SNSでも活躍するフォトグラファーが、発信し続ける理由。高橋伸哉 × Haru Wagnus 対談 | 私の写真とSNS

昨年の11月20日にヒーコから発売した「SNS時代のフォトグラファーガイドブック」はSNS時代ならではのフォトグラファー像を描いた本でした。今回はその著者の1人であり、写真家である高橋伸哉氏(@_st_1972)と‬Haru Wagnus氏(‪@HaRu_Nus) にSNSとフォトグラファーについて、「私の写真とSNS」と題して対談していただきます。

SNSでも活躍するフォトグラファーが、発信し続ける理由。高橋伸哉 × Haru Wagnus 対談 | 私の写真とSNS

はじめに

Photography by Haru Wagnus
高橋伸哉氏 → [高橋] Haru Wagnus → [ハル]
[高橋]

それじゃ、よろしくお願いします。

[ハル]

よろしくお願いします。なんかこうやって対談するのも不思議な感じですね。今でこそ仲良くさせてもらってますけど、僕なんか元々は伸哉さんのファンだったんですよ。伸哉さんのFlickrをずっと追いかけてて、写真見てコメントとかしてました。

[高橋]

お、まじすか。それはもうだいぶ前のことですよね。

[ハル]

はい。それで初めて伸哉さんに会ったのは、確か4年前くらいのカルティエのインフルエンサー招待パーティですね。当時パーティのインスタグラマーコンサルタントと撮影もお願いされて、カルティエとイベントをやったんです。そこで、伸哉さんに来ませんかって連絡したのがはじめてだと思います。

[高橋]

それ覚えてます。俺は関西だったし、その時インスタグラマーとかみんなと繋がりがあったわけじゃなかったんですよね。だからSNSでは知ってるけど、どんな人かは知らなかった状態でした。その頃くらいから、徐々にSNSの人達と繋がり始めましたね。

私の写真とSNS

SNS時代の指南書

Photography by Shinya Takahashi
[ハル]

今回の対談のテーマ「私の写真とSNS」についてですが、これはヒーコで出した「SNS時代のフォトグラファーガイドブック」のテーマでもありますよね。ぶっちゃけ、執筆してみてどうでしたか?

[高橋]

正直俺はね、この本売れないと思ってました。「SNSを生き抜く方法を一般の人とか知りたいわけない」って思ってましたもん。それに全員が全員プロになれるわけじゃない。プロの世界に本1冊読んだだけで入れるわけがないって思ってたんです。でも結果重版にまでなって、それをわかっていても勉強したいっていう人間の欲ってすごいなって、素直に感心しましたね。ハルさんはどう?

[ハル]

反応とかはわかりませんけど、文章書いている時が大変でしたね。感情的な部分を説明的に 感覚的に撮ってるところを言葉に、という作業が難しかったですね。あとはばーっと箇条書きで文面に構築して出したら、赤入れられてほぼ削られたのもきつかったですね。伝わるかなと悩みながら書いていたので、生む苦しみはたくさんありました。

[高橋]

ハルさんはおもしろいですよね。いつも悶々と悩んでる。めちゃ優しいですよね。俺なんかは殴り書きで出して、いつもヒーコの方でまとめてもらったりしています。でも俺も「自分の当たり前の行動を文章にして、ほんまにそれで需要あるのか?」っていう疑問はありましたね。思ったより反応良くてびっくりしましたもん。

[ハル]

そういう反応があったっていうことは、いいきっかけになりそうな本ですよね。SNSの何が面白いかって双方向の交流があるじゃないですか。それがすごく身近になってきたのはいいことですよね。前まではいろんな写真家の考えを知ろうと思ったら、ずっと写真集を読み漁るしかなかった。そこから言葉を理解するのはすごく難しくて。この本はフォトグラファーの考えを覗き見できるし、そういった時代性が詰まった一冊になっていると思います。

[高橋]

そうですね。フォトグラファーの考え方を知ることができて、SNSの入門書にもなっていて、それでいてバランスが取れている。これからはネットで全員が繋がって、いろんなことがどんどん加速していくと思うんです。SNSには写真家としての表現も、ビジネスとしての繋がりも、個人の魅力も、全てが詰まってますから。そのSNSの中で生き残っていくためには、まず持っていて良い一冊なんじゃないですかね。

この本で届けられたこと

Photography by Haru Wagnus
[高橋]

