カラフルな写真が特徴的なフリーランスフォトグラファー、クロカワリュート(@ryuto_kurokawa)氏に聞く写真と仕事の向き合い方!そして、いい機材を使う優位性とは?ヒーコのすーちゃん(@iamnildotcom)が気になるアレコレをインタビューした結果、全部教えてくれました!
「いい写真」ではなく「いいビジュアル」を作るためにやっていること。クロカワリュート | 写真家の機材
クロカワリュート
作品紹介
撮影機材
カメラ・レンズ
- カメラ
- GFX50S
- GFX50R
- レンズ
- GF32-64mm
- GF120mm
- GF63mm
- Leica SUMMICRON 50mm
ライティング機材
- Profoto D1
- Profoto B2
- Profoto A1
背景セット
使用機材について
カメラ選びはブランディングにも繋がる
クロカワさん、よろしくお願いします!ご活躍をSNSで拝見していますが、写真を本格的に仕事にされたのは今年の6月だとか。そんなクロカワさんの、使用しているカメラやそのカメラを選んだ理由をまずはお伺いしたいです!
よろしくお願いします。写真は2年間くらい副業としておこなっていて、6月から本業としてスタートしました。フリーランスになると決めた時に、「FUJIFILM GFX50S」と「FUJIFILM GFX50R」を購入し、ずっと使っています。
なぜこのカメラを選んだかというと、少し話は遡りますが、僕は元々プロデューサーをやっていたりと写真を発注する側でした。発注する側ってカメラ機材をけっこう知っているので、フルサイズ機とか中判カメラを使っているとなんだか「おっ」と思ったりします。その心理って、プロに発注している分、個人が手に入りやすいものより手の届きにくいものを使っているほうが「プロはやっぱり機材も違うなあ」って思うんですよね。
なので、僕はブランディングのために、写真で食べていこうと決めた瞬間に購入しました。
トリミング対応力と、使いやすさ
もちろんブランディングという理由だけでなく、スペック面での安心もあります。横で撮っても縦で使えたり、仕事で広めに撮った時にも対応力のある解像度の高さというところも、いざって時に安心です。使いやすさ的にも、ミラーレスなのでFUJIFILM GFX 50Rなら小さいカメラバッグでも入るし、オートフォーカスも外で使っても耐えられますし。防塵防滴なのも良いです。
中判カメラなのにフルサイズ機と同じくらい対応力があるのが魅力だと思います。
絵的な説得力
言語化が難しいんですが、中判カメラだと撮れた写真がやっぱり違うんですよね。立体感、説得力、階調とか。描写の面でとても気に入っています。
なるほど!写真を撮る側は「写真のクオリティ」だけに気持がいきがちそうですが、発注側はそういったところも気にされているんですね!発注側の視点を最初から持っているのは、フォトグラファーとして大きなアドバンテージとなりそうです。他にも、機能的な良さが沢山あるんですね。中でも、トリミング対応力についてはとっても重宝しそうです。急に「寄りのカット欲しい」って言われる時もありますもんね。仕事をやる上での使いやすさと見られ方、両方を考えられた一石二鳥のカメラ選びをされていたんですね。
レンズは「ズームレンズ」がメイン
いつもレンズはどんなものを使っているんですか?
レンズは、「FUJINON GF32-64mm」をメインに使用しています。ほぼ50mm固定で使っているんですが、ちょっと広めに撮っておきたいという時に便利なので。F値がF4からですが、元々F値は開けないので特に問題なく使っています。ただ重いので三脚固定が多いです。
他には、「FUJINON GF120mmF4 R LM OIS WR Macro」も寄りポートレートや商品撮影で使ったりします。パソコンのキーボードの寄りも撮ったりました。あとは、保険として標準単焦点「FUJINON GF63mmF2.8 R WR」を持って行ったりとか。過去にレンズを壊したことがあるわけじゃないけど、友達にレンズが壊れたから貸してと言われたことがあって、それで保険としてのメインのレンズが壊れても大丈夫なように、このレンズも用意するようになりました。
ほとんどスタジオで撮っているのでレンズのバリエーションはそんなにいらないですね。
私もレンズを落として割ったことがあります…。保険として複数レンズを持っていくのはとってもとっても大事ですね!!また、ズームレンズをよく使用される理由も納得です。撮影のスムーズさを考えて選ばれているんですね。
良い写真と、機材の関係性について
人事を尽くして天命を待つ
クロカワさんは、良い機材を使うことは写真に影響があると思いますか?
