構図や配色を学ぼう!元デザイナー視点から考えるデザイン的な写真をとるための思考方法

こんにちは、fratto(@fratto_pr)と申します。カメラマンとして仕事しながら、自主制作でグラフィカルな表現や配色を用いた物撮りを発信しています。

この記事はデザイン的な考え方の話が9割になっています。カメラ技術の話はほとんどしておりませんが、普段とは違ったベクトルから写真を考えるきっかけになれば嬉しいです。

構図や配色を学ぼう!元デザイナー視点から考えるデザイン的な写真をとるための思考方法

考える内容の違い

まず前提として、写真の目的ごとに撮影者が考える内容が違うことを確認しておきましょう。

例えば、

(A)富士山が湖に映った風景を撮る時
(B)白い紙をテーマに撮る時

かなり考える内容が変わると思います。

(A)の場合、目視ですでにわかりやすい感動があります。この時カメラマンが考えることは【どこから撮るか、構図、季節や時間帯、使う機材、現像方法】などが一般的かと思います。対して、(B)の場合はどうでしょう。白い紙だけではそもそも「撮影したい」と思わないのではないでしょうか。

ただし、そこに何か伝えたいテーマがある場合【自分の選んだシチュエーションに置いたり、折ったり切ったり、どんな光で撮るか、被写体までの距離感、登場する他の要素など】を自分で決めて行くことになります。この記事では(B)のように自分でコントロールできる被写体で、自分の伝えたい意図をどのように構図や配色に落とし込むかを解説します。

被写体選び


被写体は自分の好きなものがオススメです。当たり前のように感じるかもしれませんが、被写体を観察するモチベーションが自分の中にないと伝えたい内容が思いつきにくいからです。思い入れのあるもの、自分がそれについて良さを語れるものを選ぶのが良いでしょう。ちなみに私は野菜や果物が好きなのでそればかり撮っています。

先の話で、富士山の対比として白い紙をあげたのは、それ自体の被写体力に圧倒的な差があるもので説明をしたかったからです。ある程度被写体自身の力があるものだと、置いただけで様になってしまう場合もあります。正直、白い紙にそこまで思い入れはありませんが、今回は「自分で意図を考えデザイン的な表現に落とし込む」ことをわかりやすくするために、白い紙を撮影する場合を考えてみましょう。

感動ポイントを明らかにする

何が良くて、どこを伝えたいのか自分が感動しているポイントを探してみます。

白い紙の場合、例えば

  • 質感の良さ
  • 白さが綺麗
  • 何でも自由に書き込める自由さ

などが思いつきます。

人によっては深いストーリー的なテーマを見出すかもしれませんね。この中で、自分が一番伝えたいポイントに目をつけることが大切です。

表現を考える

今回は「質感の良さ」を伝えると決めたとします。単に机の上に白い紙をパッと置いただけでは見た人には何が言いたいのか伝わりません。「質感の良さ」を伝えるための表現が必要になってきます。

  • いろんな画材で書いた時のリッチな広がり
  • 紙を曲げた時にできる緻密な影のグラデーション
  • 紙を扱う手のポーズや表情で満足感を見せる

例えばこんな表現を思いついたとします。

構図や見せ方を考える

次に、その表現が伝わりやすい構図や見せ方を考えます。

いろんな画材で書いた時のリッチな広がり

描いた部分の質感がわかりやすいようにクローズアップして切り取ります。滲んで行く様子をアニメーション的に複数枚で見せるなども考えられます。画材の違いごとに整列させてデザイン的に構成するのも良いかもしれません。

紙を曲げた時にできる緻密な影のグラデーション

グラデーションになる部分を切り取って絵画のようなイメージに。曲げた時の曲線を重なりにして波や雲海のような模様に見せても面白そうです。

紙を扱う手のポーズや表情で見せる

その置かれているシチュエーションも説明しつつ、人と絡ませたストーリーで組写真で伝えます。手のアップや、全体の引きなど状況の説明のできるカットを撮影します。

このように、意図を伝えやすい構図や、見せ方に考えを巡らせていきます。当てる光や配色もこの時同時に思い浮かぶことが多いでしょう。何を伝えたいかが決まっているから表現や構図を考えられる。この工程が一番重要な部分であり、楽しいところだと考えています。

