写真と生きる | 「写真のためのコミュニティ」EyeEm クリエイティブディレクター GEN SADAKANE × 黒田明臣 対談

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来日中のドイツ・ベルリン発の世界的フォトコミニュティ、EyeEmファウンダーであり同社クリエィティブディレクターとしてご活躍中のGEN SADAKANE氏をお迎えして、ヒーコ黒田明臣氏との対談をお送りいたします。

「EyeEmとは / 写真のためのコミュニティ」GEN SADAKANE × 黒田明臣 対談

[黒田]

はじめまして!来日期間中の短い中に、お時間頂戴できて嬉しいです。「写真と生きる」というテーマで、是非EyeEmの取り組みや哲学的なところも含めてお話できると嬉しいなと思っています。

[GEN]

よろしくおねがいします!カメラ格好良いですね!これはライカですか?

[黒田]

そうです。今回はドイツつながりということで(笑)

ところで、いくつかお話したいトピックについて以前お送りしたものって、読む時間ありましたか?

[GEN]

はい、一通り読ませていただきました。一部の漢字は読めなかったけど(笑)

[黒田]

英訳されたものをお送りしたと聞いていますよ(笑)しかし、言葉の壁は全く感じないほど流暢ですね、日本語も英語も。

「EyeEm」とは

[黒田]

ところで今回は、アマナさんとビジュアルによる法人向けブランドアクティベーションサービスをスタートされるということで、プレスリリースも出ていましたけども、そもそも『EyeEm(アイエム)』の中で日本人のフォトグラファーはどれくらいいるんですか?新サービスのユーザーは日本人に限らないとは思うのですが、日本国内での普及度は純粋に気になります(笑)

[GEN]

正確な人数ははっきりと言えないのですが、2~3万人くらいだと思います。もっといるかも(笑)

国の違いはありますが、EyeEmユーザーは共通して写真好きな人が多くて、中にはそれでマネタイズしている人もいます。それはEyeEmがストックフォトでもあるからなんですよね。

皆さんキレイな写真を撮っていますから、ライカじゃなくても(笑)日本には写真愛好家が多く、さまざまな写真コミュニティもあるのでその点でもマッチするのではないかなと思っています。

[黒田]

自分は、日本人のストリートフォトグラファーの方がEyeEmをやってらして、それで知ったんですけど、少なからずやっている人はいると思います。2~3万人以上いるのかなと思いますね。

[GEN]

やっぱり写真好きな人が日本では多いですね。そういう意味ではすごく感謝しています。

[黒田]

我々フォトグラファーサイドとしても、こういったプラットフォームの存在があってこそ発表の場ができるので、大変感謝しています。

”フォトグラファー”のためのコミュニティ

EyeEmの「キレイな写真」が選ばれるシステム(A.I.)
[黒田]

ところでEyeEmではコンテストをよくやっていらっしゃいますね。

[GEN]

ミッションのことですね。

[黒田]

そうです。そのミッションに友人が入賞していたので知りました。

[GEN]

そうなんですね。オープンで誰でも応募できますから!ちなみに、アップロードした段階で、キレイな写真はAIによってフィードの上の方にあがってくるんですよ。

[黒田]

ピックアップしてるということですか?

[GEN]

そうです。フィードの掲載順序は、投稿時間だけではなくて見た目の美しさによっても変えられているんです。

なので、キレイな写真はフォロワーが多くなくても、初めてEyeEmをダウンロードしたばかりの人でも、別け隔てなく多くの人に見つけられる事が出来る。それがEyeEmの特徴なんですよ。

どうしてかというと、例えばInstagramのアルゴリズムだと、いっぱいフォロワーがいたり、いっぱいライクがないとポピュラーに浮かばないんですね。僕たちのAIは、写真を解析して「これはキレイな写真だ」と判断をするので、昨日アップロードされたものだとしてもフィード上位に上がる可能性は高いんです。

[黒田]

フィード上位にあがってくるというのは、おすすめのような形ですよね?EyeEmのポピュラー的な。

[GEN]

そうです。AIと手作業のコンビネーションで。

[黒田]

AIプラス、マニュアルですか。すごいですね。キレイかどうかという基準をきちんとみているのは。

[GEN]