僕にとって、良い機材を使うことは「仕事でベストを尽くす」ということに繋がります。
好きな言葉で、人事を尽くして天命を待つという言葉があるのですが。最低限まずは合格点を出さなければいけないというのがプロとしてあります。それをサクッと出すためには事前準備がとても重要です。割合としては事前準備が8割、2割が現場というところでしょうか。現場ではいろんなことが起こります。それをカバーするためにも準備は必要不可欠で、機材だけじゃなくてもコンテや企画書だったりもできる限りしっかりやります。
もちろん案件にもよりますが、いい仕事をするためにはコンテをなるべく書きたいです。写真を写真だけで使うことはほとんど無いので、使用用途次第では右にスペースを開けたり文字が入る位置を意識したり、それが黒文字なのかというところでも変わってきます。写真を素材として使用されたあとのことを考えて撮っておきたいんですよね。絵コンテがあればお客さんも安心しますし。それ通りに撮れたら僕の中で及第点。
なので、機材というより、できる限りのベストを尽くせるように「良い機材も」揃えておくという感じです。しようと心がけるというより、ないと怖いと思ってます。これ以外むしろやり方知らなくて、他の方はどうしているのか気になりますね。
現場で「それは出来ない」と言いたくない
あと僕、現場で「出来ない」って絶対言いたくないんです。予算とか話が違う時はもちろん言いますが、技術・スキル・機材的なものは負けたく無いので、なるべく言いたくないなと、気持ちとして思っています。
信頼感のある機材に全て買い換えた
準備として大前提に「信頼感のある機材」が必要だと思い、フリーランスになると決めた時にカメラもそうですが、ライトはアクセサリーも全てProfoto製品に買い換え、スタンドやバッグ類はほとんどManfrotto製品にしました。また、スタッフも一緒に撮影をおこなったことのあるチームで組んだりと、なるべくベストな状態で撮影をできるように投資も惜しまずやっています。機材に関しては、最初に話したようにブランディングという面での役割もあります。
徹底具合が半端ない!実際の撮影現場から入っているクロカワさんだからこそ、写真で食べていくと決めた瞬間のスタート地点がガチガチに組み込まれているように思います。どれも、力のいれる理由に納得です。まさに「人事を尽くして天命を待つ」を実践していますね!
撮影で重宝する機材について
三脚に欠かせない便利機能
撮影現場で「これがあると便利!」といったものやカメラ機材以外に「これが欠かせない」「無いと困る!」といったものをお聞きしたいです。
撮影に欠かせない要素は、全部です。機材に限らず、スタッフ・アシスタント全て欠かせないですね。機材に絞るとしたら…エレベーター付きの三脚が欠かせないですね。高さ調節がとても楽に、三脚の位置も動かさせるのでとても良いです。あとギア雲台が、カメラ位置微調節の神です。360度素早く変更できます。他にも三脚とギア雲台の間に入れているパノラマ雲台は左右に自由に動くので、モデルがポーズを変えたり移動したりしても三脚はそのままに追いかけて撮ることができます。
三脚を固定したまま、カメラが動かしやすいという構成にしています。
ギア雲台?!なんかカッコイイ名前…!三脚の足を動かさずに、カメラを素早く動かせるというのはとても便利ですね。いろんなアイテムがあって驚きです。ラフな撮影と違って、何回も同じ位置で撮るような時はむやみに三脚の足の位置を変えられないですもんね!勉強になります。
テザー撮影にCapture Oneが欠かせない理由
他に、これがないと困る!という機材はありますか?
