独学カメラ初心者がつまずきがちな「光」への効果的なアプローチ法

独学カメラ初心者がつまずきがちな「光」への効果的なアプローチ法。こんにちは、高橋ユカコ(@neotenylab)です。「高橋さん」被りが多すぎたため、通称「ゆっか」はじめました。

「光」は写真にとって最も重要な要素!そして、独学者の最も意識が抜け落ちやすいポイントです。私も抜け落ちまくりで、足踏みをしていた苦い思い出があります。

今回はそんな過去の具体例を元に、独学者が効率的にステップアップする方法について書きました。では、早速行ってみましょう!

独学カメラ初心者がつまずきがちな「光」への効果的なアプローチ法

「光」が見えていないと上達しない

今だから言えることですが、わたしは仕事として写真を撮り始めた当初、「」が見えていませんでした。「薄曇りは肌がキレイに写る」みたいな常識は知っていても、変でなければさほど意識もせず、たまに賞をとっても、その理由が「光」を偶然うまく捕らえていたからだと気づきませんでした。

「なんか今日の私うまく撮れる!」「今日は何をやってもうまくいかない…」

と、いつも一喜一憂。うまく撮れた日は「光」の条件が最高に良かった、残念な日は、光の条件的に救いようがなかっただけなのに。運やスランプと勘違いしていたのです。

変わったきっかけ

変わったきっかけは、スタジオ経験のある同僚のカメラマンと出会ったことでした。当時私は、邸宅型ウェディングの式場で、ロケーションを生かしたスナップ撮影をしていました。屋外撮影は、時間帯や天候に左右されます。当時まだ二十歳そこそこだった私は、毎回場所選びや絵作りに振り回されていました。

そんな私とは違い、いつも安定した写真を撮っていたのがカメラマンのIさん。特に花嫁のポートレートは絵画のような美しさ。その繊細さは、他のカメラマンとも一線を画していました。Iさんの写真の秘密を知りたいと思った私は、彼の撮影をたびたび覗き見…。すると、Iさんは花嫁を立たせる前に、立たせるであろう場所に手をかざして向きを変えたり、前後に移動したりして何かを確認しているのが見えました。一体何を気にかけているのだろうと私はIさんに聞いてみました。

光の当たり方を見てるんだよ

Iさんが言うには、光に向かってどのくらいの角度で立たせるか、壁からの照り返しの光がどのくらい入るかで、見え方が変わるというのです。試してみると、位置を前後したり、向きを少し変えるだけで、光の当たり方が変わっていくことに気づきました。ほんのわずか数センチの違いで、写り方がまるで違うのです。

印象は光でコントロールする事が出来る

「印象は光でコントロールできるんだ…!」

それは、写真への態度が変わった瞬間でした。数打って奇跡を待つ、場当たり的な撮影ではなく「見せたい印象」が成立する条件を、自分で作り出していく撮影ができる。スタジオ経験者のIさんにとっては、光はそもそも作り上げていくもの。ごく当たり前のことです。しかし、私はこの瞬間まで、光がコントロール可能なものだと考えたこともありませんでした。

「光をコントロールできるものだと気づいていない」これは、私に限らず、独学者の学習の大きな盲点ではないでしょうか。

能動的アプローチと受動的アプローチ

Iさんと私の撮影の違いを整理してみましょう。

彼はスタジオ経験者で「女性を美しく見せる光の条件」を知っていました。だから、その光の条件をロケーションスナップのなかで再現できる場所を探し、条件に合うように花嫁の位置を調整していました。

一方私は、「夕方は雰囲気良く撮れる」とか「窓際は肌がキレイに撮れる!」という漠然とした状況の理解しかありませんでした。キレイに見える瞬間を見つけられればうまく行くし、そうでなければそれなり。地図のない宝探しです。

能動的なアプローチ

一般的に写真スタジオでは、ライトを使って人工的に光を一から組み上げていきます。そのため、天気や季節が違っても、同じようにライトを置けば、同じような光を何度でも作り出すことができます。
これは、「能動的なアプローチ」です。

受動的アプローチ

一方独学者は、外でのスナップ撮影が中心。大抵その場限りの光の条件で写真を撮ります。自然光は太陽の高さや雲、照り返しなど様々な条件で質が変わるので、とても不安定です。同じ環境で翌日撮影を行っても、天気や時間帯が違えば光は同じではありません。スタジオに比べて「受動的なアプローチ」になりがちと言えるでしょう。

「受動的アプローチ」はどんな写真になるのか毎回分からない一回性を楽しむ趣味としては面白いですが、再現性がありません。

そのため、「能動的アプローチ」に比べて上達しにくく、独学者のハンデとなってしまっているのです。

太陽をライティング機材として捉え直す

では独学者が「こういう風に撮りたい!」というイメージを安定して撮れるようにするにはどうすればいいのでしょうか?