そうですね。それが大事だと思っています。

そして一番大事なのが、今日EyeEmをダウンロードしたばかりでも、いつ写真をアップロードしても、友だちが居なくても、誰でもポピュラーになる可能性があるというところです。

[黒田]

素晴らしいですね!それこそ写真家冥利に尽きるというところだと思います。特徴的な機能ですね。

確か自分もEyeEmを2015年、3年前に登録したんですよ。登録したら1カ月も経たずに友だちもいないのに1万人くらいフォロワーが増えました。

[GEN]

すごい!じゃあキレイな写真を撮ったんですか(笑)

[黒田]

なんかそういう流れになっちゃいますね(笑)キレイかどうかはわからないけど、EyeEmのアルゴリズム上でおすすめされてたんだと思います。当時はびっくりしました。

[GEN]

びっくりしますね。僕もびっくりしました(笑)やっぱり黒田さんも写真好きなんですね〜

[黒田]

好きですね(笑)、しかしそのポピュラーになる仕組みについてはすごくフォトグラファーフレンドリーな印象をうけます。

いいね!数やフォロワー数が多くなくても、EyeEmのAIが探してくれるというのは、フォトグラファーが喜びそうなシステムだと思います。

プラットフォーム選びの目線

EyeEm magazine
[GEN]

Instagramもいいけど、やっぱり違うチャンネルを試してみたいですよね。

[黒田]

ええ、特にEyeEmはフォトグラファーのためのプラットフォームだと感じますが、Instagramはフォトグラファーのためだけではないですから。それに最近はだいぶ変わってきていますね。

[GEN]

変わっていますね。アルゴリズムと、宣伝もいっぱい入っているし。

[黒田]

そうなんですよね。どっちが良いとかではないんですけど、EC的なシステムが入ってきたりとか。

我々のようにフォトグラファーとしてInstagramを利用するというのは、あくまでInstagramの世界観でいうとごくごく一部でしかないと思うので。

[GEN]

そうですね。基本はソーシャルネットワークサービスですね。そしてもう写真じゃなくて、ストーリーズなんだと思います。スナップチャットのように。

僕もそうですけど、下にスクロールしないんです。ということは写真を見ないんですよ。ビデオを見るということが主な目的になってきています。Instagramは。

[黒田]

確かに。それはありますね。

[GEN]

世界的にも皆さんそういう風に使っていると思います。つまり、写真の価値が下がっているんですよね。

[黒田]

IGTVとかもつい先日リリースされましたけど、あれもストーリーズのスピンアウトというか。動画専門ですもんね。

[GEN]

そうです、EyeEmはストーリーズないので(笑)だから写真だけなのですけど、写真を好きな人が来るんですよね。

[黒田]

だから写真好きな人のためのコミュニティということですよね。

[GEN]

そうです。これはFlickrの宣伝みたいになっちゃいますけど、Flickrも昔は写真が好きな人だけが集まっていたんですよ。でもFlickrはモバイルにうまく移行が出来なかったんですよね。

展開の仕方がよくなかった。良いアプリがあればよかったんですけど。

[黒田]

それはありますね。アプリに関しては日本版ないですもん。

[GEN]

そう。だから僕たちはFlickrのモバイル版になりたいなという意識で作ったんですよね、最初は。

[黒田]

ああなるほど、最初は。

[GEN]

だからFlickrのモバイル版という感覚でブランディングを行い、ロゴも黒い背景に白いテキストで。

ちなみにこれはマグナムフォトからインスピレーションをうけています。コミュニティもそういう風に見られたいという想いがあって。

[黒田]

なるほど。最初はそういうポリシーでブランディングをしたと。しかしマグナムは意外ですね。

[GEN]

そう。写真が好きな人のためのコミュニティを作るというポリシーを元にしています。

[黒田]

なるほど。写真が好きな人のため!それは凄く感じます。

Instagramは決して写真好きやフォトグラファーのためでもないですからね。写真というメディアが最大限有効活用されているだけであって。

[GEN]

そうそう。セルフィーを撮るとかもそうですね。

[黒田]

そうです(笑)

[GEN]

でもフォトグラファーも、もちろんフォロワーはいっぱい欲しいし、たくさんの人に写真を見せたい。そういう意味ではInstagramももちろん大事だと思うけど、いまはストーリーズが全面に出てきているから、ちょうど変革期かもしれないですね。

