シャッタースピードで変わる水の表現。スローシャッターで映し出す風景写真のすすめ。

皆さん、こんにちは。
風景写真家の長瀬正太(@ShotaNagase)です。

さて、風景撮影に出掛ける時に皆さんはどのような条件で行き先を決めていますでしょうか?
桜の名所であったり、写真雑誌に載っていた撮影スポットであったり、知る人ぞ知る地元の穴場スポットだったり、と色々な条件があると思います。
もちろん私もそのような情報や自身の経験から行き先を決めています。

また、それらに加えて私が行き先を決める重要な条件の一つが・・・「水があるかどうか」です。

何故かといいますと、自分なりに調整したシャッタースピードで水の表情が捉えられると写真ならではの世界観を見つけられるからです。

そこで今回は私の良く使う「水の表現テクニック」をご紹介したいと思います。

写真ならではの水表現とは?

スローシャッターでの水表現

カメラはシャッタースピードを遅くするとシャッターが開いている間の物体の動きがそのまま記録されます。
ですから、水のような絶え間なく動いている物体も動き続けて記録され、目で見ている光景とは全く違った状態で写される訳です。

その状態がシャッタースピードの長さや水の動きによって予測できぬ複雑なパターンを作り出し、時に人の想像を超えた不思議な世界を映し出してくれる。
私にとっての写真ならではの水表現とは、そんな目では見えない光景との出会いなのだと考えています。

スローシャッターとは

スローシャッターとはそのまま言うと「遅いシャッタースピード」ですが、ここではだいたい1/10秒よりも遅いシャッタースピードの事をスローシャッターと定義しております。

水表現に適した条件

写真ならではの水表現をする場合、水(動いている物体)と大地や岩など(動いていない物体)が一つの構図の中に一緒に収まっている状態が適していると思います。

この状態では静と動の対比がつき写真により一層の動感が出るからだと考えています。

適していない条件

一概には言えませんが、水(動いている物体)だけが構図に収まっている状態でのスローシャッターでは静と動の対比が出にくく動感表現を活かすという意味では適していません。

時に、抽象的な水表現としてはこの条件で上手くいくこともありますが・・・私は余りそのような1枚に出会えていませんね(泣)

準備

シャッタースピードを遅くする為に

では、カメラのシャッタースピードを遅くするためにはどうするのか。
私自身が実際に撮影時に行っている項目をいくつか上げてみます。

  1. F値を上げる。(絞り優先モードにて絞りを絞る。例:F4→F11)
  2. ISO感度を減感させる。(例:ISO200→ISO100)
  3. NDフィルターを使用する。(私はND4・ND8・ND16・ND400を使用。)
  4. 暗い時間帯に撮影する。(日の出前・日没後など)

全てのコントロールを同時に行いますが、特に私が重要視しているのは4.です。
ですので、夜明け前の暗さを利用して撮影することから1日の撮影を始めることが多いです。
※余りに暗い状態だとピント合わせや露出合わせが困難になるのでスローシャッターに慣れていない方はご注意下さい。

また、太陽の上がっている昼間でもスローシャッターにしたい場合は3.のNDフィルターを数枚重ね付けしての撮影も行います。
※重ね付けの場合、画角の広いレンズですとケラれてしまう事にご注意下さい。


※写真上段PLフィルター・下段左ND4・下段中央ND8・下段右ND400

三脚

基本、シャッタスピードが相当に遅くなるこの表現での三脚使用は必須と言って良いでしょう。
特に私が良く行う撮影では長いものは1分以上のシャッタスピードとなるので、三脚がなければ撮影できない。とも言えますね。

ですから私は「いつもありがとう。」と三脚を撫で撫でしながら撮影しております(笑)
だからたまにブレるのかっ!?(驚)

シャッタスピードの長さによる3つの表現

1/10秒で波紋のゆらぎ表現

まず一つ目はだいたい1/10秒程度のシャッタースピードでの水表現です。

水面の状況によって描写は多少変わりますが、このシャッタスピードでは水の波紋や流れなどを止まって見えるか見えないかの絶妙な描写にすることが出来ます。


※撮影時間 18:20 シャッタスピード 1/15秒

ゆらぎとは

水表現においては「ただ一定のパターンが繰り返されるのではなく時間的に不規則に変化しているように見える事」です。

私の作例においては、その変化によってさも水が動いているように見えたり、不規則な連続性によって次のシーンを想像させることも出来るのではないかと考えてゆらぎ表現を用いています。

