自分の想像力を超えた作品を撮るために、撮影の準備から終わりまでに必要な5つのフロー

こんにちは。浅岡(@shoichi_asaoka)です。ヒーコの編集員に「浅岡さんの作品撮りってどんな雰囲気なんですか?」と半ば強引にもろもろ聞かれたので、今回は作品撮りの準備や段取り、撮影時に気をつけていることなどを、順番に沿ってまとめてみようと思います。

自分の想像力を超えた作品を撮るために、撮影の準備から終わりまでに必要な5つのフロー

撮影イメージ

現場で変わることが多い撮影イメージ

最初にすることは、撮影のイメージ創り。このイメージ創りは毎回必死に悩んでる。現場を見てから撮影イメージが変わることや、予めイメージしていたのとは別のイメージが浮かぶことは結構あるけど、それも事前にいろいろとイメージしていたからこそだと思う。故に、成り行きにしかならなそうな撮影でも、事前に撮影のイメージをしっかりと考えておくことは大切。

遊び心がインプットのキモ

撮影のイメージを創るためには常日頃のインプットが大切。インプットのために普段意識してやっていることは特にないけれど、自分の写真にとって一番重要な要素は遊び心だと思う。毎日遊べということではなくて、心にゆとりを持って様々な状況をエンジョイして吸収している。また、ただ好きなことばかりやるのではなく、苦手なことにも敢えてトライすることも大切。常に人生を楽しんでいたい。

撮影に向けた準備

機材の用意

ある程度撮影のイメージが固まったら、それに必要な機材を準備することになる。撮影イメージに応じた機材を用意することになるけれど、基本的に現場ではどんなことが起こるかわからないから、様々なパターンやバリエーション、起こりえるトラブルなどを予想して必要な機材を割り出していく。機材がないから撮れない、できない、というのが嫌なので、機材はいつも多めに用意する。

機材以外の用意

撮影用のアクセサリーだけではなく、モデルさんやアシスタント、自分用にも様々な用意をする。たとえば、夏の撮影なら虫除けや日焼け止め、冬の撮影ならカイロやダウンコート、海の撮影ならビーチサンダルや足を洗うための真水とタオル、といった具合。

様々なシチュエーションを想定して準備をするので荷物はかなり多くなる。実際に使うのは3割~5割ぐらいのことが多いけれど、現場で無くて困るよりはマシなので毎回泣きながら重い荷物を運んでいる(笑)。それでも「アレがあれば…!」と思うことがあるという…笑。

機材を入れるバッグの用意

持ち物が全て決まったら、それらを入れるバッグを考える。本来であれば、機材の種類毎に機材バッグに入れておいて、必要に応じてそれらを出してきた方が効率が良いのだけれど、そうするとどんどん荷物が増えてしまうため、撮影に使う機材を効率良く入れることのできるバッグを用意して、撮影毎に詰め替えることの方が多い。

たとえば、アンブレラを入れる機材バッグにアンブレラが6種類、スタンドが入っているスタンドバッグにスタンドが4本入っている場合、アンブレラとスタンドが必要となる撮影ではそれらの2つのバッグをひょいと持って行けば良いのだが、アンブレラは2種類、スタンドは2本しか使わない現場では荷物の無駄が増えてしまうので、詰め直しが必要になってくる、というわけ。

なお、バッグについては別の記事で扱っているので参考にしてください。

モデルさんの選び方

機材の次に欠かせないのがモデルさん。自分は人見知りのため、撮影イメージに合う知り合いに声をかけることがほとんど。まれに新しい人を撮る時もあるが、初めましての人にメッセージを送る際は、送信ボタンを押すのにドキドキする。声かけ専用のマネージャーが欲しいぐらい(笑)

モデルさんへの連絡事項

モデルさんには、集合場所と集合時間、撮影内容を伝える。特別なシチュエーションでの撮影の場合はそれが可能かどうかも確認。たとえば、雨の撮影であれば濡れても大丈夫か、とか、寒さにどのぐらい強いか、など。

衣装の選び方

作品撮りの場合、撮影イメージに応じた衣装を選ぶのが基本だけど、モデルさん任せの成り行きにしたり、全く別のイメージの衣装を用意することもある。これは小澤忠恭先生に教わったことなのだけれど、このようにこのように偶発的な要素を積み重ねていって、自分の想像力の限界を超えたイメージに辿り着けるのが理想。衣装だけでなく、モデルさんや撮影場所のあちこちにこの偶発的な要素はいくつでも転がっている。

