はじめまして。フォトグラファーの杉本(@Sugimoto_Yuya_)と申します。#嫁グラフィー というテーマでひたすら出かけては嫁ちゃんを撮っています。今回BenQのカラーマネジメントモニターSW270Cを使ってみてほしいという大変ありがたいお話しが飛び込んできました。
僕の写真はよく「色が好き」とか「色が個性的」と言ってもらうことが多いのですが、誇らしい反面、こだわりが強いので苦労も多いです。友達が「この写真よかったよ!」や「好き!」と言いながら見せてくれた自分の写真の色に違和感を感じるとか、プリントして色校が帰ってきた時に思っていたような色が出ていないということは多々あります。
色に関する悩みはつきませんが、どの媒体で見た写真が本当の自分の写真なのかについては長らく疑問に思ってきました。そんな疑問を解決してくれるのかもと期待を膨らませつつ、今回はSW270Cを使ってみました。
BenQ SW270Cでカラーマネジメントモニターデビュー! 自分の写真の本当の姿と出会う
どのモニターで見た写真が、本当の自分の写真なのか
現代はあらゆるモニターで溢れています。果たしてどのモニターで見た時に自分の写真は真の姿と言えるのか。
僕だけでもMacBook Proが2台、デスクトップのMacが1台、スマートフォンやタブレットも合わせると合計5つのモニターを持っていることになります。そんな”モニター戦国時代”とも言える現代において、カラーマネジメントモニターを持つことは自分の写真にどのような影響を与えるのでしょうか。
SW270Cとは
SW270CはBenQから出ているカラーマネジメントモニターです。僕自身カラーマネジメントモニターは使ったことがなかったのですが、このモニターの存在は以前から知っていました。
今回はこのSW270Cを実際に使いながらいろいろと検証していきたいと思います。
USB接続で表示をしながら給電ができる
まずとりあえず繋がないと!と取り掛かるも、USB TypeCケーブルをPCに挿すだけで終了。なんとこれだけです。これでMacBook Proに給電しつつモニターにも表示されます。配線が多いのって本当に苦手なのでこれは偉大すぎてびっくりしました。
僕はデジタル機器音痴で、いつも新しい機材やPCなどを導入するとてんやわんやなんですけど、今回は静かに事を終えました。
付属品が充実
コントローラー
「ホットキーパックG2」というコントローラーが付属します。1から3までのボタンに、任意の設定を登録しておけばボタン一つで呼び出せるのでとても便利です。
僕はよくコントラストチェックにモノクロを使うのですが、それをボタンに登録しておけばチェックも楽チンです。
遮光フード
SW270Cには標準で遮光フードが付属します。電球の光がダイレクトに降り注がないのでグッドです。写真が見やすいです。
付属の遮光フードの上部にはキャリブレーターを通すことができる穴が空いています。SW270Cはハードウェアキャリブレーターにも対応しているので、この機能はユーザーのことをよく考えてくれている感じがします。
キャリブレーションレポート
実は、SW270Cは工場出荷時にキャリブレーションがすでにされていて、そのレポートが付属します。このあたりのサポートというか、こだわりがすごく安心できます。
キャリブレーションについては朱門さんが詳細な記事を寄稿してくださっているので、気になる人は参考記事からどうぞ!
モニターの性質
27インチという大画面
SW270Cは画面のサイズが27インチと比較的大きいものに分類されますが、大きいモニターで自分の写真と向き合って見るということが想像してたよりもいいですね。最近までMacBook Proの13インチを使って現像・レタッチはもちろん、撮影した写真の確認やセレクトなどをしていましたが、小さい画面で見ていた時は保留にしていた写真も、大きいモニターで見るとむしろ良いなと思えるものが結構ありました。
同じ写真でもサイズが変わると印象が変わるというのはもちろん知っていたのですが、普段は13〜16インチ、あるいはiPhoneという選択肢なので、27インチというサイズは想像しているよりだいぶ大きく感じました。
大きく見えるメリット
写真展で大きなプリントの写真を見るとスマートフォンで見た時よりもよく見える、という経験は誰しもあると思いますが、写真が大きく見えるというのは単純にサイズが変わるだけではなく、コントラストや色調的なグラデーションも滑らかに表現されるという利点があります。これは丁寧に写真にアプローチするのに有効な手段の一つになります。
一方で大きい写真では粗さも大きくなり際立ってしまうので、細かい点で気を配るのにも大きい画面は向いていると思います。カラーマネジメントモニターを装備することは、派手すぎないしっかりコントラストの立った写真へのアプローチの第一歩と言えるのではないでしょうか。
グラデーションを極端にして潰してしまわない様に現像した写真
このサイズ感の差は結構大きいです。グラデーションも豊かに見えてますし、細かい調整をするのに嬉しいですね。
縦写真に対応できる
僕的に最高に嬉しいポイントがこの縦写真をフルスクリーンで表示できる点!