「ストロボを買う」、これもひとつのアンサーですが、自然光のなかであっても、再現性を妨げる要素を整理して、「こうすれば、こうなる!」という写りの変化をもたらすルールを知ることができれば、スタジオがなくても学習は可能です。

ポイントは、太陽をライティング機材としてリフレーミングすること。「太陽は動かせない巨大な一灯(※)」と解釈することで、意識を「能動的アプローチ」に切り替えて、再現性を獲得していきましょう。※写真に使う光源は「灯(とう)」と数えます。

太陽は世界一大きなライティング器材である

このライティング機材は、ストロボと違って人間には動かすことができません。

「光の当たる向き」を比べたいなら、被写体はそのままでカメラの位置を変える、「光源の高さ」は時間帯、「光の拡散具合」は違った天候を撮り比べることで、光の要素による効果の違いを確認することができます。

同じ場所でも、カメラ位置が変わるだけで光の状態が変わることが分かりますよね。なるべく光以外の条件を揃えて撮り比べて、光が与える印象の違いを実際に検証してみましょう。

太陽1灯ライティングにオススメの検証条件

太陽1灯ライティングの検証をするときは、下のような環境を選びましょう。

  • 背景に個性がない自然環境
  • 太陽の位置が低めの10時ごろまでか、15時から日没前
  • 太陽は動かせないので、光源の位置は被写体に対してのカメラ位置を変えることで行います。そのため、背景も変わることは避けられません。背景の違いによる印象差をなくすため、なるべく個性がない、どちらを向いても背景が緑になるような自然環境がオススメ。時間帯は、光の向きの違いが見えにくいお昼前後は避ける方が無難です。

    同じ場所の同じ時間でも天気によって光の質感は変わります。なるべく近場を選んで、快晴と曇りの日で撮り比べてもいいと思います。

    理想はピクニック感覚で、同じロケーションに一日滞在しながら撮影してみること。出来れば晴れの日を選び、太陽が真上にある時間帯は、日陰で照り返しの影響などを検証すれば、丸一日無駄なくいろんなパターンを試せてお得です。

    撮影会というと、変化をつけるために移動を伴うことが多いですが、本当はまったり滞在した方が、観察眼が働きやすく、たくさんの気づきを得ることができるのでは…とこっそり思っています。

    「光ファースト」で無数の可能性に溺れない

    同じ場所でも写真の撮り方は無数です。時間さえかければ、果てしなくいろんなパターンの撮り方を試すことができます。けれども、心を動かす写真につながるような、実際のシャッターチャンスはごくわずか。そのチャンスをつかめるかどうかは、無数の可能性から、表現にあった組み合わせをいかに早く選べるかにかかっています。

    はじめは、時間の限界までいろんな撮り方を試してみることになると思います。けれども、そのうち「何を表現したいか」が見えてくるので判断までの時間が短くなります。このすばやく組み合わされるときの判断基準が「作風」です。

    「光」が見えると、絵作りもスムーズに

    いろいろ試す中で、好きな光が見えてくると、撮影地選びや撮りに行く時間決めもスピードアップ。場所選びに方角を考慮したり、目指す光の当たり方になる撮影時間帯を選んだり、あらゆる要素が具体性を増してきます。可能性は無数にあると言っても、太陽一灯だけで印象的に見せられる選択肢は決して多くありません。初心者であっても、光を第一条件に置くことで、撮影時の迷いが減り、絵作りもスムーズになるでしょう。

    まず、光の見え方の差を能動的アプローチで検証し、実際の撮影では光ファーストで考えること。これが初心者が太陽一灯ライティングで上達する近道です。光は「photography=光で描かれたもの」というくらい、写真の印象を決める最も重要な要素。ぜひ、色々撮り比べて、再現可能なあなただけの必勝パターンを見つけてみてくださいね。

    以上、高橋ユカコ(@neotenylab)でした!

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