写真と生きる | 今道しげみ×黒田明臣 対談「幸せな一瞬を残すための写真」

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今回はフォトグラファー・カメラインストラクター・フラワーデザイナーなど多岐に渡って活動しており、定期的に開催しているフォトレッスンでは「分かりやすく楽しい」と生徒の女性から絶大な支持を得ている今道しげみ氏と、ヒーコ黒田明臣による対談をお届けします。

今道しげみ×黒田明臣 対談「幸せな一瞬を残すための写真」

ここまでの道のり

[黒田]

本日はよろしくお願いします!今道さんの事はAPA*を通して知ったんですけど、APAというのは広告写真専門の方々の集まりだと思っていたら、今道さんは広告だけではなくそれに加えて、フラワーデザイナーのスキルを生かして商業撮影もやれば、リビングフォト*という教室も運営されているんですね。マルチすぎて驚きました。

そういった活動はいつ頃から行われていたんですか?

[今道]

遡るとまず、カメラより最初に花の仕事を始めたのが1990年です。27年前ににフラワーデザイナーとして働き始めました。その前はCAをやってたんです。25歳の時に結婚して、夫がロンドンに転勤になりロンドンに行ってすぐに子供が生まれたんですよ。

でも時はバブルで、みんな結婚や子育てよりも社会にどんどん出ていくぞと、女性の社会進出に希望あふれる風潮だったんです。その中で、私は子育てに専念していたら時代に取り残されていくような淋しさを強く感じて…。

ロンドンにいた事もプラスになるような今までのキャリアで出来る事はないか、子供がいても出来る事はないか色々考えたんですね。そこで考えて考えて、「フラワーアレンジメント」をやろうと思いました。その時、日本ではフラワーアレンジメントというものが広まっておらず、まだ生け花しかない時代だったんです。早速ロンドンでフラワーアレンジメントを習いに学校に行きました。

[黒田]

歴史を感じますね(笑)、ロンドンに行ってから、フラワーアレンジメントを始めようと思ったんですね、なんというかすごく合理的な選択にも感じます(笑)

[今道]

はい。それで私が行っていた学校では、先生がフラワーアレンジメントのデモンストレーションをした後、「来週これと同じようなものを作ってもらうから、花と入れ物を各自買って持ってきて。」と言うんです。多くの人はそこでドロップアウトしちゃって(笑)

[黒田]

段階を経て学んで行くのかと思ったらいきなり実践的ですね(笑)、ゼロから作るとなるとたしかに脱落者は多そう(笑)

[今道]

そう。無理!って(笑)でも私はそれがすごく楽しくて、1回のクラスのために花屋を3件くらいまわって、自分のイメージするところを見つけてきて作ったんです。そうしたら、日本人だけじゃなく、イギリス人の生徒さんからも「あなたのは、すごく良いわね」と褒められて、これはちょっと才能あるかも…なんて思いました(笑)

[黒田]

最初から頭角を表していたんですね!学校はどのくらい通われていたんですか?

[今道]

週一で3ヵ月ですね。そうしているうちに夏休みになったんですが、夏のイギリスはすごく花が綺麗なのでもう少し続けたい。自分の花を買いに行くときに3、4人分買うのも同じ手間だからお花の用意は私がするし、子供が預けられないという人は子連れでもいいから、私の復習のためにお花のお教室をやるので受けてみませんか?と言ったらみんな来てくれて、それがすごく評判になり、月100人くらい来て下さるようになったんです(笑)

[黒田]

すごいですね〜!しかも異国の地でなんて。行動力にあふれていますね。

[今道]

日本人の駐在員の人もいて、しかも子供が預けられないし、お稽古事もいけない、でもお花を習いたいという人たちがいっぱい居たんですよね。その人たちは、お客様が家に来るので、おもてなしと同時にお花のスキルも習えるという感じですね。

[黒田]

もともとリビングフォトを今の形で始める前に、ロンドンの時から同じような形態でビジネスをやっていたと。

[今道]

そうですね。今と当時で違うのは、当時は子連れオーケーでした。そのかわり自分の子供も居るわけですが。

[黒田]

なるほど〜。それも自分のライフスタイルに合せていたんですね。

日本でゼロからスタート

[黒田]

ロンドンでされていたフラワーアレンジメントの教室は、日本に戻られて来てからはどうされたんですか?ロンドンにいた生徒の方々は当然日本には居ないわけですよね?

