鮮やかに 流し撮り写真 を表現しよう!Lightroomで現像・レタッチする3つのアプローチ

目には見えない瞬間を一枚の写真に凝縮する。

動いている被写体のその瞬間を目に焼き付けることは難しく、シャッター速度を遅くすればするほど、そこに焼き付けられる像は一瞬では無くなり連続性の記録となります。そのため記録性としての写真からはかけ離れた、被写体の動きを凝縮した何かが見えてくる。その真の姿とは別にシャッター速度とレンズの振り方によって様々な絵がそこに現れます。

流し撮りにおいては、現像・レタッチにセオリーというものはあまり確立されていないように思います。どうしたらスピード感を協調した色鮮やかな写真に仕上がるのか?いや、それはやりすぎだ、どうせPhotoshopで加工しているのだろ?Uzzy(@uzzy.76)の流し撮り写真の現像・レタッチについて日々様々なご意見やご質問をいただきますが、レタッチでどこまでを許容するのか?どこに境界線を引くのかとても悩ましい問題です。

そこで今回は、私が普段実践している流し撮り写真をLightroomで現像・レタッチする3つのアプローチをご紹介いたします。

流し撮り写真を鮮やかに表現するレタッチ3つのアプローチ

撮って出しを再現する

青い縁石と緑の芝生に赤いフォーミュラマシンが映える、サーキットの走行シーンを1/20秒のシャッター速度で切り撮りました。撮影時にピントやブレ感が狙い通りに決まり、かつ被写体と背景の露出が適当であった場合、特にこれ以上手を加える必要はありません。なにより上手く撮れた時の自分自身の感動がそのままです。撮影時の設定のママなにもしないという選択肢、いわゆるJPEG撮って出しです。

JPEG撮って出し写真
撮影データ:400mmレンズ / NiSi ND8フィルター使用
シャッター速度:1/20秒、絞り:f2.8、ISO:160

カメラ内設定

キヤノンのカメラにはピクチャースタイルという機能があり、流し撮りの撮影においてはいつも『風景』を使用しています。このピクチャースタイルを更にカスタマイズしてシャープネス、コントラスト、色の濃さを調整していますより派手なベーススタイルの『ビビット』もありますが『ビビット』で色の濃さをさらに強化すると色飽和する可能性が高くなるので『風景』をベースとするこの設定がおススメです。このカスタマイズした設定をユーザ設定として保存しておき流し撮りでは常用しています。ソニーのカメラであればクリエイティブスタイル、ニコンであればピクチャーコントロールで調整しましょう。

この撮って出しのJPEGデータは各カメラメーカーがカメラ内でRAWデータからレタッチを行い現像していると捉えることもできます。ではRawデータから撮って出しの状態を再現し、カメラメーカーのレタッチの特性を学んでみましょう。

Lightroomに取り込んだ直後の状態

プロファイルは標準のAdobeカラーですがカメラ設定のピクチャースタイルは反映されないため、撮影時の写真と比較すると鮮やかさが失われ全体的にくすんだ印象になっています。

カメラプロファイルによる設定その1

Lightroomには各カメラに対応したプロファイルが用意されていますので今回はそちらを使ってみましょう。キヤノンのピクチャースタイル“風景”に対応するプロファイルは“カメラ風景”です。プロファイル名の右にある□のボタン(プロファイルブラウザー)から選択できます。

これだけで鮮やかさがぐっと増しますが撮影時のピクチャースタイルはコントラストと色の濃さを+3としているので、Lightroomでも基本補正のコントラストと彩度を+30としてみました。ピクチャースタイルの+1がLightroomの+10に対応しているというわけではないですが、大体近い効果になっているように見えます。

下の完成写真をみると、JPEG撮って出しにかなり近い仕上がりになっていますので、これでゴールとしても良いでしょう。100点満点でいくと60点くらいかなと。

プロファイル_カメラ風景[コントラスト+30、彩度+30]

カメラプロファイルによる設定その2

では更にパラメータを詰めましょう。JPEG撮って出しと比較すると、全体的な鮮やかさは十分ですが、白線、路面、タイヤに締まりがないことや手前の縁石の青が強すぎることなどが気になります。

単純にコントラストや彩度の調整だけでは良い結果が得られなかったため、トーンカーブを調整しました。Lightroomのパラメータを調整する場合、上から順番に調整していくことが基本になるかと思いますが、トーンカーブは全体に与える影響が大きいため、トーンカーブを決めた後に上の基本設定に戻って微調整することが多いです。トーンカーブエリアの左上の◎マークをクリックして、気になるポイント(白線、路面、タイヤ)を微調整します。ただ、ボディの赤の露出は現時点で問題なかったので、調整前に楔を打って影響を受けないようにしておきます。図のように調整するのはほんの僅かです。

その後もう一度JPEG撮って出し画像と比較し、コントラスト+45、シャドウ+5、黒レベル-5、明瞭度-10と調整しました。最後に手前の縁石の青みが強すぎると感じたので、自然な彩度を-15としました。自然な彩度は赤系の色の変化を抑えつつ青系の色に作用しやすいので、空の青などを強調したいとき強化した、逆にこういった不自然な青を抑えたいときに有効です。