小物選び

衣装と異なり、自分の場合小物は撮影のバリエーションを増やすために活用しているレベルなので、イメージに応じて用意するというよりも、準備を終えて最後に使えそうな小物をかき集めて持って行くニュアンスが強い。さっき言った「偶発的な要素」扱い。

撮影に使えそうな小物は常にアンテナを張って探している。画像やレビューを見てもわからないものは実際に買ってみて、実際どういう風に写るのか実験しているし、自作で撮影小物やライティングアクセサリーを作ったりもしている。

この撮影では撮影を終えようとした段階で、月のライトを持ってきてたことを思い出し、撮影した(笑)。

ロケ地の選び方

たまにロケ地が先に決まっていて、そのロケ地から撮影イメージを考える時もあるけれど、普段は撮影イメージが先にあって、次にそれが撮れそうなロケ地を探すことが多い。ただ、ロケ地を決めても、当日周囲を移動して違う場所で撮ることも少なくない。

都内から車で2-3時間程度で移動できる範囲にある撮影場所のデータはだいたい頭に入っているので、集合直後に天気の状況などを見て急に撮影場所を変更することも多い。

天気は選べない(笑)

撮影の10日ぐらい前から天気図や天気予報などをチェックする。希望の天気にならなそうな場合は、撮影場所を変えたり、リスケをする。場合によっては、天気予報にあわせて撮影内容を変えることもある。天気は山脈を区切りにして大きく変わるため、代わりの場所を探す場合は山脈区切りで探すと効率が良い。

当日の撮影までの間

くるま

荷物が多いので移動は基本車。機材車を購入した際、アシスタントが運転するからと安全性能の超高い車を選んだものの、車が好きすぎて結局ほとんど自分で運転してしまい、全然物足りねぇー!となった挙げ句、運転が楽しい車に速攻買い換えたという噂があるらしい。ヴァイザッハ最高。

しょくじ

撮影の集合が昼食時で、まだみんな食事を済ませてない場合は、合流してからモデル・アシスタント含めて一緒に食べることもある。ただ、自分の場合、食事中にモデルさんの雰囲気を掴む、といったことはほとんどない。人見知り過ぎて初めましての人とは目を合わせることできないし、会話もできないからだ(笑)。

ちなみに、撮影前の食事は良いけれど、撮影後の食事は凄く難しい。食事に誘って「下心ある」と疑われても嫌だし、かといって一人暮らしなら食費ぐらいお礼がてら浮かせてあげたいので食事に誘った方が良いし、逆に実家なら早く家に帰してあげた方がいいし…。だからといって、一人暮らしかどうか聞いたら、これまた下心疑われそうだし…っていう悩みが3回ぐらいループする。で、結局なにも聞かなかったりするけど(笑)。

撮影

撮影場所で気にしていること

現場は全周囲常に気にしておくこと。高いところから見下ろすと別の視点に気がつくことがあるし、少し移動してから見渡すとさっきいた場所からは気がつかない撮影ポイントがあったりするし、自分が見てない方向の空が焼けることもある。

また、現場をチェックすることで、事前に用意していた撮影イメージと別のイメージが湧くことがある。その場合は、その日持ってきた機材、モデルさんの持つイメージや衣装、などから、そのイメージの写真を撮ることができるか、撮れないとしてもどれだけ近づけたモノを撮れるかを瞬時に考え、可能であれば撮影を行う。

この時の撮影では、浜辺に降りていったらアートな形をした流木があったので、急遽撮影に取り込んでみた。とはいえ、複雑怪奇な形はそれ単体なら問題はなかったものの、これをモデルさんと組み合わせるとなるとなかなか難しく…笑。あれこれ試行錯誤した後、最初に掲載した写真のようになった。

とにかく、今その瞬間の自分の視界は全てでは無いという意識を常に持ちたい。自分がドローンになって俯瞰できたらどれだけ素晴らしいことか(笑)。

撮影中に気にしていること

撮影中の優先順位は、1に現場、2にモデルさん、3に機材、で、4に持って行った小物を使い忘れる、です(笑)。

とにかくモデルさんは過酷な状況に陥りやすく、「大丈夫ですか?」と聞いても、絶対に「大丈夫です」としか返事をしないので(笑)、常にコンディションを気にしてあげて、先を読んだ行動を心がけたいところ。上の写真は、撮影終了後すぐにアシスタントに指示を出して、体がこれ以上冷えないようダウンコートをモデルさんに渡しているところ。