[今道]

そう、居ないので出来ないです。だから日本に戻ってもう大失業ですよ。またゼロからスタートですね。

でも日本でまだ本場のフラワーアレンジメントを学んできた先生はそんなに居なかったので、うちでフラワーアレンジメントの教室をやったら全国から飛行機で習いに来て頂けました(笑)

[黒田]

大失業は一瞬でしたね。(笑)

[今道]

はい(笑)その生徒の方々が来て下さるきっかけになったのは、うちの教室が雑誌の取材を受けて女性誌に載ったりとか、テレビの取材があった事が大きかったですね。

あとは、青山にあるいわゆる富裕層と言われるような人たちが通うAMY’S(エミーズ)という料理教室の先生が、料理以外にお花の教室をやりたいという事で、「ロンドンに様子を見に行きたい」と言われて、私が「ロンドンの様子でしたら私に聞いて下されば何でも知っています」と言ったら、「とりあえず一回やってみてくれますか」と言われてやってみたらすごい人気になってしまって、そこで10年間フラワーアレンジメントを教えていましたね。

[黒田]

そうなんですか。それじゃあ縁も重なって、戻って来てすぐに同じ形態でのフラワーアレンジメントの教室を始められたんですね。

[今道]

そうですね。3ヵ月くらいは何もしていない時期はありましたが(笑)当時は昭和30~40年頃に建った、すごく古い社宅に住んでいたんですが、そんなところでも来て下さる生徒さんがいました。

[黒田]

いやいや、準備期間でそれ位はかかりますよ。むしろ3ヶ月で早いくらいです(笑)

ご自宅に来られる生徒さんというのはご近所さんとかですか?

[今道]

AMY’S(エミーズ)で初めたフラワーアレンジメントの教室ではなく、先生個人のお宅で習いたいと言って下さる方々でした。当時はSNSはないので、口コミで入る人もいれば、やめる人もいて、当時の生徒数はだいたい30人くらいの感じでした。もっと増やしたいと思っても、なかなか難しい時代でしたね。

[黒田]

でもあまり増えても、限度がありますからね。

[今道]

そうなんです。子育てしながらなので、丁度いい感じですね。それから次男が生まれたので、社宅から今住んでいる家に引っ越して、22年やっているという事です。

二度目の転勤

[黒田]

なるほど。じゃあ今のご自宅で、フラワーアレンジメントの教室からカメラを使ったリビングフォトへの転換も行われているという事ですか?

[今道]

いえ、それがもうひとつ挟まるんです。ロンドンから帰って来て東京に5年間いて、フラワーアレンジメントの教室が良い感じになった時にまた転勤で(笑)

今度は香港に行ったんですが、その時にはさすがに教室を全て閉じるのは前回すごく不安な思いをしたので、6年間香港にいた中で、3ヵ月に1回、日本に戻ってきてAMY’S(エミーズ)の教室と自宅の生徒さん向けの教室を続けました。

[黒田]

自宅の生徒さん向けの教室を続けられたというのは、場所をどうされていたんですか?

[今道]

場所は借りたりして、3泊4日で帰ってきてました。2日間集中的に20人+20人と結構たくさん教えていましたね。

[黒田]

3ヵ月に1回のスポット的な教室ですね。

[今道]

はい。当時は日本は日本でやりつつ、香港は香港でお花をやりたいと言って下さる方がいますので、香港でもやってました。

[黒田]

香港でも!(笑)、アクティブすぎる(笑)
教える事は同じなんですか?

[今道]

やる事は同じでしたが、それだとだんだん私が飽きてきてしまって(笑)

それに、最初にやり始めた頃は本場で習ってきた先生が居なかったから生徒が沢山来て下さったけど、その後お花の先生が結構増えてきたんですね。そこじゃなくうちを選んでもらうにはもう少しプラスアルファがあったほうが良いなと思ったんです。あと私が飽きないようにもあって、1人カルチャーセンターみたいなのもを試みました。

それは例えば、花を習いつつ、お紅茶も学べます。とか、あと私はワインも詳しいので、テイスティングも一緒にできますとか、あとまだアロマテラピーが広まっていない時代にそれを持ってきてアロマテラピーをやったりとか、香港に行って帰って来てからは中国茶を一緒にやったりとか、毎回手作りのスイーツを作ってレシピもお渡ししていましたのでお菓子の教室と間違えられるほど熱心な時期もありました。

その中の1つとして写真もあったわけです。

フィルムで花を撮り始める

[黒田]

なるほど。なんかもうシルクロード的な感じですね。

ではそこでようやく写真が出てくるんですね。香港の時から写真を撮っていたんですか?

