タムロンがミラーレス標準ズームを再定義!28-75mm F/2.8 初のSony Eマウントを風景写真で徹底解剖!
標準ズームレンズの意味

28-75/2.8 この宇宙全体の秘密でも潜んでいそうな数字と記号の集積は、写真の世界においては神聖不可侵な中核を成すコードにして長年ユーザーから崇められている。中国語に変換されると、その神性はいささか削がれ、その代りに歴史的な風格の備わる単語、「大三元」となるそうな。民明書房刊あたりを紐解けば、なぜそのような翻訳がなされたのかがわかるだろう。
さて、冒頭から何を言っているのか自分でもよくわからないが、もちろんもう、この原稿を読んでくださる方には、いまさら説明する必要もない、数値であったことだろう。
20mm-70mm付近、そして通しF2.8。燦然と輝くこの暗号、カメラメーカーが「最高峰の標準ズームレンズ」として設定している数値であり、すべての技術がここに注ぎ込まれ、その結果ハイアマチュアからプロに至るまで「まずはこれを一本」と、思考を停止して買うに至るレンズの総称をなしている。
タムロンの挑戦

そこに、あるメーカーが殴り込みをかけた。
タムロンだ。彼らの作るレンズは、写真世界においては「優しさ」を持って鳴る。もちろん、この場合「優しい」というのは我々の懐具合に対する優しさなのだが、その代償として幾分機能やブランドに弱点がある・・・というような、半ば都市伝説的な風評を背負ってきたのも否定できない。実際のところ、私自身、その様に考えていた。
何という浅はかな思い込み!
ここに私、別所隆弘は、全力を付して土下座して謝らねばならない日が来たことを告白せねばならない。
本日のレビュー、まずは結論から言わせて頂く。このタムロンの新レンズ28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)、最高です。若者風に言わせてもらうならば、「最高でしかない」とか「最高かよ」とか、なんかそんな風なニュアンスを嗅ぎ取ってもらえると嬉しい。それは「コスパに対していいレンズよね」というレベルでの良さなんかでは断じてなく(断じて!)、「値段」や「重量」という点で極めて「優しい」レンズでありながら、写りや機能に何一つ妥協が無いということをこれから全力でお伝えしようと思う。
タムロンという選択

つまりはこのレンズ、タムロンという会社が、軽快に、そして不敵に笑って叩きつける挑戦状のようなレンズということだ。ほかのレンズを差し置いて「タムロンという選択肢」があるのだと、強烈に脳裏に刻み込む程のレンズとして仕上がっている。タムロンさんには伏して謝りたい。最高のレンズを作ってくださってありがとうございます。さて、ではここからその「最高でしかないかよ」的性質を、幾ばくか皆さんに詳らかにしていきたい。
Tamron 28-75mm F/2.8 Di III RXD – A036

製品仕様
モデル名 | A036 |
---|---|
焦点距離 | 28-75mm |
明るさ | F/2.8 |
画角(対角画角) | 75°23′-32°11′ <35mmフルサイズミラーレス一眼カメラ使用時>52°58′-21°05′ <APS-C サイズ相当ミラーレス一眼カメラ使用時> |
レンズ構成 | 12群15枚 |
最短撮影距離 | 0.19m (WIDE) / 0.39m (TELE) |
最大撮影倍率 | 1:2.9 (WIDE) / 1:4 (TELE) |
フィルター径 | Φ67mm |
最大径 | Φ73mm |
長さ* | 117.8mm |
質量 | 550g |
絞り羽根 | 9枚(円形絞り)** |
最小絞り | F/22 |
標準付属品 | 花型フード、レンズキャップ |
対応マウント | ソニーEマウント用 |
* 長さ=レンズ先端からマウント面まで。
** 絞り開放から2段絞り込んだ状態まで、ほぼ円形の絞り形状を保ちます。
MTF曲線からみてみよう
MTFというのは、実際のところ私もあんまり良くわかってないのだけれども、ものすごく平たくいうと、何本かヒョロヒョロと並んでいる線が上にあればあるほど、レンズとしてすっばらしいとなるわけだ。読み取れる限り、広角では全面的にこの低周波域が優秀なのは本当にありがたい。一方、高周波(30本/mm)は、細部の解像そのものの精度を表すが、この高周波域を表すグラフも、レンズ中央は申し分の無い性能を示している。ここが悪いと、等倍で見た時に、実は細部が潰れちゃっているというような可能性もあるのだが、そのような心配は限りなく少なさそうだ。望遠においても広角端で見せた切れ味するどい描写を維持している。つまり、中央付近に被写体をおいてF2.8の大口径レンズの持ち味であるボケ描写で作品を撮る時、圧倒的な解像感を与えてくれるのがこのレンズの特性と見受けられる。ここがスゴイ!28-75mm F/2.8 Di III RXDの描写
標準域の再定義
充分な広角域である28mm

