めくるめくデジタル中判の世界へようこそ。FUJIFILM GFX 50S ポートレート実写レビュー!

めくるめくデジタル中判の世界へようこそ。FUJIFILM GFX 50S

FUJIFILMが満を持して発売した中判ミラーレスデジタルカメラ、GFX 50S。
GFX 50Sを購入して一ヶ月以上経とうとしているので、今回はその魅力について語ってみたいと思う。

最大級のセンサーを備えたGFX 50S

まずは「中判ってなに?」という方のために簡単に説明しておこう。
デジタルカメラに使われているイメージセンサーのサイズは大きく分けると4つに分類される。マイクロフォーサーズ、APS-C(エーピーエスシー)、フルサイズ、中判(ちゅうばん)、の4つだ。
カタカナ・アルファベット・漢字と、表記が統一されていないので慣れていない方には馴染みにくいと思うが、並、大盛り、特盛り、メガ盛り、といった具合に、左から順にセンサーサイズは大きくなっていく。

ハンドグリップなどが装着された状態のカメラは、ボディサイズを比較する際誤解のないようそれぞれその旨注意書きを添えている。

広いダイナミックレンジ

センサーサイズが大きいとどんな恩恵があるのだろう。

まず最初に挙げられるのが、ダイナミックレンジの広さだ。おおざっぱに言うと、その場にある「明るい部分から暗い部分の範囲」をより広く、繊細に捉えることができる。
白飛びや黒つぶれがしにくいだけでなく、豊かな階調故にグラデーションも滑らかに表現することができる。特にGFX 50Sは低ISOからのダイナミックレンジに優れている。
自分は夕景や夜景、ストロボなど輝度差(明るいところと暗いところの差)が激しいシーンでの作品撮影が多いため、この性能には非常に助けられている。

GFX 50S + GF63mmF2.8 R WR

ストロボで照らされたモデル、桜、そして、沈みゆく焼けた空、それぞれを破綻させることなく写すことができた。

GFX 50S + GF63mmF2.8 R WR

なめらかなグラデーション描写も魅力の一つだ。

緻密な解像感

次に解像感だ。中判カメラではフルサイズよりもさらに大きなイメージセンサーで捉えるため、より緻密で立体的な描写が可能になる。
特にGFX 50Sはセンサーピッチにゆとりを持たせることで色の分離と受光面積を両立させているため、シャープで立体的な画を手に入れることが可能だ。

GFX 50S + GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

卓越した高感度性能

また、センサーサイズが大きいため被写界深度が浅く(ボケやすく)、受光面積が広いので高感度特性も有利である。

GFX 50S + GF32-64mmF4 R LM WR

ISO6400で撮影した写真。Jpeg撮って出し。

GFX 50S + GF32-64mmF4 R LM WR

上の写真の等倍切り抜き。
暗部はノイジーだが自然なノイズ感のためノイズであることをあまり感じさせない。光のあるところは解像感が高い。

GFX 50S + GF32-64mmF4 R LM WR

こちらもISO6400で撮影した写真。Jpeg撮って出し。

GFX 50S + GF32-64mmF4 R LM WR

同様に等倍切り抜き。
さすがにノイズ処理のためディティールが若干溶けている部分もあるが、まつげやうぶ毛などISO6400とは思えないほどの描写だ。

独特の立体感

こういった特徴が相まって、GFX 50Sは独特の立体感を持った写真を撮ることができる。中判ならではの立体感は、時にそのシーンを目で見るよりもリアルに表現する。これこそがGFX 50S最大の魅力と言えるだろう。

GFX 50S + GF63mmF2.8 R WR

Xシリーズを継承する操作感と色

Xシリーズ同等の操作感

X-T2 から GFX 50S に持ちかえると、拍子抜けするぐらい違和感を感じない。もちろん、大きさや重さは違うので物理的な変化は大きいが、操作感という意味では同じカメラと表現しても大げさではないだろう。
ソフトウェア的なインターフェースはもちろんのこと、ISOダイヤル、シャッター速度ダイヤル、フォーカスレバーなど、おなじみの物理インターフェースも揃っている。
GFX 50S の方がボディの大きさに比例してカスタマイズできるボタン数も増えているため、逆に使いやすいぐらいだ。

