなに高いんですかね(笑)。初めて現像を頼んだ時、何も知らずに全部2Lで頼んだら2万円とか言われました。見積もりがないじゃないですか。いきなり2万で「え?」とか思いました。そこからしばらくフィルムはやらなかったですね(笑)。

[護]

だからもうデータでもらって、いいと思った写真だけ大きく引き伸ばしたりとかしたほうがいいなと思っています。単純にブックは作りたいですね。

[黒田]

見たいですね〜。

[護]

近いうちに作れればいいなと思います。

これからの展望

[黒田]

ぼんやりとでも、目指すべき場所があるってわけじゃないんですか?

[護]

多分人には言わないけど、自分でも自覚していない野心は絶対あると思うんですよ。もちろん絵を書いていた時も、女優をやっている時も写真を撮る時も、誰かに負けたいとかいう気持ちは一切なくて。
でも良し悪しは本当に好みだと思うので、いい写真の最低ラインがあったうえでの好みだとは思いますので、まずその最低ラインを越えられるようにということで1年間の目標にしていました。自分なりに1年毎の目標は立てていて、来年は写真でコラムを書けるようになるとか、女の子で連載を作ろうとかですね。それは別にSNSでもinstagramでもTwitterでも、それこそ自分でブログとかなんでも立ち上げてできちゃうことなので。

[黒田]

今はもう媒体はなんでもありますね。

[護]

来年の目標は写真でお金をもらうことですかね。買った物の元は取ろうと思います。それが単純にやりたいことです。

[黒田]

いいですね。程よく現実的で非常にいいと思います。ロマンでは食べていけませんからね。

[護]

そうなんですよね。ロマンでは食べていけないので。十何万で買った物は、それ以上を回収しないと意味がないので、高い趣味をやるなら回収して終わろうかなと思っています。自分のケツは自分で拭くみたいなことですよね。

[黒田]

とても共感できますね。自分も今はプロカメラマンでやっていますけど、元々、本業をやりつつ写真の仕事がポツポツくるようになった頃は、カメラに費やすお金はカメラで稼いだお金にしようと思って、財布を分けていましたね。

[護]

正解ですね。私もそうしようと思います。

[黒田]

毎年そういった目標を作っていて、ちょうど今年の目標が写真で、来年の目標がその写真でマネタイズするということですね。

[護]

まだ本当に始めて1年も経ってないくらいなので。

[黒田]

驚異的ですけどね。

[護]

1年も経っていないので、1年はまず、「この子は写真がとても好き」ってことを認知してもらうことだと思っていました。Amazon Primeとかに近いんですけど、ずっと昔からありましたけど、主流になったのは最近という感じで。下火があるので、まずは知ってもらうことですよね。お金はこっちが払ってでもやってもらうということが大事なので、まず1年間はお金に糸目をつけない。ただし、ちゃんと計算して1年でやり切れるように決めて。嬉しいことに1年経たないくらいで声をかけて頂きました。ということは、写真をやっているという認識ができたかなと思います。「この子は写真を撮っているんだ」ということですよね。

[黒田]

そうですね。衝撃的でしたからね。

[護]

何がだろう。

[黒田]

だぶん引く手数多だと思います。とても現実的なところもありますね。

[護]

急に現実になってしまうというか。

[黒田]

そのバランスって、極端すぎてもいけないし、思いはあるけど現実もあるよねという、とても絶妙なバランスがあるわけじゃないですか。それが大人ですよね。

[護]

大人です。カメラやっているから食べられなくなってしまったというのが一番困りますので。生活の範囲でやりつつも、お金は使う。制作には労力やお金がかかっていると認識して、初めて人は応援してくれると思っています。このカメラも買うと昔よりも高いので、「そんな高いものを買ってまでやっているんだったら応援しよう」とか(笑)

未熟だけど頑張っている人を応援したいということで、それが1番わかりやすいものが、高い物を買うとか、写ルンですを箱買いするとかですよね。

[黒田]

想像以上に合理的で、現実を見ていますね。

[護]

とはいえ、別にそれが戻って来なくても後悔しないという気持ちは持っています。
撮った作品自体は残っていくので、それがここにかけたお金の成果だったら、それはそれで仕方ないというか納得できます。

[黒田]

それが今後の自分の資産としていい感じに活用できたら理想ですよね。未だに3年前に撮った写真を載せたいとかってくることもありますし、たぶん撮ったら一生、残りますし。

[護]

だから恥ずかしいものは出せないということですよね。

[黒田]

出し方にもよりますけどね。SNSには実験的に出したりもしますが。サイトを作って、そのサイトにまとめて載せるみたいな見せ方もしていました。だからフォトグラファーとしてのサイトを作るとか、面白い気はしますね。
というか、作ってほしいレベルというか。護さんを調べた時に「ここだ」という場所がないじゃないですか。SNSはフローなんで流れていってしまいますし。Instagramはギャラリーとかポートフォリオとして使う人も多いみたいですけど、自分はあんまりなので。

[護]

ちょっと弱いですよね。

[黒田]

ちょっと違うかなと思っています。スタティックにここに行けばこの人の写真と情報がわかるというのがトップダウンにわかるものがあるといいと思いますので、ぜひ来年の目標に加えて頂きたいです。