まず最初にお伝えしたいのは、よくぞ「24-70」ではなく「28-75」で勝負をしたという点だろう。
私はあまりレンズの物理的な組成や、光学的な性質や、機械的なアレコレについては、よくわからないが、常々思っていたのだ。「標準レンズ、24mmって要りますか?」。
もちろんそこはそれ、いろいろな現場でのアレコレを考えると、24mmまで広角があれば安心というのも理解出来ないではない。だが、そもそも大三元クラスのレンズスを買っちゃうような沼にずっぽりハマっている紳士淑女の皆さんならば、24mm広角域の作品を「朕、撮らんと欲す!撮らんと欲す!」となった場合、すでにお手元には14-24なり16-35なり12-24なり単焦点14mmなり、そのような変態系出目金レンズが、ぬっちょりと装着されていることではありますまいか?かくいう私も、自分の広角レンズにおけるファーストチョイスは16-35などのより広角域をカバーしたものになる。
我々はレンズによって発想を変える生き物

広角域で風景写真を撮ろうという時には、24mmというのは最も多様する距離の一つだろう。しかし、そこからいざ「標準域」での仕事となると、24mmまで広い画角というのは、あまり使ったことがない。むしろ35-70mmあたりを一番多用することになる。それは標準レンズという焦点域が、それを使う人間の意識の「外枠」を、標準レンズのあの端正で無理のない画角の中に押し込めるからだ。我々はレンズによって、発想を変える生物であるから、標準のときは標準的生物としてこの世界に立つのだ。そしてツルンとした顔で「標準域は周辺の歪みが少なくて美しくて端正だよね」とかなんとか言うのだ、白ワインとか飲みながら。
「あと5mm」その気持ちに応えた決断

そうなると、24mmは多少広いし、多少歪む。あのシティボーイ的な端正さには、24mmは若干ワイルドなのだ。むしろ、あの都会的な距離70mmが少し足りない・・・と思う時のほうが多い。あと一歩、ほんの少し、花嫁さんに後5センチ寄りたいのに、親戚のおじちゃんが前にいてケーキカットに寄り切れない、なんてことだ!という、人生の一大事に5mm足りず寄りきれない標準のもどかしさというのをこれまで何度も痛感してきた身としては、4mmを削って5mmを足したタムロンの技術部の英断に拍手を送りたい。この画角を選んだことによって、標準レンズの「標準」的哲学は、むしろより先鋭に具現化されたといっても過言ではない。ここに真の標準、爆誕!
都市夜景にもピッタリな解像感
風景写真において、レンズの焦点距離と並んで重要な検討項目は、やはりそのレンズの切れ味を示す「解像感」だろう。MTF曲線の際に話したように、スペック的にはズームとは思えないコントラストの強みを持っている。専門的な言い方をすると、低周波のコントラストが強いので「ヌケ感」があり、「切れ味」という表現を使いたくなるほど高周波の分解能も高いので、細部も鋭く描写される。見事な程によくわからない専門用語解説になってしまったが、つまり要は、レンズの「解像」が素晴らしいということになる。そしてその手の「解像感テスト」にうってつけの被写体がある。こまーーーーい、あいつら。そう、都市夜景だ。等倍大好き紳士の皆さん、さあ出番ですよ。
この世界で結ばれなかった悲劇のカップルの霊が夜な夜な徘徊しつつ唸り声を上げるという展望台から、神戸の夜景を28mmと75mmで切り抜いてみた。まずはとにかく、解像力半端ない。
28mm
28mmのような広角域で都市夜景を撮ると、低周波域が悪いレンズの場合コントラストが低下して「モヤッ」とした印象になるが、中央付近の光の密集域においてもスッキリした感触が伝わる。

