こんにちは。朱門(@shumonphoto)です。突然ですが、皆さんはカラーマネジメントモニターを使用したことはありますか?カラーマネジメントモニターと言っても、さまざまな選択肢がありますが、以前からBenQのカラーマネジメントモニターが気になっていました。残念ながら今まで展示会等でしか触ってみる機会がなく、なかなか購入には踏み切れずにいました。そんな折に「BenQのSW270Cっていうモニターがあるんですけど、試しに使ってみませんか?」との絶好の機会を得たので、試用レビューさせていただきます!
写真プリント制作に最適!BenQ SW270Cはすべてが揃ったカラーマネジメントモニター
自分にとって写真の色とは
早速レビューといきたいところですが、その前に写真の色について自分が思うところを少し話したいと思います。
風景写真作品はプリント展示で完成
自分は風景写真専門なので風景写真のことしか語れませんが、写真がデジタルデータ化してネットが普及した現代においても、風景写真作品の最終的なアウトプットはプリントを制作・展示し、多くの人に見てもらったり、プリントを自宅に飾ってもらうことで完成すると思っています。やっぱり物理的な物としてのプリントされた写真の質感や大きなプリントでの迫力を直接感じてもらうにはまだ他に敵うものがないんじゃないのかな?というのが個人的な考えです。
モニターを通して見てもらう機会がほとんど
とはいえ、いつでもどこかに作品を常設展示なんてできる人は一握りですし、普段はSNS等を通じスマホやPCのモニターで写真を見てもらうことが多く、なかなかプリントで写真を直接見てもらえる機会は多くはないですが、それでもいつかプリント展示ができる機会があればいつでもプリントできる色とクオリティを意識して写真を仕上げています。
モニターの色=プリントの色 となっていることが理想
自分が写真を現像・レタッチで仕上げる際には毎回プリントすることは現実的ではないので、モニター上の色で調整していくのですが、いざプリントするとなった際にモニターで見ている色とプリントの色が異なっているとせっかくの調整が台無しになりかねませんよね。なので、できるだけ「モニターの色=プリントの色」となっていることが理想です。モニターのカラーキャリブレーションによって、常にモニターの色がプリントの色と一致している状態となっていると、いつも安心して作品をモニター上で仕上げることが出来ます。
モニターの色は千差万別
キャリブレーションされてないモニターが溢れている
でも、実際は世の中にはキャリブレーションされてないモニターの方が圧倒的に多く、見る人のスマホやモニターによって見える色は変わってしまっています。スマホやiPhoneで色が自動調整されるようになってきたとはいえ、キャリブレーションされたモニターとは多少色が違って見えてしまうのは避けようがないですし。
キャリブレーションすることは無駄か?否
いくらモニターのカラーキャリブレーションで色調整しても、見る人のモニターで色が変わってしまうなら、あんまり意味がないんじゃ?と考える人はいるかもしれませんね。
でもですね、一般の多くの人のモニターやスマホの色を一致させることは不可能でも、プロのキュレーターやフォトコンの審査員等、「写真を正しく見る目を持っている人」は写真を「正しくキャリブレーションされたモニター上で見ている。」という事実を忘れてはいけません。
逆に、自分が作品編集時に正しい色のモニターで制作してないと、フォトコンなどは自分が意図してない色で審査されてしまう場合があるので、作品編集用のモニターのカラーキャリブレーションは非常に重要なことです。
じゃあ、スマホで見てる人はどうなるの?と思うかも知れませんが、例えばiPhoneなどの主要なスマホの色に合わせて、予めキャリブレーションデータを作っておけば、iPhoneでの見た目に近い色も同時に確認しながら写真を調整することも可能です。
カラーマネジメントモニターなら、写真を見て欲しい人の環境に合わせて色調整するということができます。
BenQ SW270C
かなり前置きが長くなってしまいましたが(笑)、気になるカラーマネジメントモニターBenQ SW270Cの特徴を見ていきたいと思います。
USB-Cだけで接続
