こんにちは。フォトグラファーのShoShibata(@ShoShibataPhoto)です。
今回ご縁があってBenQ 32インチ カラーマネージメントモニター SW321Cを利用させていただきました。繊細な色の調整をする上で、カラーマネージメントモニターとはカメラマンになくてはならない存在です。私の写真はモノクロがメインとなっているので色は関係ないと思うかもしれませんが、実はモノクロ写真でもモニターはとても重要になってきます。なぜならモノクロ写真だからこそ、明るさや色の繊細な表現が大切になってくるからです。
今回の記事で使用している写真は、すべてBenQ 32インチ カラーマネージメントモニター SW321Cでレタッチしました。さっそく使用感をレビューしていこうと思います。
モノクロだからこその、コントラストへのこだわり
モノクロ写真のレタッチ時に最も気をつけていることはコントラストです。コントラストはカラー写真でも同様です。コントラスト1つで濃淡が変わるので、写真全体の印象は大きく違ってきます。カラーの場合ですと、色相や彩度にも影響します。
モノクロ写真における細かい色の表現について、どのような観点でこだわっているかお話しさせていただきます。
繊細な明るさ表現を実現する
私はモノクロ写真の中でも冬の写真が多く、雪の描写や質感をどのようなトーンで落とし込むのかに時間をかけています。雪が積もった写真だとハイライトのトーンに気をつかいます。コントラストや白レベルをあげて白とびさせると簡単に白い写真は出来上がるのですが、それだとただの白い画像です。
寒い時に降るふわふわした粉雪はゆっくり舞い降りて、風が強ければ吹雪いてホワイトアウトします。
暖かい時に降る濡れた雪は、粒が大きくて積雪しやすく、雪の粒が写真に写りやすいです。
雪の種類や状況によってレタッチは変わります。雪の姿をしっかり描写させたい場合は背景を白とびさせないようにし、逆にほこり等で雪が汚れている部分がある場合は白く飛ばすことも有効的だと思います。
このような繊細なレタッチを行う際に重要になってくるのがモニターの輝度の調整です。ヒストグラムでも写真の明るさの状態はわかりますが、実際にどのように雪の粒が表示されているかまではわかりません。輝度調整はキャリブレーションを実行すると調整できますが、中でもハードウェアキャリブレーションに対応しているモニターであれば、精度が高く安定したキャリブレーション結果を得られます。そのため安心してレタッチを行なっていくことができます。
グレー部分の表現も思いのままに
写真の表現で大切なのは、白だけではありません。いかに黒い部分のディティールを細部まで思い描くことができるかも大切です。黒つぶれしているように見えるくらい「黒」が強いコントラストでも、拡大した時にはディティールが残っているのが理想です。
シャドー部分がコントラストを高くして力強い印象を残しながらも、ディティールも確認することができると迫力が増します。
また、モノクロ写真における白でも黒でもないグレーの中間部分比率が多い写真に関しても、トーンは非常に重要になってきます。私の写真の場合は曇天や霧の部分がそれに該当します。
この細かなトーンの塩梅で、写真の表現が大きく変わってくるのです。
ディスプレイ再現性の大切さ
モニターの環境は千差万別で、モニターのメーカーやサイズはもちろんのこと、キャリブレートをきっちりされた方もいれば、モニターを買ったままの状態の方もいると思います。ディスプレイの設定について、少しお話ししたいと思います。
キャリブレーションを行う理由
たとえばスマートフォン。みなさん好みの明るさに設定されているものと思います。スマートフォンで制作することは多くはなく、閲覧がメインの方がほとんどなのではないでしょうか。
スマートフォンのように「見る」がメインの場合、多少明るさの設定がおかしかったり色味が変だとしても、好きな写真は「素敵だなぁ」と感じると思います。
しかし、制作や調整を行う場面において、思い描いた明るさや色味を表現できるモニターは必須だと思います。キャリブレーションされていないモニターで調整を詰めたとして、モニター上では思惑通りかもしれません。しかしそれ以外のモニターやスマートフォンなどで閲覧した時には思い描いていたものと違う等、振れ幅が大きくなってしまいます。
また、ハードウェアキャリブレーションに対応していると、モニター単体でキャリブレーションが完結できます。そのため、どの端末を繋いでも同一の色、明るさで見ることができます。
色温度も設定一つで変化が
「何で見るか」によっても、色温度における印象に変化があります。
印刷の場合、紙の種類によって白の度合いが違ってきます。レタッチしたら印刷はなんでも良いのではなく、写真の表現にマッチした紙を選択することが大切です。
これがモニターの場合。色温度の調整でハイライトの「白色」をしっかりと設定することが重要になってきます。寒色系と暖色系では受ける印象が違ってくる方は多いと思います。
例えば展示会等で写真にタイトルをつけなければならない場合に、モノクロ画像では色温度から受ける印象は大きく変わってきます。同じ写真でも色の表現が違うだけで、思い浮かぶタイトルも変わることが想定され、重要な項目だと思っています。