75mm
一方75mmの方は、中央から周囲まで、特に高周波の分解能、つまり「解像度」自体が高い。実際の像が「ガリッ」と描かれていて、都市夜景の魅力が際立つ。

ハイクラスの描写性
タムロンが今回力を入れている点は最短撮影距離19mmでのボケ感や軽量さ、さらには圧倒的な値段としての競争力だが、28-75という汎用性の高さは風景写真家にとっても魅力的なチョイスと言える。というわけで、典型的な風景写真を典型的な設定で撮影したのが以下の写真だ。28mmと50mm、ともに恐ろしく端正な画を出してくれる。
50mmにおける完璧な切れ味

50mmの方からまず見ていきたいが、等倍でピント面を確認すると、中央の黒い塊のような木の枝の一本一本が、まるで毛細血管の様に描写されていることが確認できる。

もちろんこれは高画素のボディを使っている恩恵もあるが、軸上収差など「線」が問題になる場合、影響を及ぼすのはもちろんレンズ側の性能であって、その点、F8まで絞った時の切れ味は50mmにおいてはほぼ完璧だと言えるだろう。
28mmの魅せる上質な階調

28mmの際、ピント面から後ろの距離が開いた際に、F8で絞っているにもかかわらず後ろがほんの少しなだらかに見えるのは、これは弱点というよりもレンズの描写特性だと考えるべきだろう。ときに高画素機の「解像しすぎる」昨今の傾向に対する、タムロン側からの個性的な返答と私には解釈できた。遠景の背景描写がやんわりとしていて、実に上質な写りをしてくれる。
28-50mmあたりの、風景写真家が最もよく使う画角において、ハイクラスのレンズと同等の描写を見せてくれる点は、画質にシビアなハイアマチュアやプロにも自信を持ってオススメできる。線の描写に関しては、実売10万円を切るレンズとは思えない端正な写りだ。
豊かな階調性

破綻の少ないニュートラルな色味を出す特質は、繊細な星の各色の再現性が必要になる星空の撮影にも好適だ。下の写真は「真っ白な岩」の上に「天の川」という、どうしようもなく色の「寄せ方」が難しい被写体を前にして、オートホワイトバランスで撮った一枚だが、天の川中心部の色合いがきれいに分離している。また、シャドウのあたっている岩の下の、まるで錆びたようなオレンジ色の質感もしっかりとレンズ越しに取り込まれていて、星景撮影にも何一つ不足のない描写を見せてくれた。
ボケと最短撮影距離の恩恵
さて、このレンズの最大の特徴の一つは、極めて短い最短撮影距離にある。標準レンズというのは、「標準」という名の示すとおり、基本的には退屈な方向のレンズだと言える。退屈というのは、この場合褒め言葉だ。「使っていてもそれとわからない程に存在感の消える真水のようなレンズ」こそが、大三元の標準ズームに求められる使命であって、それだからこそオールラウンドにあらゆるものを切り取る力に長ける。あまりキワモノっぽい、アーティスティックな性質は標準レンズには必要とされないのだが、そうした条件のある中で「端正さ」や「透明感」を維持しながら、そこに独特の表現の幅を加えるべくタムロンが打ってきた手こそが、この「最短撮影距離19cm」(焦点距離28mm)。

