こんにちは。別所隆弘( @TakahiroBessho )です。今まではLightroomやPhotoshopを使って現像することが多かったのですが、今回はLuminar 3という、写真表現の幅を広げてくれるRAW現像・写真編集ツールを使用して感じたことを作例とともにご紹介したいと思います。
驚きの革新性!まだ見ぬ「自分の写真」に出会うために、私はルミナーを使う
はじめに
写真における現像とは人類に残された最後のフロンティアというべき場所です。フロンティアとは「辺境」を意味する言葉。かつてアメリカ人たちがそのソウルを培った荒野のことですが、何もない代わりに、そこにはすべての可能性があった。
そこからアメリカが生まれたわけですが、そのアメリカで人気のソフトらしく、Luminar 3というのはそもそもからして「無限の可能性」を秘めた行為である「現像」を、見事なまでに目に見える形でその「無限性」を示してくれるわけです。というのは、基本現像に加えて、縦横無尽に重ねがけできるフィルターの順列組み合わせのパターンはおそらくリアルな意味で「無限」なんです。それは皆さんの現像における想像力に無限の夢を与えることでしょう。
ソフトに求めるもの
写真のソフトに関しては、仕事で使うということもあって、表示速度の速さやもたつきのなさなど、まず 基本的な操作性の部分での快適さを最も重視します。
また安定性も重視します。使っている過程で頻繁に落ちるようなソフトは、プロが使うソフトとしてはまったくあてにならないからです。その意味で、今の所Luminar 3が落ちた経験は一度もなく、作品作りの相棒として信頼がおけます。
ノンストレスな操作性
写真業界の標準アプリであるLightroomの操作性に極めて似た操作性を持っているために、初めて使うその日から、すでにこれまで習熟した「感覚」を再現できます。
基本現像セクションを見ればわかるように、Lightroomユーザーにもすぐレタッチが始められます。

安定したパフォーマンス
写真データの「管理」という部分を他のソフトに任せてしまって、レタッチに特化したソフトの構成のために、パフォーマンスが極めて安定しているのが嬉しいところです。それぞれのフィルターには、フィルターの適用範囲を細かく制御するためのブラシツールがついていますが、これらを使った時の挙動の軽さが、作業をはかどらせます。
そう、Luminar 3ならね
最初は「また新しいソフトかー、言うて、亜流Lightroomだろうねえ」と疑いの目で見ていた自分が、今や出力前の最後の「味付け」で頻繁に呼び出すようになりました。それはLightroomやPhotoshopに欠けていたものが、Luminar 3にはあるからです。
それこそが「フィルター」の存在。フィルターを適当にポチポチクリックして画像の「見え方」を変えるだけで、自分の固着した想像力を解放してくれます。この「提案力」とでも言いたくなるような、イマジネーションを掻き立てる要素こそが、Luminar 3ならではの良さでしょう。


Lightroomで基本調整をした後に、Luminar 3でラディエンスとソフトグローを適用。全体の柔らかさと輝かしさを写真に加える。
理想のイメージ
自分の作風といったものがどういうものなのか明確なビジョンはないんですが、一つ心がけていることは「自然な違和感」を追求したいと思ってるんです。
これは今まであまり言わなかったことですが、僕の表現活動の核心にあります。違和感とは本来不自然なものなので、「自然な違和感」というのは矛盾しているように見えるんですが、その矛盾が上手くバランスした時に、個人的に満足した写真に仕上がることが多いです。
シャドウ部分への表現のこだわり
一時期はとにかく「明るくすること」ばかりを意識していたのですが、それでは「不自然な違和感」をもたらすことに早晩気づきました。
それはそれで良いのですが、もっと見た人が、すんなりと受け入れながらも、どこか「おや?」と振り返るような写真にするためには、シャドウ表現に気を使わなければならないことに気づきました。
今の感覚では「明るすぎる写真」。シャドウを起こしすぎて、まさにファンタジーな感じ。
一方最近の現像の感じ。シャドウと黒の残し方が強い。
これも同じくらいにファンタジーだけど、この「ギリギリ見えるかもしれないくらいのシャドウ」が残されてるために、「違和感」はあまり前景化しない。また、闇が残っているので、光の煌きがより強調される。
マクロとミクロのコントラスト表現で気をつけるポイント
全体のコントラストではなくて、線と線の境界線上のコントラスト部分には気を使います。シャープネスで線を強調しちゃうと写真全体がごちゃついてしまうので、そうではない形で細部におけるコントラストをつけて、暗さの中に階調が出るように意識して処理します。
この桜写真は、闇部分にわずかに階調が残るように、特に桜背後の部分に茶畑の段差や山肌の木々の形などがギリギリ出るように調整しました。
Luminar 3で作風を表現するために
マイクロコントラスト部分の調整
去年お気に入りの花火の写真を使って、細部のコントラスト調整でよく使う3つのフィルターについて比較してみます。
明瞭度、細部の強調、縁取りの3つです。この3つは似たような方向性のツールですが、効果は全然違います。キツさで言うと、明瞭度<細部の強調<縁取りの順で画像に与える効果は強く、キツくなります。




ただ、面白いことに縁取りは他の二つと違ってマイナス側に効果を与えることができます。個別のフィルターの効果ですが、明瞭度はLightroomで言うところの「明瞭度」の効果と極めて似た処理を施しますが、若干Lightroomよりも明度のコントラストを強めにつけます。




