ポートレート撮影のコツ。構図の追い込み方とモデルへの指示を振り返ってみた。フォトグラファーの思考の流れ

先日、私のセレクト方法。ボツ写真とレタッチ写真の選び方。構図と視線と光と影。を公開したところ、予想以上の反応をいただけなかったのでこれはいわゆるブルーオーシャンなのではないかと思い、今回は闇の炎に抱かれて消えた構図の追い込み方とモデルへの指示を振り返ってみました。

資料をつくって書き始めたところで、これはもしかしてブルーオーシャンではなくただの水たまりなのではないかという疑惑が心を颯爽と駆け抜けたのを持ち前の驚異的ではない動体視力で捉えかけましたが、木を見て森を見ずという言葉に従いまして、僕は一本一本の木を見ることをやめました。

ちなみにこちらはセミナー申込時の質問事項で、「モデルへの指示はどうしてるか」、そして「構図をどうやって決めているか」というものがあったので、その回答にもなります。

構図の追い込み方とモデルへの指示

今回も写真を振り返ってみて自分が何を考えて撮っているかというのを言語化してみます。

何も考えずに撮ったほうが良い。という考えもあり、実はそれについては自分も同意なのです。

ただ考えるという言葉の意味をどの程度の重さで捉えるかによります。

このエントリーで書いている深度で思考している内容は、そこまで能動的に考えている(計算的な)わけではなく、ある種センスや嗜好が直感的に決断している内容だと思っていて。つまり左脳だけではなく右脳も含めてその場で反射的に判断している部分が多分にあります。そしてこの深度で言えば皆それぞれ考えているはずだと思うんですよね。その考えにどれだけ確かな気持ちを持っているか、自覚しているかという点は人それぞれでしょうけど。

つまり何が言いたいかというと、こうして言語化すると、ものすごーく考えて毎回撮ってるの?と思われるかもしれませんが、そういうわけでもなく振り返って分析してみると「ああ、こう考えていたなあ」というレベルのものです。

構図の追い込み方

前回のエントリーでも触れたのですが、光や背景やモデルの顔、衣装などを鑑みて、まずはモデルのポジションを考えます。
その時点で何となくのイメージは出来ているのですが、それが実際に写真としてあらわれてくれるかどうかというのは、お互いの力量や想像力の精度、経験や相性あたりが関係してくるんだと思ってますけど、とにかくイメージ通りにはまる時もあればそうならない時もあります。

そういった時にはポジション内で微調整を繰り返すことになります。

やることは大別して二つ。

微調整とは何か?やることは大きく分けて2つあります。

  • モデルへの指示
  • 構図の変更

それぞれ考えてみます。

モデルへの指示

これは光や自分の立ち位置に起因するポーズの向きなどを指しています。
例えばレンズを見て笑ってほしいのか、目をそらしてほしいのか。それとも光がキレイにあたるように右を向いてほしいのか左を向いてほしいのかなどなど。
いずれも正解は自分が決めるものなので、イメージを整理できると良いですね。

構図の変更

もう一つは、構図の変更です。
アイレベルを変えるのか、向きを変えるのか、角度を変えるのか、やりようは色々ありますが。
とにかくここまでくるともう、「そこに被写体がいる」という状況になっているので、後は目の前のものをどう自分の感性で捉えるかということになりますね。

モデルが表現してくれる場合もあるでしょうし、自分でコントロールしたい場合もあるでしょうし、このあたりは共同作業で二人もしくはチームの作品ですから、ケースバイケースです。

モデルへの指示だけではなく、自分の中でも本当に自分の決定は正しかったのか?という疑惑を常に持っています。

イメージした一枚になるまで

撮影写真の流れ

今回は以下のようなシーケンスで撮影しました。
窓から差し込む光が程よい柔らかさでシーツに反射していたので、陽の当たるところに顔をおいてもらいました。
ここまでがポジションを決めるまでの流れです。