[護]

わかりました。そうします。

センスを磨く方法

[黒田]

ちょっと振り返ってもいいですか?女優でありながら撮影するのはどういう気持ちなのかというのを一つ聞きたかったんですけど、そもそもあんまりそういう問題ではなかったということですよね。

[護]

そうですね。

[黒田]

創作寄りに撮っていて、あまり記録として撮っていないんですね。なぜ写真がうまいかを聞きたかったんですけど。

[護]

うまくないです。

[黒田]

眼が良いんでしょうね。持論なんですけど、写真は眼が全てだと思っています。
どこまでいっても眼が良いか悪いかというところにしかいかないんじゃないかなというか。ドキュメンタリーとかは行動力が良さに結び付くということはあるんですけど、我々が人を撮るという時には、どう撮るかとか、どの瞬間で押さえるかとか、それをどう落ち着かせるか、編集するか。
結局、全ては審美眼というか、その人の眼が成長していかないといけないんですよね。護さんは良いものを良いって思うハードルが、常人よりも高いんじゃないかなと思います。
神童と呼ばれたお母さんの絵を見続けていたら、相当ハードルが上がっているだろうなと、そんな感じはしましたね。

[護]

なるほど(笑)。
本当にただひたすら、篠山紀信*さんとか、何百回も同じ写真集で構図だけ焼き付けてとかもありますよ。
けっこう写真集が好きで、見ていますね。

[黒田]

何が好きなんですか?

[護]

最近だと、篠山紀信さんが撮られた橋本マナミさんがいいなと思いました。
あれはエロいと思いながら見ていました。

[黒田]

あれはエロいですね。笠井爾示*さんのは見ました?

[護]

見ていないです。

[黒田]

笠井爾示さんも橋本さんを撮っていて、たぶん護さんは好きなんじゃないかなと思います。自宅で撮っているんですけど、普通に自宅で、生活感を含めて撮っていたりして、いい意味でドキュメンタリーな感じが個人的に好きでしたね。篠山紀信さんのも良かったですね。いろいろルーツが分かって納得しました。

[護]

私も自分で話していて、「そういうことか」って思います。

[黒田]

話すことで自分の中で整理できるというのはありますね。ストーリーを感じるのが、まさかプロットまで作っているとは思いませんでした。

[護]

本当にたいしたことないんですよ。いわゆるポエムみたいなものです。

[黒田]

それをガチガチにすると、逆に駄目だと思わないですか?ぼんやりと、キャラクターだけペルソナというか、それだけあれば後はモデルとの調和みたいなところが大事だと思います。

[護]

基本的にはやっぱり演じてもらうということに近いので、後はもうフィーリングとしか言えないですよね。

[黒田]

自分が都合のいいように見えているのか、最近ウォン・カーウァイ監督にはまっているんですけど、映画的というかあの人のように見えます。今、SNSにあげてらっしゃる写真とか、そういう雰囲気も感じますし良いなあと思いながら見ています。
今後も楽しみにしています。ありがとうございました。

[護]

ありがとうございました。

プロフィール

護あさな

1990年5月4日生まれ。護 あさな(まもる あさな)。日本のグラビアアイドル、女優。東京都出身。エフ・エム・ジー所属。【出演歴】 監獄学園 副会長 白木芽衣子役/実ミリ/牙狼-魔界ノ花-/斬劇 戦国BASARA 雑賀孫市役/BRAVE10 アナスタシア役

twitter:https://twitter.com/mamoruasana
Instagram:https://www.instagram.com/mamoruasana0504/

出演情報

11/18(土)公開 全国ロードショー「全員死刑」

間宮祥太朗主演。『冷たい熱帯魚』製作者×超狂烈新人監督。2017年秋――日本映画史に新たな衝撃を与える狂悪なエンターテインメント作品が誕生する。R15+

11/18(土)〜
ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほか全国ロードショー
主演:間宮祥太朗
監督:小林勇貴
脚本:継田淳 小林勇貴
プロデューサー:千葉善紀 西村喜廣

映画公式サイト

映画「全員死刑」公式サイト

クレジット

制作​ 出張写真撮影・デザイン制作 ヒーコ http://xico.photo/
カバー写真​ 黒田明臣
ヘアメイク​ 小夏 – CAMERART
出演​ 護あさな
Biz Life Style Magazine https://www.biz-s.jp/tokyo-kanagawa/topics/topics_cat/artsculture/

参考

登場順

*川島小鳥(写真家。著書に写真集『BABY BABY』、『未来ちゃん』など)
*中村昇(「週刊プレイボーイ」「明星」など集英社の雑誌で多くのグラビアを撮影している写真家)
*森川葵(「写ルンです」を使って撮影された写真を収めた写真集が刊行された)
*イワタ(300冊以上の写真集プロデュースしている。ARTイワタの責任者)
*沢渡 朔(『少女アリス』等の写真集を出版している写真家)
*篠山紀信(ほぼ30年にわたって写真表現の第一線を走りつづける写真界の巨匠。写真家)
*笠井爾示(主にファッション誌、音楽誌などのカルチャー系雑誌、グラビアなどで活躍している写真家)

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