きっと(ファンにとって)一番知りたかった情報って、「伸哉さんが写真撮っている時何考えてるんだろ」ってことだと思うんです。それは技術的な話じゃなくて、もっと根底にあるマインド的な話と思っていて。考え方を知りたいし、自分がいいなと思った写真がどうやって作られているのか、構築されているのかを知りたいんじゃないかな。そして発信していくところの流れまでをセットにして。

[ハル]

まさにそれが詰まってる気がしますよ。この本の強みは共感の部分じゃないかって思うんです。SNSマーケの本はありますけど、もうちょっと捻ってる、踏み込んでいるってところがありますよね。「インスタグラマーになるためには」じゃなくて、精神的な部分もロジカルな部分もあるし、辞書みたいだなと思いましたね。ファンの人達には、喜んでもらえたんじゃないかな。

[高橋]

そういう所をオフラインでも伝えたくて、俺はフォトウォークをまたやりたいって思えたりもしました。俺の考え方を知りたい人がいるなら、一緒に写真を撮って、楽しく知ってもらいたいんですよ。そうやって楽しむつながりをオフラインで持つことも、今だからこそ結構な意味を持つんじゃないんかな。

きっかけになるのは小さな喜び

Photography by Haru Wagnus
[ハル]

伸哉さんがSNS始めたきっかけはなんだったんですか?

[高橋]

最初はAmeba blogをやっていてやっていて、トルコ旅行の写真を載せたんですよ。そしたら「いい写真ですね」ってコメントが1件ついて、「これは面白いぞ!」と。まあはじめなんて、皆そういうもんじゃないですか。

[ハル]

僕もそうでしたね。SNSをいろいろ漁っていたらInstagramを見つけて、行ったこともない絶景が画面越しで見えたんですよ。それで、よし自分もやるかって始めて。そこで醤油の容れ物を撮ってみたら「awesome!」ってコメントがついたんです。そこから楽しくなっちゃいましたね。

[高橋]

はじまり方はみんなそういうところだね。俺はそれから「ゆるゆる写真部」っていうのを作って、その活動をアメブロでやったり、それと並行してFlickrを始めたりしてましたね。そのころプロでもない写真好きな人達も(今となっては)プロになってる人たちが結構いて、みんなしっかり写真でご飯食べてて、有名になってる人もいっぱいいますよね。

Photography by Haru Wagnus
[ハル]

黎明期だったのでInstagramとかもかなり感度の高い人が集まってましたよね。すごく刺激的でした。それに影響されて、はじめはスマホで撮っていたのが、気づいたらミラーレスを買ってオールドレンズで撮りはじめていました。つまるところ、SNSがあったからこそ、写真をはじめるようになったんです。伸哉さんとは真逆なんですよね。

[高橋]

まだそれくらいの時期は、俺にとってSNSはなんでもなかったですね。ただ反応があって楽しいなーくらいで。後は、今「先生」って呼ばれるような人達にひたすら毒吐いてた記憶があります。だから、昔を知っている人からは、(今は昔と比べて)「伸哉さん優しくなりましたね」って言われますもん。

[ハル]

僕はSNSに対しては、爆発的な何か秘めているんじゃないかって思ってやっていました。きっかけはmixiだったんですけど、音楽仲間が急にmixiをやりだして音楽の活動でいろいろと発信するようになってきたんですよ。そうしたら江ノ島音楽イベントで1000人くらい呼ぶことができて、「なんかこれすげーぞ」って。

フリーランスになる若者へ伝えたいこと

積み重ねがあったからこそのフリーランス

Photography by Shinya Takahashi
[ハル]

正直な話、伸哉さんに憧れてフリーランスになりたい若い人って多いと思います。でもそれって簡単じゃないんですよ。さっき言ったように、じゃあこれを読んでいれば同じようになれるかっていうと、そう簡単にいかないと思っていまして。同じようなスタイルの人たちが量産されてると思います。

[高橋]

おそらく簡単に全員が成功しないわけやから、やりたかったらやったらええんやと思うけどね。写真がうまくてセンスがあっても、この世界でやっていけるかは別物で、チャンスをものにする運や嗅覚がないと埋もれていくんですよ。俺がこうやってやっていけているのも、今のタイミングでフリーランスになったから、っていう理由も大きいんじゃないかな。

[ハル]

