SNSで噂の「クリームソーダ職人」ってご存知でしょうか。一体どんな方かというと、クリームソーダが好きすぎる余り、 #休日喫茶部 としてクリームソーダを作る会を設けたり、地方まで出張して #旅する喫茶 としての活動もしながら、それを撮影し発信し続ける写真家としての一面もある、tsunekawaさん(@tsunekawa_)という方のことです。実は、本業では服飾デザイナーでお洋服を作る方らしく、喫茶に写真に洋服に、クリエイティブが止まることを知らなそうです。
そんなtsunekawaさんの「写真家の一面」にフォーカスし、雰囲気のある作品はいつもどういった機材で撮られているのか?や、撮影時の工夫についてなど、気になるあれこれをたっぷり伺ってきました!
時間の流れを映す写真、クリームソーダ。tsunekawa | 写真家の機材
tsunekawa
1991年、愛知生まれ。東京で活動中。名古屋モード学園卒業。在学中、Tokyo新人デザイナーファッション大賞をはじめとしたコンテストに入選。現在は服飾ブランドを運営。独学でクリームソーダ作りを開始。”旅する喫茶”と称し全国を巡回し地元食材を使った活動も行う。日本初となるクリームソーダのレシピ本を今年出版予定。SNSでは各ジャンル合わせた総フォロワー数は現在約10万人。
経歴(クリームソーダ製作歴)
2017年 クリームソーダの製作を開始
2019年 旅する喫茶 月に2〜4回の全国巡回開店を開始
撮影機材
カメラ・レンズ
- カメラ
- SONY α7Ⅱ
- Canon Autoboy S2
- レンズ
- ZEISS Planar T* F1.4 50mm
- SIGMA SUPER WIDE Ⅱ AF24mm/f2.8
- AF Nikkor 35mm f2.0
- フィルター
- PLフィルター
- ソフトフォーカスフィルター
- NDフィルター
他機材
- DJI Osmo Mobile 2
- 木のミニテーブル
- クリームソーダを製作する機材
撮影機材について
使用しているカメラ
よろしくお願いします!
tsunekawaさんとお会いした当初は服飾デザイナーをされている方というイメージだったのですが、ここ最近で「クリームソーダ職人」というイメージもすっかり定着しました。写真自体は前から撮られていたんですか?
はい、専門学校時代からカメラ自体は興味があって、その頃から友人の大学の写真部にちょくちょく出入りし、フィルム写真を撮っていました。今はデジタルで、Sonyのα7Ⅱを使っています。初めて購入したフルサイズ機が現在も使用しているミラーレスのα7Ⅱでした。Sonyはオールドレンズのアダプターが豊富で、面白そうだと思ったのがきっかけです。他のカメラを試したことはほとんどありませんが、一番馴染んでいるカメラなので、使い続けています。
特にSonyのα7Ⅱで良いなと思うポイントは、マニュアルフォーカスのアシスト機能(画像を自動で拡大表示してピントを合わせやすくする機能)です。オールドレンズでも拡大してピントを合わせられるところは嬉しいですね。オートフォーカスも使いますが、基本的にはピントを合わせやすいマニュアルフォーカスで撮影します。オートフォーカスができるレンズを使う場面は、撮り逃がしができないとき、オールドレンズの歪みが気になったときです。
前からカメラ・写真が好きだったんですね!私もマニュアルフォーカスでよく撮影しますが、アシスト機能というものがSONYにはあるなんて、めちゃめちゃ便利そうです。撮影する内容によっても、マニュアルかオートかは変わってきますし、使い分けは大事ですよね。
レンズで使い分けるクリームソーダの表現方法
ひとえにクリームソーダと言っても、様々な雰囲気を写真で表現されていますよね。撮影の機材面で、どう使い分けされているんでしょうか?
