今回は、普段印象的で世界観のある風景・スナップ・人物作品を主に撮影しているco1(@co1)氏に、「co1氏が撮ったイルミネーションでポートレート撮影をした写真が見たい!」という編集部員の私利私欲にまみれた個人的な願望をぶつけてみたところ、なんとご快諾頂いたので、そのイルミネーション撮影にすーちゃん(@iamnilcotcom)がご一緒させて頂きました!
その撮影の中でco1氏に語って頂いた、イルミネーションの光を使ったポートレート撮影テクニックをご紹介します!
はじめに
イルミネーション撮影基本のキ
co1氏に聞く、イルミネーション撮影はここが難しい!
「ザ・ポートレート!みたいな写真もあまり撮らない」
「そもそもモデルさんと話すのが怖い」
というco1氏によると、イルミネーション撮影はここが難しい!というポイントはいっぱいある、とのこと。
難しいポイント
- 季節もので、そんなに毎度撮れるものではない
- 露出計が当てにならない
- 暗くて ブレやすい
- 人が多い…
確かに…と感じる方は多いはず。改めて考えると、イルミネーションって、難易度高すぎませんか?(汗)
非日常と現実
その苦手なイルミネーション、うまく撮影していくにあたってのコツを教えてもらいました!
イルミネーションという場は次の2つの異なる要素が混ざっています。
- 非日常を感じさせる要素
(「華やかさ」「明るさ」「綺麗さ」などを印象付けるもの) - 日常を感じさせる要素
(「生活感」「工業感」などを印象付けるもの)
これらが狭い場所にいっぱい混在しているので、何も考えずに撮影すると1と2の両方がごちゃごちゃと写り込んでしまい、散漫な写真となってしまいます。
この2つの要素のうちどちらを切り取るのか、もしくは2つの要素をどのくらい混ぜ込むのか、をはっきりさせて考えてやると、構図をすっきり整理できて良いでしょう。
なるほど!この2つのポイントは確かに全く異なるものですし、どちらかを切り取るかを決めて絵作りしていきたいですね!
欲張らない事が大事
イルミネーション撮影となると、あんまり欲張らない事が大事です。がっつかないのが重要かもしれません。たとえば、
- イルミネーションの綺麗さを写すならそちらを重視
- 一緒に行った友達や恋人、パートナーを写すならそちらを重視
というように、何もかんも詰め込もうとするよりは、優先を決めてそちらを生かす事が写真の統一感・まとまりに繋がります。
たしかに!すごい混雑になることもありますし、他の人も沢山いるためあんまりがっついて撮影出来る場所でもなさそうです。
今回のポイント
今回のアドバイスとしてまずおススメしておきたいのは、「写真に埋め込みたい要素をシンプルに絞り込むこと」です。
いつもその「シンプルに絞り込む」ばかり言っている気がしますが、ではどうやって実際に絞り込んでいくのか、具体的に撮影をしながら説明していきましょう。
構図を整理していくアプローチ
今回のイルミネーション撮影に対しては、
-
「イルミネーション感を増幅させる非日常要素」
「イルミネーション感を減衰させる日常要素」
に分けて、そのそれぞれに対して「画面内に入れる/入れない」を判断していくことで、構図を組み立てていきましょう。
とはいえ、そんなに難しいことはないです。通常の撮影において、被写体の要素を整理していくための選択肢ってそんなに多くなくて、
- 画面の外に外す
- 黒く潰す、白く飛ばす
- ボカす
- ブラす
- 別のもので隠す
- 均等配置で気にならなくする
あたりしかありません。これらのどの要素を使っていくかを判断していきます。これらの組み合わせができれば構図は結構簡単に作り込めます。
なるほど!これは手に書いときたい内容!このテクニックを組み合わせて撮っていけば、多くのバリエーションで撮影ができそうです。うまく撮れない…って時は片っ端から試していきたいですね!
夜の外灯を使った撮影テクニック!イルミネーションで雰囲気あるポートレートやスナップ写真を撮る方法
ここからは、co1氏に実際に撮っていただいた写真を例に、テクニックをお教えいただきます!
今回はモデルのなこ(@naco_naco_33)さんに協力して頂きました。ありがとうございました!
