人間の目に見えないものを写す 赤外線写真 の魅力!撮る為に必要なものから撮り方までのスタートアップガイド。

はじめまして。今回初めてヒーコに寄稿させて頂きます。なんでも撮ってみたくなっちゃう人のしふぉん(@shiifoncake)と申します。

今年3月に大学を卒業し、現在は東京を拠点としてフリーランスのフォトグラファーとして活動させて頂いております。よろしくお願い致します。

今回は赤外線写真というものについてお話しします。この記事を読んで少しでも興味を持って頂けましたら幸いです。

人間の目に見えないものを写す 赤外線写真 の魅力!撮る為に必要なものから撮り方までのスタートアップガイド。

赤外線写真とは

そもそも赤外線とはというお話からしていこうと思います。

赤外線とは…可視光線の赤色より波長が長く、電波より波長の短い電磁波で、人間の目には見えない光。

この赤外線の中でも細かく分けると、近赤外線、中赤外線、遠赤外線の3つに分けられます。

赤外線の分類

軽く特徴を説明すると、以下のようなものとなります。

近赤外線
波長がおおよそ 0.7~2.5um の範囲の赤外線で、赤外線の中では最も可視光線に近い波長で、TVなどのリモコンや静脈認証などに使用されている。

中赤外線
波長がおおよそ 2.5~4um の範囲の赤外線で、近赤外線と遠赤外線の両方の特性を持っている。

遠赤外線
波長がおおよそ 4~1,000um の範囲の赤外線で、赤外線の中で最も可視光線から遠い特徴を持っていて、暖房効果が最も高いため暖房機やオーブン、最近では無煙の焼き肉プレートなどに使用されている。

赤外線写真に該当するもの

赤外線写真は分類の中で最も可視光線に近いとされている”近赤外線”と微量の可視光線を撮影したものになります。しかし、撮影段階ではこのように全体がマゼンタ被りしてしまった写真になります。

一般的な赤外線写真

そのため、一般的にはモノクロにしそれを赤外線写真と呼んでいます。

カラースワップという手法

私がよく投稿している写真や最近よく見られる水色とピンクの幻想的な写真は、撮影したものをカラースワップという手法で色を変換させたものになります。

この先はカラースワップしたカラーの赤外線写真について話していきたいと思います。

赤外線カメラは暗闇で物を見る暗視カメラ、また、最近よく見るサーモグラフィーなどの非接触型体温計にも使用されています。なぜかというと私たち人間や物体など熱を持っている物は全て赤外線を出していて、その赤外線を感知することで可視化しているからです。

その為夜でも撮影自体は可能です。

日中に撮影が向いている理由

しかし、赤外線写真は基本的には日中に撮影されることが多くなります。というのも夜間の撮影は太陽光線から得られる赤外線が無くなる分、長時間露光による撮影が必要になり難易度が高くなってしまうからです。

ですので、今回は日中撮影についてのみお話ししたいと思います。

もし夜の赤外線写真について興味がある方は、2017年に写真家の山谷佑介さんが、夜の住宅街を赤外線カメラで撮影した写真集を出されているので調べてみて下さい。

赤外線写真の魅力

赤外線写真の魅力ってなんだと思いますか?

赤外線写真の魅力は一言で言えば写真とは思えないほど”幻想的”に見える点であると考える方が多いのではないでしょうか?

しかし、私はただ”幻想的”に見えるということだけではなく、元々知っている場所であるのに私たち人間が見ることができない世界が写されることで”幻想的”に見えるという点が面白いと思っています。

また、カラーの赤外線写真では撮影段階では完成形が想像しにくい面もあり、編集までのワクワク感も魅力の一つだと感じています。

東京タワーの全く異なる表現

例えば日本人なら誰もが知っているような名称である東京タワー。

普通に撮った写真だとこのように見たことある”赤い”東京タワー、そして周りの木々の葉っぱは当たり前に緑色もしくは紅葉の季節では赤だと思います。

しかし、同じ場所で撮影するとこのようにマゼンタ被りの状態になります。

そして、カラースワップすることで東京タワーは、木々は淡いピンクに染まり、青は水色という幻想的な世界に仕上がります。

カラーの赤外線写真では赤外線を反射するものはピンクっぽい色に、赤外線を反射しないものは水色になります。

このように植物などが淡いピンク色(モノクロでは白)になることをスノー効果と言います。

スノー効果

簡単に分けてみると、こんな感じになります。

赤外線を反射しやすいもの:ピンク
  • 木(主に葉っぱ)
  • 植物(一部を除く)
  • 木造物(神社など)
  • 一部の塗料
  • 特殊な窓
  • 一部の洋服
赤外線を反射しないもの:水色
  • 建物

たまに工事現場の防音のシートなど、予期しない部分が赤外線を反射することがある点も魅力だと考えています。

撮影する時に赤外線を反射しやすいものと反射しないものを両方取り入れることを意識しておくと、より幻想的な写真になると思います。

赤外線写真を撮る為に必要なもの

赤外線は最初に説明した通り人間の目には見えません。

通常市販されているカメラでは今私たちが見ている世界をそのまま写し出すために、センサー部分に赤外線遮断フィルターが組み込まれており、ほぼ赤外線が透過しないように作られています。