撮影機材で言うと、レンズは大きなポイントになっています。
レンズは、ZEISS Planar T* F1.4 50mmと、SIGMAの24mmやNiconオールドレンズの35mmも使います。屋外でクリームソーダを風景と一緒に撮るときには、広角でわざと歪ませてダイナミックに見せたりします。Twitterでは、基本ひとつのツイートに対して写真を3〜4枚載せるので、すべての写真が同じ構図にならないように、同じクリームソーダの撮影に複数のレンズ使用したりもします。

詳しくどう使い分けるかというと、空をバックに写すときには24mmが使えます。中央にクリームソーダを出して、背景を強調するようなイメージです。F値は5.6くらい。広角で撮ると、どういう場所で撮ったのかが伝わりやすくなると思っています。

オールマイティーに使えるのは50mm。焦点距離的にも、クリームソーダの撮影に適していると感じます。基本は50mmで撮って、他のカットが欲しければ広角も使います。このPlanarの50mmは、開放でF値が1.4なのですが、開放気味で撮るとトロトロな感じの絶妙な描写になるんですよ。ちょっとしかピントが合っていないのですが、合っているところは結構ガチッとハマります。背景に馴染んでいくようなボケ具合がすごく好きです。
逆に絞ってみると、描写がとてもくっきり出てきて、映り方が変わります。絞り具合を変えることで広い用途で使えるレンズです。
へ〜!テーブルフォトだと、広角レンズっていう印象がないのですが、tsunekawaさんのクリームソーダの撮影方法は唯一無二な感じがします!普通なら小さい被写体を広角で切り取ると、周りとのバランスが難しそうですが、そこを溶け込ませて、かつクリームソーダを引き立たせているのは、被写体力と画面の構成力の成せる技だと感じます。
スマホ撮影のライブ配信時に使える便利なDJIのOsmo Mobile 2
tsunekawaさんって、スマホでも撮影はされているんですか?
スマホでも撮影しますね、ライブ配信とか。その時は、DJIのOsmo Mobile 2ってアイテムも使うのが、ライブ配信時にすごく便利で良いです。街中を歩きながら撮影していても全然手ブレしません。以前に台湾へ行ったときも夜市でライブ配信したのですが、その時も手ブレなど一切なく、その場の雰囲気を伝えつつ、ファンの方々と交流することができました。手持ち撮影だけでなく、クリームソーダを作るときに、固定しておいて制作過程を配信する、といった使い方もしています。
簡単なライブ配信も、手ブレがないだけで一気にクオリティが変わりそうです。使ってみたくなってきました。
撮影に重宝するフィルター
写真に写っている空気感みたいなものにとてもこだわっているのかなという印象があるのですが、何かアイテムを使って工夫されていることはありますか?
工夫という点で出番が多いのは、PLフィルターとソフトフォーカスのふたつのフィルターです。
PLフィルターは、反射を抑えて光を調節することができます。例えばテーブルに光沢があったり、カバーを敷いていたりした場合。グラスには光を通したいので光をいれるのですが、そうすると、どうしてもテーブルやテーブルカバーが反射します。そういうときにPLフィルターを使うと、テーブルの反射は抑え、素材感を残すことができます。ほかに、海など水面の反射が気になるシーンでも役立ちます。
また、淡い雰囲気に仕上げたいときには、ソフトフォーカスのフィルターを使用しています。現像の段階でソフトフォーカスに仕上げることもできるのですが、フィルターを使うことで撮影中に仕上がりの雰囲気まで確認できるのがいいですね。できるだけ現像の手間をかけないように、先にフィルターを使っておこう、という考えもあります。
写真を撮るときには、どういう雰囲気に仕上げたいか、イメージが明確に決まっているので、フィルターを使って撮影の段階でイメージに近づけています。よっぽど光が強かったりする場合にはNDフィルターも使いますが、稀ですね。
フィルターがまたあの作品群の空気感を底上げしていたんですね!私の中では飲食物にフィルターを使うイメージがあまりなかったのですが、tsunekawaさんのスタイルからは、飲み物というより「物語」を切り取っているような印象です。
他、作品の完成度を左右する撮影アイテム
ロケ時のクリームソーダ撮影は、溶ける問題を除いても難しそうですが、撮る秘訣などありますか?