これは、カメラ世界を支配するフルサイズメジャー三社が出している大三元標準の最短距離が、仲良く「38cm」であるのと比べると、ほとんど狂気の沙汰といえる短さだ。半分の距離でピントがあたってしまう。そしてさらに28mmという広角域とF2.8の被写界深度で、19cmの最短撮影距離撮影したときに見える景色というのは、感動を覚えるほどだ。
寄れる範囲が標準ズームレンズの域を越えている
28mmで最短まで寄ると、ほぼマクロレンズレベルの寄り方ができる。このアジサイを撮ったときのレンズの場所は、上の写真の通りだ。距離がわかりやすいように、また花を傷つけないように、フードは敢えて外してある。ピントは見ての通り、一番手前のアジサイ。そこから奥に向かって、どーーーんと溶けていく。目の前の世界が一変する快感!この溶け方は、ほとんど単焦点の感触に近い。もはやもうポートレートでも撮ってる気分になってくる。確かにそういう目で見ると、なかなかアジサイも味わい深い顔立ちに見えてくるのが、ポートレート紳士でしょう。
逆光耐性

レンズと言えば、もう一つ気になる点を忘れていた、あれだ。各社がいろいろな魔法のことばで呼びかけるコーティング技術による逆光耐性。タムロンが唱える呪文はこれ、BBAR( Broad-Band Anti-Reflection)。このコーティング、結構仕事してくれます。

等倍紳士にとって垂涎の瞬間は、拡大された部分が階調キッチリで、細部まで解像されている像を見た時だろう。この逆光下で適当にAFで撮った一枚だが、水平線上の船まできっちり捉えていた。船の模様まで見える!

この作例では、太陽に歯向かわんと真っ向勝負、ガッツリ斜め方向から太陽に当てたりましたが、薄っすらと、見えるか見えない程度、ようやく左下の方にフレアが出ました。また、これだけ正面に太陽を捉えているにもかかわらず、葉っぱの緑、アジサイのブルーの暗部階調、コントラストの上品な付き方など、頼もしい限り。さあ、今日からレッツ太陽(直視はだめですよ)。
ミラーレスのために考え尽くされたレンズ性能
もちろん対応!カメラ側の主な機能もカバー
風景写真家の中でも、動きモノを撮るタイプのフォトグラファーや、あるいは花を撮られる方などは、ファストハイブリットAFやDMFといった、本体側のレンズ制御を使われる方も多いだろう。それらにも完璧対応!皆さんの撮影を決して阻害しないのもこのレンズの「優しさ」だ。もちろん、他にも主なカメラ側の機能には対応している。
主な対応機能
- ファストハイブリットAF
- ダイレクトマニュアルフォーカス(DMF)
- 瞳AF
- カメラ内レンズ補正(周辺光量、倍率色収差、歪曲収差)
- カメラ本体からのレンズファームアップ
ファストハイブリットAF

