どうも、富久浩二(@tomhati)です。絶賛梅雨シーズンですね。皆さん雨はお好きですか?僕は好きです。きっとスナップを撮る多くの方から共感を得られるのではないかと思うのですが、その大きな理由の一つは、雨の日の「傘」がとんでもなく「スナップ映え」するからです。この「傘」というアイテムは、なんでもない風景に彩りを加える、とてつもない効果を持っていると思います。
今回はその「傘」という要素と風景を組み合わせた、僕なりのスナップ写真の作り方をご紹介したいと思います。
雨の日の定番アイテム「傘」を効果的に使うだけで変化する日常風景。一歩踏み込んだスナップ写真を撮るコツとは?
はじめに
まずはじめに、スナップ写真を撮るときに僕が思う、「つまらない写真」と「面白い写真」をそれぞれご紹介したいと思います。
- つまらない写真
- 動きが少ない
- 色が平坦
- 要素が少ない
- 面白い写真
- 動きがある
- 差し色が入っている
- 二つ以上の要素がある
つまらない要素を解消し、面白い写真にしてくれるアイテム。その一つに「傘」を入れる、ということを提案します。その理由をもう少し詳しく分解してみます。
- 動き
- 「傘を持つ」という動きが生まれる。
- 色
- ワンポイントで傘が差し色になる。
- 要素
- 赤い傘を二人で持っていたり、傘の色と何かの色を合わせたり、複数の要素を見つけやすい。
ざっくりこんな感じなのかなと考えます。「雨の日は絶対に傘!」というわけではないのですが一目でわかりやすく、誰でも撮りやすい被写体だと思うので、とてもオススメです。
ガラスに貼ってあるシールと、向こう側の景色の融合
この写真はガラスに貼ってあるシールの中に、窓の外の傘をはめ込むと最初に決めました。
ポイントは、真ん中の人の影がちゃんと水たまりに映ったタイミングでシャッターを切ったことです。水たまりに影が映ったことで、写真に「おっ」と思える要素が増えます。
こちら側は室内で撮影しているので、雨の日でも濡れないのもポイントの一つです。
ポイント
- 手前のシールと奥の景色の配置を意識する。
- 影や動きに注意してシャッターを切る。
- 雨に濡れないように、室内から撮れるポイントを探すと吉。
スローシャッターで見える、違う景色
一つ前で紹介した写真と同じ場所です。あの写真を撮った後に、派手な傘をクルクル回している人がいたので、シャッタースピードを遅くすることで傘の柄を不思議な模様に演出できました。
撮影のコツとして、前に訪れたことがある「いい場所」を自分の頭の中にストックしておくことが重要です。僕の場合は「雨ならここで撮るのが良さそう」という想像を膨らませた場所で、狙って撮影した方がより面白い写真が撮れます。この写真で言えば「雨の日ならこの部屋の中から外を撮る」イメージが頭にインプットされていました。
今回は昼間の写真ですが、夜に降る雨は、地面が街の明かりや車のライトで光って綺麗なので、とてもオススメです。
ポイント
- 「いい場所」は常に頭の中にストックしておく。
- 雨は夜と相性がいい。
ガラスを利用して、超広角レンズで景色を切り取る
これは傘ではないのですが、先ほど紹介した「ガラス越し」の撮影方法に紐づいたテクニックです。
場所は駅ビル(大塚駅)の中になります。ここは初夏になると大きなガラスに花火のシールが貼られるので、街全体に花火が流れるようなイメージで撮影しました。超広角レンズで大きく切り取ることによって、画面に広がりを持たせることができました。
この場所も駅ビルなので雨に濡れずに撮影できるのが良いですね。
ポイント
- ガラスとシール、街の景色を利用する。
- 雨の日の撮影スポットをストックしておく。
傘と、街の色の「配色」を考える
「いい場所」を記憶の中にストックしておくほかに、歩きながら街の中で「色」を記憶しておくことも大切です。
この写真は色の記憶のおかげで撮れた写真です。まず、傘をさした2人が遠くから歩いてくるのが見えた時に、印象に残ったの記憶と紐づけるのです。「あ、そういえばさっき歩いた公園、赤と白のコーンがあったなあ」という記憶に残っていて、「ここにきたらハマるな」という予感がしました。
公園はいわばリーチ状態の場所です。あとはもう、ここに人の要素が来ることを待つのみですね。行きかけに色を覚えて、帰りにすれ違っている人を観察して、いろんな記憶に紐づけられないか考えながら撮影していくのが僕のスタイルです。
ポイント
- 日頃から街中の色に注目する。
- 公園は撮影スポットの宝庫。
雨の鉄板!リフレクションの効果的な見せ方
この写真は21mmの広角レンズを使用しています。
撮る時に意識したことは、画面の両端に余計なものを入れないこと。そうすることで、背後の壁が無限に続いているかのように錯覚できるような写真になります。この効果としては、画面中でブツッと構図の流れ(建物の線など)が途切れないのでスッキリとした印象になるという点ですね。
そして、カメラを構えながら一箇所アクションが起きた時にシャッターを切ります。一人しかいない瞬間や、傘をクルクル回した瞬間など、そういったアクションを混ぜられると写真にストーリーが生まれます。この写真では左端の人がちょうど振り返り、いいアクセントになっていると思います。また、青と白のコントラストも印象的です。
