前回140人を動員したフォトコーディネートセミナーがより深く、そしてよりハードボイルドになって帰ってきた! 鈴木悠介氏(@monocolors)が提案する「フォトコーディネート」論を皆様にお伝えする べくセミナー会場に潜入させていただきました!!
はじめに
フォトコーディネートとは?
まず初めに「フォトコーディネート」とは?ということで簡単にご説明いただきました。
- 写真をコーディネートするという発想
- 写真を構成する要素を分解する
- 「光・色・被写体・絞り・衣装・ロケーション・カメラ・レタッチ」の8項目で構成される
もうすでにセミナーに参加したことあるよ!という方や、ヒーコの記事を読まれている方にはもう馴染みのあるワードではないでしょうか。本セミナーでは作品をこの8つの要素に分解し、自分の作品イメージに近づけていくためにはその要素一つ一つをどのようにしていけば良いのかを紐解いていきます!
モノクロの世界に色を与えるフォトコーディネートセミナーレポート!
セミナー始動!
アマナイメージズのオフィスにある「amana square Session ホール」は満員御礼!フォトコーディネート論を展開する鈴木氏の人気が伺えます!
今回のセミナーテーマ
今回のフォトコーディネートセミナーでは大きく分けて2つテーマがあり
『光と色』『ワークフロー』
特にワークフローは多くの写真セミナーではその一部を説明して、そこから学ぶということが多いそうなのですが、どういう考え方で撮っているのかという声に答えるためには”ワークフロー全ての説明”が必要だと考えて今回の形になったとのこと!全部です、10割、100%、余すところなく…。いやいや、贅沢すぎません…!?
さらに、セミナー参加者に配られた資料が、セミナー前日に徹夜でブラッシュアップされ、より分かりやすくなって再配布されるとのこと!細部の細部にまで力を入れていることが伺えます…本当に贅沢!
めちゃくちゃ便利、フォトコーディネート体系図!
その資料の一つとして配られたのが『フォトコーディネート体系図』と称されたものでかわいく撮りたいならこの要素はこうした方が良くなる!とか。かっこよく撮るならこの要素は…という情報が一つの図にオシャレにまとまってるもので、これがとても便利!
イメージを形にしていく中で案外忘れがちになってしまう部分を可視化する事で、フォトコーディネートがしやすくなりそうです!PCのデスクトップ画面にしてもいいし、印刷して壁に貼っておくなど、目に見える場所に置いておくのもありかも!クリアファイルとかグッズ展開しないかな…
本題スタート!
さて、いよいよセミナーの本題に踏み込んでいくわけですが、フォトコーディネートされた作品たちをどのように撮ったのかをイメージ構想の段階からのワークフローを紐解いていくということで、説明を始める前に大事なことを仰っていました。
フォトコーディネートの観点から考えると、「最も魅力的だと思った要素に対してフォーカスする」ということがとても大事で、撮りたいイメージが出来上がったら完成までの近道を探しがちですが、写真を構成する要素の一つ一つを紐解いていくと本質的なイメージを損ねることなく目的に到達することに繋がります。とのこと!!
完成までの要素を一つ一つ選んで吟味していく工程がプログラミングにも少し似ているような気もします。
撮りたい写真はあるけれど、完成にはまだまだ距離がある…と考えてしまうよりも、要素を一つ一つ紐解いていき、少しずつなら完成に近づけるかもしれない…!そういった考え方もフォトコーディネートの副産物だそうです。もう、なんでもできちゃうの?
あなたのイメージはどこから?
曰くそれは「情報量の蓄積」
常に写真を見ている現代人。人が目で見たものというのは無意識に自分の中に入ってきているようで、その情報量が蓄積してくることによってこういう作品が撮りたいなぁと思ったり、ふと撮ったものが過去に見たものに近づいていたりするとのこと。確かに言われてみれば、そうかもしれない…!
イメージの輪郭を可視化?
しかし、思い描いたイメージは曖昧で頼りなく、表現したいイメージをより明瞭にする必要があるそうで。そのためにはイメージの輪郭を可視化することが必要とのこと!
とにかく目に見える形や取り出せる形に留めておくとGOOD!
そういえば作曲家の方も、お風呂で良いメロディが浮かんだら鼻歌で録音するって聞いたことがあります!