[黒田]

そうですね。まさにいま、変わってきているように思います。

良い意味でInstagramとEyeEmの住み分け、別のチャンネルである点がはっきりしてきているかなと。

[GEN]

昔はEyeEmもヨーロッパのInstagramとか言われていたけど、Instagramでは写真も買えないし、マガジンも無いし、やっぱり違うんですよね。

EyeEmは写真を販売する写真をギャラリーに飾れる写真を送ったらEyeEmマガジンにも載れるっていう力があります。

[黒田]

そこでフィーチャーされる可能性があるっていうのは大きいです。もちろん写真愛好家以外も使えるわけですからInstagramの分母は圧倒的に大きいですけど、フォトグラファーからしてみたら全く違う世界ですね。

[GEN]

それが大事だと思うんですよね。エントリーポイントも大事だと思いますけど、写真を撮る人たちはやっぱり芸術家。エゴイスティックですから、自分だけの写真を見せたいという感覚はあるでしょうね。

だから飾られたらすごいレベルアップだし、やっぱり嬉しいじゃないですか。だからそういう目的で僕たちはギャラリーとかエキシビションなどもやっているんです。

[黒田]

そういう取り組みもされているんですね。

[GEN]

EyeEmを使っている人たちのステージを作っているイメージです。

[黒田]

ユーザーの写真を色々な人に色々な形で見てもらえるような取り組みということですね。

[GEN]

それも写真が好きな人に見せたいですよね。一般の人に見せたって分かってくれなかったら価値もないでしょうし。

そうしてまた「この写真のコンセプトが好き」「何で撮ったんだろう」「アイディアはなんなんですか」といった対話にも価値があると思っています。

[黒田]

たしかに。すごくフォトグラファーのことを思っているんですね、いや、当たり前なんでしょうけど。こうしてお話をしていて、ものすごくフォトグラファーのことを考えているプラットフォームなんだなと改めて感じます。

[GEN]

ソーシャルネットワークというか、写真が好きな人たちが作っているっていうフィーリングは感じてもらえると嬉しいですね。

[黒田]

フォトグラファーへの思いというか、何かしらの写真に関する情熱や哲学があるのかなというのは、外からもすごく感じていました。こうしてお話しているとさらに実感しますけど。

[GEN]

流行り廃りも、写真撮る人たちを集客するのも大事。

そうでないとアプリやマガジンも作れないと思います。

[黒田]

そうですね、そうでなかったらフォトグラファーにとっては良いものになりづらいでしょうし。

自分の周りの日本のフォトグラファーの方でもInstagramに上げると、ちょっとセクシーなものとかだとすぐアカウント停止されてしまったりとかが最近話題になっています。

[GEN]

そうなんです。多くのユーザーのことを考えればアカウント停止も仕方ない処置になってしまうでしょうね。

[黒田]

タグなどもそうですね。なんだかすごく最近変わってきた印象を感じています。だから今フォトグラファーは自分の写真をプロモーションする見せる場所を探している方がけっこういるんですよ。

[GEN]

いると思います。そして利用規約なんかもそうですよね。InstagramやFacebookにアップロードしたら、リポストも出来るし、ユーザーが勝手に使っていいというふうにも見えてしまう。そういう意味ではアーティストにはそんなにやさしくないプラットフォームだったりする。

[黒田]

そうですね、権利の問題などを考えると。

[GEN]

そして当然、エロティックなものも芸術ですが、そういったもののアップロードもできないし、そこはやっぱり「アメリカ」という感じもしますよね(笑)

[黒田]

(笑)それはすごく思います。ヨーロッパとアメリカの違いというか。コンテストとかでも傾向が顕著ですね。

[GEN]

やっぱり違うと思います。フランスやドイツの歴史を比べても。

[黒田]

わかります。日本はどちらかというと芸術文化においてはヨーロッパのほうが相性が良いのかなと思いますし。

[GEN]

そう思います。

[黒田]

周りのフォトグラファーと話していても、アメリカとヨーロッパの違いみたいなものはすごく話題に出ますね。

[GEN]

やはり歴史もありますし。当然アメリカのすごい写真家もいっぱいいますよね。例えばニューヨークにはジョエル・マイロウィッツなど色々いますし。

[黒田]

そうですね〜。ニューヨークは発進の地として、それは写真に限らずあらゆるフィールドで存在感際立っているかなと思います。

写真家目線の試み

[黒田]

例えば、今はEyeEmはアプリ上でメインにやられていますが、今後、ブラウザに力をいれていくようなことは考えていないんですか?