風の少ない日の水面がオススメ。

多少の風がなければ波紋が出来ませんが水面を強く荒らしてしまう「強風」はゆらぎ表現の大敵。
風の少ない朝方の撮影などがオススメです。

作例は夕方でしたが幸運にも風は収まっていてくれました(笑)
事前に天気予報や天気図などを見て風の吹きにくい日を探ってから出掛ける。というのも良いでしょう。

1秒程度のSSでシルク的表現

二つ目はだいたい1秒程度のシャッタースピードでの水表現です。

水面の状況によって描写は多少変わりますが、このシャッタスピードでは水の流れなどが白く糸を引いたように見える描写にすることが出来ます。


※撮影時間 10:11 シャッタスピード 1/8秒

シルク的表現とは

まさに言葉通り、絹の布や糸を垂らしたかのように見える表現のことです。
風景撮影の入門書などでもこの1秒程度のスローシャッターが紹介される事は多いのでわりとオーソドックスな技法とも言えるでしょう。

滝撮影にオススメ。

個人的には滝の撮影時には是非とも試して頂きたい技法だと思っています。
私自身初めて三脚を購入し滝へ行き、まっさきにこの技法を試しては「こんな風になるのか、写真って面白い!」と感動したことを覚えています。

60秒オーバーのSSで静謐(せいひつ)表現

三つ目は60秒オーバーのシャッタースピードでの水表現です。

水面の状況によって描写は多少変わりますが、このシャッタスピードでは水の流れなどが消えて一面がなだらかになったように見える描写にすることが出来ます。


撮影時間 4:18 シャッタスピード 69秒

なぜ60秒なのか

これは私が心の師として仰いでいる写真家 米津光(よねづあきら)先生が60秒ワンセットで撮影されていた事が発端です。

私自身も実際に「60秒未満のSSではダメなのかな?」と30秒や10秒あたりで撮影を切り上げてみるという実験を行ってみました。
・・・ですが、やはり60秒を超えて初めて水面が綺麗になだらかになると体験したのです。

また、60秒を越えてから先の長秒露光ではシャッタースピードを何分間にしてもそれほどの変化が見られませんでした。
ですので私は「60秒がもっとも水面が滑らかになるもっとも短いシャッタースピード」という認識でおります。

ポイント

このテクニックを使用する際のポイントは、シャッターを開いている60秒オーバーの間に止まっている被写体が止まり続けていてくれるかどうか。だと考えています。

前述したように「静と動の対比」を一構図に収める場合、どちらもブレていては効果が薄まるばかりか見る人に「あれ、この写真失敗しちゃった?」という印象を与えてしまいかねませんから(汗)

ただし、どちらもブレていた方が面白い写真になった。という事はあると思います。
失敗だと思っていた写真を日を置いて改めて見てみたら一番良かった。という事は写真にはまれにある事。
ですので、あくまでポイントとして心にメモしておいて頂ければと思います。

まとめ

以上、私が普段の風景撮影時に良く使う「水の表現テクニック」となります。
1/10秒・1秒・60秒 という3種類のスローシャッターが肝だと思います。

現場での水の状態やどのように表現したいのかを考慮して使い分けて頂くと水辺での撮影がより一層楽しくなるのではないでしょうか。

ぜひ皆さんにもこれからの撮影に役立てていただけると嬉しいです。
今回ご紹介した方法を実際にやってみたら、#ヒーコで載せて見せて下さいね。
それでは、また!

おまけ

波紋作り

風景撮影は自然が相手。
「風が強すぎて水面が荒れちゃってどうにもならない(泣)」なんて時とは逆に、風が一切なくて波紋が出来なくて困る時もあります。

そんな時は・・・・

    鴨が作る波紋を利用する。

というのがオススメです。

鴨は水辺での撮影ではたいてい構図の中に入ってきて邪魔をしてくれる憎い相手ですが、近づくと逃げていく習性を上手く使って誘導すると良い波紋を生んでくれる事もあります。

湖畔や木道などでカメラそっちのけで鴨と追いかけっこをしている変なカメラマンがいたら多分きっとそれは私です(笑)


※情緒がなくなるのでネタバレしたくないですが、この波紋は通りすがりの鴨君が作ってくれました。

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