被写体の向きについて
「イルミネーションをバックに」と考えると明かりを背にしてしまいがちです。何も考えず普通に明かりを背に撮ると、大抵はこうなります。…ふだんの僕の写真こんなんばっかりですけどね。
明かりを背にしてしまうと被写体の顔に光があたりませんから、イルミネーションと人を同時に撮るのであれば、何らかの光を顔に当ててやると良いです。なので、イルミネーションの方を向いてもらって写真を撮りましょう。
撮った写真がこちら。
イルミネーションと人を向かい合わせにして、自分はその間から撮影すると顔に光が当たった写真になります。
また、イルミネーションと被写体との距離をある程度取って、大きめにボカしてやるとイルミの華やかさ成分が増えてくるので、適宜入れると効果的です。
玉ボケも陰影感もとても好きです!とco1氏に言ったら、「まだちょっと暗めかもしれませんけどね」と言われてしまいした。ちょっと思考がネガティブすぎです!
カメラを前後左右に振って、邪魔なものをうつさないようにしましょう
撮影前まで雨が降っていて水にイルミネーションが反射していました。しかしその場所にはエレベーター、看板、通行人など、他の日常的なものもたくさん存在します。そのまま撮ると、なんというか印象の弱い写真、整理できていない写真になります。
そんな場合は思い切って部分だけを切り取りましょう。今回はくるくる回るスカートのゆらめきと、反射するイルミネーションだけを写すようにしました。
最初の写真は、そのまま撮った感が出てましたが、2枚目は確かに日常的なものが画面からいなくなってますね!しかもダークサイドな写真でかっこいい!!儀式的な雰囲気を感じます。
写したくないものは手前のもので隠してやろう
思わず撮っちゃいそうな写真が撮れました。モデルさんの顔に当たる光が少なく、また後ろの店舗の光が明るいため、店舗の印象が強くなってしまって日常感が前面にでてきてしまっています。そちらの明るさに引っ張られてイルミネーションもモデルさんも暗くなってしまっています。
こういう場合。イルミネーションを背にするんではなくて、モデルさんの顔に光を当てていきましょう。という事でちょっと方向を変えて撮ってみます。
かなり近づいて、イルミネーションが飾られている生垣に平行にカメラを向けています。今回は、
- イルミネーションにぐいっとカメラを近づける
- カメラの向きを変える
ことで、店舗をイルミネーションの陰に隠してやりました。
イルミネーションの明かりが前ボケになっていることからわかるように、カメラはかなり近づけています。あ、立入禁止の場所には入っちゃだめですからね!
モデルさんに外灯の横に立ってもらって、位置を細かく指示されていたので何だろう?と思い、その理由を後から伺うと「外灯に顔を近づけてもらうことで、ストロボなどでライティングをしなくても顔がアンダーにならないようにしていた」ようです!ストロボなど照明機材を持っていなくても工夫次第で問題なく撮れちゃうんですね〜!
構図を整理しよう
記念写真としてはたぶんそんなに悪くないんですが。ちょっと残念感が出ています。いかんせんイルミネーションスポットには沢山の方がいらっしゃいますから、うっかり写り込んでしまう場合は多々あります。後ろにちょっとイマイチだなと思う要素が写っていた場合は、あの手この手で消し込んでやりましょう。
被写体に寄る
こういう場合、イルミネーションを後ボケにして、モデルさんにぐぐっと寄ってしまえばいちばん手っ取り早く構図を整理することができます。
撮影の角度を変える
上のような写真の場合は、これも後ろに他の人が写ってしまってますので、モデルさんを中心にして撮影者が回り、カメラの位置を変え、撮影の角度を変えてやることで、背景を変えることができます。
この写真の場合は、実は通路の反対側(カメラの背後)にもイルミネーションがあったため、明かりに背を向けても顔に光が当たっています。
好みでもっと明るいのが好きな人もいるでしょうけど、そもそも暗い場所ですし、このくらいが好きです。
無理やり明るく撮るのではなく、暗闇を恐れないco1さんスタイルがさすがです!もはや、暗い写真と言えばco1さんと言っても過言ではない!
見えないものこそ見たくなるものなのです。写真目を凝らしてモデルさんの顔をじっと凝視しましょう。
………………………………………………(凝視)。
欲張らない
最初はNGカットかなーと思って撮ったんですが、モデルさんパワーで思ったほど悪くなりませんでした。ですが、ちょっと散漫な感じしますよね。新宿なのでドコモタワーも入れたくなるかなと思い、モデル・タワー・イルミネーション、を全部盛りしてみました。その結果、他の通行人や建物の明かりも入り込んで何が写したいのかわかりにくくなっています。全部入れたいがために何も入らない、みたいになっちゃった場合、見せたいものをシンプルに絞り込むと良い場合も多いです。
改善後の写真がこちら
こちらの方が、シンプルで見せたいものが分かりやすい写真になりました。
ついつい、あれもこれも〜!って入れたくなりがちですが、二兎を追うものは一兎も得ずと言いますし、一途にいくのが肝心ですね!!!