ではどのようにして赤外線を撮影するのか?という疑問が浮かび上がってくるかと思います。

デジタルカメラで撮影する3つの方法

デジタルカメラで赤外線写真を撮影する方法は3種類があります。

その1 通常のデジタルカメラ+IRフィルター

デジカメは通常赤外線遮断フィルターによって赤外線はカットされていますが、ごく僅かに赤外線が透過しています。

この僅かな赤外線を使用したのが、通常のデジカメに可視光遮断赤外線透過フィルター(以後IRフィルター。kenko tokinaのPRO1DのR72とかFUJIFILMのシートフィルター)を利用して撮影する方法になります。

しかし、可視光線の大部分をカットしごく僅かな赤外線を撮影するため、長秒露光が必要となり日中でも三脚は必須になります。

その2 赤外線カメラ

赤外線カメラは通常センサーについている赤外線遮断フィルターを除去し、可視光遮断赤外線フィルターに置き換えてあるもので、大部分の可視光を取り除き赤外線を取り入れることで赤外線写真を撮影する方法です。

その3 フルスペクトルカメラ+IRフィルター

フルスペクトルカメラは赤外線遮断フィルターを取り除き透明のガラスフィルターに置き換えることで、可視光をカットすることなく赤外線もとり入れるものです。その為レンズの前につけるフィルターによって撮れる画が異なり、赤外線写真においてはIRフィルターをつけ撮影します。

選び方

その2~3においては赤外線遮断フィルターを取り除いている分、取り入れることのできる赤外線量が多いので、その1のような長時間露光などは必要なく通常撮影が可能な為手軽に赤外線写真を楽しむことができます。

しかし、基本的に赤外線カメラやフルスペクトルカメラは市販はされていないため、改造されたものを購入するか、自分で改造、もしくは改造業者に出す必要があります。

私は現在はSONYのα7Ⅱの改造されたフルスペクトル機とkenko tokinaのIRフィルターを使用して撮影しています。

Amazonなどに海外製などのIRフィルターなども安く販売されていますが、中にはあまり性能が良くない物もあるので購入には注意が必要です。

また、最近では赤外線撮影用のコンデジが海外のIRに力を入れているメーカーから発売されているので、始めようと思っている方はぜひチェックしてみて下さい。

赤外線写真の撮り方

最初の「赤外線写真とは」でお話しした通り、撮影段階ではマゼンタ被りした写真になります。

その後カラーの赤外線写真にするにはカラースワップが必要で、カラーの赤外線写真における肝はここだと私は思っております。

今回はカラースワップの詳細までお話はできませんが、カラースワップがうまくいく為の撮影のコツを含めてお話しします。

RAWで撮影

カラースワップするためにはjpegでは編集の自由度が低く難しいので、RAWで撮影しましょう。

天気と季節

赤外線写真自体は曇りでも撮影することはできますが、どうしても植物などの赤外線の反射が少なくなるためコントラストが弱い画になってしまいがちです。

コントラストの高い写真を狙う場合には晴天の日がオススメです。
特に夏場は日差しも強くコントラストの高い画が撮影しやすく、また、木が生い茂っているため面白い写真が撮影しやすいです。

太陽の位置

カラースワップを意識した撮影においては、太陽の位置を考慮した撮影が重要です。
基本的に順光もしくはサイド光での撮影が必要になります。
逆光ではゴーストが出やすく、影になってしまうことで赤外線が反射しにくくなりカラースワップが難しいことが多いです。

また、サイド光でも撮影時は問題がなくてもカラースワップしてみると、実はゴーストがあってゴーストの部分が赤くなってしまうことがあるので注意が必要です。

撮影したい被写体が既に決まっている場合には、事前に太陽の位置やベストな時間帯を調べておきましょう。

ホワイトバランス

カラースワップするには、撮影時に少し色の分離ができていた方がやりやすくなります。

この写真の様にカラースワップした時にスノー効果の得られる植物とその他の空などの色が若干異なる様に、ホワイトバランスん調整して撮影しておくことがベストです。

以上の4つを意識して撮影しておくことで、カラースワップ時に上手くいかずボツになってしまう写真を減らすことが可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

赤外線写真というものを聞いたことはあるものの、よく分からずハードルが高いと感じていた方も多くいらっしゃったのではないかと思います。私自身始める時は情報も少なく、始めてからも周りに中々赤外線写真をやっている方が少なく相談できる相手がいなくて困っていたので、そういった方々の助けや始めてみるきっかけ作りになれていたら幸いです。

フリマアプリやオークションなどで2万円程度で改造済のフルスペクトル機が手に入るので、ぜひ始めてみてはいかがでしょうか?

私も最初は9年前に発売されたSONY NEX-F3のフルスペクトル機を購入し撮影していましたが、十分撮影可能でしたのでせび。

(太宰府天満宮や千綿駅の写真はこれで撮影しました。)

記事中に紹介した機材

PRO1D R72

光吸収・赤外透過フィルター(IRフィルター)

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