そういう所はかなり大事になってきますよね。僕は若い人と飲む機会がたまにあるんですが、その場にいる全員が「写真の仕事したい」って言ってるんですよ。多分SNSを見渡しても1000人くらいいるんじゃないですかね。その中で勝ち残っていくことってかなりシビアな戦いになると思いますから、写真だけじゃない嗅覚とか、対応力みたいな部分でも戦っていかないといけなくなってきますよね。

写真と人間

Photography by Shinya Takahashi
[高橋]

写真だけじゃない部分って言ったら、まあ性格は大事ですね。フリーランスは人間磨け、それだけです。だって同じ人、ふたりもいらないじゃないですか。俺二人もいらないですもん。逆に、俺みたいなめちゃくちゃなやつがいるからカバーする人が出てくるわけで。そのバランス感みたいなのを磨いてほしいですよね。そういう対応力、「この人は何を求めてるか」っていうのを察知する力を身につけたほうがええと思う。

[ハル]

まあどうしたら良いのか不安だから、技術を磨かなきゃ、みたいなのもわかりますけどね。みんながみんな、伸哉さんみたいにはいきませんから。

[高橋]

それについては若い子らは不安がることもなく、まずやってみって思いますけどね。フリーランスなんて仕事なかったらフリーターみたいなもんなんだから。まあ無責任に言ってもあれなんですが。

[ハル]

個性も必要だし、写真の巧さも必要ですが、ただ写真だけ好きだけじゃだめなんですよね。自分の人間力の深度を掘り下げていく行動も必要なんですよ。

美術館に行くことも、旅に出ることも、経験こそが人間力が深められると思うし、それをやっていって個性をみつけていって欲しいです。人間力を磨くことが結果写真の個性にも繋がります。

Photography by Haru Wagnus
[高橋]

そうやって磨いていって欲しいですよね。後は、とにかく振り回されないことですかね。これは周りの環境にもそうですけど、焦りすぎやし、そんなすぐに成功するわけないんですから。

焦るのも若者の特権やけど、黙々とやりたいことをやっていった人が成功すると思いますよ。自分のことだけ見つめてやって行くことが大切なんやから、よそ見はしない。時間があるから失敗してもええと思いますし。

[ハル]

自分も若い頃に色々やっていたので、それはすごく実感できますね。自分の話になっちゃうんですけど、元々はゲーム会社で会社員をやっていまして、企画をやってたんです。ですが「会社員」という働き方がまあ無理で。それで22歳の時にフリーランスになって音楽をやっていたんですよ。でも今考えると、企画をやっていた経験がその音楽の活動にも活きていて。だから若手のフリーランスの人は企画とかを勉強するのはありかもしれませんね。

実際に会うことの重み

Photography by Shinya Takahashi
[高橋]

若い人からしたら何万かの雑誌の仕事がはじめの第一歩でうれしいわけじゃないですか。そこから経験値を上げていけばいいので、焦らず進めていって欲しいですよね。

俺とかもやけど、地方に住んでいると不利なことは山ほどあるけど、それを言い訳にはできないと思うから、捻くれずにやって欲しいです。そういうこと関係なく、1歩目を踏みしめる喜びってあると思うから。

[ハル]

もっともっと先輩方に聞いてもいいかもしれませんよね。僕とかはInstagramの質問コーナーやってましたよ。写真のことが全然来なくて、結構重めの人生相談ばっかになっちゃいましたけど。特に恋愛系の相談がかなり多かったですね。

[高橋]

ハルさんがそれやってるのめちゃくちゃおもろいですね。けどまあ、相談とかも実際に会って喋った方が絶対にいいと思いますしね。フォトウォークとかもそういう意味でやっているところもあるから。めっちゃフォロワー多いやつよりも、目の前の奴と話している方が可愛げもあるし。わざわざお金払って来てくれていて、俺と握手するだけで緊張してるんですよ。そんなん可愛いじゃないですか。やっぱり実際に会って話す場所っていうのは貴重だし。重要やと思いますね。

フォトウォークで参加者と談笑する高橋氏
[ハル]

そうそう最近、フォトウォークをよくやっていますよね!あれはどういう経緯なんですか?