ロケでの撮影には、木のミニテーブルを持っていきます。不安定な場所を平らにするために使ったりするほか、ちょっと高さを出して下からのアングルがほしいときに高さを出して撮るとか、そういう使い方もしています。クリームソーダの色と色被りをしそうなポイントがあるときには、それを避けるために使ったり。
あるいは、木のほうが合ってるなって場面とか。地が黒いとイメージが変わったりしちゃうときがあるので。外での撮影で岩の上で撮らざるを得ないときとか、そういうときに使います。
こ、これはクリームソーダ以外でも、小物や食べ物の撮影にとても重宝しそうです!!このサイズなら外に持っていくのも、カバンに入りますし携帯性も抜群そう。
クリームソーダを撮る上で重要なこと
雰囲気は光と影でつくる
写真を見るたびに思うのですが、どうしてクリームソーダをあんなにバリエーション豊かに撮影できるのでしょうか。飲み物の領域を超えています。
バリエーションですか、時間や季節感を出すような工夫はしています。光と影の使い分けですかね。どういうテーマで撮っているかによって影の入れ方を調整しています。
ふんわりしたやわらかい感じに仕上げたいときには、影が入ると違和感が出てしまうので、正面からも照明の光が淡く入るような場所で撮ったりします。逆に、室内で夜の雰囲気を出したいときは、オレンジ系の光を入れつつも、周りは少し暗めにして、スポットライトが当たるような光の使い方をしたりします。1枚の写真から伝わる雰囲気を調整する感じですね。
光と影や色味で、雰囲気を使い分けているんですね!何気なく見える一枚も、とっても考えられた作品の一つなんですね。確かに、夜の雰囲気を出したい時にオレンジの光を使うのは、とても有効な感じがします。いつも小物を周りに置いて撮っているわけでもないですし、光と影と色味であれだけ表現できるのは審美眼あっての成せる技なのかなと推測します。
荷物はコンパクトが肝
外でもよくクリームソーダ撮影をされてますが、機材や道具の持ち運びもあるしぶっちゃけ大変じゃないですか?
それはもう、大変です!だからなるべくコンパクトにまとめています。レンズが多めにあったほうがいい場面では持っていきますが、その時の撮影でベストな機材選びを心がけています。特にクリームソーダ撮影の際はアイスが溶けるまでにどれだけイメージできるかが勝負なので、1回の撮影に多くの時間をかけることはできません。ときには山にも登りますので、コンパクトさは大事です。
どんどん溶けていくアイスクリーム…!撮影時は時間との戦いですね。
機材と作品の関係
カメラやレンズの価格ではなく、どう活かしていくか
良い作品ってどうやったら撮れると思いますか?
良い・悪いという判断になってくると、その人の主観がかなり入ってくると思います。
大切なのは、自分の考えたコンセプト通りに写真が仕上がっているかどうか、ではないでしょうか。例えば夏を意識したクリームソーダと、冬を意識したクリームソーダだと、表現の方法が変わってきますよね。周りの背景だったり、光の強さなども変わってくる。その表現をうまく実現できる機材を選択すること、選択できることが重要だと思います。
絶対にこれ、というものはなくて、この場面にはこれが合っているから使う、といった考えです。「高いカメラでなくともいい写真は撮れる」と言われますが、実際高いカメラは高いなりの性能があって、それが必要になってくる場面もあります。カメラやレンズの価格どうこうではなく、どう活かしていくかがいい作品に繋がるのかなと思います。
納得の嵐…!高いカメラでないと得られないデータもありますし、機材にフォーカスするのではなく、その人それぞれの求めている表現に適しているものを選ぶことが大事ですね!