リフレクションを撮る時によくやってしまいがちなのが、首からストラップを下げたまま、下から撮ろうとすることです。そうするとレンズが下を向いて残念な写真になりがちです。そこで、ストラップを外して水面ギリギリまで近付け、レンズをちょっと上向きにすると、写り込みが綺麗に撮れます。かがんで撮ることになりますが、もし周囲の目が気になるなら携帯でリモート撮影するのもありですね。
ポイント
- 画面の両端に余計なものを入れず、背景が無限に続いているようなイメージをする。
- アクションが起きた瞬間にシャッターを切る。
- 水面ギリギリまで近付け、レンズをちょっと上向きにして写り込みを撮る。
「奇跡の一瞬」をより引き立たせる「二重ライン」
ほとんどの人は「どういうこと?」と首をかしげる写真かもしれません。どういった経緯でこの写真が撮れたのか、説明していきます。
最初は土手に走っている人と、手前に歩いている人が両方撮れたら奥行き感のあるちょっと面白い写真が撮れるんじゃないかなと思い狙っていました。またこの時は風が強い日でした。僕の中で、「風が強い日はハプニングが起きる」可能性が高いという経験則があったため、連写モードに。
そのうちに、土手で自転車が交差し、手前を人が歩いて来ました。まあまあいい瞬間かなと思いシャッターを切っていたら、突然手前の黒い物体が異常な動きをしたのです。写真を見返したら、傘が折れて飛んでいってました。
僕がこの写真の好きなポイントは、子供が驚いている表情と、土手のおじさんがその子供を見ているところです。まさに奇跡の一瞬でした。
この偶然を引き立たせているのが土手と道路の二重ラインです。土手だけではそうでもないけれど、土手と道路の二重ラインを活かし、それぞれの道で進んでいるものを同時に撮るといい味が出ます。二重ラインを意識するときは角度をつけず平行に撮ります。そうすると手前と奥の要素によりがあるので奥行きが生まれ、立体感のある写真にすることができます。
僕はいつも遠くにあるものを狙って撮るので、手前のものは自分が意識していないものだったりします。この意識していない手前のものがイレギュラーであり、とんでもないことを引き起こしたりするのです。
スナップを撮るときは、手前で人が通るからカメラを下げる。そういったことを僕はしません。手前の人がさっと前を通っても、高確率でブレるので、風景写真だったら邪魔ですが、スナップなら逆にちょっといいアクセントになったりします。
スナップは思い通りに撮れるものではなく、何か思いがけないハプニングによって作品がとんでもないものに変わったりするところに面白さを感じています。
ポイント
- 風が強い日は連写を利用する。ハプニングを撮る。
- 手前と奥の二重ラインを意識し平行に撮る。
小さなものにもフォーカスする楽しさ
今度はおまけとして、雨の中で街中に落ちていた小さなものにフォーカスしてみた話。
上の写真のめがねはたまたま階段の手すりの上に落ちていたものです。基本的には落ちているものをそのまま使って撮るようにしています。自分でいいように動かしてしまうとやらせ感が出てしまうので、足を使って移動したり、撮る方向を変えてみたり、自分側で調整します。
その工程で、めがねにカメラを近づけていったらレンズの向こう側に人影を入れられることがわかりました。そして、人がやって来るチャンスを待って撮影。人の影がレンズの中でいい感じのサイズになるように、レンズとメガネの位置を調整して、かつ人影を背景のビルの光に合わせました。光に合わせると、影になった人のシルエットが目立ち、引き立ちます。
なんでもないものに、想像を膨らませる
おまけのおまけとして、この写真。雨粒のようだと思いシャッターを切りました。こういったなんでもないものから、想像を膨らませて何かに置き換えてみたりすると、新たな発見や切り取り方が生まれてくると思います。
ポイント
- 落ちているものはそのまま使う。都合よく動かすのではなく撮る方向を変えたりと自分の足で調整する。
- なんでもないものにも、想像力を働かせてみる。
傘を効果的に使ったチュートリアルまとめ
- 手前と奥を意識して撮影する。
- 影や動きに注意する。
- 雨に濡れないように、室内から撮れるポイントを探すと吉。
- 「いい場所」は常に頭の中にストックしておく。
- 日頃から街中の色に注目する。
- 水面ギリギリまで近付け、レンズをちょっと上向きにして写り込みを撮る。
- 風が強い日は連写を利用する。ハプニングを撮る。
- 落ちているものはそのまま使う。都合よく動かすのではなく撮る方向を変えたりと自分の足で調整する。
何か「アイテム」があるだけで劇的に写真が変わる
いかがだったでしょうか。傘をスナップで狙って撮る人は多いと思いますが、「こういう狙い方もあるんだ」と楽しんでいただけたら幸いです。
傘に限らず、何かをしている動作や何かが起こった瞬間というのがシャッターチャンスです。一つの被写体だけにフォーカスせず、色々なもの見てつなぎ合わせることをしていくと、自分の想像通りに撮れた時の喜びもひとしお。一方、ハプニングによってとんでもないものが撮れたりするからスナップは面白いなあとも感じますね。
「見たままを切り取る」でも「本当はそうじゃないけどそう見える」ように撮るのでも、それぞれの楽しみ方があると思います。後者は想像力次第でいかようにも工夫ができるので、僕みたいな写真が撮りたいという方いればぜひ試してみてください。
それでは、またいつかお会いしましょう。