見返すという行為自体がとても大切だそうなので、これから意識してイメージの種となるものを集めていきたいですね。改めて考えてみると、Instagram等で見つけた写真って案外見返す機会が少ないということに気がつきます…。
光と影をどう見るか
フォトコーディネートをする上で最も重要な要素とは何か。それは「光と影」であると鈴木氏は口にし、そこに注目していきました
光と影だけにフォーカスする
光と影に注目した際に必要なことは「モノクロームの視点を持つこと」
光と影をしっかり見て撮った写真はモノクロにしても良い写真になる。迷った時には一度色という要素を置いておいて光と影をしっかり見るという視点もとても大事だそう。なるほど!カメラの設定をモノクロにして撮ってみてもいいかもしれませんね!もはや鈴木氏ともなると瞳に景色をモノクロにする機能がついていそうです。
影をコーディネートする
例えば スタイリッシュなイメージにはどんな影を選ぶのか、優しさが欲しければどんな影を選ぶのか鈴木氏は作品のイメージに合わせてまず最初に”影”をコーディネートするとから始めるそうです。ここでしっかり影を押さえておくことで写真の出来上がりにも大きな影響を与えるので特に重要視しているとのこと。
ちなみに、今回のテーマ写真では、ブラインドを使って縞々の影を演出されていました。
撮影に使ったブラインドは自宅にあったものを取り外して電車で運んだそうです(笑
作品のためには手間を惜しまない姿勢が最高にCOOL!
撮影の仮説を立てよう!!!
では実際の撮影の際にどのような条件下であればイメージした光と影を再現できるのか、撮影の前に仮説を立てるそうです。
例えば…
- 安定した光の量が欲しい撮影
- 撮影時間は2〜3時間くらいかな…
- 影をしっかりコーディネートしたい
- 天気や時間によってムラがあるかも…
A=ライティングでコーディネートしよう!
という答えを導き出すことができ、フォトコーディネートをすることで事前準備の段階で撮影に発生するリスクを軽減することもできます!
この選択をした時点で光と影はコーディネートされたも同然!続いてその光と影に”色”を与えていきます!
モノクロの世界に色を与える
イメージを光と影に絞ることで、ついに色にフォーカスできる環境が整った。
光と影は分離ができても、色に関してはたくさんの要素が持っている情報なので、その要素を一つ一つ整理していくのは難しいとのこと。
例えば、機材や小物、場所やキャスティング、肌の色など。
色を決めるだけで… どういう機材でどういう場所でどういう衣装か、小物かなど
こういった要素を一つ一つ整理し、構築していく事をフォトコーディネートの本質とし、それに合わせた準備が必要だと仰っていました。
発想のヒント
続いて、作品にワンポイントの変調を与えるために鈴木氏は様々なアイテムを撮影に持ち込むそうなのですが、時には無邪気に遊んでいた幼い頃の記憶から「もしかしてあのアイテム使えるんじゃ?」とヒントを得たりもするそうです。
その結果生まれた作品は元のイメージを壊すことなく、しっかりと意味のあるワンポイントが追加され、なんとも言い難い幻想的な雰囲気をまとっていました…
幼少期の記憶から問題の解決にまで結びつけるなんて…いやはや、脱帽です…。
衣装と小物の面積比率
色の要素を持つ物は数多ありますが、その中でも特に衣装は写真の中でも多くの面積比率を占めているため世界観を作りやすく、かつメッセージ性が強いため、鈴木氏は衣装にもかなりのこだわりを持っているようです。
写真を意図的にコーディネートするためには衣装を選ぶことも重要な要素ということを理解した上でコーディネートをしているとのこと。
たしかに、撮影の時にはやんわりとした衣装イメージしかモデルさんに伝えなかったり、当日来てきてもらった服で撮影!という方も多いのではないでしょうか。そこを詰めるだけで、作品のクオリティがだいぶ変わるでしょうね!
コーディネーター鈴木氏のオススメ衣装!
なるべくシンプルでデザイン性のあるものが吉。モデルさんにフォーカスするため、衣装には気を使いましょう!撮影前のやり取りの中で決めていくのもあり!
さすがはアパレル出身ということもあり、衣装へのこだわりが明確!ご自身でも衣装を買ったりしているとのこと。今はネット通販なども充実していますし、女性物の衣装を手に入れることも簡単ですね!