カメラ風景[トーンカーブ+微調整]

これでよりJPEG撮って出しの状態に近づけました。赤いマシンの下部のシャドウが強くなってしまいましたが、この時点でシャドウを持ち上げると他への影響が大きくこれ以上の調整は難しく、部分的な補正が必要と感じました。キヤノンの赤の発色は独特なんだと思います。よってこれにて一旦完成、100点満点中75点くらいでしょうか。

こうやって一つの明確なゴールに向かって各パラメータを少しずつ調整を繰り返していくことで、各パラメータの効果やカメラメーカーの特性などへの理解が進み、RAW現像、レタッチのセンスが養われます。また作成したパラメータをプリセットとして保存し他の写真をレタッチする際のベースとすることも有効です。

背景の美しさを背景の美しさを表現する

流し撮り写真において第二の主役とも言える、流れている背景を美しく表現するレタッチについて考察してみましょう。

撮影時は被写体に集中しているために背景の彩りや露出を意識する余裕があまりないケースが多いと思いますが、流し撮り背景があってこそ成立する写真です。その背景をより美しく表現することがその写真の力を左右するといっても過言ではないでしょう。

1章で作成したパラメータ適用
70-200mmレンズ / NiSi 可変NDフィルター使用
シャッター速度:1/4秒、絞り f5.6、ISO 100

まずは1章のレタッチパラメータの色温度以外をプリセットに登録し、この写真に適用しました。

主役である自転車の赤と選手のユニフォームの青が鮮やかに表現され、黒いホイールは黄色い文字の残像がアクセントとして利いていてこれでも十分ではあります。しかし現場で撮影していた時の印象として引っかかるのは写真の上半分の緑です。この部分はもっと鮮やかな記憶色(希望色)であったはず。

段階フィルター適用範囲(赤)

ここで主役の自転車はこれ以上変更を加えたくないため、段階フィルターを使用します。基本設定上部の□ボタン(ショートカットキーはM)から段階フィルターを起動、赤い部分を選択します。黒く濃くなってしまっている緑の鮮やかさを取り戻すために、色被り補正-50、シャドウ+50、明瞭度-50としました。この3つのパラメータは森や芝生といった緑が露出不足で暗く沈んでしまった場合に鮮やかさを蘇らせるために有効ですので覚えておきましょう。

完成写真

大胆にアートな世界を創造するレタッチ

Lightroomに取り込んだ直後の状態
撮影データ:400mmレンズ / NiSi ND8フィルター使用
シャッター速度:1/4秒、絞り:f9.0、ISO:100

シャッター速度が1/10秒より遅い分母一桁の流し撮りになってくると肉眼で見えている世界とはどんどんかけ離れた絵がセンサーに焼き付けられていきます。それは逆に写真でありながら本当に正しい姿が何なのかが曖昧で、現実ではあるが想像の世界に近づいていくことでもあり一つのFineArtとして創造していくものと考えてもよいと思います。本来の姿が分からないので、本当の肌の色、朝日に染まる山肌などポートレートや風景写真に当てはまる正しい色を再現するセオリーなどが通用しないため、そのレタッチは全てが自由です。

この作例ではやや露出オーバーで主役のバイクとライダーも不鮮明ではありますが、よく見るとピントは合っており、ヘルメットの芯がしっかりと残っています。これは大きく化けるかも、というポテンシャルを秘めた一枚と判断しました。

特にこういった彗星流しや前ボケのフィルター効果などを狙った流し撮りでは被写体が不鮮明となりJPEG撮って出しではインパクトが弱いため大胆なレタッチが必要なケースが多くなります。レタッチを前提として撮影する方が良い結果が生れることが多かったりも。レタッチにおいてはもとの状態から少しずつ効果を確認していくよりも、一旦Lightroomの調整幅目いっぱいの+100に全振りしてみてから少しずつやり過ぎ感を削り落としていくような思い切ったアプローチも有効でしょう。

この写真では何度も微調整を繰り返していますが、基本的な調整の流れは以下になります。

  1. 露出を-1.0としトーンカーブで強化したい場所に大きく明暗差を付ける。
  2. テクスチャ、明瞭度のパラメータを目いっぱい+に付け、かすみの除去で被写体をくっきり浮かび上がらせる。
  3. ハイライト、シャドウを調整し白飛び、黒つぶれを救済する。
  4. 色温度、彩度を調整する。
  5. 白レベル、黒レベルで全体を締める。
完成写真
※International Photography Awards(IPA) Honorable Mention(佳作)

おわりに

スポーツ写真の世界では記録写真としての正確性が求められるシーンも多いため、過度なレタッチは敬遠されがちですが、スローシャッターの流し撮りは人の眼には見えない世界を切り撮っています。レタッチにおける正解は存在しないため、自分の希望色を使って被写体のスピード感や臨場感、感動を自由に表現しましょう。

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