撮影以外でも使用してますが、Capture Oneがテザー撮影(カメラとPCを有線などで繋いで撮影すること)でとても便利です。僕の場合、撮影現場でクライアントの方などの写真チェックがあるため、テザー撮影が基本となっています。
特におすすめなのが、Capture Oneにある機能で「オーバーレイ」というすでに撮影した写真とライブビューが重ねて見れるもの。これで同じポーズが再現できるのでよく使っています。あとは「スキントーン」といった機能。これは明るさや明暗をならすことができます。どういうことかというと、肌色の中でも赤みの強い肌色と青みの強い肌色が混ざっていたりします。それをあわせられるという感じです。なので肌レタッチまではいきませんが少し顔色を整えることができます。「背景紙の色が緑だけどミントグリーンにしたい」なんて時も、指定した色だけを抽出してけっこう綺麗にそして簡単に調整できるので良いですよ。
商品撮影時に便利なアイテム
あとはテグス(釣り糸)は商品撮影時によく使います。例えば洋服を撮る時に袖をちょっと広げたい時なんかは裏にテグスを通したり。ガチガチに撮る時は吊るすセットを作りますが。基本的なところだと、あとはパーマセルテープとかですね。
テグスってビーズを通すような糸状のものですよね?太さがいくつもあって選べるような。洋服を撮る時、そうやって動き出してるんですね〜!細やかな小技がたくさん聞けて新鮮です。
作品撮りは実験
お話を伺っていて、プロとして撮影をこなすための本気度が全てにおいて伝わってきましたが、仕事ではない「作品撮り」をおこなったりはするのでしょうか?
やりますよ!ただ、最終的にはそこから仕事に繋がることが多いです。まあ全て本番と思って撮影するので、仕事とそこまでやることは変わらないんですが。僕の中で作品撮りは実験です。仕事でもチャレンジはしますが、大きいチャレンジはできないと思うんですよね。特に僕の場合は、僕の写真を見てくるお仕事がほとんどなので仕事は確実に撮れるものを撮るという感覚です。そして、お客さんのお金で実験はできません。
仕事目線の人としか作撮りはやらない
基本的に、仕事目線の人としか作撮りはやりません。ギャラはないので、これをやった経由で僕から仕事を繋げて返したいって気持ちが強くあります。実際に作撮りの写真で仕事を取れたこともあり、アサインの権限があれば、そのチームで撮影をおこなったりすることもあります。
作品撮りも仕事の流れと全く同じ組みでおこなっているため、作品撮りが結果的にリハーサル代わりになっていたりしますね。
作品撮りも全て仕事に繋げる!とても一貫してますね!皆の仕事に繋げたいって思いでやる作品撮り、とても素敵で、だからこそ一丸となって本気でチームとして取り組める感じがします。
写真を仕事にした経緯
最終的にアートディレクターになりたい
クロカワさんは発注する側で仕事をやっていたと仰ってましたが、どうして写真を仕事にしたのでしょうか?
僕は、ビジュアル表現が大好きなんです。それで、大昔はデザイナーになりたくてジュエリー業界に入ったりもしました。紆余曲折ありプログラマーにもなったりもして、それでもずっとビジュアル表現に憧れがあったのです。今はまわりまわって、自分でビジュアルを制作するようになりました。撮るだけじゃなく、自分で絵コンテを作ったり、企画を提案したり。
最終的には、アートディレクターになりたいと思っています。
なるほど!写真を撮るだけでなく、一人でビジュアル制作会社のような動きをしていられるなと思ったので、アートディレクターになありたいというお話はとても納得感があります!
「自分の好き」を作りたい
クロカワさんは写真でこれが伝えたい、ということはありますか?
「写真で一番伝えたいこと」は特にありません。一枚の撮る写真に執着はしていないんですよね。ゴールは「いい広告を作りたい」ということです。
言い換えると、自分の好きを作りたいと思っています。自分の好きと社会の好きの交点を探している感じですね。市場分析はしていますが、自分の好きでないものはやりません。自分の好きなものから社会の需要を探しています。好きが社会と交わっていないと、続かなかったり、自分の好きだけを貫いてもそれは趣味であったり。社会的な需要だけだと、好きじゃないことをやり続けることになります。
なので、「自分の好き」「社会の好き」どっちかをとるのではなく交わるところというのがとても重要だと思うのです。
他の人との差別化
僕の好きでいうと、エモ写真もフィルム写真も外ロケもライティングも全部好きです。需要も社会的にあると思います。でも、そこには先駆者がいます。そこで後からはじめても差別化にはなりません。
そこで、SNSであまり見なかったスタジオでのカラフルな背景紙を使ったライティング写真をやりました。外ロケの撮影は全部除外。完全に振り切って、スタジオ撮りの人としてブランディングしました。その結果、軌道にのったのでフリーランスに至るというかたちです。
自分の好きだけでも、自分の好きを無視して社会の需要だけでも続けられない、というのはあとても心に刺さる言葉ですね…。いろんな道を歩いてきたクロカワさんだからこそ重みのある言葉なんだなと思います。好きと社会の需要を考えて挑戦していく徹底具合とチャレンジ精神が素晴らしいです。
今後挑戦したいこと
最後に、いろんなことに挑戦し続けるクロカワさんですが、今後挑戦したいことはありますか?