[今道]

はい、フィルムで撮っていました。でもそれは教えるほどのスキルが無くて、何枚か撮ったら1枚良いのがあるみたいな感じで。撮っていた目的は生徒さんに花が枯れてもその写真を見たら「こんなのを作ったよね」と思い出してもらえるように、記録的な感じで綺麗な写真をずっとお渡ししたいなと思っていて、それでカメラを買って続けていたわけです。

[黒田]

なるほど。それはごく自然な流れですね。枯れていく物と残せる物として正反対という点で花と写真は良い相性ですね。

[今道]

写真をやりたいというのは、結構早い段階から取り組んでいたんですが、ロンドンにいた時に「日本に帰ってきたら勉強したい」と思っていたんです。

ところが、日本に帰ってきたら子供が生まれて、しかもフラワーアレンジメントの講師もやっているから時間がないし、かと言って入門したい先生にも出会えず、学べるような本もなく…でも雑誌には素敵な写真があるから、どうにかすれば撮れるはずだと思い全部独学で勉強しました。

[黒田]

雑誌にあるなら、もう撮れると証明されているような物で、物理的には絶対撮れるはずですもんね。分かりますがけっこう狂気の思考ですよ(笑)

[今道]

そうなんですよね、「なのに何故だ!」と思って、結構しつこく10年くらいフィルムで写真を撮っていました。今思えば、10年もよく頑張ったなと(笑)

でも後半5年くらいは何枚か撮った中で現像したら生徒さんにあげられるものが1枚あったから、ずっとそれをみんなに配り続けていました。写真というものは私にとって教えるものではなくて、プレゼントするものだという感覚だったんですね。

[黒田]

サービスの1つと言うか、教わりに来た方にそれを記録として残してお渡しする。という事ですね。みなさん相当喜んだ事でしょうね。

感動のデジタル一眼レフ

[黒田]

デジタルカメラに移行したのは日本に帰って来てからですか?

[今道]

香港から帰ってきてすぐに、夫がデジタル一眼をそんなに高くなくて良いのが出てきたから買ってあげると言ってプレゼントしてくれたんです(笑)

そしたら、現像に行くタイムラグが無くなり、コストが掛からず、色々な工夫の仕方が出来るようになって、もう本当にすごいなと思いました。そしてデジタルに移行した事で、ブログを始めたんですね。それが2003年です。

[黒田]

始めるのがかなり早いですね!

[今道]

その前からホームページは持っていました。フィルムでは撮れていたので、ブログを始めて、デジタルにして再現すればいいだけですから。10年くらいフィルムでの独学の部分が、デジタルにした事で、あっという間に開けた感じでした。今まで教えてくれる人がいなかったのもあり、そこでようやくじゃあ私が教えようとなりました。

[黒田]

なるほど〜。10年間、フィルムで撮影方法については学んでいたから、デジタルではこれまでよりも簡単にイメージを再現できるようになったんですね。

[今道]

写真の撮り方を教えるスキルがある人というのは本当に見つからなくて、撮るのとはまた全然違う世界なんだなと思うのですが、私は逆に、花という被写体はあるし、教える事は慣れていますし。それに専門学校とかには主婦は行けないですよね。だから、お稽古スタイルで一眼レフ教室というのを誰もやって居なかったのでそれがきっかけになり、2005年にスタートしました。

[黒田]

そのお稽古スタイルの一眼レフ教室は、ホームページとブログがあった上で、そこから集客したりとかして広まっていったんですか?

[今道]

最初のうちはお花に通って下さる生徒さんたちに向けて教室を開いていました。そのうち、ブログがどんどん見られていき、今度は全国からレッスンを受けに教室に来て下さるわけです(笑)

[黒田]

それはどのくらいのペースでやっているのですか?

[今道]

一つのプログラムは全部で5回。3時間で5回ですね。月に1回のペースですから、約半年で終了します。それをやっているうちに、私のブログの写真を転載した書籍化の話があって、デジタルカメラマガジンの編集長が「女性のリビングフォトというカテゴリーが無いので、本を出してみましょう。」と言って下さって本を出してもらいました。

[黒田]

へ〜!それはすごいですね。結構テクニカルな内容とかも書かれているんですか?

[今道]

いえ、それが女性はあまりテクニカル的な事を書きすぎると敬遠するからと、編集長の意向であまり書くなと言われていました。私はがっちり書きたかったのですが(笑)

なのでもっとライフスタイル的な事ですね。お花の話やフォトレシピという形で撮影時のカメラの機種や撮影時の条件情報情報を少し載せています。そして最後のまとめのところに、撮り方をイラスト入りで簡単に解説をしています。

[黒田]

ちなみにどういったタイトルですか?