かなり強力なツールなので違和感も出ますが、使い所を選べば効果も強いです。


花火写真の煙の調整
上の効果を複合的に加えることで、花火写真において最も重要な「花火の光」と「花火の煙」の輪郭を、必要に応じて表現の差を加えることができます。最終的な完成写真では、部分部分に違うマイクロコントラスト表現を施しています。

全体には「明瞭度」を加えています。明瞭度はLightroomでかけてもいいのですが、作業工程を一括化したいので、Luminar 3で処理しました。
右側にある塔周辺から下部の街あたりに「細部の強調」をかけています。明瞭度でも良かったのですが、ここはもう少し煙の質感を出したかったと、闇に沈んでいる街の「光量のグラデーション」を出したかったので、HDR効果が見込める「細部の強調」を適用しています。

そして最後、禁断のフィルター「縁取り」です。効果がキツいので全体にかけることはほとんどないのですが、「ここぞ」というときに使います。写真においてはこの部分です。

この写真で一番「世紀末感」を出すのに必要な煙に対して異世界感を与えるために、強い線が必要でした。
この様にして、3つのコントラスト系フィルターを必要に応じて使い分けることで、自分の見た世界をより精細に表現できるようになります。
リフレクション系写真での調整


花火と合わせてよくLuminar 3のマイクロコントラスト系のフィルターを使って調整するのはリフレクションの写真です。特に雲の状態を際立たせたいときは、その写真の持っている雰囲気を阻害しないように、「明瞭度」「細部の強調」「縁取り」の3つから選んで使う場合が多いです。
香川県の父母が浜での写真でも、最終の仕上げはLuminar 3でした。Lightroomで光量の調整をした後、Luminar 3で「明瞭度」と、それから夕焼けの印象を強めたいので、わずかに「ゴールデンアワー」を加えています。そこにさらに、キツくなったので、「オートン効果」を加えて全体を柔らかくしています。
AIフィルター



ダイナミックレンジの左端と右端に光が集まるような風景写真のカラー調整などで活躍します。
Luminar 3の革新性
「基本補正」がしっかりとできる


Lightroomの「基本補正」に準拠しているために、Luminar 3の基本補正のセクションは極めて使いやすい印象です。勿論、Luminar 3を使うほどでもない、出来上がり時点である程度できている写真の場合はLightroomで済ませますが、Luminar 3が必要そうな写真だと最初から想定されるような被写体、例えば「色被りが激しいスカイツリーと河津桜」のような場合、最初からLuminar 3に飛ぶ場合も増えています。
それは、基本補正セクションに対して、必要なフィルターを階層状態に乗せることができるからです。

マスクやレイヤーの操作
上の父母が浜のリフレクション写真の時がそうなんですが、明瞭度などのコントラストを強めるフィルターを使ったときには、「オートン効果」や「ソフトフォーカス」などを使って、その効果を少し和らげるようなことはよくやります。
「じゃあそもそも効果自体を弱めにかければ良いんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、「片方の弱い効果が乗る」場合と、「相殺する二つの効果が乗る」場合では見え方が違います。その見え方の違いを、Luminar 3の場合はマスクやレイヤーを使うことで、視覚的に効果の範囲を確認しながら適用できるので、極めて便利です。
LightroomやPhotoshopとの連携
特にPhotoshopとの連携において、Luminar 3は便利です。ここまで書いたようにLuminar 3単体でも極めて強い編集能力を持っているので、ワークフローを完結できるのですが、Photoshop上から呼び出したときは、その編集のすべての効果が「レイヤー」の一つとしてPhotoshop上で並びます。こうなってくると、Photoshop上でもレイヤーマスク等で効果のコントロールができるわけです。
それに加えて、Luminar 3以外の外部ソフトやプリセットの表現とレイヤー上で効果を重ね合わせることができます。ワークフローのどの段階において起動しても「レイヤー」という形で入り込むことができるので、必要になった段階で使うことができるという自由度が、「Luminar 3を使おう」という気にさせるんです。
Luminar 3を使用したまとめ
プロの風景写真家にとっておすすめポイント
ワークフローにおいて外すことのできないツール
ここまで書いたことから、Luminar 3というのが「スタンドアロン」としても「サポート」としても、写真編集においてかなり強力な機能を発揮することをご理解いただけたと思います。
汎用性が低かったり、機能単体として不足があると、どうしても「プロが使うツール」としては信頼がおけないのですが、そのどちらも極めて高レベルで達成しているために、まずは「仕事のツール」として信頼できるレベルに仕上がっているのが、Luminar 3の特色です。
無限の可能性


その上で、最初に書いたように、そのフィルターの組み合わせは自由です。そうなってくると、写真における「表現」という意味において、Luminar 3は極めて重要な役割を果たす可能性が出てきます。ポストプロセスにおいてできることの範囲が増えれば増えるほど、写真は「表現」の範囲を広げていくはずだからです。
例えば工場夜景において、フィルム風の現像を施すことも、Luminar 3ならLUTを使えば極めて簡単です。


そしてそれは自分自身の可能性をも拡大してくれるということを意味します。これまでの私だったらこんなふうには決して現像しないという方向性へと自分を啓いてくれるような、そういうソフトに仕上がってます。まさに「夢を見させてくれる」ソフトなんですよね。
というわけで、Luminar 3の詳細なレビューでした。皆さんも是非、まだ見ぬ「自分の写真」に出会うために、Luminar 3を導入してみてください。世界が広がるはずです。