縦の写真を大きなモニターでチェックできる機会はあまりないですが、これができると大変助かりますね。先に上げた写真のサイズが持つ印象を目の当たりにして確認できるので、とても助かります。
単純にモニターを回すだけいいですし、フードの取り付けも簡単なのが嬉しいところです。
縦写真は人気もあるけど
縦の写真は昨今インスタグラムで見栄えがいいことからも人気ですが、インパクトを求めてついついやりすぎなレタッチになることもしばしば。しかし、このような大きな画面のカラーマネジメントモニターで丁寧にレタッチしてあげれば、どの媒体でも安心して見ることができます。
カラーマネジメントモニターで見ている状態できついレタッチをしてしまうと、その他の媒体で見る時には相当派手か、あるいは痛んで見える可能性が高いので、自分の写真がやりすぎていないかを確認するのに縦のフルスクリーンはとても嬉しいと感じました。
グレアとノングレア
SW270Cはノングレア液晶です。グレアというのはまたの名を光沢液晶と言います。簡単に言えば画面が艶々なことです。ノングレアはグレアの逆で目に優しく発色はグレアに比べると落ち着いて見えますが、それぞれに特徴があります。
グレア液晶
グレア液晶はコントラストが高く見えたり、発色が良く見えたりします。またピカピカの液晶はよく反射するので環境光の影響を強く受けます。最近のPCやスマートフォンを中心に世に席巻している液晶ですがきれいに見える反面、目は疲れやすいです。
ノングレア液晶
対してノングレア液晶は刺激が少ないので長い時間作業をしても負担が少ないとされています。
どちらが良い悪いではなくて、向き不向きの話ですね。写真の編集に関して言えば目の疲労が少ないことや、必要以上に派手に見えないことからノングレアの持つ特性は豊かな諧調表現に向いていると言えると思います。
広い色域がもたらす新しい色の世界
SW270CはAdobeRGB99%カバーという広い色域を持っています。わかりやすく言うと、通常のモニターで表現することができない色も表現できます。プリントならAdobeRGB、WEB媒体での使用ならsRGBというように、モニターのモードを切り替えることであらゆる写真媒体での自由な色表現へとつながります。
今まではできなかった表現につながる
例えばカラーマネジメントされていないモニターでトーンジャンプをしてしまってレタッチを諦めていた写真はモニターの限界が写真の限界になっているということになります(厳密にはそう感じてしまう)。しっかりキャリブレーションされたモニターを使うことは写真が持ってる可能性をフルに引き出すことにも繋がります。
SW270Cを含む、BenQのプロ向けモニター『 AQCOLOR 』 シリーズはこの4つのポイントを核にして色を再現しているみたいです。
AQCOLORシリーズ 4つのポイント
- Selection/選択
常に最適な色表現を可能にするための液晶パネルを厳選しております。 - Design/設計
ハードウェアキャリブレーションやムラ補正技術といった究極の性能、正しい色をユーザーにお届けするという信念を元にデザイン・設計をしています。 - Calibration/キャリブレーション
いつでも正確な色精度を可能にするため、工場出荷時に1台ずつキャリブレーションを行っております。ガンマ補正、色温度調整、色域補正、ユニフォーミティ補正を行い、すべての基準を満たした製品のみをお届けします。 - Pledge/品質保証
製品に同梱されている工場キャリブレーションレポートは、業界基準に準拠する厳格な発色試験に合格している事を保証するだけでなく、BenQの色に対する姿勢の証でもあります。また、アフターサービスも充実しております
※BenQ HPより引用
SW270CはPantone/CALMAN認証も取得しているらしく、AQCOLORシリーズの中でもさらに信頼性の高いモニターのようですね。
性能で可能性に蓋をしない
今回、使わせていただいて感じたのが、そもそも広い色域を正確に表現できるモニターを使ったことがなかったので、それだけで表現できる色の数が減っているのではと言う不安を強く感じました。これは結構なハンデになると思いますし、先にも言いましたが写真の可能性がモニターの性能に蓋をされるのは防がなければならないと思います。
自分の写真の本当の色に出会う
カラーマネジメントモニターは表現できる色が豊富で、コントラストも落ち着いていますので撮って出しの印象も変わります。こちらの写真は分かりやすくする為に普段よりも暗めに撮影していますが、MacBook Proでは空が白く飛んでいるのに対して、SW270Cはちゃんと色が残っていることが見て分かります。