「32インチ」のメリット
BenQ 32インチ カラーマネージメントモニター SW321Cは何がすごいって、通常のモニターと比べて画面が本当に大きいんです。32インチもあります。32インチという大きさのため、普段のデュアルディスプレイ環境からシングルディスプレイ体制で使用しましたが、目の移動が少なくなったのか疲れてしまうということはありませんでした。
使ったからこそわかる、モニターが大きいメリットを紹介させていただきます。
作業効率化に繋がる
画面が大きいうえに4Kということで、何もかもが見えやすいというのが1番のメリットでした。細やかな遠景の木々のディティールが繊細に表示された時は感動しました。
使ってみてなにより痛感したのは、センサーダストをすぐに発見できること。展示会のために写真を印刷する場合は、プリント前にセンサーダストのチェックを必ず行なっています。等倍にした画像を隅から隅までチェックしていくのですが、これが一番地味で骨の折れる作業です。
作業が単純作業のため見落としてしまうこともあるのですが、32インチもあると等倍拡大せずとも見えるダストが増えました。等倍拡大する前に目視であるていどのダストを消す作業が完了できるようになったので、等倍拡大してから修正作業をすることが激減しました。そのおかげで作業時間の短縮に繋がっています。
紙のムダ遣いの削減
今まではプリント出力してからダストに気づくことも多くありました。しかし画面が大きいので、プリント前にしっかり発見・修正作業ができるようになったおかげで、紙のムダ遣い削減にも繋がっているように感じています。
画面が大きいから、チェックする時に目がすぐ疲れるのではないか…という懸念もありましたが、32インチという大きさだから疲れてしまうということはありませんでした。
大きさのメリット・デメリット
大きいことがメリットで、作業にメリットが大きいことは感じました。しかしながら、大きいからこそ今使っているデスクだと少し奥行きが物足りないなぁと感じています。幼少期テレビをみたりゲームをする際に、「画面からもっと離れなさい!」と注意されていてたせいか、目の前に大画面という当時の私がみたら羨む状況です。
私のPCデスクは奥行きが70cmのため、もう少し奥行きのあるデスクが欲しくなりました。
ホットキーパックG2について
直感的に利用ができるコントローラー・OSDコントローラー
どのモニターでも、設置されているスイッチはモニター購入時に少し触れるくらいで、基本的に操作することはあまりありませんでした。他にもそういった方がいらっしゃるのではないでしょうか。私が今まで利用していたカラーマネジメント対応モニターは、Adobe RGBとsRGB を切り替える機能がありますが、デザインの問題か操作が少しやりづらく、カラーモードの切り替え機能を使うことがありませんでした。
その点において、このBenQ 32インチ カラーマネージメントモニター SW321Cに付属されているコントローラーは直感的に利用することができて、Adobe RGBとsRGBを瞬時に切り替えることができ、見比べがとても簡単に行えます。
私は緑色の現像がとても苦手で、Adobe RGBとsRGBの切り替えがスムーズにできるこのコントローラは、とても重宝するなと実感しました。
画面表示のモノクロ切り替えが便利
今回利用させていただく前に、画面表示をモノクロにする機能があるという情報を聞いていましたが、「脳内でモノクロに切り替えてナンボだろう」と思っていました。正直不要な機能かなぁと。
しかし実際に使ってみると…すごく便利な機能でした。
わたしはカラーで撮った写真をモノクロにしています。写真の一覧から「モノクロにする写真を選んで現像する」という流れなのですが、モノクロにしてみたらどうなるかあまり予想がつかないような写真を、一度現像モードにしてモノクロに変えるというのが億劫で、一旦保留にして違う写真の調整に専念してしまい、そのまま忘れてしまう…というのがかなり多いです。
しかしOSDコントローラーのボタンひとつでモノクロに表示できるので、モノクロにした際だいたいの雰囲気を感じることができるようになりました。そのおかげで写真の選定にかける時間を短縮し、取りこぼしがなく作業できるようになりました。
まとめ
今回BenQ 32インチ カラーマネージメントモニター SW321Cを利用させていただいて感じたことを改めてまとめると、
- 繊細な明るさの調整が行える
- 白でも黒でもない、グレー部分の表現も思いのままに
- 写真の再現性を高めるために、キャリブレーションは大切
- 32インチモニターは何もかもが見えて、紙の無駄削減にもつながる
- 付属のスイッチであるOSDコントローラーは、直感的に利用できる
総じてSW321Cは作業効率がよくなるモニターであるというのが私のレビューになります。ただしサイズが大きい分作業場所は選ぶかな、とも思いました。また、このモニターにはUSB TYPE-Cによる接続と給電の機能があり、これもとても魅力的な機能だと感じています。
デジタルカメラの環境において、カメラやレンズは当然のことなのですが、カラーマネジメントモニターも揃えるべき大事なツールだと、改めて実感しました。