[高橋]

人と一緒に写真を撮ることって楽しくて、モチベーションに繋がるんですよね。あとはみんな向上心があって、心底楽しんで吸収しようとするの。それに、そこが出会いにも繋がって草の根的にフォトウォークが広まっていってくれると嬉しいかな、って感じでやってます。

[ハル]

SNSで繋がった、実際にその人と会った、またSNSで交流する、みたいなサイクルを繰り返していく感じですかね。そして大きな輪になって行くみたいな。

昔からそういう場所って誰かが提供していましたよね。インスタのワールドワイドインスタミート(world wide insta meet)っていうのが少し昔に開催されていたことがあったんです。それはその企画の日本支部の人がフォトグラファーに依頼して、実際に100人以上集まるフォトウォークを開催したんです。

それで、その時に出会った人たちに横のつながりが生まれたんですよね。実は今あるSNSの横のつながりも、これがきっかけで生まれたんじゃないかなって思っています。だからこそこういうイベントをもっと増やしていければ、文化がまた生まれると思うんです。

[高橋]

その文化の一翼を担っていきたいですよね。今言ったのは写真好きのコミュニティだけど、若手のフォトグラファーのためにも俺たちは動いていて。

例えば広告の案件とかを信頼できる人に振って、自分自身はフォトウォークや写真教室をしながら、写真作家としてもっと頑張りたいんですよね。

それで今執筆の仕事とかもしているんです。それなんてギャラにしたら微々たるものなんだけど、それでもその仕事をする理由は、若い人にその仕事を(紹介できる)引き継いでいけたらって思うからなんですよ。業界のためにもなりますしね。

[ハル]

いつも裏で伸哉さんと話しますよね、業界を変えていかなきゃいけないみたいな。少しでも隙間があったら僕たちで若手をねじこんでいきたいですよね。若手が活躍しないと業界が沈んできて、結局は若手も僕たちも生きていけなくなる。だからこの子たちを全員を上にもってかないといけない、一致団結していかないと思っています。

[高橋]

ほんと、自分勝ちの時代ってダサいですよね。これからは個の集団が一つになり大きな力を生んでいくことも大事だし、いつまでも同じ顔ぶればかりなのは、見ていて面白くないもん。CP+なんかも、SNSから育った若手が顔を揃える予定だったり(今年は中止になったけど)どんどん業界に新しい風を送ればよいと思う。

フォトウォークで見たSNSの本質

Photography by Shinya Takahashi
[高橋]

フォトウォークをやっていて思うのは、結構SNSの構造が見えるところがあるんですよ。

[ハル]

意外ですね。SNSがメインの今だと、フォトウォークって、オフ会的な感じになるんじゃないんですか?

[高橋]

まあそうとも捉えられるんだけど、フォトウォークや写真教室で実際に会うと、楽しいんですよ。人間性も含めて、肌で感じ取れる。あと憧れとかの感情を持ってくれている人が多いのもある。SNSでいつも毒吐いてる有名な伸哉さんだー!みたいな。そういうのも嬉しいけど、実際に会って半日も一緒にいれば仲良くなれたりする。実際に会って半日も一緒にいれば仲良くなれたりする。

高橋氏が主催したフォトウォークの様子

こっちはど真剣に教えてるんだけど、笑いが絶えないんですよ。自分が喋るの好きだしってのもあるけど、リピーターの人もめちゃくちゃ多くて、初めに比べたら短期間でめちゃくちゃ写真が上手くなってたりしてるんですよ。実践に勝るものはないし、集中して覚えようとしてる子達を見ていると、逆にこっちも学ぶことが多いですね。

[ハル]

確かにフォトグラファーって人間的に、何か引き寄せるものがあるんですかね。

[高橋]

ていうより、みんな 人間に対して関心があるんですよ。例えばやけど、ある程度の年齢のサラリーマンだったり、悶々としている若者が「自分の人生こういう感じかな」って日々、「なんとなく退屈、でも変えていきたい」みたいな人生送ってる人とかが多いんですよね。けど俺みたいなのがいるから「この人これからどうなんだろう!ちょっと気になる。」っていう期待みたいなのを持ってくれてるんですよ。家族もいて、業界になんの人脈もなくて40代半ばからフリーランスになって、暴れまくってるおっさんて、見ていて元気になるじゃないですか。

そう考えると、写真の腕だけじゃSNSは生き残っていけないと思っちゃうんですよね。そろそろ考えないといけないんじゃないかな。憧れとか尊敬とかっていう感情は、魅力が複合的に重ね合わさってできているんだと。じっくり時間をかけて熟成されるものなんだから。

SNSのスピードに消費されるクリエイティブ

Photography by Haru Wagnus
[ハル]

