こんにちは、Ujihara Masatoshi (@uzzy.76) です。最近は新型コロナウイルスの影響でスポーツイベント自体の開催が少なくなっており、再開してもしばらくは観客のソーシャルディスタンスを保ちながらの開催になるでしょう。スポーツイベントの撮影では最前列がなんの障害物もなく迫力のある写真が撮れるため、好まれる傾向がありますが、そんなベストポジションが確保できなくとも、人垣の後方からでも工夫次第で面白い印象的な写真を撮ることができます。
今回は、そんな観客が多い中でもその状況を逆手に取った効果的な撮影方法をいくつかご紹介していきたいと思います。
はじめに
ベストポジションが取れなくても良い写真は撮れる
スポーツイベントの撮影では、どのポジションから撮影するかということが非常に重要です。
ついつい我先に、他人より一歩でも前へ、選手により近い方へ行ければもっといい写真が撮れるのに、と思ったことはありませんか?私も現場にいるとうっかりそうなりがちですし、確かに選手により近いポジションを確保できれば、他の障害物を気にすることなく迫力あるシーンをフレーミングできる可能性が高くなります。
しかし、それが逆にベストポジションが確保できなかった時や、他の人よりも後ろで撮らざるを得なかった時に、いい写真が撮れない言い訳になっていたり、モチベーションの低下の原因となっていたら、それはとても残念なことです。そうならないように、今回は発想を転換して、シチュエーションごとの流し撮りについて考察してみましょう。
スポーツイベント撮影時の混雑を活かしたテクニック!観客フィルターで魅せる1ランク上の流し撮り術
観客と流し撮りの合わせ技
最前列がとれず、観客が自分より前にいる状況では一体何をどう撮ればいいか。
それは、ズバリ観客をいれて撮る。なんだそんなことか、当たり前じゃないか。大げさに引っ張った割には分かりきった答えですが、意外と抵抗の多い人も多いかと思います。観客を入れとるということは観客一人ひとりを特定可能な情報が写り込み過ぎるということ。個人情報や肖像権の問題でレンズを向けられることを快く思わない観客も多くいらっしゃるのが現実です。
そんな懸念をある程度一気に払拭してくれる撮影方法が、流し撮りとの合わせ技です。
あえて引くという選択肢がより印象的な写真に
上の作例においては手前の観客を多くとりいれていますが、流し撮りの前景としてブレており、個人を特定する情報は少ないので、選手側の承諾さえあれば公開可能なレベルです。
これは観客席の最前列ベストポジションが確保できなかった場合に、1歩2歩、いや10歩引いてかつ選手と観客が俯瞰できる位置からの撮影です。写真の前ボケというテクニックがありますが、これを流し撮りにおいての「前ブレ」と名付けました。被写体の速度と被写体、観客との距離にもよりますが、この作例のように1/30秒のシャッター速度でも十分に観客を溶け込ませることが可能です。
各メーカーのオートフォーカス特性にもよりますが、AF-CやAi-servoで最初に選手にフォーカスを合わせても観客を横切った際に手前にフォーカスが乗り移ってしまうことが多いです。特に観客がこの作例の密度だとフォーカスエリアの工夫が必要です。
前ブレを入れる際の注意点
- オートフォーカスが観客に持っていかれがち
- AFエリアに観客が入らないラインを狙う
隙間から切り取る撮影手法
では、この前ブレ効果をさらにやんちゃに発展させた上の作例をご覧ください。これは選手、観客と同じグラウンドレベルに降りた位置から観客を全面にとりいれて、隙間から見える選手を撮影しています。観客が完全に溶けて、選手の輪郭が残せる絶妙なシャッター速度を探った結果1/8秒に辿り着きましたが、当然その時の選手の速度、観客の密度等各条件によってベストは常に変化するので色々と試してみてください。
そして、このシチュエーションで最も問題となるのが前項でもあったオートフォーカスです。もはや現在の最新カメラをもってしてもオートフォーカスで選手を追い続けることは絶望的です。そこで活躍する古典的テクニックが置きピンです。
置きピンのポイント
- 選手が通るであろうコースのライン上にフォーカスしたまま、選手が通過する瞬間にシャッターを切る
- 撮影者と地面と選手との位置関係によってわずかなコサイン誤差が発生するので、気になる場合はフォーカスする場所を微妙に前後させて調整する
親指AFで決定的瞬間を逃さない
親指AFのススメ
- シャッターボタンのAFをオフにして、親指AFのみ作動するように設定
- 親指AFでフォーカスを合わせたあとは親指ボタンに触れなければ何度でもシャッターが切れる
- オン/オフ時ともカメラをしっかり握れるため、流し撮り時のブレ防止にも効果が期待
前ブレは色が重要
黒、白やグレーのモノトーン調のみの服装では作例のような鮮やかな色が出せません。やはり原色系の鮮やかな色の入った服装の観客を探しましょう。この作例では一部鮮やかなカラーは出ているものの、白の面積が多くややうるさい写真となってしまいました。
この日は下の写真のような客層の状況でした。そこでなるべく色味のある服装に絞り、白や黒の観客を画面から排除して狙った結果、上の作例では赤、青、黄色と様々な色を画面全体に撮り入れることができました。
ここからこんな風に撮れるのが写真の面白いところです。
選手のスピードと観客同士の間隔、そして観客の服装の色彩によって仕上がりが大きく変化するこの撮影テクニックを観客フィルターと呼ぶことにしました。走りゆく選手の全身が細切れに見える隙間があれば勝算アリ!?是非一度トライしてみてください。
観客の色に注意しよう
- 原色系の鮮やかな色の入った服装の観客を探す
まとめ
今後さらに使えるアイディア
いかがでしたでしょうか。スポーツイベント撮影におけるポジション取り、ベストポジションではないと思われる場所からの撮影でも工夫次第で印象的な写真が撮れるアイディアをご紹介しました。
スポーツイベント自体の開催が少なくなってきていますが、ソーシャルディスタンス、今後観客の隙間は広がる一方なのでこういったシャッターチャンスは増えるかもしれません。また観客フィルターはスポーツイベントに限らず例えば沿道の並木や旗、柱など別の前ブレ素材にも応用できます。新たな被写体、素材による流し撮りアイディアを是非みなさんで探してみてください。