夏と言えば花火!皆さんこんにちは。毎年楽しみなこの季節が目前に迫り、待ちきれない気持ちでいっぱいの、8月生まれの写真家、長瀬(@syouta0002)です。さて、今回は、各地で開催されるであろう花火大会の中でも一際インパクトの強い見栄えで人気の手筒花火について書かせていただきます。
特に私の地元である群馬県は館林で行われる手筒花火大会(2019年度は7月27日予定)は人気が高いので、ぜひとも永遠の秘境グンマーにフル装備でお越し下さいませ 。
撮影方法一つで劇的変化!スローシャッターを活用した手筒花火写真表現。
手筒花火とは
手筒花火の派手さは冒頭の写真からも伝わってくると思うのですが、まず「手筒花火」そのものについて簡単にご説明します。
手筒花火(てづつはなび)は、1メートルほどの竹筒に火薬を詰め、それを人が抱えながら行う花火である。手筒花火は、打ち上げ式ではなく吹き上げ式の花火で、その火柱は大きいものだと10数メートルにもなる。 愛知県豊橋市の吉田神社が手筒花火の発祥の地といわれる。豊橋市のある愛知県東三河地方、および静岡県の遠州地方西部で特に盛んである。- Wikipediaより抜粋 –
人が抱えながらっていうのが日本人らしいと言うか豪快ですよね (笑)
また、現在の手筒花火が全てそうとは言えないかもしれませんが、私が調べた所によりますと “東三河地方でおよそ460年前から伝承されている文化行事の一つ。五穀豊穣・無病息災・家運隆盛・武運長久などを祈る奉納行事” といった側面も持つようです。
火の粉の中でじっと佇んでいる姿はまさに祈っているようにも感じられます。
熱さ
手筒花火の火の粉の温度は1200~1500℃にも達し、一つ間違えば命に関わる事故にも繋がりかねないとても危険なものです。そのため、きちんと取扱いを熟知した職人もしくは職人から指導を受けた方が着火するそうです。
ちなみに私の知り合いが実際に手筒花火を体験した時の談によれば「火の粉がものすごい勢いで降りかかってきて猛烈に熱い。我慢できるかできないかっていうぎりぎりの熱さ」なのだそう。恐ろしい話ですね…私にはとても真似できませんので、いつも大人しく遠くから写真を撮っています。
手筒花火の撮影スタイル
私の手筒花火撮影時のスタイルをご紹介します。
- 70-200mm&2倍テレコンバーターを使用した超望遠ズームレンズセット
- 三脚は使わず地面に座って手持ち撮影
- マニュアルフォーカス ※AFも可
- 露出モードはS(シャッター優先オート)モード
- 可変NDフィルター使用
シャッタースピード
まず、もっとも私が手筒花火の撮影でこだわっているのがシャッタースピード0.4~0.5秒という設定です。
そのシャッタースピードにする理由は詳しく後述するのですが、実は私は一番最初の撮影時に3秒というシャッタースピードから撮り始めました。なにか「誰もやったことがないような長さのシャッタースピードにしたら新しい世界が見えないか?」と思ってテストしたのです。
…が、結果としてはただのブレブレ写真しか撮れませんでした (笑)それが上の写真です。手筒花火も人物もブレてしまい、表現として成立していません。
そこから少しずつシャッタースピードを速くして、私が理想とするシャッタースピードが0.4~0.5秒だという事を突き止めたのです。
露出モードはS(シャッタースピード優先)モード
手筒花火の撮影中は構図の変更や手筒花火の火の粉の噴出量の増減によって写真の露出がめまぐるしく変わります。そのような状況でも理想とするシャッタースピードを確実にキープする為に、私は露出モードをS(シャッタースピード優先)モードで撮影しています。
可変NDフィルター
シャッタースピードを優先した露出モードの場合、多くの火の粉を取り入れた構図(望遠で人物に寄る構図)にすると画面内が明るくなりすぎてしまい、絞り値が限界近くまで上がってしまう事があります。
そんな絞り過ぎによる小絞りボケ回避の為に必要な道具が可変NDフィルターです。(レンズに入ってくる光を減らすことの出来るフィルターがNDフィルターであり、可変NDというのはその減光効果を調整できるものを言います。)
私は4~5社の可変NDフィルターをテスト使用したことがありますが…解像度の高さと可変ムラの少なさ、手探りでの可変調整のしやすさなどの理由で1.5~5段の減光効果のある NiSi ND-VARIO Pro Nano 1.5-5stops Enhanced Variable ND を使用しています。
手持ち撮影
手筒花火の撮影は、一般的には観客席の後ろからなるべく高く三脚をセットして超望遠レンズで狙うことが多いようです。ですが、私は三脚は使わず一般の観客席に座って手持ち撮影をしています。
上の写真が、撮影時のポーズを再現したものです。カメラザックの上にカメラを載せ、そのザックごと抱え込むことで安定感を増しています。
その理由は三脚を持っていくのがめんどくさ、ゴホンゴホン…なるべく低い位置から撮ることで手筒花火とそれを抱えている人物を見上げた状態で撮影したいからです。これにより、仏像を下から眺めると荘厳さが増す視覚原理と同じ効果が得られ、より手筒花火の凄まじさが伝わる写真になります。
視覚効果
手持ち撮影の項でもかんたんに触れましたが、私は写真を撮る際になるべく視覚効果を盛り込もうと考えています。ここではシャッタースピード0.4~0.5秒というスローシャッターで得られる視覚効果について語ります。
熱、時間
まず第一にスローシャッターにすることで得られる要素は「写る火の粉の線の長さが長く、多くなる」です。
その結果、画面内の火の粉が占める割合が増し”火の粉に包まれている感”が出るのです。その視覚効果を利用する事で写真を見るものに火の粉の熱が伝わりやすくなる、と考えています。
さらには無数の火の粉が顔や身体にぶつかり跳ね飛ばされている瞬間を線として写しだすことで、実際に火の塊が人体に触れて離れていく時間が伝わるような視覚効果も狙っています。
感情
また、スローシャッターにして火の粉の線を長く多くしたり微細なブレを盛り込むことによって「手筒花火を抱えている人物の表情が見えそうで見えない状態」となるように撮影しています。
あえて表情を見えないようにすることにより、写真を見るものに「この人物は熱くないのかな?どんな表情をしているのかな?苦悶の表情をしてるのかな、それとも祈るような表情をしてるのかな?」といった想像をさせる視覚効果が得られると考えています。
あとがき
さて、ちょっと特殊な私独自の手筒花火撮影方法のご紹介は、いかがでしたでしょうか?
常々、「写真は目で見る以上の感動を、人に伝えることが出来るのではないか」という考えのもと、試行錯誤を繰り返しながら撮影しています。今回はスローシャッターという手法、その世界観と視覚効果について書きました。
読者の皆さんの今後の撮影に活かしていただくと共に、さらなる視覚効果や見せ方を探るキッカケになれれば幸いです。
それでは、また。