[GEN]

力は入れているんですが、リソースがそんなに多くないのでフォーカスは必要ですね。

考え方としてはデスクトップなどのPC版を作ったのは、レベルの高い人たちがやはりデスクトップPCでフォトショップなどを利用するので、以前は無かったデスクトップ用にバッチアップロードを出来るものをつくったんです。コミュニティのために。

当然そちらのほうが写真のクオリティも高くなるので、力を入れて作りました。

[黒田]

画質もだいぶそれで変わってきたりもしますね。

[GEN]

そうなんです。そこはデスクトップのメリットの一つですよね。バッチアップロード出来た方が数も増えますし。

[黒田]

Flickrなどはそれがイージーにできる。そういう部分を引き継いでいるのかなと感じます。

[GEN]

はい、インスピレーションを受けたり、良いところは大いに参考にしています。

[黒田]

良い意味で。その点はInstagramにはないので、写真をどうやって見るのが、フォトグラファーにとってもハッピーで、ユーザーにとってもハッピーなのかというのを体現されてますよね。

[GEN]

そしてInstagramのよくない点としては、表示がスクエアになってしまうじゃないですか。本当の芸術家にとってはそういうふうに切られるのは嫌でしょう。

[黒田]

意味があってそのサイズなのにという。最近は選べるようになりましたけどね。

[GEN]

そうです。僕たちは、そのアスペクト比は普通にしてるんですよね。昔のInstagramは全部スクエアに、僕たちは昔からサイズは元のままです。それは芸術写真家のためにそういう風にしたんですよね。

[黒田]

制作側からすると、一律スクエアのほうが見栄えもコントロールもしやすいんですけどね(笑)そういうUI的な配慮が作家としてはありがたいところです。

細かいディテールまで含めて、すごくフォトグラファーのために設計されていて、アップデートもされているんですね。

逆に、フォトグラファー以外の一般ユーザーに写真を見て欲しいなといったような考えは特にないんですかね?

[GEN]

まだありませんが、僕たちのマニフェストは「誰でも入ってください、そしてどんどん良くなっていく」というツールを渡すこと。

だから僕たちのマガジンやブログ、チュートリアルや「こういったものが今売れる」「こういったものがいま展示されている」というのを啓蒙していって、一般の人にもどんどん入ってくるようになってほしい、という思いはあるんです。

[黒田]

なるほど。文化というか、良い写真を見るカルチャーを作っているような感じですかね。

[GEN]

そうです!まさに。

沢山綺麗な写真を見るとみんな眼が良くなるし、そういうものを見せて、「みんな良くなってよ」という考え方をいつもフォローしています。

[黒田]

それは良いですね。EyeEmというのはこういう哲学とマニフェストで行われているサービスなんだということが分かっていくと、そこにある種良い意味での宗教観というか、空気のようなものが出来るとサービスとしては強いですよね。

[GEN]

大事だと思います。それがダイバーシティというか、多様性。だから我々はエリートじゃないんです。権威的でもない。写真が好きな人を集めたいんですよね。それが大事だと思う。

[黒田]

なるほど。一番上に「写真が好き」というものがあって、その下にいろいろな…

[GEN]

だからInstagramはセルフィー、EyeEmはセルフポートレート、という住み分け。そういうメッセージ。

[黒田]

うまい!それは凄く分かりやすいですね!(笑)

[GEN]

それが僕たちのコアですね。

[黒田]

なるほど。

国境を隔てないただ一つの言葉

[黒田]

ところで、ユーザー間のコメントであったり、コミュニケーションも取れるじゃないですか。その中で言語の壁というか、いろいろな言語が飛び交っていると思うんですけど、コミュニケーションは各国のいろんな言語で活発に行われているものなんですかね?