[今道]

タイトルは、「おうちで楽しくリビングフォト」という名前です。

この本は「女子カメラ」のブームを作る先駆け的なものだったと自負しています。

商業写真を撮るようになったきっかけ

[黒田]

そうやって、教室だけではなく、書籍やカレンダーの写真等、それらを仕事としてやっているわけじゃないですか。それは教室をやっていく中で商業的なオファーが来るようになったんですか?

[今道]

ずっと花をやっていたわけなので、関わりが生徒さんと先生で完結していて、企業が絡んでくるシチュエーションがずっと無かったんですね。でもカメラって、生徒さんがいて、私がいて、カメラメーカーがあるわけですよね。だから、SONYに売り込みに行ったんです(笑)

[黒田]

いや〜サバイバル能力が桁違いですね!(笑)

そのカメラメーカーを選んだ理由はあるのですか?

[今道]

最初から、全メーカーを順番に行こうと決めていたんです。それでSONYに行って担当者の方に、講師をさせて欲しいと伝えたら、「使い方を教えるインストラクターでしたら、すぐ来てください。」と言われ、「いえいえ、そういう事ではなく、私が全部プログラムを作って、リビングフォトという内容でやりたいのです。」と提案をしたら、「これは女性に受けるぞ!」とすごく乗り気になってくださり、最後は社長さんまで出てこられて即決でした(笑)

[黒田]

何もかもがトントン拍子過ぎますね(笑)

[今道]

それで、月に1回、銀座にあるSONYビルのセミナールームでやったんですが、常にすぐ満席になりました。女性が一眼レフを使うのは珍しいという事で、毎回マスコミの取材が入ったりなんかもしていましたね。

[黒田]

それは、SONYさんと協賛としてやりつつ、個人でも稽古スタイルでやっているという事ですね。

[今道]

そうです。メインは家での「リビングフォト」としての講師で、外でのメーカーさんとタイアップでするのは、1回限りの単発授業です。

[黒田]

なるほど、そうなんですね。

フラワーアレンジメントからカメラへの移行

[黒田]

昔されていたフラワーアレンジメントの教室は、今はもうカメラに完全に切り替わっているのですか?

[今道]

完全に切り替わったと言っていいのか分かりませんが、フラワーアレンジメントの生徒さんが全員カメラを勉強して下さってますね。

[黒田]

では、完全にスムーズに移行したんですね。

[今道]

そうですね。12年もありますから、最初のうちはお花だけの人もいましたけれど、そのうちどんどん世代交代に入って、ある時を境にお花の生徒さんイコールカメラもやった事がある方たちだけになったので、花の生徒さんだけのクラスは一旦全部やめました。

[黒田]

では、今は両方学べるという事ですね。

[今道]

そうです。プログラムは全体で初級から上級までだと一年半ほど続いて、毎月あります。被写体は私が活けた花を準備して、みなさんにそれを撮って頂くわけですが、1年半後プログラムが終了したけどやめたくないという人がいっぱいいるんです。

その人たちのために、リビングフォト・アドヴァンス(上級クラス)のブーケ・ド・フォトというクラスがあって、フラワーアレンジメントのクラスのように、私がデモンストレーションをしてみんなに作り方を教えて、その後にスタイリングをして撮ってもらうというエンドレスのプログラムにしています。

このプログラムに長く来ていれば、リビングフォトも機材をリニューアルしていくので、一番最新の事がキャッチアップ出来る状況にしてあり、カメラの最新情報も盛り込みながら花も続けていけるというスタイルですね。

[黒田]

という事は、撮り方も分かって、花をどうアレンジしていくかも学んでいけるという事ですね。それって無敵じゃないですか。

[今道]

でもね、みなさん学ぶ事というより、教室に来て撮る事自体が楽しいと言っています(笑)

[黒田]

それは今道さんのキャラもあるでしょうね(笑)

私の存在意義

[黒田]

自分がやっているヒーコの方は写真のメディアなんですが、この対談が掲載されるビズスタさんの方は写真のメディアではなく、アート&カルチャーという枠組みで全国の主婦層の方々にもよく読まれているそうです。
今道さんがやってらっしゃるのはまさにそういった方々に向けた内容ですよね。花をやりつつ、写真を撮って、しかも写真というメディアとして残って、家族にも伝えられるし、今振り返って考えるとものすごくマッチしている組み合わせだと思うのですがそれは計算でされているんですか?