自分にとっての「写真」
写真は思い出であり、表現の架け橋
ここまでクリームソーダを撮り続ける、発信し続ける理由や原動力は一体どういったものなんでしょうか。
撮り方、人によって表現方法があると思うのですが、僕にとっての写真は記録や思い出を残す意味合いが強いです。それから、他の人に知ってもらうための、表現のツール、架け橋でもあります。言葉だけで表すよりも、写真を見せたほうが伝わるんですよね。そこに、写真とクリームソーダの繋がりが生まれているのかなと。
僕がいまやっている「旅する喫茶」。旅先で開く喫茶店のひとつのテーマとして「時間の流れ」があります。来ていただいて、過ごした時間や体験を大切にしてもらいたくて、ロケーションも考えてやっています。時間の流れや思い出、そういうものを表現したくて。すこし概念的になりますが、そこが僕が写真を使っている理由でもありますし、クリームソーダや、旅する喫茶にも共通するテーマになっています。
共通する「時間の流れを感じられる要素」
一貫したテーマに沿って、クリームソーダや旅する喫茶をおこなわれていたんですね。とても強い信念があったからこそ、ここまで継続したり、発展もされているのかなと感じます。具体的に、写真とクリームソーダの「時間の流れ」とは、どういったところに感じているのでしょうか。
クリームソーダは、グラス1杯の中にそのときの気分、季節感。そういう時間の流れを閉じ込める気持ちで、1杯のグラスを仕上げています。写真も同じ。時間を残す、思い出を残す、それが写真のひとつの使い方ですよね。クリームソーダは文章だけでは伝えきれない。文字には表せきれない部分があって、それは写真があって初めて伝わります。僕の中では、写真とクリームソーダは切り離せないものです。
1杯のグラスの中に閉じ込められた時間。刻一刻と変わり、溶けていく作品を、写真の中に封じ込める。tsunekawaさんのクリームソーダの魅力は、時間を閉じ込めるという構想がいくつも重なっているんですね。深すぎる。
作品ギャラリー
まとめ
- 50mmレンズは絞り具合で描写が変わり、幅広い用途に使える
- 広角レンズは、背景も含めて写真を仕上げたいときに使う
- PLフィルターを使うと、反射は抑えて質感は残せる
- ソフトフォーカスのフィルターを使って、現場で雰囲気のある写真に仕上げる
- 木の板があると、外出先でのさまざまな環境でも撮影がしやすくなる
- 機材は、イメージを的確に表現できるかどうかを考えて選ぶ
- 写真とクリームソーダは「時間の流れ」を表現できる点で共通している
撮影機材一覧
使用カメラ
- SONY α7Ⅱ
- Canon Autoboy S2
- DJI Osmo Mobile 2
使用レンズ
- ZEISS Planar T* F1.4 50mm
- SIGMA SUPER WIDE Ⅱ AF24mm/f2.8
- AF Nikkor 35mm f2.0
使用フィルター
- フィルター(PLフィルター/ソフトフォーカスフィルター/NDフィルター)
表現の根底にはひとつのテーマがあった
tsunekawaさん独自の写真とそれに紐付いたクリームソーダに対する考え方は、一言で言い表せるものでない、作品のコンセプトへの熱い気持ちを感じました!
いちばん興味深かったのが、写真とクリームソーダの共通点。「時間の流れ」という壮大でエモさあるキーワード!クリームソーダというひとつの被写体を撮り続けているtsunekawaさんですが、自分のなかでふたつの繋がりを持っているからこそ、深みのある、見ている人の心が揺さぶられるような表現ができているのではないか。そう感じました。大勢の方から支持を得ているのも、そういった想いが伝わっているからではないかと予想します。
また、わたしが普段触れていないオールドレンズやフィルターのお話も、とても興味深かったです。レンズを複数使い分けて表現の幅を広げている、というところにも「見てもらう」ことを意識したtsunekawaさんのクリエイターセンスを感じました。
tsunekawaさん、本当にありがとうございました!次回お会いするときは、自分が喫茶のお客さんとして会うことになるかもしれません。クリームソーダ、すでに美味しい。