[GEN]

うーん、難しい質問ですね。やっぱりメインは写真ですからね。でも下手な英語でも伝えたいじゃないですか、「キレイな写真ですね」とか。

[黒田]

例えば自分なんかは、写真をあげるとけっこうコメントしてもらえるんですよ。それはすごく嬉しいんですけど、アラビア語とか韓国語とかがすごく多いんです。英語はそんなに多くない。皆さん母国語で普通にコメントしてくるんですよ、それがちょっとおもしろくて。

その他のSNSや写真系サービスだと、大体英語じゃないですか。

[GEN]

それは、例えばInstagramはやっぱりまだ「アメリカ」なのかなと思います。アメリカで一番大きくなったし、そういう意味で英語なのかな。

[黒田]

アメリカのサービスだからですかね?それはあるかもしれないですね。英語ならとりあえず良いのかなという感じでやっているんですかね。

EyeEmは何故かけっこうアラビア語が多くて、でも何を書いている全然わからなくて(笑)

自分の写真に対して何かを言ってくれているんですけど、全くわからない。それは興味深かったですね、本当にグローバルに使われているなというのは始めたばかりの時に感じましたね。

[GEN]

やっぱりグローバルなコミュニティを作りたいというのがメインです。日本の写真、ニューヨークの写真、シンガポールの写真、ベルギーの写真、どこでもそれぞれキレイな写真を撮っている人はいるんですよね。

[黒田]

そうですよね。全世界にいっぱいいますよね。

[GEN]

グローバルですから、それが好きなんですね。パリでカッコいい白黒の写真を撮っているのを見て、日本で白黒の写真を撮ってもそれはパリの良さとは違うんですよね。やっぱり空気が。光も太陽も違うから。街並みにも違いがある。

そして携帯やライカでも違う(笑)。そういう多様性が好きで。全部同じだったらつまらないじゃないですか。

[黒田]

ライカすきですね(笑)、しかし本当にそうですね。また写真というメディアはグローバルな言語の壁を取っ払って、共通言語じゃないですか。実際にコメント欄で会話が出来なかったとしても、ビジュアルで会話できる。

「この写真好きだな」と海外の方が自分の写真について思ってくれることもあるわけです、実際に。それは非常に面白いですよね。全然言葉の壁のないサービスだなと。

[GEN]

そうですね。Instagramの写真やストーリーだってイメージですよね。そういうビジュアルが気持ちの部分も一番簡単に伝えられるんじゃないかな。

[黒田]

ほんとに面白いですね。

ストックフォトと芸術を発表する場の両立

[黒田]

そんな中でも、EyeEmでは写真を中心にして、フォトグラファーが登録して写真をアップロードしている。フォトグラファーはそれをマーケットで販売したりして世界とつながっていくと。

本当にフォトグラファーのためですよね。それがアマチュアだろうがプロフェッショナルだろうが。

[GEN]

ライセンスだけの問題ではなくて、アートとしての場でもある。それがかなり大事なんですけど。ストックフォトだけだとまた違ってくるし、バランスをとるのがとても難しいけれど、それが一番の多様性だと思います。またチャレンジングでもあります。

[黒田]

なるほど、たしかにチャレンジングですね。両立していくのは。

[GEN]

アーティストの人たちはやっぱりストックフォトとか好きじゃないですよね。だからそうしたイメージを変えたいという気持ちはあります。

「ストックフォト」と言ったら、ドイツやヨーロッパではやっぱり良くないイメージです。でもライセンシングだったらみんなわかるんです、そうした言葉を変えたい。けど、それがとても難しい。

[黒田]

1x.comという審査型の写真投稿サイトはご存知ですか?それは審査通過した写真だけギャラリーに掲載されるスウェーデンのウェブサイトなんですけど。

フォトグラファーが写真をアップロードして、キュレーターがそれをピックアップして、選ばれたものだけが公開されているんですがそれがまたかなりのアート志向なんです。偏っているくらい。そしておもしろいのが、その写真を販売もできるんです。これはEyeEmと同じモデルだと思います。

そこに登録している人は殆ど全員アーティストとして活動しているので、やはりバランスが難しくて、そこは苦労されているみたいですね。しかし、実際に売れたりしてるんですよ。それがまたおもしろかったりする。

[GEN]

売れると思います。誰がキュレーターをしているのかは分かんないですが、きちんと審査されていれば芸術写真でも売れますね。

[黒田]

大事ですね、そこは。

[GEN]

大事だと思います、そしてクライアントが何を買うかも大事ですし。

[黒田]

ギャラリーなどでも使われたりするみたいです。

[GEN]

ストックフォトだけじゃなくて、イエローコーナーみたいにプリントして販売するようなサービスなのかな。そういうものは日本にもありますか?