ボディにはISO調整ダイヤルとシャッター速度調整ダイヤルを備える。この部分、X-T2などと異なり露出補正ダイヤルは用意されておらず、露出補正ボタンを押しながら背面ダイヤルを回す方法になっているが、これは独立のダイヤルだと調整幅が最大でも±3段程度が限度になってしまうかららしい。GFXでは±5までの露出補正が可能だ。

おなじみのダイヤル群。

フォーカスレバーにより素早いAFポイント操作が可能だ。上面に用意されたサブ液晶モニターは、周囲に影響を与えない程度の照明をON/OFFすることが可能なので、暗闇での撮影中に各パラメーターを確認する際に便利だ。

フィルムシミュレーション

さらに、Xシリーズと同等(それ以上)のフィルムシミュレーションを搭載しているため、富士フイルムの色をここでも手に入れることができる。特に、Xシリーズから乗り換えもしくは併用した場合でも、今まで撮ってきた作品と色味を揃えることができることは大きい。
また、新開発の超高速画像処理エンジン「X-Processor Pro」の搭載により実現になった、「彩度が高い箇所の彩度は維持したまま、輝度による強弱で階調をつくり立体感を表現することができる」という新型のカラークロームエフェクトが追加されている。

GFX 50S + GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

魅力満載な機能と堅牢な防塵防滴耐低温ボディ

AFはコントラストのみ(像面位相差AF無し)ではあるが、なかなか高速で実用的な速度を誇る。
最大425点のAFポイントを6種類のサイズで使い分けることができるので縦横無尽なフォーカシングが可能となっている。
なお、これだけボディが大型だともっさりとした操作感をイメージしてしまうが全くそんなことは無く、各操作はレスポンスも良くプレビューも素早く表示されるので、テンポ良い撮影が可能でストレスを感じさせない。

また、GFX 50Sのボディはマグネシウム合金を採用しているのでとても堅牢である。レンズ交換の際に感じる剛性の高さからそのことに気がつくであろう。
加えて、防塵・防滴・耐低温構造なのでどんな場所にも連れて行くことができる。

台風通過直後の暴風と波飛沫が吹き荒れる中での撮影も何ら問題なく使うことができた。

他にも、三脚装着時でも素早くバッテリーが交換できるように側面に用意されたバッテリー蓋、手持ち撮影時・三脚利用時両方で活躍する縦にも対応したチルト液晶、撮影時のフォーカス合わせや撮影後のフォーカス確認に便利なタッチパネル式液晶モニター、Wifi 対応(撮った写真を即スマホに転送できる)、など魅力満載だ。

GFX 50S + GF110mmF2 R LM WR

5本の純正レンズ群

2017年7月執筆時に4本の単焦点と1本のズームレンズが発売になっている。
生憎GF23mmF4 R LM WRはまだ使用していないため、それ以外の4本で撮った写真と共にご紹介したい。

GF63mmF2.8 R WR

35mm判換算で50mm相当に該当する63mmF2.8は405gと軽量コンパクトなので楽に常用できる標準レンズだ。色収差、歪曲はほとんど気にならないレベルだが、コンパクトさを優先したためだと思われるが明るさがF2.8のため、ボケをいかした撮影をしたい場合は一歩被写体に近づく必要がある。

GFX 50S + GF63mmF2.8 R WR

GF110mmF2 R LM WR

F2.0という明るさが魅力の110mmF2は35mm換算で焦点距離87mmに相当するポートレート向きのレンズだ。ボケ味にこだわった作りのこのレンズは、色収差を極限まで抑制しており開放でもキレのある画質を保証してくれる。解放に近いF値で撮影してそのボケ味を楽しむのも良いし、逆に絞って解像感を味わうのも良い。