小物のチョイスについて
今回の撮影では、小物を目立たせるために 色相環から目当ての色の小物をチョイス!感覚的にではなく目立たせる色をロジカルに選択することもできるんですね!
ただ、小物の素材で雰囲気も変わってしまうので、色だけではなく素材選びもとても大切と仰っていました。
例えばデニム生地であったりサテン生地であったりと、布一つ例にあげてもその質感で世界観は大きく変わってしまうそうです。
ちなみに。素材が違ったらダメ!と言うことではなく
ご自身の撮りたいイメージに近づけるための衣装と小物の組み合わせがある!ということなので、みなさんもご自身の世界観により近づけるために小物をチョイスしてみてはいかがでしょうか!!
モデルさんもコーディネート
光と影、色が決まり次は被写体です。今回は同じ衣装を着た二人の女性をモデルにしたものの、顔のタイプは同じにはしたくな かったそうで、肌の色や髪の毛の色、前髪の長さや分け方など同じであるべきものとそうでないものを明確に分けることが大切だと仰っていました。フォトコーディネートにより自分のイメージが明確になっていれば複雑な条件であってもゴールであるイメージに一つ一つ近づいていくだけなので、道筋が見えやすくなりそうです!
撮影準備の大切さがよくわかる
ついに撮影開始!! ここまでおよそ2時間!!セミナーの約3分の2を費やしています!ここまで撮影の前段階にフォーカスしたセミナーはなかなか無いのでは?
モデルさんへの指示もコーディネート?
モデルさんへの具体的な指示については、撮影の進行具合によって変化をつけ、ライティングにより動ける範囲を指定してその範囲内で流動的に動いてもらうスタイルが多いそうです。指示の内容を見ているとおそらくこれは、鈴木氏の中にある世界観そのものを伝えているんだろうなと感じます。
世界観を共有しつつ被写体の表現力にも頼りながら作品を作ることで、偶発的ではない、偶然の中の必然性を捉えることに注力できるそうです!
直感という名の論理的思考
撮影が終わり、家でその日の写真をセレクトしている時にこんな経験はないでしょうか。「テストカットで撮った1枚目が好き」「決めていたイメージとは少し違うけど好き」。鈴木氏も、フォトコーディネートにより作品の要素を分解し構築してはきたけれど、直感 で”良い”と思ったカットに関してはそちらを優先して選んでいるようで、そこがとても印象的でした。曰く「現場での直感は情報量の蓄積から生まれた”好き”だから、そこには今まで自分の中に吸収されたロジカルなものが含まれている」とのこと。
なるほど…と、この言葉がストンと自分の中に落ちていくのを感じました。今後、写真をセレクトする時は縛られずに自分の好きなものを選ぶことができそうです!!
光と影と色で考えるレタッチ
鈴木氏はレタッチも問題点を明確にするために「光と影」そして「色」に分けて実施をしているそうです。レタッチをして完成イメージに近づける場合も、撮影の段階でイメージになるべく近づけることで完成度に大きく影響が出ると仰っていました。これ、すごく大事です…!!
セミナーのまとめ
- モノクロームの視点を持ち、光と影の造形美を意味で捉える
- イメージをメモすることで可視化をしよう!
- まずは光と影を決めてから色にフォーカス
- 衣装や小物の合わせ方は無限大
要所要所で参加者への気配りも忘れない、終始温かい雰囲気に包まれていた素敵なセミナーでした!
もし広告に「フォトコーディネート」された写真が使われたら
本セミナーの特別編として、鈴木氏の作品をもしもストックフォトとして登録した場合、どういった広告になるのかを、アマナイメージズの松野さんが作ってくださったのですが、それがもうめちゃくちゃにオシャレでした!柔軟剤の広告や、電車の中吊り、はたまた文庫本の表紙など、様々な形での”もしも”を見せていただきましたが本当にどれも素敵で、夢がありました!
鈴木氏の作品を広告にアレンジした結果

やはり、素敵な広告に自分の写真が使われて、多くの人の目に触れる形で世の中に広がっていくのは写真家としての本望ですよね… 今回のセミナーでは、フォトコーディネートを通じて自分の中のイメージを形にしていくことだけではなく、目の前の問題を一つ一つ解決していく大切さも教えてもらったので、自分にはまだまだ…と思わずにまずは挑戦してみよう!という気持ちにさせてもらえました!