イエローコーナーはパリやロンドンに店舗があって、いろんな写真が買えるというコンセプトなんですけど。

[黒田]

日本にもあります。イエローコーナーは東京にも店舗があって、日本での展開はアマナさんの取り組みですよね。ただ、文化として広まっているかというと、まだまだ広まる余地はあるなという感じですね。

[GEN]

聞いた話なんですけど、日本は写真を小さく買う。外国は写真を大きく買う。どうしてかというと家のサイズが違うサイズから(笑)

[黒田]

それは確かによく言われますね。でもたとえば、ドイツとかそんなに広くないじゃないですか?

[GEN]

僕たちの部屋は120平米のマンションです。それも僕だけじゃないです。80、90、100平米、皆さん簡単に持っていますから。

[黒田]

120!それは違いますね。大きい写真飾れますね。
あとは賃貸物件では壁に穴を開けてはいけないというのはヨーロッパも一緒ですか?

[GEN]

穴を開けたら引っ越しの時に詰めなきゃダメとかはありますが、

ヨーロッパは古い建物だから、壁も大きいし、詰めたら大丈夫。日本だと穴を開けたら壁が全部壊れちゃうような壁なのでダメなんじゃないかなと思いますね(笑)

飾ったら壁がバーンと壊れてしまいそうな(笑)

[黒田]

粉々になって隣の人と「こんにちは」してしまう可能性があると(笑)それは確かに危険ですね。そんなことはないと思いますが(笑)、いずれにせよ穴を開ける人は少ないと思います。

写真とともに生活する

[黒田]

でもそういった飾るといった行為は増えて来たらいいなとは思いますけどね。日本人の写真に対する眼が育ってきたら。

[GEN]

日本はもうかなり育っていると思います。

写真の価値、芸術的な価値は、フランスとか日本はとても高いと思います。ドイツなどに比べると、これはキレイだ、飾りたいといったリスペクトを含めた価値は、日本は高いと思いますよ。フランスなども。

だからパリフォトとかもすごいじゃないですか。だから僕たちも、今ドイツでベルリンフォトウィークを作っているんですよね。新しい会社を作って。街の中で写真を見せるというイベント。みんなに通用するというイベントを作るつもりです。

[黒田]

いつやるんですか?

[GEN]

今年の10月にベルリンで。ぜひ記事を書いてください。

[黒田]

書きますよ〜!できたら行きたいくらいです(笑)

[GEN]

パリフォトだったらみんな知っていますが、そういうイベントがベルリンには無かったんですよね。だから僕たちはベルリンフォトウィークを作ったんです。

ドメインなんかIDもTwitter、Instagram、Facebookとか全部空いていたんですよ、ベルリンフォトウィークドットコムという名前で(笑)だからまた新しいベンチャー。写真好きな人のためにそういうのを作るんです。

[黒田]

なるほど面白い。本当に多方面にフォトグラファーのためにいろいろなことをやられているんですね。

写真のマネタイズ化

[黒田]

では最後に一点聞きたいんですけれども、ストックフォトに登録されているフォトグラファーの方って、それでマネタイズして生活したりしている人というのはいますか。

[GEN]

いますね。ついこの前、毎月20万円入ってくるという方の話も聞きました。

僕だって携帯で、すごく綺麗な写真ではないんですけれど、普通の写真を撮って、3万円くらいは毎月。

[黒田]

定期的に入ってくるという事ですね。面白い。それである種ちょっとしたお小遣いのような。

[GEN]

そうですね。芸術じゃないです。でも、あくまでストックフォトという感覚でやれたらおもしろいと思います。

[黒田]

そうですね。それはそれぞれ一人の人間の中に、アートとしてやるのか、ストックフォトとしてやるのかというラインがあればいいだけの話なので。

[GEN]