ライトを使う手もあり
Before / After


これはすーちゃんが持っていたLEDライト(バッテリービデオIRライト HVL-LEIR1)を横からモデルさんに当てて、顔を軽くライティングした写真です。決して光量は強くないんですが、もともとが暗いのでちょっと使うだけでもけっこう効果的です。
このLEDライトは前に記事にもしたんですけど、やっぱりあるとないとでは全然違う!持ってると何かと便利ですね〜。
カメラの上下位置を変えてやるのも良い方法
(坂になったアーケードの天井から、イルミネーションが藤棚みたいに吊り下がっている場所に来ました。人通りの数もすごい!)
結構な混雑した場所に到着。他の人が写りこまないようにしてやりましょう。
構図を整理するために「寄る」「カメラを左右に振る」「自分が左右にうごく」がありましたが、「カメラの位置を上下に振ってやる」方法もあります。



トライ3がモデルさんと同じ高さから撮影したもの。画面下半分に、アーケードがボケて写り込んでおり、イルミネーション感が少し薄れています。
トライ1とトライ2は通行人が消えているのが分かるかと思います。これは自分がしゃがんで、やや見上げ気味に撮影しています。撮影者→被写体→背景と結ぶラインが下から上に上がっていきますから、背景に天井のイルミネーションだけを写すことができます。
また、この場合もモデルさんの顔に光を当てるための工夫をしています。トライ1はモデルさんの背後にしかイルミネーションがありませんから、顔がだいぶアンダーになっています。すーちゃんはこの写真が好きと言ってましたが、僕個人もこの感じは好きですが、モデル撮影としてはあんまり一般的ではないですよね(笑)。
なので、モデルさんの顔に光を当てるためにちょっと工夫をしてやりましょう。前にやった外灯に顔を近づけるのと同じ方法です。会場の案内板の前に立ってもらい、その光を受けて顔をライトアップさせました。
スタジオでは当たり前のように光を作りますが、屋外でもモデルさんにいろんな方法で光を当ててやるんですね!日が出ている時間帯に撮影する時は良い光を探したりしますが、夜も光を探すのは一緒なんだなあと気づかされました。むしろ、夜の方が明かりが必須ですし(昼間は探さなくても明るくはあるだろうから)、夜撮影はこれ無くして通れない道なのではないでしょうか。
そうです。使えるものがあれば何でも使ってしまいましょう。先ほどのLEDライトや、イルミそのもの、看板、スマホの画面、他にも自動販売機とかあれば、そういうのをつかってやるのも良い方法です。
他の作品はこちら
Instagram:
https://www.instagram.com/napopo_33/
Twitter:
https://mobile.twitter.com/naco_naco_33
まとめ
- イルミネーション撮影が難しい理由
- 季節もので毎度撮れるものではない
- 露出計が当てにならない
- 暗くて、ブレやすい
- 人が多い
- 非日常と現実を感じさせる要素が混在しないようにする
- いろんなものを写そうと欲張らない
- 写す要素の優先を決めて撮ると吉
- 「イルミネーション感を増幅させる非日常要素」「イルミネーション感を減衰させる日常要素」に分ける
- 被写体の要素を整理する方法は、画面の外に出す・黒くつぶす・白く飛ばす・ボカす・ブラす・隠す・均等配置で気にならなくする
- 被写体の向きが大事
- 邪魔なものを写さない
- 構図を整理する、被写体にぐぐっと寄るのも手
- 撮影の角度を変えると、全く違う印象になったりする
- ライトを使うのもあり
- カメラの位置を上下に振ってやる
撮影風景
本記事でご紹介したco1氏の撮影風景がこちら!終始、楽しく撮影は進んでいきました♫
イルミネーションも光源の一つとして考える
co1氏の撮影する世界観もありつつ、きちんとポートレートも撮って頂き、大変豪華な記事となりました。圧倒的感謝です。この沢山のテクニックは、イルミネーションに限らず根本的に「光を見る」「構図を考える」という観点からも大変勉強になると思うので、皆さまもこのテクニックをお試ししてみては。
そもそもイルミネーションを綺麗に撮ろう!って思うより、要は街灯ですし、光源の一つと捉えて上手く利用するくらいの気持ちで撮影するのが上達への一歩なのかもしれませんね。夜撮影には苦手意識がありますが、この記事を何度も読み直して来たるべき時(来るのか?)に備えたいと思います。
すーちゃん