いつもMacBook Proではハイライトをマイナス80くらいにして色を出しているのですが、SW270Cではマイナス50くらいで既に色が生きてきました。
モニターによって色味が変わる
このようにモニターによって見える色や明るさが変わります。しかもパソコンのモニターは徐々に校正値からずれていくので指標にはなり得ません。つまり自分の写真の本当の姿が曖昧にまってしまうのです。そのモニターに合わせてレタッチしてしまうと、その写真は自分のパソコン上でしかベストではないという状態になります。
家電量販店のテレビが最もわかりやすいですが、同じ映像が流れていても、メーカーごと、あるいは機種ごとに色や明るさが違います。あれは元の映像に各社特有のフィルターをかけているからです。カメラのEVFも背面液晶も、パソコンも全て、このフィルターがかかっています。
つまり、僕たちはキャリブレーションされたモニター無しには、撮った写真の本当の姿すら見るとこができないと言えるのではないでしょうか。
同じ写真を別々のモニターでレタッチしたらどうなるのか
ここまで、カラーマネジメントモニターの良い所、使ってみてすごいなと思った所を挙げてきました。
正直に言ってしまいますが、僕がなぜ今までカラーマネジメントモニターを導入して来なかったかと言いますと、キャリブレーションされてないとはいえ
という疑問があったからに他なりません。
しかし、先にも述べた様に、撮って出しの正しい姿をみた今、これは同じ写真であっても別々のモニターでレタッチした場合、写真は変化するのではないかと言う気持ちになってきました。
SW270Cと普段のモニターで比較してみた


というわけで実際にやってみました。
左がMacBook Pro16インチのRetinaディスプレイ、右がSW270Cを見ながらレタッチしたものです。
レタッチ中に気付いた自分の癖
とにかくコントラストを丁寧に出したいというのがこの写真のレタッチに求めたものだったのですが、レタッチしていく中で自分の癖に気付きました。
今まではハイライトを下げすぎて、光感を失っていたかもしれないということです。コントラストが高いモニター(MacBook Pro)で見ている中で派手に見えるのを抑えようとしていたのかなと思います。シャドウについても、引き締まりすぎたように見える部分を持ち上げているので少しのっぺりしていますね。
SW270Cはキャリブレーションされているのはもちろん、ノングレア液晶でピカピカ感がないので、光感を素直に感じることができ、その分強さを残せました。光の強さが残っていればシャドウが引き締まっていても相対性を確保できてると思います。
ハイライトの光具合

今まで輝度の高いモニターで見ていた分、光(ハイライト)を抑え過ぎていましたが、階調豊かなモニターで丁寧に現像する事で光の強さを残せたと思います。
被写体のシャドー

強い光の影で被写体の背中側をしっかり落とす事で写真の中にある光の方向性が明確になりました。
一見飛んでいるように見えたとしても
ここが面白いところで、本記事を読んでくれた方が「キャリブレーションされた方飛んでるじゃん」と思ったとしても、キャリブレーションされたモニターではギリギリ良い感じの強さになってるんだぜ〜という精神的な余裕があります。自分の写真を自分なりに信じられる意味は大きいですね。
まとめ
SW270Cを使ってみて
- 接続がとても楽
- 取り付けが簡単な純正遮光フードがついてくる
- コントローラーもついてくる
- 大きい画面は色調やグラデーションを滑らかに見ることができる
- 縦画面にも対応可能!
- 目への刺激が少ないノングレア液晶
- 広い色域で表現が広がる
- 写真の性能をモニターの限界で蓋をしないことが大切
- 自分の写真を自分なりに信じることができる
- 多くのモニターが溢れる現代で信じることのできる指標になる
今回記事を執筆するにあたり様々なことを調べている中で、世界的なコンテストを始め、大きなコンテストやサイトのキュレーターは基本的にキャリブレーションされたモニターを使っているということを知りました。僕は、今後キャリブレーションされたカラーマネジメントモニターがフィールドに上がるためのチケットのような存在になるのではないかと思っています。
先ほどの比較を見てもわかるとおり、やり過ぎないレタッチを防止するのもカラーマネジメントモニターの役割ですが、抑えすぎて写真そのもののインパクトを欠くケースにおいても役割を果たしてくれました。
皆さんもカラーマネジメントモニターを使って自分の色を見つけてください!僕も改めて本当の自分の色を求める旅に出ようと思います。