伸哉さんはフォトウォークを通して、写真を楽しむコミュニティを広げたいって言ってたじゃないですか。僕はコミュニティデザインも考えていますがプラスして、業界のクリエイティブを底上げしたいですね。最近に始まったことじゃないですけど、いろんな企業がInstagramとかSNSを介して参入してきて、若手がみんなえらい安い仕事しかできなくなっちゃうんです。

[高橋]

まあ、安い仕事をいっぱいやってなんとか生活しようみたいな。そういうことじゃないと思うんだけど。

[ハル]

そうなると、安いクリエイティブが増えてきてますよね。そうやって、そういう人たちに食い物にされて、棄てられるのがもう目に見えているので、ちゃんとそこに目を向けなくてはいけないんです。僕のスタンスは写真家たちにっていうよりかは、もっと一般の人たちに向いていて、クリエイティブに対する根本的な部分を変えて行きたいです。

一般の人たちからその意識を変えて行く事ができれば、いずれは上にも届くようになります。僕の根っこには物作りが好きっていうところがあるので、その姿勢がウケて、ライフスタイルを変えていければ最高ですね。

Photography by Haru Wagnus

具体的には自分のファッションブランドを作っているんです。最初は腕時計から初めて、今はファッション性を重視したカメラストラップの制作とかですね。みんなカメラの機材にはこだわるけど、服装や小物やカメラストラップとか、そういうファッションにも目を向けて感性を拡げていってくれるきっかけを作れたら素敵だなと思っています。

この辺りのこだわりのある人とそうでない人って、出来上がってくるクリエイティブにも関わってくることだと思うんですよ。ファッションなんて一番写真と歴史的にも切り離せないところなのに、そこを気にしない人が最近多いなって感じてます。

[高橋]

確かに前はみんなもっとカメラストラップとかこだわってて、服もこだわってた印象ありますよね。SNSのスピード感とかにも関係してくるんちゃうかな。

[ハル]

言ってしまえば写真もセンスに委ねられているところが大きくて、それを磨かないのはおかしな話なんですよ。撮られる側もですしね。自身を反映させたものが成果物なので、ハードの強さに引っ張られずに洒落ていて欲しいですね。

[高橋]

自分を見つめ直すってことですね。

Photography by Haru Wagnus
[ハル]

そうです。例えば全員じゃないですけど、デザイナーさんが撮ってる写真て本当にお洒落な写真が多いじゃないですか。それは感性が鋭いからそうなってるんですよね。余白の使い方も上手かったり、空気感というか世界観というか。そういう人は大体、お家のインテリアも美しかったり、ライフスタイルに感性が繋がっているイメージがあります。だれかの真似から入りやすいSNS写真の時代、何を「自分として」発信していきたいかが不明確な人が多い気がしたので、その根底にあるものを、デザインやファッションから吸収して探って欲しいなって思っています。

[高橋]

俺たちがやっていることって、人の目にはすごい偽善的に映ったりとかするだろうけれど、これって他人のためじゃなくて自分のためなんですよね。みんなが幸せになれたら、自分も幸せになれる。じゃあ自分ができることって言ったら、他人に写真の楽しみを伝えて、それを実感してもらうこと以外ないと思うんです。その共有をSNSでも、オンラインを通してもやっていきたいんですよ。

その他人と共有する楽しさみたいなのに気づけたのも、この歳になってからやから、大人の行動ですね。黒田(明臣)さんもそうだけど、ある程度自分を全うしているからこそ見えるし行動できる世界がある。なので若い子は勝手に生きなって思ってますよ。

これからやっていきたいこと

Photography by Shinya Takahashi
[高橋]

これからはフォトウォークを通して、コミュニティー作りに専念していきたいですね。もちろん仲良くするってこともそうだし、写真が上手くなって楽しいってところも体験して欲しい。それ繋げていくためにフォトグラファーの澤村洋平とかと、オンラインでも発信していこうという話になっていて。オンライン化っていうのは、フォトウォークが終わった後のみんなの交流とか、俺が業界とかの裏話とかを喋ったりとか、プリセットとかも配れたら良いし。もう居酒屋で喋っているような写真の話を発信していったら、絶対おもろいじゃないですか。それを見て俺を追いかける人が増えていって、いろんな発想や繋がりが生まれると思ってます。

[ハル]