そうです、だから芸術が好きでストックフォトをやるのは滅多にいないと思うけど、写真好きだからやるというのでも良いし。

[黒田]

好きなものは好きに撮って、マネタイズはマネタイズでという。

[GEN]

EyeEmでもアップロードしたら全部ストックフォトに行くわけじゃない。自分で決められるのがすごく大事だと思います。

[黒田]

良いですね。それは全世界でそういう人たちがいるという事ですよね、凄いですね。ドイツ人でも、日本人でも良いわけですもんね。

[GEN]

当然です。

[黒田]

日本人にも月20万円くらい手に入れるフォトグラファーが生まれると良いですが。もういるのかな。

[GEN]

頑張りましょう(笑)

[黒田]

そうですね(笑)

[GEN]

でもお金だけではないですからね。

EyeEmのマガジンに載るのも価値がありますし、壁に実際に飾られるというのもすごく嬉しいじゃないですか、500円でも嬉しいですし。アーティストだったら500円なんてどうでもいいよって言う人もいるし、でっかい壁に飾ってもらったよという、そういうのがすごく話題になるし、大事なポイントは人それぞれだと思います。

[黒田]

そうですね。例えば飾ってもらったとか、マガジンに載ったというのはキャリアの一つにもなりますしね。

EyeEm Awardsとは

[GEN]

実は、僕たちのアワードって世界中で一番大きいアワードになっちゃったんですよ。60万枚の写真が応募されているんです。

そのぐらいの大きなコンテストを作ってしまって。それでショートリストや受賞者なんかを決めるんですけど、もちろん選ばれたら皆さん喜んでもらっています。

[黒田]

60万!それはビッグですね。いつくらいに開催されるんですか?

[GEN]

今始まっていて、アマナが発行している雑誌『IMA』のエディトリアルディレクターである太田睦子さんも審査員として入ってもらっています。

[GEN]

そうして勝者は、ベルリンで受賞式があったり、ライカなどのカメラをもらえたりするかも(笑)

[黒田]

ライカも!今日は何かとライカの話が出ますね。

[GEN]

実はいま相談しているところです。

[黒田]

もらえるとなると、皆やる気出るんじゃないですか。

[GEN]

そうなんです。どんどん大きくしたいのと同時に、アートのコミュニティを作っているつもりなんです。それが大事だと思っていて。

[黒田]

アート写真としての世界的なコミュニティを作ろうとしてるということですよね。ベルリンフォトウィークは。

[GEN]

そうです。ストックフォトじゃなくて、アート。

[黒田]

アートオンリーでもないんでしょうけど、アワードもベルリンフォトウィークも、アートという文脈から生まれた取り組みということですもんね。

楽しみですね。日本人のフォトグラファーもどんどん投稿してほしい。

[黒田]

ところでマガジンに載るのは、どうやったら載れるんですか?

[GEN]

好みですかね。AIも助けてくれるし。

[黒田]

アップロードされた中から審査して。

[GEN]

そうです。実はこれまではEyeEmからでなければダメという決まりだったんですけど、今はもうちょっと拡大しようかなという相談をしています。

[黒田]

でも基本的には投稿された中から選ばれると。面白いですね。僕も投稿してみようと思います。チャレンジ。

[GEN]

おお、是非!チャレンジしてください!

[黒田]

はい!

それでは、本日はお忙しい中、ありがとうございました。

今後の発展をいちユーザーとして楽しみにしています。

[GEN]

こちらこそありがとうございました!

プロフィール

GEN SAKADATE

ドイツで生まれ育つ。TBWA、McCann、Jung von Matt、DDBやLeo Burnettといった広告代理店・制作会社にてデザイナー・クリエイティブ ディレクターとして活動し、カンヌ広告賞の金賞(Volkswagen, Bosch他)を含む100を超える広告賞を受賞。現在はドイツ、ベルリン拠点のEyeEm社 Co-Founder兼Creative Director。

クレジット

制作​ 出張写真撮影・デザイン制作 ヒーコ http://xico.photo/
カバー写真​ 黒田明臣
出演​ GEN SAKADATE
Biz Life Style Magazine https://www.biz-s.jp/tokyo-kanagawa/topics/topics_cat/artsculture/

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