[今道]

考えてはやってますね。ただ家族がありますから、自分で使える時間はすごく限られてきます。自分でコントロール出来る仕事がないか考えていた状況はずっと続いていました。

素晴らしい写真をお撮りになる写真家の方たちがいっぱいいるのは知っていたんですが、教えるスキルを持っている人が中々居ないというのが分かったので、そこに私の存在意義があるし、しかも「女性に同じ目線」で教える事が出来る。そう思ったんですよね。あと、カメラマンは自分であまり被写体を用意するイメージではなく、色々な人とチームでやる事が多いと思うんですね。でも私は被写体(花)を用意できるし一人で出来るのも大きいかなと。

料理写真

[今道]

レッスンでは最初は分かりやすく花を明るくふんわり撮りましょうというスタイルだったんですがそれだけだと変化がないと感じて、最近は料理の写真も撮ってます。

[黒田]

そうですか。花と料理なら結構ライティングも近いですしね。実は最初に今道さんの撮られた花の写真を見て料理っぽいなと思っていました。花もただふんわり明るく撮るだけではなく、少し影も入れていたり、わりと明暗が気持ちいい仕上がりが多い印象です。それは明るいのも暗いのも両方出来ているのが大きいのかなと思いますね。

[今道]

そうですね。ヨーロッパのファインアートをすごくよく見ていたので、それが影響したのかもしれません。

[黒田]

ロンドンは分かりませんが、ヨーロッパ、フランスとかのアートシーンは暗さも併せ持つというか、明暗表裏一体みたいなところを表現している印象があって、今道さんの写真はまさにそれに近い感じがします。

[今道]

いわゆるダークシックと呼んでいるのですが、全部ファインアートのヨーロッパ絵画をイメージした感じですね。

[黒田]

そうですね。ヨーロッパのフルーツを描いた絵も、影を大事にした感じがありますね。料理は今でも結構シンプルで、ちょっとダークな木目調の下にカットしたオレンジとナイフとかがあるような写真は、多分ヨーロッパ発で、アメリカとかのフードフォトでも時々見ますが、イメージとしてヨーロッパー風と言われても違和感ないです。

[今道]

私は海外が長かったので、最初に花の写真をやりたいと思ったベースになってるビジュアルというのが外国の雑誌で、今でも殆ど日本の写真はベースにしていないですね。

[黒田]

そうですか。それでもすごく納得ですね。日本の良いところもあるんですが、単純に写真の良さが海外っぽいなと思いますね。自分も絵的なところは海外志向ですし。

[今道]

私は写真というのは、光で描いた絵だと思っているので、自分好みの色とか立体感を出すのに、絵の具とか筆の代わりにカメラを使っているという感じですね。

だいたいは自然光で全部撮るんですけど、料理は夜作る事が多いですよね。だから夜でも綺麗な写真が撮れるようになりたいという生徒さんはすごく多いので、自然光で1年間撮るリビングフォト・ベイシック、リビングフォト・インターミディエイト(中級クラス)が終わった後、今度は料理の写真を撮るためのライティングの半年コースをやっているんです。

[黒田]

そうなんですね!それは、最近始められたんですか?

[今道]

2013年から始めましたので、今年で5年目になります。

[黒田]

じゃあ、結構料理のプログラムも長いですね。

[今道]

そうですね。そこも全部私がスタイリングやコーディネートをして、料理をして、ライティングをして、みんなで撮るという感じです。

[黒田]

いたれりつくせりすぎる!それは例えば、最終的に通い終えて、自分で撮れるようになった時に必要なものはカメラ以外にライトといった機材も準備しないといけない感じですよね?

[今道]

はい、そうなんです。みんな自然光で勉強していた人たちは、夜も撮れるようになりたいと憧れるんですが、自然光ってレースのカーテンとレフ板があれば大丈夫だったんですよ(笑)

それが、夜にライティングで撮るとなると何だかんだと出さなきゃいけない。スタンド立てて、トレーシングペーパーを使ってやるわけですよ。そしたら、みんな、「はぁー確かに綺麗に撮れるけど…ちょっと大変…」って言うので、それで5回のコースの中で、ライティングのセットを松竹梅に分けてたんです。詳しい内容は専門的な話になってしまうので省きますが、最終的に夜の食事を家族に少しだけ協力してもらって、1分でとび切り美味しそうに撮るライティングというのを目標にしようと試みています。

私自身がお手本になろうとしげみの「BAN GOHAN」というシリーズを撮っています。

「BAN GOHAN」シリーズ
[黒田]

確かに確かに、ライティングするとなると場所もとりますしわざわざセットして…ってなると大変ですもんね。ましてや普通のご家庭ならなおさら(笑)

幸せな気持ちをカメラに残したい

[黒田]

カメラを全くやった事が無いけど、お花や料理を撮れるようになりたいという人は、結構多いですか?