僕は伸哉さんと逆で、敢えて企業を絡めて、もっと底辺を持ち上げることをしたいんですよね。普段(写真を好きでやっているだけでは)届かない人に届けていきたいです。やっぱり古い体質は壊さないといけないから、若い人をねじ込んでいきたくて。もちろんその中でイベントとかフォトウォークもやりたいし、自分たちの新しい風を吹き込んでいきたい。今まで通り自分の写真の活動は辞めずに、全部がうまく回るようにしていきたいですね。そうやってみんなの個を豊かにしていきたい今日のこの頃です。

[高橋]

そうそう、やっぱりメーカーの人とつながりを持つっていうのは外せないんですよね。今はまだ下っ端のメーカー勤務の子とかも、これからお偉いさんになっていくわけじゃないですか。その人がメーカーを動かせるようになった時に、一緒のスピード感で動いていけるように今活動しているんですよ。

でも最終的に目指したいところは、みんなが楽しめることですよね。人が楽しそうに写真撮っているのが、俺には一番幸せな事なんですよ。だからその輪を広げるために次はオンラインコミュニティを作っていく予定なんです。(現在始まっており、すでに200名が参加、月額3300円)

例えば黒田さんとかって今は俺らとは違う道をいこうとしているように見えるんです。でもそういう人がいる中で、結局はみんなのやっていることって繋がっていきますよね。目指すところは同じなんだから。

発信する人間として

Photography by Shinya Takahashi
[ハル]

やっぱりSNSをやっている意味とかってすごく考えることが多いですよね。僕は2つくらいあるんですけど、1つ目は自分の心の闇みたいなものがスタートにありました。

イギリス人とのハーフなので差別されて育った経緯もあって、自分に自信が無かったんですよ。だから自分を認められるようになるためには、誰かに認めて欲しい、だから発信するしかない。そういう負の部分から脱却するためのツールでした。

あとはそういう負の部分だけじゃなくて、自分の作品を見て何かを感じてくれたら嬉しいじゃないですか。ギブアンドテイクじゃないですけど、SNSでこそ得られる部分ですよね。

[高橋]

確かにそうですね。SNSでやっている俺たちは商業フォトグラファーの人たちとは、少し違ってきてると思うんです。商業フォトグラファーは商いの1つだし、大切なことなんですけど、SNSっていうのは特別じゃないですか。見てくれている人がいるってことは、その人達に何かを発信することをやめたらだめなんですよ。常にその人たちに情報を届けていかないと。

もちろん全員が俺みたいになったらバランスおかしなるから、そうじゃない人も活躍できる道を探すのも俺の仕事やし、そうやって大きな集合体を動かせるのがSNSの魅力だと思うんです。自分のためだけどみんなのためで。みんなのためになるから自分も嬉しくなるんですよ。

これからも、写真を撮って、フォトウォークもやって、ガンガン発信していきたいですよね。

[ハル]

今日はありがとうございました。

[高橋]

こちらこそありがとう!

プロフィール

高橋伸哉(たかはし しんや)

Twitter : @_st_1972
会社勤めをしながら趣味で写真を撮っていたが、2018年のアイスランド一周の旅をきっかけに、主戦場をフォトグラファーに変える。数々の仕事と関わり、現在ではSNSの総フォロワーは約40万人に達する。

現在フォトグラファーの澤村洋兵と共にコミュニティサロン「しんやとよーへい」(@shinyatoyohei)を主催。

コミュニティサロンはこちらから

haru wagnus(はる わぐなす)

Twitter : @HaRu_Nus
アート・ファッション・トラベル・フォトグラファー。音楽家。プロダクトデザイナー。イギリス人と日本人のハーフで、幼少期をイギリスで育つ。見る人の心に残響する表現を目指し、ファンタスティックな世界観を得意としている。

現在は写真家としての活動と並行して、腕時計やカメラストラップを中心としたブランド「4 SILENT BIRDS」を運営している。

4 SILENT BIRDSのホームページはこちらから

SNS時代のフォトグラファーガイドブック

「私の写真とSNS」対談、いかがだったでしょうか。

写真とSNSの関係は、これが無かったらヒーコが無いと言えるほど重要なものです。どちらもあったからこそ、面白いところがあり、追求できた。周りとつながることができた。そう確信できます。

この記事を読んだ方も、ぜひSNSで #私の写真とSNS とハッシュタグをつけて、対談の感想や、自分の体験談・見解などつけて呟いてみてくださいね。もちろん読んでない方も大歓迎です。

もしかしたら、著者のみなさんやヒーコアカウントから反応がくるかもしれません。ハッシュタグでつながるのも、またSNSの醍醐味の一つではないでしょうか。

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