待望の新作「上質と卓越のLightroomプリセット」を徹底レビュー

こんにちは。杉本優也(@Sugimoto_Yuya_)です。

XICOメディアへの寄稿は久しぶりですので初めましての方も多いと思います。特筆して自己を紹介できる部分を持ち合わせていないのですが、写真が好きな一般人です。今回、黒田明臣氏(@crypingraphy)が新作のプリセットを世に解き放ったのでそのレビューをします。とても緊張して筆が進みませんが何卒よろしくお願いします。

プリセットのコンセプト

前回までのプリセット販売では「ベースとしてダシのように活用する」ということが想定されていました。今回はダシではなく、最終的な味付けまでを目指して作られた、「よりわかりやすいプリセット」になっているとのことです。

プリセットに持たせる役割について明確な違いを感じますね。このあたりの違いやこだわりについて、ここで触れると作例を載せる意味がなくなってしまうので一旦こういったコンセプトで発生したものである、ということをご理解いただけたら良いかなと思います。細かいことは先々話しましょう。百聞は一見にしかずのシステムですね。

Chapter Ⅰ

Chapter Ⅰにはクリエイティブの基礎と細部へのこだわりが際立つプリセットが揃えてあります。

今回はChapter Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと用意されています。それぞれに3つのプリセットがあるので合計で9個のプリセットが用意されています。Chapterごとに作例とともにご紹介していきますので、購入のご参考にしてみてください。

ノーラン/Nolan

ノーランは洗練されたブルーが特徴で今回のプリセットの中では王道的なプリセットです。こうして並べてみると色がどう変わっているのかよくわかると思います。少しシアンっぽさのある青が爽やかな印象を引き立ててくれます。奥の緑の色の浅さなども特徴的で、しっかりとカラーグレーディングされつつ、写真全体のバランスは損なわないような作りになっているので、安心して使えます。

少しシャドウが緩く見えたので、少しシャドウを下げたものがこちらです。

Spielberg

奥の緑などが引き締まって立体感が増しました。このことからノーランは比較的優しいコントラストを提供するプリセットであることがわかります。マイルドな部分を持っていますがハイライトの色味などは特徴的で攻めつつ守る、今回のコンセプトを体現しているプリセットです。

アンダーソン/Anderson

いい意味で違和感のある独特なカラーグレーディングが特徴のアンダーソン。黒田さん本人の記事ではアンダーな作例が使用されていたのでこちらは少し明るめの写真を使いました。全体的にふわっとした印象に見えますが、シャドウ部が持ち上がっています。でも実はシャドウの重い所はきっちり重さを保っていて、元々のコントラストを活かすように無理のない範囲で追従してきます。

このおかげで実際のヒストグラムで見える露光以上に光の印象が強調されています。この重いシャドウに楔を打つような写真編集術は以前のプリセットにもあったもので、こういった細部への調整に黒田さんのこだわりを感じます。クリエイティブと細部へのこだわりについてはChapter紹介の最初に触れていますが、まさしくそれが感じられる仕様です。

このプリセットは写真本来がもつ明るさ次第で表情を変えるのでその点も含めて楽しめると思います。僕は少し暗めの写真や標準露出のものに適用するのが好みの感じでした。プリセットから何かを学びたいという人にはこのプリセットは結構面白いと思います。

スピルバーグ/Spielberg

素材の味を活かしながらもしっかりと味付けを強調するプリセットです。優しいコントラストや砂浜と濡れた砂の境目が隠れるようにアンダー部にグリーンが差し込まれるのがポイントです。コントラストがとても丁寧に調整されているので、ここを基準点にコントラストのスライダーで大きく舵を切ることも可能で、非常に大きな可変領域を確保しています。

ハイライトも丁寧に光が残りつつ、強すぎないバランスをキープしていますので露出の変化にも強く、遊べるプリセットとしても機能します。目指したい方向に迷った時にも、コントラストの調整で指針を示してくれるので困った時に当ててみると思わぬ光明が見えるかもしれません。

Chapter Ⅰはこの3つのプリセットがセットになっています。
今回、少し強めの味付けを目指しているとは謳っているものの、どのプリセットも調整が可能になるような余白が残っています。ダシほど土台的ではないけどソースほど濃くはない、みたいな極めて難易度の高いことが、さらっとされている、といった感じだと思います。どうでしょう、こんなこと書いておいて、「いや、ソース目指しているから」とか言われたら目も当てられませんが、まぁ多分あっています。多分。

Chapter Ⅱ

Chapter Ⅱは特徴的な色彩表現とカラーグレーディングが魅力的な3つのプリセットです。特徴的な色彩表現と書いてありますが、これ本当に見せちゃって良いの?門外不出なんじゃないの?と思うようなことが行われているのでびっくりしています。それでは見ていきましょう。

フィンチャー/Fincher

「映画かよ。」と思ってしまいました。いや、これは映画です。あ、フィンチャーは無限のブルーを目指して作られたプリセットです。辿り着いてますねインフィニティ。実際に無限のブルーって何かなって考えてみたのですが、長い時間見ていても心地のいい青、だと僕は解釈しました。質感が尋常ではありません。こういったカラーグレーディングは学ぼうと思っても結構難しいと思います。全体にブルーが入っているものの立体感を失っていないのはおそらくコントラストの調整によるものだと思います。

Chapter Ⅰよりは尖ったプリセットのように見えますが、それでもこの輝度差で使えていますからシーンを選ばない強さはありそうです。

レフン/Refn

今回の最重要作品、狂気と静寂が同居するプリセットです。何気なく生活している中で、「あ、この光綺麗だな。」と感じることがあると思うのですが、そういった瞬間を昇華させてくれる、僕らの周りにある奇跡を感じさせてくれるプリセットだと思いました。