[今道]

いっぱいいます。女性は料理を食べる前に、綺麗な料理が出てくると、必ずスマホで撮るじゃないですか。それは、美味しそうという、幸せな気持ちをカメラに残したいという行動だと思うんですね。

でも残念ながら、その写真を後で見たときに、あまり綺麗じゃない事によって、そのときの気持ちが蘇らないでしょう。私が何とかしたいなと思っているのは、その時に撮った写真を後で見たときに、「そうそう、あのとき、本当に美味しくって」と、幸せな気持ちを、もう一度、思い出す事が出来るような写真を撮れるように教えてあげたいという事だけなんです。

だから、自分が綺麗な写真を発表したいという事は、あまり無いんです。みんなが撮れるようになってくれたらすごく嬉しい。

[黒田]

それはいいですね。残せるというところ。しかもいい思い出として、ずっと思い出せるというのが。

[今道]

そう、幸せな一瞬を残すための写真です。それは料理でもフラワーでも変わらないですし。その時見たときの感動を写真で残す、残せる事が重要ですね。

[黒田]

なるほど。料理でもそうですね。「よく出来て美味しかったなあ」とか、美味しいお店に行ったのもそうですしね。

[今道]

はい。幸せな時間って、意外に文章にして出すと自慢に聞こえちゃうと思うんです。だけど、「綺麗に撮った写真」は人に見せたときに嫌な感じがしないでしょう。

しかも、見た人もその空間には居なかったのに、同じお花を見た時の気持ちを共有出来るじゃないですか。そういったように、幸せな気持ちを見た人にも感じてもらえるような写真をみんながたくさん撮ってくれたら良いなと思っています。

感動を写真で残す
[黒田]

それを実践しているわけですね。それは本当にすごいですね。確かに多くの人を送り出しているのも分かりますね。

生徒はやっぱり女性が多いんですか?

[今道]

うちに入学できるのは女性限定にしていますが、今ニコンカレッジを担当していて、そこは男性オーケーです。そこの生徒は3割くらいが男性ですね。

[黒田]

ニコンカレッジで教えている内容は、お花に限らずという感じですか?

[今道]

いえ、スタジオに花を持ち込んで全部スタイリングをしてやっています。

[黒田]

じゃあ、リビングフォトの一環としてなんですね。

[今道]

そうですね。今月から、スタジオを借りるのをやめて、うちで少人数制でリビングフォトをやっているので、ニコンカレッジだけは男性にも参加していただけるようにしています。

[黒田]

週末がメインですか?

[今道]

いえ、家族がいるので、20数年間企業が関わるイベント以外は、週末はクラスをやらない事にしています。企業が関わっているイベント等は週末でもやってましたけれども。自分がやっている教室なんかは週末は自分のメインはやらない方針で、ほかの先生にやってもらっています。

それでこの度、ニコンカレッジでのレッスンを初めて自宅でやったわけですが、生徒の中には働いている人も休暇をとられたり、1~2人は飛行機、新幹線で来る方がいらっしゃるのは当たり前ですね。

[黒田]

それはすごいですね。生徒のみなさんが撮った写真を見る事が出来る場所は無いんですか?

[今道]

それは作ってないですね。でもFacebookで繋がっていますので、随時みなさんの撮った写真が上がってきます。

[黒田]

みなさんの進化の過程を見届けたいですね〜。

[今道]

進化するのは、当たり前なんです。みなさん、受講前と受講後のビフォー・アフターが激しくて。うちに来る前と習った後では、生徒さんがみんな、まるで別人になってしまうんです。だから、私は魔女って呼ばれたりなんかもして(笑)

そうやってすごい変化した人がいると、「あの人、何したの?」と気になって色々調べて「リビングフォト」に辿り着き、その人も受講しに来られるなんて事はとても多いです。生徒さんたちが劇的ビフォー・アフターをやってくれるおかげで、宣伝は一切しなくて良いような状態です。女性で専門家でもないのに、料理とか花とかの写真が上手な人をたどっていくと、必ず私がいるというわけですね。

[黒田]

はぁー…すごい。まさしく平成の魔女ですね!(笑)

[今道]

自分で思い通りの写真を撮れるようになると、みなさん、すごく楽しそうにされていて、更に花に加えて料理を写真に素敵に残す事が出来ると、もっともっと楽しくなるんですね。

主婦の方って、普段なかなか褒めてもらえる場所がないので、そのきれいな写真をSNSに載せる事でみんなから褒めてもらえるのが嬉しくって、さらに頑張ろうという気になるんですね。

[黒田]

それは良いモチベーションになるでしょうね。

[今道]