GFX 50S + GF110mmF2 R LM WR

GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

現時点でシリーズ中唯一のマクロレンズとなる120mmF4は、5段分の強力な手ぶれ補正を内蔵し、遠距離から近距離までずば抜けた解像度を誇るハーフマクロレンズである。35mm判換算で95mm相当となる焦点距離はとても使いやすく、寄れるというのはポートレート撮影時に大きな武器となる。

GFX 50S + GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

GF32-64mmF4 R LM WR

現時点でシリーズ唯一のズームレンズとなる32-64mmF4は35mm換算で25mm-51mm相当となる標準ズームレンズ。ズーム全域で、まるで単焦点レンズかと驚くほど中心から周辺まで極めて高い解像感を誇る。

GFX 50S + GF32-64mmF4 R LM WR

軽量ボディと低振動化シャッター

マキシマムなのにミニマムなボディ

センサーサイズが大きくなると、ボディが大きく重くなるが、GFX 50Sはフルサイズカメラよりも一回り大きい程度で、さらに 740g という軽量な本体質量を実現している。
バッテリーとメモリーカード、さらにEVFを装着した時でも 920g と驚きの軽さなのだ。誤解を恐れずに言えば、これは(中判カメラにしては)驚くほど軽量でコンパクトなボディだと言える。

自分は現在 X-T2 のボディと数本のレンズ、さらにGFX 50Sのボディとレンズを一つのカバンに入れて持ち運んでいる。
さすがに X-T2 + X-T1 の組み合わせの時よりはバッグは大きく重くなったが(笑、それでも一人で持ち運びできる範囲に収まっている。
ただし、レンズはその光学性能を求める限り、センサーサイズに応じて大きく重く(そして高額に)なる。GFX 50S のレンズ群もその例外ではないが、GF63mmF2.8 R WR は 405g とかなり軽量なので機動性を高めたいのであれば現状このレンズがオススメだ。

GFX 50S + GF63mmF2.8 R WR

シャッターショックは極限まで最小化

GFX 50Sはミラーレスカメラのため、ミラーショックにより発生するブレは存在しない。
さらにメカニカルシャッターは低振動化されており、最高1/16000秒まで可能な電子シャッターも備えている。そのため、特にシャッターショックによる影響が出やすい 1/30〜1/125 秒程度のシャッター速度時に、これら電子シャッターを利用することで、シャッターショックの影響を最小限度に抑えることができる。

なので、注意しなければいけないのが撮影時の手ぶれだ。
センサーサイズの小さいカメラでは(解像度が低い故に)写らなかった手ぶれが、センサーサイズの大きい高画素機では写るようになる。そこまで神経質になる必要はないが、かといってラフなシャッターは禁物だ。なんか解像度がイマイチだな…というときはわずかに手ぶれしている可能性がある。意識してきちんとカメラを構えるのはもちろんのこと、状況に応じてシャッター速度を速くしたり、一脚や三脚を使うと万全だろう。

GFX 50S + GF63mmF2.8 R WR

新しい表現を可能にするカメラ

センサーサイズは何がなんでも大きければ良いというわけではない。たとえば、ボディやレンズがコンパクトになったり、手ぶれ補正が強力になるなど、センサーサイズが小さいことによる恩恵もたくさんある。
大切なことは、カメラの得意/不得意な分野を把握して、自分の目的に応じたカメラ、自分の撮り方にあったカメラを選ぶことである。

GFX 50Sは、その懐豊かなダイナミックレンジで捉える派手でダイナミックなシーンも、その繊細で緻密な解像力で表現する静かでしっとりとしたシーンも、等しく得意とするカメラであり、今まで撮ってきた写真を全てこのGFX 50Sで撮り直したいと思ったぐらい、自身の表現の可能性を拡大するカメラだと感じている。
そこで、中判に興味がある人はもちろんのこと、新たな表現を模索している人、自分の写真のマンネリを打破したい人にもお勧めしたいカメラだ。もし手にする機会があれば是非一度試してもらいたい。きっと新たな表現に出会えることだろう。

GFX 50S + GF32-64mmF4 R LM WR

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