もっとやっていきたいと思うことは、写真を素材として捉えたビジュアルを作ることです。フォトグラファーの領域から外れますが、いい写真ってもっと簡単に撮れると思うんですよね。もしかしたら、3Dで全部作れるかもしれないですし。動画表現もいますごいですよね。それでも動画はなにかを伝えようとすると数秒くらいかかりますが、写真はコンマ何秒で伝わる早打ちガンマンみたいな世界です。今後動画も僕はやるかもしれませんが、写真単体でいえばそういう面白みがあると思っています。全ては、広告が作りたいって話に終着しますね。
写真だけにとらわれずに「クリエイティブをおこないたい」という思いを一貫して行動にうつすクロカワさんらしいお話ですね!写真は早打ちガンマン、確かに一瞬で全ての情報が入ってくる世界と思うと、また写真の別の面白さを見つけられそうです。
機材はビジュアルを作る上で欠かせない要素の一つ
今回のまとめ
- 持っている機材はブランディングに繋がる
- 機材は全てクライアントに見られていると意識する
- 画素数が大きいと急なトリミング依頼も対応可能
- 中判カメラは使った人にだけわかる絵的な説得力があるらしい
- メインはズームレンズで基本50mm固定
- たまに広角でも撮っておきたい時にレンズ交換の手間が省けて便利
- 仕事でベストを尽くすために準備に全力を費やす
- 「できない」とを極力減らすために努力する
- 信頼感のある機材に投資するべし
- エレベーター三脚が便利
- ギア雲台とパノラマ雲台もおすすめ
- テザー撮影にCapture Oneを使用すると簡単な画像編集も同時に可能
- 作品撮りは仕事のリハーサルであり、挑戦
- チームで仕事を獲りたい
- 自分の好きと社会の好きの交点を探す
- 他の人との差別化を考える
- 広告を作り続けたい
撮影機材一覧
使用カメラ
使用レンズ
- FUJINON GF32-64mmF4 R LM WR
- FUJINON F120mmF4 R LM OIS WR Macro
- FUJINON GF63mmF2.8 R WR
- Leica SUMMICRON-M F2/50mm
ライティング機材
その他撮影機材
- Manfrotto製品
- Capture One
- テグス(釣り糸)
- パーマセルテープ
仕事と好きの両立
インタビュー中では書ききれなかったのですが、「前職のディレクターやプロデューサー業は他人の土俵で行なっている感じがした」と言っていたクロカワさん。今は写真の仕事をしてやりたいことができてよかったと思っているそうで、ノンストレスで24時間写真のことを考えているそう。きっとずっとやりたいことが閉じ込められていたのが解放できたということなんでしょうか。勢いや本気度からもそれらは読み取れます。
また、一人で企画や絵コンテから撮影までおこなうのが大変じゃないですか?ときくと「産みの楽しみがある」と言っていたのも印象的でした。本当に生き生きと写真を撮っている、もといビジュアル表現に全力で向き合っているんだなと感じました。
ビジネスマン×クリエイター
話をきいてみて実感したことは、クロカワさんはビジネスマンであり、クリエイターであるということです。撮影現場では安心感と雰囲気作りを大事にしてるそうで、現場で「どうします?」とクライアントに相談された時もポジティブにどんどん提案する姿勢でいるようです。仕事としての振る舞い方にも徹底されているのは、以前発注側だったからこそ気づける点もありそうです。
今回はがっつり仕事のお話を伺い、とても勉強になりました!即実践できる内容も多く、テザー撮影のくだりなんかもタメになりすぎます…!今後のクロカワさんの発信も見逃せません!