シアンとマゼンタでしょうか、シャドウには独特で極めて繊細な色味が足されています。一方でミッドトーンが疎かにならないように特徴的なハイライトとシャドウを繋ぎ止めています。もっと思いっきりハイライトとシャドウを分離したいという方は黒レベルを下げると極端な方向へ変化していきます。この辺りに調整域を隠してあるので、強いプリセットですが十分に広い適用範囲を持っています。明るめに撮ってしまった写真に適用する場合は露光量などを調整してあげると良さそうです。

コッポラ/Coppola

懐かしさを運んでくれるプリセットで、今回のシリーズの中で最も汎用的です。フィルム調の雰囲気を纏い、レトロな空間を演出してくれます。効果量は今回のプリセットの中でも大きい方で、写真の印象も大きく変わります。

しかし色味のバランスはしっかり整えてあるので簡易な調整であらゆるシーンに対応できます。白い箇所が浮きやすいので明るく見えすぎてしまう場合には少しハイライトを下げるか、もしくは全体的に白の面積が多い時は露出を下げてあげるとより機能しそうです。スマートフォンで撮影した写真とも相性が良さそうです。

Chapter Ⅱにはかなり個性と汎用性の両立を極めたプリセット軍が並んでいます。どれも独創的で黒田さんの世界観にしっかり浸かりたい人にはとてもおすすめです。尖ってはいますが確実に調整可能な仕様になっていますので、その点はご安心ください。

Chapter Ⅲ

Chapter Ⅲは異端かつ意欲的な3つのプリセットで構成されています。Chapter Ⅱとは少し方向性の違いがあり、もう少し刺激的なものが集まっています。でもそれは大きく変化しようという姿勢ではなく、写真にはそれだけの広がりがあると、可能性の大きさを示唆しているような写真の自由を改めて感じることができるものになっています。当てた瞬間のインパクトの大きさはあるものの、細かい箇所のケアはしやすいようになっています。

カーウァイ/Ka Wai

黒田さんをもってして「異端」と表現されるプリセット。露出を間違えたフィルムのように暴れ狂うと書いてあったのですが、文字通り大暴れしています。しかし、面白いのは空の青み、芝の緑、桜のピンク、洋服のグレーなどの多様な色がバランスを取っていることです。また白い部分はほとんど転んでいません。

意外と使いやすいのは僕が危険物取扱資格保有者だからなのか、このプリセットがすごいのかのどちらかです。大胆に写真を楽しみたい方にはとてもおすすめです。ちなみにピントがあってない写真は最初、これにハマったら面白いなと思って適用したのですが予想以上にしっくりきたので採用しました。多分このプリセットはボケと相性が良いんだと思います。

スコセッシ/Scorsese

昭和や80年代を思い起こすプリセット。確かに昭和最後の世代としては懐かしさを禁じ得ません。濃い味付けであることは間違い無いですが、使いやすいのはおそらく大胆なカラーグレーディングとは裏腹に光と影の色合いのバランスが取れているからだと思います。

ある程度コントラストのある写真の方が使うのが楽しい印象で、新しい扉を開ける一助になることは間違いのないプリセットになっています。また、粒子を乗せた写真や昨今流行っているソフトフィルターで撮影した写真などとも相性が良さそうです。

チャゼル/Chazelle

チャゼルは明るいものは明るく、暗いものは暗く。明るくポップに見える写真もどこか退廃的でノスタルジックな矛盾を同居させるプリセットです。明るいものを明るく、暗いものを暗くというのは写真における基本です。しかし、昨今の著しいカメラの進化と写真編集ソフトの機能向上の恩恵もあり、今ではシャドウなどほとんど自由に持ち上げられるようになりました。その中で、クラシックな姿勢を貫く覚悟を感じるプリセットに仕上がっています。

黒田さんの記事の方ではもっと明確にコントラストが立っている作例が用いられていたのでこちらではあえてグラデーションの写真を使っています。このグラデーションにおいてもコントラストが立っていて、光源が写っていないにも関わらず、光を感じる仕上がりになります。

Chapter Ⅲではこのような非常に個性的なプリセットが揃っています。しかし、使いにくいといった印象は全くなく、むしろプリセットのパラメータはとても繊細に組み立てられています。

さいごに

いかがでしたでしょうか。今回の9つのプリセットは、過去2回のダシのような下地としての高品質さから一転、しっかり味付けのできるプリセットになっています。

プリセットというのは汎用性と個性のバランスが非常に重要ですが、何にでも使えるけど、ほとんど変化がないとなってしまっては意味がないです。一方で尖った強烈な個性を持たせるあまりに、使えるシーンが限定的になりすぎても扱いづらくなってしまいます。

今回使用した黒田さんの新作プリセットたちはその汎用性と個性のバランスを極めて高い次元で両立したものになっています。また、ここまで書いて良いのかわからないですが、プリセットのパラメータの設定上、写真を明るくした時と暗くした時で二面性を持っているかのようにその表情を変えるものもあります。しっかりと分解して組み立て方を学ぶと、確実に成長できるといった側面もあるなと感じました。

ギャラリー

記事執筆にあたり黒田さんご本人が撮影した写真もいくつか預かりましたので、最後にいくつか作例を並べておきます。さまざまなシーンに対応していますので、是非購入や使用の参考にしてみてください。
01 Nolan

02 Anderson

03 Spielberg

04 Fincher

05 Refn

06 Coppola

07 Ka Wai

08 Scorsese

09 Chazelle

プリセットのご購入はこちらから

黒田さん渾身の新作プリセットは下のリンクからも購入できますので、みなさんぜひご自身の写真で味わってください。Twitterに載せる時に #黒田プリセット のタグを付けてくれたら黒田さんがきっと甘い香りに誘われて見に来ると思います。

ではまた。

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