BenQ SW270Cを設置してて、最初に感動したのがこれ。今回は Macbook Proと接続したのですが、USB-Cケーブル一本だけで接続完了です。USB-C接続するだけで、モニター出力は当然ですがモニター側にあるUSBハブ機能やSDカードスロットが使えます。さらにPD対応なのでMacbook Proにも60Wで給電してくれるので、Macbook Proに別途電源を繋ぐ必要すらないです。
外出時はMacbook Proを持ち歩いてて、帰宅したらUSB-Cケーブル一本繋ぐだけでデスクトップ環境に早変わりとなるので、すごく便利ですね。
AdobeRGB 99%カバー
カラーマネジメントモニターとして必須とも言えるスペックですが、SW270Cも当然そこは抑えています。特にプリントする際はAdobeRGBでプリントすることになりますので、広い色域を使った状態でプリントと色を一致させたい場合には大いに助かります。
ハードウェアキャリブレーション
SW270Cは専用のキャリブレーションソフトウェア 「Palette Master Element」とキャリブレータ(別売)を使うことでハードウェアキャリブレーションを行うことができます。
ハードウェアキャリブレーションによって外部に接続されたグラフィックカードの出力に依らず、輝度調整や階調調整をモニター内部の画像処理チップ上で行うことが可能になるため、グラデーションの階調とびが無い、より滑らかな階調表現ができます。
「AQCOLOR」技術による正確な色再現
工場での製造時に1台1台キャリブレーションされているため、より正確な色再現が可能となっており、表示コンテンツの色を最大限忠実に再現できます。
PANTONE/CALMAN認証取得
BenQ SW270CはCalMAN認証およびPANTONEカラー認証を取得しています。これにより安定した品質を提供し、PANTONE認証製品とのカラーマッチも実現します。
16bit LUT対応
実は今回SW270Cのスペックを見たときに一番驚いたのが16bit LUT対応という項目でした。(マニアックですが)というのも、これまでのカラーマネジメントモニタではなかなか16bit LUT対応というものがなく、どうしても色再現の不安が拭いきれない部分があったのですが、SW270Cはそんな不安は全くなく、完璧な色再現が可能になっています。
HDR 10bit対応
10bit入力に対応したことで、いままでの8bitと比較して圧倒的に豊かな色表現が可能になっています。せっかくきれいなグラデーションの写真もモニター側の表示能力が不足してトーンジャンプしてしまうなんてことがありましたが、10bit対応モニターであればその心配もなくなります。
GamutDuo
AdobeRGBやsRGBなどの異なる2つの色空間で画面を2分割して同時に表示することが可能な機能です。AdobeRGBの広色域で編集していたけど、sRGBになるとグラデーションが破綻しないか?白飛びしてしまってないか?などをすぐにモニター上で確認できるのと、元画像を見ながら調整ができるので、非常に便利な機能です。
コントローラが便利
ホットキーパックというOSDコントローラが標準付属しているので、手元のコントローラで瞬時にAdobeRGB、sRGBなど色域を変更して色を確認することが簡単にできます。また、このコントローラはそれぞれのボタンに割り当てる機能を自由にカスタマイズすることも可能なので、例えば事前に異なる色温度の設定を割り当てるだとか、オリジナルの色設定のモードを割り当てるなんてことも簡単にできます。
遮光フード付属
カラーマネジメントモニターを購入する際、必ずと言っていいほどセットで購入する遮光フードが標準で付属します。遮光フードもそこそこのお値段がするものですので、地味に嬉しいです。
この遮光フードにはキャリブレータのケーブルを通すための蓋が付いているのも嬉しいポイント、蓋がないとキャリブレーションのときに結構困るんですよね。よく考えられてますね。
キャリブレーションをやってみる
さっそく、先ほど紹介した 専用のキャリブレーションソフト「Palette Master Element」を使ってハードウェアキャリブレーションをやってみました。
