写真をかじったことがある人なら一度は耳にしたことがあるだろう、ドイツの名門レンズメーカー、カール・ツァイス。そのZEISSが贈るソニーフルサイズEマウント用のレンズシリーズ。それがBatisである。
ZEISS Batis 2/40 CF
歪みのない標準広角域
40mmという焦点距離
50mmだとちょっと長いと感じるとき、普通の感覚だと35mmを選ぶと思うのだが、私は実は35mmという焦点距離が苦手なのである。ボケが小さくなるのは仕方ないとしても、人を寄りで撮るときにどうしても被写体の歪みが気になってしまう。
そのため、最近では50mmより少し広角で撮りたいという時にはGFX 50Sに50mmのレンズを装着している。こうすることで35mm判換算で39mmという画角で撮ることができ、これがとても扱いやすい画角なのだ。
ところが今回、ZEISSからBatis 2/40 CFがリリースされることとなった。焦点距離はドンピシャの40mm。そう、まさに私が求めていた焦点距離なのである。
驚きの軽さ
名門ZEISSが送り出すレンズ…と言うと、重くて巨大で…と身構えてしまうかもしれない。が、Batisは少し違う。軽いのだ。
しかも、一見してZEISSのレンズとわかるような重厚感と格式あるデザインはそのままなので、手にしてみるとその軽さにビックリするだろう。わずか361gしかないのである。
もちろん、軽くなったからといって画質に手を抜いているわけでは無い。絞り開放からの安定した描写と卓越した色収差補正を備え、ZEISSの名に恥じない圧倒的な画質を実現しつつ、ミラーレス専用の設計とすることで軽量化を実現している。
距離指標が光るとはいいことだ。
光る距離指標
特に有り難いのが純正レンズと同等に扱えるということである。つまり、瞳AFやロックオンAFなどα7シリーズの多彩なAF機能をフルに活かし、純正レンズ並に撮影を楽しむことができるのである。当然AFは高速かつ正確である。
私自身何個かマウントアダプターを活用して非純正レンズを良く使うので多少の機能制限には慣れてはいるものの、それでもやはり、純正レンズと同等に扱える利便性というのは何物にも代え難いほど有り難いものである。しかもそれがツァイスレンズとなれば格別である。
そして、もう一つ大きな特徴がある。Batisには有機ELディスプレイによるオシャレな距離指標が付いている。大切なことだからもう一度言おう。オシャレなのである。
この距離指標は、ファインダーを覗いているときはもちろん見えない。ファインダーから目を離して少し上から覗いても、有機ELディスプレイのため少し奥まった場所に表示されているため見にくい。これが一般的なレンズであれば、表面に距離指標が刻印されているため浅い角度からでも見える。が、我らがBatisはある程度上から見ないと距離指標が見えない。
でも良いのである。何故かと言えば、これがとても格好良くてオシャレで、暗いところで見るとますます格好良いからである。自分がZEISS最新の光るオシャレなレンズを持ち歩いている姿を想像するだけで、幸せな気分になり良い写真が撮れるような気がしてくる。そして、実際そうに違いない。なんと素晴らしいことなのだろうか。
風景にも、ポートレートにも、テーブルフォトにも、万能に対応したZEISS Batis 2/40 CF
レンズの描写は言うまでもなく、さすがZEISSである。
- 開放から使える緻密な解像感
- 無に等しい歪曲
- 徹底的に抑えられた色収差
- 柔らかいボケ
撮る者の写真を一つ上の段階に引き上げてくれるかのようだ。ただ、玉ボケはシチュエーションによっては角張って写ることがある。ここは評価が分かれるところだろう。
抜けの良さと、高いマイクロコントラスト
とても抜けが良く、マイクロコントラストが高いおかげで色乗りの良い詰まった感じの絵が撮れる。シャープで固いイメージのカットも、柔らかいイメージのカットもどちらも得意で、被写体を選ばない。
ここからは、レンズの万能性を活かして、想定しうる様々なシチュエーションごとの写真を見ていただこうと思う。一つのレンズでここまで多くのバリエーションに対応できるレンズはそうそうないはずだ。
ポートレート
緻密な解像感と柔らかな描写
F2.0という明るさを利用すれば、40mmという焦点距離とはいえ、立体感を感じられる描写が得られる。
スナップ
撮りたいと思った瞬間撮れる軽さ
また、レンズがとても軽量なため撮影を意識していないときでもカメラを肩にかけておくことができる。そのため、ふと目にした何気ない風景や被写体の表情も気軽に撮影することができる。
機動力が増すということはシャッターチャンスが増すということであることを実感する瞬間である。
卓越した描写性能を誇るレンズのため、撮影を目的とした旅行や外出の際に利用するレンズだと思いがちだが、実は、撮影をあまり意識していないお散歩のような時にもマッチするレンズだと言える。
逆光耐性
ゴースト・フレアへの強さ
逆光に関しても非常に耐性が高い。これはいうまでもなくツァイスレンズお馴染みのT*(ティースター)コーティングの恩恵である。もともと逆光での撮影頻度が高い私ではあるが、このレンズであればなんら迷いも無く逆光でもレンズを被写体に向けることができる。
テーブルフォト
最短撮影距離24cm
レンズ名に使われている「CF」はClose Focus…つまり、近距離でのフォーカスが可能で、最大で24cmまで寄ることができる。
寄ることができる、ということは次の二つのことを意味している。一つは大きなボケを作りやすいということ、そしてもう一つはレストランでテーブルフォトが容易に撮れるということである。
「あれっ?ピントが合わない」「お皿が全部入らない」と呟きながら、レストランでカメラを構えたまま椅子を引いて後ろに下がった経験は無いだろうか?このBatis 2/40 CFなら、もうそんな無様な格好を店内で披露する必要は無くなるのである。
フォーカスリングは平らなラバー。リングトルクはある程度重みが感じられるものでMF操作でも良好だ。フォーカスは高速なので、たとえばスナップのような撮り方でも、レンズは素早く被写体を捉えてくれる。
解放だとさすがに周辺減光が見られるが、多少絞れば問題ない。個人的には周辺減光が多少あるほうが好きなのと、絞りを使って周辺減光の変化を利用することで雰囲気を変えることができるので、周辺減光はウエルカムで、カメラ側の「周辺光量補正」もOFFにしているぐらいだ。
また、レンズマウント側にある青いラバーからも分かるとおり、このレンズは防塵防滴である。海辺や川辺の水しぶきや、強風時の砂埃などを必要以上に気にすることはない。とはいえ外装はそれなりに汚れがついてしまうので、そういった場所で利用した後はきちんと手入れをするようにしよう。
まとめ
写真上達の道の一つはシャッターを沢山きることだ。ただし、闇雲に切っても意味がない。自分が感じたシャッターチャンスに応じて切らなければいけない。ではそのシャッターチャンスを増やすにはどうすればよいか。それは軽くて優秀な性能を持つレンズを一本持つことだろう、Batisのような。