夕暮れの自然光なので5分も経てば光の位置も変わってしまうため、時間との勝負です。

それでは一枚ずつ見ていきましょう。

ポジションについてもらう。

この時点でモデルにお願いしたのは、光のあたる場所に横たわってもらうこと。
そして楽な姿勢を探してもらうように言いました。
これは自分がよく言うことなのですが、本人的にもっとも楽な体勢が自然だと思えるからです。

また、あまり目線が上を向きすぎないようにとも伝えています。

しかし実際に寝っ転がってもらうと写真的には微妙な部分もありました。

重なった手の部分がおもすぎる。

なので、手を曲げて右手は腰の方に持っていってもらうよう頼みました。
この時点で他にも気になる点はあったのですが、一つずつ解決していきます。

手の位置をなおしてもらう。

だいぶましになりました。

しかしもう少し追い込める気がします。
細かいことですが、目線、そして顔の向きが気になります。
アスペクト比に沿って顔があるためか、バランスが悪いようにも見えます。
また、移動してもらった手の位置が前ボケになっているので気になるのではないか?という疑惑もありました。
ただこの時点ではディスプレイを確認してはいません。

とりあえずここでは、目線をあげてもらうようにお願いしました。

手を差し出すと、だいたいその手を見つめてくれるのでそのまま見て欲しいところまで誘導するという方法をよく採ります。

目線を変えてもらった。

目線を変えてみるとイメージしている写真に近づいた気がします。
目線一つで印象が変わるから面白いですね。
アンソニー・ホプキンスは目で演技ができる数少ない俳優と言われていますが、自分はよくモデルの方にも「目で演技をして欲しい」と、それができるならハリウッド最高峰確定という無茶な要求をすることがあります。すみません。

とは言え、構図的な問題が解決されていないのでまだ微調整をする構え。
ちなみに最初の一枚からこの間までは一分もないと思います。
これは自分の場合なので参考にする必要はありませんが、EVFの場合はパシャパシャ撮りながら調整していきます。

モデルの方によってはシャッター音に合わせて動いてくれる方もいるのでそのあたりは事前に自分のテンポを伝えるなりしても良いと思います。

少し引いて撮影してみる。

構図的な解決がないので、モデルへの指示ではなく自分のほうで少し調整してみます。
モデルのポージングは問題ないので、少し引いて撮影してみました。
その理由は、構図の問題を解決するために引いた場合、右腕が不格好になって写ってしまわないか?ということです。
これは目で見るより撮ってみたほうが感覚的にわかりやすいので引いて撮りました。

実際に引いて撮ってみると、あまり構図を変えても手の位置は解決しないだろうなと感じます。

ここでモデルにまた声をかけて右手の位置をお互いに探ってもよいのですが、そもそも上述したようにアスペクト比とモデルの身体が向きが悪いことはわかっていたので、寄ったままで角度を変えようという決断をしています。

構図が変わるので以下の三つをお願いしました。

  • 前ボケも同時に解決したかったのでもう少し顔に近づけるように。
  • 眼は遠くを見るように伝える。
  • 自分が少し移動した段階で首が伸び切っているように見えてしまったので顎を下げるように。

斜めに撮ってみる

視線が構図の左下端に向くように構図を斜めにして撮影しました。
これが成功で、個人的にイメージしていた感じの一枚に。
顎の位置を下げてもらうこと手の位置を顔の近くにしてもらったこと目線もハマりました。

これで良いかなと思ったのですが、少し不安だったので実はこのあとも数枚撮っていますが、結局この一枚になりました。

まとめ

以上、一日の撮影で各ショットの流れをマクロに考えていった場合の一例でした。

撮影にもよりますが、こういった撮影の場合は狭い空間や限られた光の中でどれだけ多くのパターンを撮れるかというのを自分に課して撮影している場合があるので、一つ一つのポジションにおけるカット数はそこまで多くありません。
同じような写真を何枚もとっても仕方ないので、例え2帖程度の空間でもパターンを多く撮るようにしています。

まあこのあたりはほんとうに人それぞれですし、あくまで自分が自分の写真に納得するために獲得してきた手法というだけなので、あまり考えすぎずに参考程度にしてみてください。

ではまた桜の咲く頃に。

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