今回使用するキャリブレータは X-Riteのi1 Display Proです。
キャリブレーションを開始する前に、モニターの側面にあるUSBポートにキャリブレータを繋いでおきます。この時、遮光フードにはキャリブレータ用の穴があるので、ケーブルをこの穴を通すようにして接続します。
キャリブレータを接続した状態で「Palette Master Element」を立ち上げます。
先ほど接続したキャリブレータが認識されていることを確認します。
今回は詳細モードでパラメータを設定してキャリブレーションしたいので、詳細を選んだ状態で開始します。
プロファイルの作成を選択して、次へボタンを押します。
次にキャリブレーションの設定を行いますが、今回は写真プリント用に設定したいので、D50, AdobeRGBの設定にしてみました。輝度はデフォルトが160cdなので、そのままにしています。
設定が完了したら、画面を次に進めます。
ここではキャリブレーション結果の保存先を選択します。SW270Cの場合は「校正1」と「校正2」と「校正3」の3つが選択できますが、初めてなので「校正1」に保存します。また別の設定でキャリブレーション結果を保存したい場合は残りの「校正2」か「校正3」を選んで保存することが可能なようです。
あとは画面の指示に従ってキャリブレータを画面中央の画像の位置に設置して、キャリブレーションを開始します。
しばらくすると、キャリブレーションが終了します。画面に結果のレポートが表示されたら終了です。(アプリを閉じます)
キャリブレーション後の見え方の違い
通常キャリブレーション後に見た目で明らかな違いが分かるのは色温度だと思います。初めのうちは目が慣れてないので、いつもの色味と異なるので違和感を感じることもありますが、不思議なもので徐々に目が慣れて違和感がなくなりますのでご安心を。
自分の場合、自宅外で使用する時はMacbook Proのモニターを使うことになるので、Macbook Proのモニターも同じ設定でキャリブレーションしておきました。Macbook Proのモニターの場合はソフトキャリブレーションになるため精度はやや落ちてしまいますが、色温度と輝度を合わせておくだけでも見た目の色は近くなります。デスクトップのモニターとMacbook Proで同じ設定でキャリブレーションしておくことで、自宅・外出時のどちらも常に近い色味で写真の現像・レタッチ調整ができる環境になりました。
プリントとの色の一致
せっかくなので、プリントとも比較してみたいと思います。プリントの場合は環境光の色温度によって色が変わって見えてしまうので注意が必要です。
今回はSW270Cのキャリブレーションをする際にD50の色温度設定にしてキャリブレーションしたので、プリントを確認する時は色温度がD50の照明を使って確認する必要があります。
カラーマネジメントモニターで色温度を合わせることで、ここまで色を一致させることが出来ます。よく、プリントしてみたら色が違ってしまって困ってるという人の話を聞くと、カラーマネジメントモニターを使ってなかったり、照明がちゃんとしてない場合が多いように思います。プリントの確認はカラーマネジメントモニターで正しくキャリブレーションしているか、照明は演色性の高い決まった色温度の照明で見ているかが非常に重要になりますので、ご注意ください。
まとめ
自分のプリントで写真展をやりたい方に最適
今回は写真編集に最適なスペックを持つBenQ SW270Cを試用させて頂きました。使ってみて分かることは、写真編集時に必要なスペックを十分に満たしているだけでなく、使いやすさもよく考えられているモニターということ。
USB-C一本ですぐに使えることや、キャリブレータ用の窓がついた遮光フードが標準付属しているので、いつでも簡単にキャリブレーションできるというのは、特に初心者には助かるポイントじゃないかと。そして、ここまで高スペックで使いやすい上にコストパフォーマンスが良いというのが嬉しいポイントですね。
これから更に写真をどんどんレベルアップしていきたいフォトグラファーや、自分のプリントで写真展をやりたいと思っているフォトグラファーには最適なカラーマネジメントモニターと言えると思います!
ではまた。