すごく人生が楽しく豊かになるというので、みなさん喜んで下さいます。ただ単にカメラの技術を教えているだけじゃなくて、人の幸せや豊かな部分を、もう一度写真を通して感じる事が出来るという事ですね。

[黒田]

本来あるべき写真の使い方のような感じがしますね。自分がいる領域だと、写真自体にこだわり過ぎてしまい、それをなぜ撮っているのか、なぜ残しているのかにフォーカスしていないみたいな感じで、こんな良い写真が撮れたぞという、自己満足と自慢みたいなところが、どうしても承認欲求であったりするのが抜け出せないところなんです。

本来写真って記録のためのものじゃないですか。それを記録する事によって人生が豊かになったり、幸せを継続出来たりするのを実践しているわけですね。作品を見せるうんぬんとかではなくて。

幸せに気が付いてない人が多い

[今道]

みんな幸せなのに、気が付いていない人が多いなと思うんです。恵まれているのに、誰にも認められていないという事で、自分の幸せや豊かさを認識出来ないで悶々としている女性が結構いるんですよ。

でも写真で褒められたりする以前に、写真が撮れる事自体が幸せな事だと思っていて。私はそこから感謝の気持ちが生まれるんです。こんなに写真が撮れるなんて、感謝しかないじゃないですか(笑)

[黒田]

これが幸せだぞというのも、外に出していかないと気付かないですね。

[今道]

普通、人の幸せは妬みになるんだけれども、なぜかそこで写真がすごく綺麗だと遠慮がいらないんです。

[黒田]

確かに。ビジュアルのアプローチって、良い意味でその人の想像力を働かせられると思います。だから自分の中で受け入れ易いのかな、と。文字はわりと論理的になりがちじゃないですか。だから、もらったものを数学的に解釈してしまうような印象ですね。

[今道]

そうですね〜。理解するのではなくて、理屈じゃなく感じるというところで、綺麗過ぎるというのも気にしなくていいのかなと思いますね。

[黒田]

単純にそれが何だか分からなくても、綺麗というのは不可避ですからね。文字は読めなきゃダメなのでどうしても理解する能力がいるじゃないですか。だから文字だと頭の中で変換していると思うんですけど、綺麗なものだったら大人が見ても子供が見ても、それこそ文字を知らない人が見ても「綺麗だなぁ」というのは、良い表現がなくても誰でも理解出来る人間の共通意識はある気がしますね。

面白い着眼点だなと思いました。花や料理以外にも応用出来そうですね(笑)

[今道]

みんなが撮れるようになれば、もっと良いなと思いますね。

ワインの魅力

[今道]

あと私ワイン好きなんですけど、ワインを撮りたいという人もいっぱい居ると思うんですよ。 ビズスタを拝見したんですけど、ワインの特集なんかは見入ってしまいました。

[黒田]

あ、そういえば先日、ビズスタの誌面の方ですけどワインのソムリエの方の撮影をしました。その号でしょうか。

[今道]

そうだと思います。特別に思い入れがあるワインは、ボトルを開けた時に撮っておきたいと思うものです。

[黒田]

なるほどなるほど。自分のお客さんで、飲食店の方なんですが、棚に重ねてある数千万分のワインやシャンパンをこれが見えるように撮ってくれって言われたり、その道の人はやはりワインに対してかなりのこだわりを持たれている印象がありますね〜。

[今道]

それは私もこだわりを持っているので分かる部分があります。宝みたいなものなんですよね〜。私的にはこの料理との相性が良かったとか、これで食べておいしかったとかで、全部写すんじゃなく、少しだけ写り込むような感じが良いと思っています。

私、体が10個ぐらいあったら、いろんな業界でコラボやりましょうと言いたいです(笑)

[黒田]

完全に時間が足りてないですね(笑)あったら、もっと出来る事や、やりたい事もあるでしょうし。

[今道]

そうなんですよね〜。もうすぐ55歳になるのですが、仕事ばかりやっていると生活のクオリティが下がるから、仕事を少しずつ減らしていって、嫌な仕事はやらないって決めてるんですよ。

[黒田]

今道さんは毎日花の写真を撮られていたり、かなり幸せ度は高いと思いますね。

自分のペースで出来る範囲を守る

[黒田]

今は、世の中的に転換期じゃないですか。SNSとかが台頭してきて、今まではテレビや雑誌とか、大きなメディアに露出する事で有名になってきたものが、SNSで有名になってテレビや雑誌に出たり、個人個人が評価される時代になってきていると思います。