被写体の配置や構図のヒント

自分で決める要素が多いため、構図や配置を考える際に悩んでしまう方もいるかもしれません。そんな方はまず次の3種類の違いを意識してみてください。

規則的

規則的な法則の中で複数のモチーフを並べていく方法です。わかりやすいグラフィカル表現にしやすく、カッコ良さや人工的なイメージを出しやすいです。また、色数が多く画面が散らかる場合には統一感を持たせることができます。

有機的

やさしい印象や、自然な雰囲気を伝えたい時によく使います。ものの配置で曲線を描くようなイメージを持つと置く場所を決めやすいのでS字や波をイメージして構成してみてください。

象徴的

日の丸構図もこれに含まれ、存在感を強調したり、被写体に注目させる力が強いです。中心だけでなく極端に端に寄せて余白を多く取ったり、あえて納まりの悪い並びにする場合も私はこれを意識しています。場合によっては見慣れない配置となり、少し不思議な雰囲気や何かの特別な意図を醸し出せます。

ここで重要なのは「何となく」で配置を決めるのではなく「このような理由があるから、今、規則的/有機的/象徴的に配置しようとしている」と、自分自身で理解しながら構成を決めて行くということです。

配色の決め方

被写体の元々持っている色や、伝えたい内容によって配色も決まってきます。例えば、夏の爽やかで元気なイメージを伝えたかった場合、灰色を用いて表現するのは難易度が高いと思います。夏の空やひまわり、スイカや海などが連想される鮮やかな色の方が伝わりやすいですよね。

他にも

  • 被写体の持っている色が映えるから、補色を使った
  • シンプルな画面にしたかったから、被写体と同系色にして色数を絞った

このように、色についても「なぜその色にしたか」自分自身で説明がつけられるような選び方をしていきましょう

配色のヒント

どうしても配色を考えるのが苦手な方は、色数を1〜3色以内に絞ることを意識してください。ここでやりがちな失敗が、基本の色を決めずに「じゃあとりあえず3色使おう」と決めてしまうパターンです。そもそも三色の組み合わせが間違っていた場合など、スタイリングの難易度が上がってしまうことが多いのです。

まず基本になる色を1色決め、画面の8割は基本の色で攻めてみてください。残り2割に他の1〜2色が入るバランスを意識すると画面がまとまりやすくなります。もちろん、全てこれに当てはまらないといけないわけではありません。ですが、このように少ない色数で練習していると「画面の色をまとめる感覚」が身についてきて配色を考えるのが楽しくなってくるはずです。

撮影中に気をつけること

撮影については、考えた内容を実現できれば問題ありません。光の回し方や強さが意図に沿っているか、計画になかった邪魔な要素が写り込んでいないかなどをチェックします。

機材は、ストロボを使うことが多いですが、これは色の再現性や光の均一感、影などのコントロールがしやすいからです。もちろん、部屋にいい光が入って、それが目的に適うのでしたら自然光でも問題ありません。ここで言いたいのは自然光がいいのか、ストロボがいいのかというような話ではなく 、「たまたま、この光だったから」ではなく、自分の意図によって光も選択することが大切ということです。

まとめ

  • 被写体は自分の好きなものがオススメ
  • 自分が一番伝えたいポイントを探す
  • 意図を伝えやすい構図や見せ方に考える
  • 規則的に並べると統一感がでる
  • 曲線のような配置をすることでやさしい印象や、自然な雰囲気になる
  • 象徴的に置くことで存在感を強調したり、被写体に注目させる
  • 伝えたい要素を色にする
  • 補色を使うと被写体の色が映える
  • 同系色にして色数を絞るとシンプルになる
  • 使った色を説明できるようにする
  • 色数を1〜3色以内に絞る
  • 自分の意図によって光を選択することが大切

さいごに

以上、グラフィカルな表現と配色の考え方についてご紹介しました。私自身が新人デザイナー時代につまづいたポイントなど、丁寧に解説したつもりです。もし少しでも役に立つと思ったらSNS等でシェアしていただけると嬉しいです。

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