最高速度は60~70km/hの自転車競技。モータースポーツと比較すると遅めですが、この程よいスピード感が流し撮りには最適!だと私Uzzy(@uzzy_76)は考えています。その理由と、撮影方法を今回はご紹介していきます。
はじめに
流し撮りのおすすめは「トラック競技」
冒頭で、流し撮りに自転車競技が最適!といいました。ただし、最もメジャーな自転車競技とも言えるロードレースは撮るのが少し難しいです。
というのもツール・ド・フランスを頂点とするロードレースは時に1レースで数百キロという長距離を走るため、沿道での観戦は可能なものの選手が目の前を通過するのは一瞬。そう、シャッターチャンスは一度しかありません。流し撮りというのは成功率の低い撮影法のため、たった一度のシャッターチャンスにこのスローシャッターを繰り出すのはとてもリスキーです。あれ?じゃぁダメじゃん!?となりますが、そこで狙い目なのは周回系の競技、公道でも狭い範囲を専有して行うクリテリウムと、自転車専用の競技場で行われるトラック競技となります。
今回は、伊豆修善寺の日本競輪選手養成所内に新設されたJKA250という自転車専用の競技場で開催された「全日本自転車競技選手権大会」にて撮影した流し撮り写真を元にトラック競技における撮影HOW TOを解説したいと思います。ちなみに、このJKA250は残念ながら現時点では一般の観客は観戦不可となっています。
圧倒的スピード感の流し撮りチュートリアル!自転車トラック競技を撮るのが最適な理由。
室内競技撮影の注意点
室内競技撮影において一番に気になるのは、やはり光の量と色です。このJKA250の第一印象は白。トラックはモミの木の集成材で作られており見た目はとても白く、壁、屋根も明るい色で統一されています。白は光を反射するため全体的に光が回り、室内競技場ではかなり明るい環境と言えます。また、白銀の世界に中央の赤い床がコントラストになっています。照明はおそらく全て白いLEDで統一されており、古く体育館によくあるミックス光のような変なクセがない分ホワイトバランスの調整は容易でした。ですが、こういう場合でも念の為にRAWで撮っておくことをオススメします。
さて、早速撮影に移りましょう。ここでまず大抵のカメラの標準的な評価測光で撮影すると、この作例のように白い背景に引っ張られて被写体が暗くなってしまいます。
白背景時の露出補正
皆さんは一面の雪景色を撮影してなんだか暗くなってしまった、という経験はありませんか?そういった時に場合は露出補正を1~2段のプラス補正で撮りましょう。
そこでこのシーンは思い切って+2補正。まるで選手が浮遊しているかのようなハイキー写真が撮れました。これは屋外で選手が逆光時でも有効な撮り方なので、是非トライしてみてください。屋外では太陽光が十分な場合が多いですが、室内でこのシャッター速度を稼ぐには明るいレンズと高感度に強いフルサイズセンサーのカメラがやはり有利になりますね。

シャッター速度:1/320秒、絞り:f/3.2、ISO2000
400mmレンズ使用
おっと流してないって?ではっ!正面の流し撮りは背景が流れにくいので難しいですが、ここまでシャッター速度を落としてレンズを選手の進行方向よりやや先に振り抜くことで、後方に残像を引いてスピード感を演出することができます。このシャッター速度なら低ISOで絞り込むことができるため、高価な機材が不要である点もメリットです。

シャッター速度:1/6秒、絞り:f/5.0、ISO160
400mmレンズ使用
- 室内競技撮影は光の量と色がポイント
- 念のためRAWで撮っておくと吉
- 露出補正を1~2段のプラス補正で撮りと良い
- シャッター速度を落とし選手よりやや先に振りぬいて後方の残像でスピード感を演出
広角レンズでの流し撮り
コーナー内側の広角流し撮り
次はレンズを広角に持ち替えて競技場らしいショットを撮りましょう。
競技場のコーナーは40度を超えるバンク角が付いており、トラックの内側、近くで見ると断崖絶壁のようです。内側から撮影する際は思いの外選手が近づいてくる速度が早く、バンク角の影響で選手の頭は自転車よりもより早くこちらに近づいて来ます。スローシャッターを切る場合は、その動きを意識して体を回転しながら後ろに引くような動作が必要となります。例えばキャッチボールでグローブを引きながら、優しくボールを受け止めるような動きを意識してみましょう。

シャッター速度:1/8秒、絞り:f/6.3、ISO250
16-35mmレンズ使用:焦点距離20mm
コーナー外側の広角流し撮り
トラックの外側からの撮影においてはコーナーの曲線を強く意識する必要があります。体を支点にレンズを振るとコーナーの曲線とレンズが描く曲線が一致しないため流し撮りの成功率が著しく低下します。そこで私はコーナーの曲率に合わせレンズを振り子のように振る、振り子流しで対応しています。
シャッター速度:1/20秒、絞り:f/10、ISO1600
16-35mmレンズ使用:焦点距離16mm
- バンク角の影響で選手の頭は自転車よりもより早くこちらに近づいてくる
- 動きを意識することが大切
- レンズを振り子のように振ると良い
チームパーシュートのピントについて
最後はなかなか流し撮り難易度の高いチームパーシュートです。
4人の息がぴったりと合った全日本クラスのコンビネーションはとても美しいのですが、4人それぞれとの撮影距離が当然異なるので、4人同時にピントを合わせることができません。

シャッター速度:1/15秒、絞り:f/8.0、ISO640
70-200mmレンズ使用:焦点距離70mm
そこで近づいてくる被写体の像の大きさを変えずに撮影できるズーミングと流し撮りを組み合わせるズーミング流しによって擬似的に4人にピントが合ったような写真を撮ることが可能になります。シャッター速度、選手の速度、ズームリングを回す速度とレンズの振りを同調させる必要があるため、習得の難易度はとても高いですが是非トライしてみてほしい技です。

シャッター速度:1/15秒、絞り:f/8.0、ISO640
70-200mmレンズ使用:焦点距離70mm
- ズーミングと流し撮りを組み合わせると良い
- シャッター速度、選手の速度、ズームリングを回す速度、レンズの振りを同調させることがポイント
まとめ
- 室内競技の撮影においては光の量と色に注意しつつRAWで撮影
- 白い背景に露出が引っ張られる場合は1~2段のプラス補正
- トラック内側の流し撮りはレンズを手前に引くような動作
- トラック外側の流し撮りはコーナーの曲率に合わせてレンズを振り子のように振る
- 向かってくる複数の被写体にはズーミング流しで撮ると良い
会心の一枚に出会える日がきっとくる

いかがでしたでしょうか。
自転車のトラック競技において有効となる流し撮りの技を解説しました。少し難易度が高いので成功率は低いかもしれませんが、たくさん練習できる環境を見つけられれば、いつかきっと会心の一枚に出会える日がやってくるでしょうきます。是非一度自転車競技場に足を運んで、迫力のレースシーンを流し撮りで撮ってみては!そして、選手とともにオリンピックを目指すつもりになって今日もレンズを振りましょう♪