また、現場のテンションにも気を使おう。自分の状態は瞬時に現場全体に影響を与えるということを意識したい。「ダメだなあ」とか「上手くいかないなぁ」とか呟かない。そんな表情をしてもいけないし、首をかしげたり舌打ちしてはいけない。そういったネガティブな発言や言動は現場の全員のテンションを下げて、結果写真のクオリティも下がってしまう。

と、書くと、意味をはき違えて、自慢をしたり一生懸命自分を大きく見せようとする人がでてきてしまうが、そうではない。常に前向きな姿勢で撮影を楽しんで、モデルさんを褒めて、現場の空気とテンションを上げていこう。

夕焼けを撮りたい場合に気にしていること

先日もiPhoneで撮った夕焼けの写真をアップしたら、iPhoneでどうやってこんなのが撮れるんですか!?という質問が続出したが、答えは明白。空が焼けたときに撮ればいい

空が焼けるのは日没前後1時間の間の5-10分程度。そのタイミングを事前に予測することは難しいし、空が焼けるかどうかを事前に言い当てることも難しい。直前になると「あ、これから焼けそうだ」というのは分かるけれど、それでも、焼けそうで焼けなかったり、その逆に焼けなそうだったのに急に焼ける、ということもよくある。

というわけで、夕焼けを撮りたければ、毎日、日没前後1時間は空を観察し続けよう。そこに裏技は存在しない。でも最近の温暖化による気候変動のおかげで、夕焼けになる確率はすごく高くなったし、東京でもハワイで見られるような強烈な夕焼け空を見ることができるようになった。

ちなみに、ボクはハワイに行ったことない。

撮影が終わったら

撮影データの管理

自宅に帰ってからPCにデータを取り込む。中判デジタルカメラで撮影すると容量も大きくなるので、データの保存先はRAID5の24TB(実効18TB)を2台。そして処理速度も気になるので、自宅のPCは速度の速いSSDで構成している。

データの整理や現像にはLightroomを使っている。データの保存先が外部のRAIDのため読み込みや書き出しは若干時間がかかるものの、Lightroomが生み出すキャッシュはSSDに保存されるので、SSD化したことで圧倒的に速くなった。

ちなみに先日Lightroomで書き出そうとしたら書き出し画面が出てこなくてエラーとなり、何度かそれを繰り返した挙げ句ストレージを確認したら、RAID5のHDDが一台壊れていることに気が付いた(笑)。

その時使っていたHDDの平均故障時間は100万時間(114年)だけど、壊れる時に壊れるのがHDDなので、みなさんもデータロスト対策はしっかりとしましょう!

機材の手入れ

撮影後は機材の手入れも欠かせない。海で使った機材は水洗いして塩水を落としたり、付いた砂を落とす。雨の中で撮影した場合は機材に付いた水滴を拭いて乾かすのはもちろんのこと、ストラップやカメラバッグもよく乾かす(そうしないと臭くなる)。山の撮影の場合は機材についた泥をブラシで落とす。あとはストロボやコマンダーの接点の掃除なども忘れずに。

深夜の撮影後にモデルやアシスタントを送り届けて、日付が変わった頃に帰宅して、それから衣装を洗って最後に機材の手入れ…となるとかなりしんどいけれど、ちゃんとやっておかないと、特に海の撮影のあとはステンレスやアルミでも錆が発生するので要注意

衣装の手入れ

衣装はクリーニングに出すこともあるけれど、基本は手洗いすることが多い。ただ、ある程度使ったらほつれや汚れなどが気になるから、買い換えるようにしている。

まとめ

  • 撮影のイメージを固めて撮影の準備
  • モデルはできれば知り合いがいい
  • インプットは遊び心から生まれる
  • ロケーションに合わせて機材・バッグを選ぶ
  • ロケ地候補を常に頭に入れておくこと
  • 車は走行性能最優先になってしまった
  • 食事は誘っても誘わなくてもいい
  • 焼けるときもあれば焼けないときもある
  • 海のロケだと、機材の手入れが面倒くさい

浅岡省一氏の撮影術・思考法についてもっと知りたい方はこちら

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インタビュー・編集 : 岡口/佐藤

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