そのために、いろんなライターの方がSNS上でずっと声を挙げ続けたり、写真家は写真を挙げ続けたり、料理を作る人は料理を上げ続けたりで、いろいろフィーチャーされるようになってくる時代に転換していると思うんですけど、それを今道さんは20何年前に既にされていたという事ですよね。

[今道]

そうですね、トップランナーって価値があるじゃないですか。開拓者というか。そして最初はニッチだったんですが、いつの間にか、そこから王道を目指すというか。

でも、私は、身の丈を守ろうって決めています。だから、今もどこかのスタジオを借りてやるわけでもなく家のリビングだし、アシスタントをいっぱい雇うわけでもなく、子供を保育園に預けなくても幼稚園に行ってる時間の中で出来るような範囲でやっていたりするわけです。

[黒田]

もっと大きくやろうと思えば出来るだけの需要であったり、気運や勢いとかタイミングは絶対にあったと思うんですが、あえて乗らずに、いい意味で自分のペースを乱さないで、誘惑にも負けない強い心があるのでしょうね。

あとは先見の明もそうですし、別にそれはぜんぜん意識していなかったと思うんですが、今の人たちがロールモデルとして、こういうやり方がいいなと、追うべき姿に近い可能性があって、しかもそれを20何年前にやってたというのが個人的に面白いなと思いますね。

[今道]

私を良いなと思ってくれる人に感じてもらいたいのは、女性ってキャリアを急ぎ過ぎちゃって、出産や子育てが後回しになっちゃう事が多くあると思うんですよ。

特に女性はキャリアの積み重ね方が時代の価値観に影響を受けやすいので、ロールモデルを探すよりも、自分自身のライフステージを意識しながらつないでいくのが良いと思います。

私がCAを3年で辞めた時はバブルだったし、世の中が逆方向に動いているときに、もっと自由に羽ばたきたい気持ちをおさえて結婚して育児に専念するのは若かった私には決断が必要でしたが、その後自分の好きな事を仕事にして、42歳で子供の手が離れたときにカメラに出逢い、夫の転勤に何度もついて行って、何回も失業して(笑)それが今は良かったなと思ってます。

[黒田]

結果オーライみたいになりますけど、当時は、その焦燥は計り知れないものがあったとは思います。それが嫌で、だんだん晩婚化も進んでいるという事もあるでしょうね。でも絶対に両立できない事ではきっとないような気がします。今回お話を聞いて特に。

今回は今までの連載とはまた違った話を沢山聞く事が出来、とても良い刺激を受けました。貴重なお時間をいただきありがとうございました。

プロフィール

今道しげみ

フォトグラファー&フラワーデザイナー

LIVING PHOTO主宰
公益社団法人 APA日本広告写真家協会 正会員
ニコンカレッジ講師
青山フラワーマーケット Hana-Kichi講師
Weekendflower プラチナアンバサダー フォトグラファー&フラワーデザイナー

神戸女学院大学を卒業後、全日空の客室乗務員として勤務。結婚と同時にロンドンに6年間滞在し、フラワーデザインを学ぶ。1990年より、フラワースクール『Salon de Sylvie』をロンドン・香港・東京で主宰し、フラワーデザイナーとして活動。

2005年から、サロンスタイルのフォトスクール『LIVING PHOTO』を主宰し、全国6か所の『リビングフォト アソシエイツサロン』をサポート。レンズ指定をした女性向け一眼レフ講座の先駆けとなる。50mmF1.4のレンズを使って暮らしの中のシーンを美しく切り取る『LIVING PHOTO(リビングフォト)』というスタイルを独学で考案し、商標登録も取得。撮影技術だけではなく、花やフードのフォトジェニックなスタイリングも教える。

主に東京・久我山のサロンで、フォトセミナーを定期的に開催。より美しく、自分らしく表現したいと願う女性たちに、わかりやすく楽しいレッスンとして、絶大な支持を得、セミナーは常に満席。また、予約がとりにくいサロンレッスンとして知られる。全国からの受講者は2000人を超える人気講師。

『LIVING PHOTO』公式サイト:http://livingphoto.jp/index.html

クレジット

制作​ 出張写真撮影・デザイン制作 ヒーコ http://xico.photo/
カバー写真​ 黒田明臣
出演​ 今道しげみ
Biz Life Style Magazine https://www.biz-s.jp/tokyo-kanagawa/topics/topics_cat/artsculture/

参考

登場順

*APA(公益社団法人 日本広告写真家協会)
*リビングフォト(デジタル一眼レフ、ミラーレスカメラを使って、
花や料理、雑貨などの身の周りのものを被写体とした写真撮影を、楽しく学ぶ事が出来る写真教室)

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