飛行機撮影、特に上から突然フレーム内に飛び込んでくる着陸飛行機の撮影は、カメラマン泣かせのシチュエーションだ。だが、ファストハイブリットAFに対応しているこのレンズなら、画角に入ってきた瞬間にシャッターを押せば、恐ろしいほどの高精度で飛行機を追っかけてくれる。キレッキレの飛行機のお尻をたっぷり眺めることが出来る!
風景撮影には嬉しい!簡易防滴と防汚コート
レンズの機能的側面にも触れておく。レンズの選択の際に「重さ」や「値段」、レンズの光学的性能に加えて、これから梅雨や夏のシーズンに最も気になる「雨」を始めとした水や湿気対策だが、こちらもこの値段にもかかわらず、いつ何処へ持ち出しても安心の簡易防滴や防汚コートがレンズに対して施されている。実際今回の撮影では、水濡れリスクの大きい海辺の町での撮影や、いきなり降り出した雨にレンズがびしょ濡れになったこともあったが、簡易防塵防滴構造になっていると知っていたので、高価な機材が水に濡れる心配で過呼吸になることもなく、慌てず撮影を終えることができた。風景写真家はどうしても外での撮影が多いので、必然的に雨にさらされるリスクも高いが、その意味でもこのレンズは基本的な安心を撮り手に与えてくれる。
真のミラーレス標準!軽量550グラム
実際のところ、500グラム前後というのは、これからのカメラの目指す数値になっていくことを予言しておきたい。というのは、2018年はミラーレス元年になるだろうからだ。そうなった時、現在2.8通しの大口径標準ズームレンズが800グラムを超えている現状は、どうしてもフロントヘヴィな感触になってしまう。こればかりはどうしても否定しようのない事実だ。そこに550グラムというバランスの良い重さでタムロンは勝負をしかけた。未来を見据えた戦略だ。だからこそ、このレンズは、珍しくソニーのEマウントから最初に出たのだ。これまでの慣例ならば、ニコンキヤノンからまずは出た後、ソニーの対応という流れが半ば常態化していたが、ミラーレス時代の幕開けを前にして、タムロンはいち早くこの「500グラム台レンズ」という、ミラーレスボディとのバランスを重視したレンズを投入したのだ。そして公式サイトのレンズ
の宣伝文句やこうだ、「ミラーレスに新たな風を」!!いいね、俺は確かに、風を感じたぜ、タムロンさんよ!後は任せろ、飛ぶだけだ!
ヒューマンタッチ
昨今のレンズは意匠やデザインにも一工夫凝ったものが各社から出されているが、タムロンの今回のデザインは「ヒューマンタッチ」という観点から見て非常に満足の行くものだ。鏡筒は美しくスタイリッシュなマット調の雰囲気でまとめられているが、手に持っているとすごく手に馴染む。まるで10年も一緒に戦ってきた相棒のような馴染みっぷり。こうした「手に馴染む」感覚が、鏡筒の上質な見た目に直結している点が素晴らしい。いわゆる「所有欲を煽るレンズ」というやつだ。
タムロンからの挑戦状
私と28-75mm F/2.8 Di III RXDの作品
さいごに、本レンズを使用して撮影した作品を数枚ご紹介して終わりとしたい。
夜明けを迎える奇岩群の静寂

夜明け直後の瞬間を長秒で撮影した。空の赤みの色合いも見事だが、岩肌の黒い質感が再現されている点が素晴らしい。
カーブを描く道路と工場夜景

夜景にふさわしいキリッとした硬質な描写が嬉しい。いかんなく高解像なレンズ性能が生かされている。
夕焼けの伊丹空港に着陸する飛行機

超高速で飛び込んでくる飛行機をAFで捉えた一枚。飛行機の鉄の質感が完全に捉えられていて、今にも動き出しそうな程だ。
夕焼けを望む灯台

夏の夕焼けの少しもやった感触と、手前の海の精細な描写が、とても繊細に再現されている。逆光の中でも暗部の階調が美しい。
夜霧の上の天の川

夜霧に包まれる山頂からの一枚。簡易防滴のおかげで安心して撮影できた。一瞬の強風で開けた視界に、夏の天の川が美しい。霧の中でも町の光がすっきりと描写されているのに驚いた。
夏の夕暮れに染まる海辺の町

夏らしい大きな雲が目の前に来たと思ったら、見る間に空が焼けていった。外海に面した部分と堤防で区切られた内海部の細やかなグラデーションの差が、レンズを通してしっかり描写されている。
夜空に浮かぶ大輪の花火

和歌山港とその背後に並ぶ工場の上に、カラフルな花火が弾ける。花火自体の色の再現も素晴らしいが、都市や工場、くすむ夜空や遊覧船の人工色などが、本当にきれいに分離している。
まとめ
というわけで、これまでの点を鑑みて、私は声を大にして言いたい!
このレンズはほぼ「無敵のレンズ」に近い。それはレンズ自体の価格もそうなのだが、最終的に私が一番言いたい点はここに帰ってくる、そう「未来を見据えた軽量性」こそが、私がこのレンズに惚れる理由だ。つまり、何かに妥協しての選択ではなく、敢然と誇り高く「タムロンという選択」をするのに十分な、先進的なレンズを作ってきたと、そう結論付けたい。ミラーレスのボディとくっつけた時のトータルバランスの良さと、それが生み出す端正な描写という両輪が、2018年以降の「理想の未来」を先取りしていたと、未来の歴史家は言うだろう。「タムロンこそ、ミラーレス時代の大口径標準レンズのスタンダードを切り開いた」と。地球の歴史がまた一ページ刻まれるはずだ。その未来を幻視しながら、この原稿を終えたい。