フィルターの効果で生み出す幻想的なポートレート撮影術!光の捉え方や構図で変わる作品表現。

こんにちは、小林修士(@ShujiKobayashiP)です。ヒーコでは以前、「写真と生きる」連載であきりん(@crypingraphy)と対談していたり、NiSi NDフィルター × Nissin MG 10の日中シンクロチュートリアル記事などを執筆しました。久しぶりの登場となりますが、よろしくお願いします。

今回は、自分がよく作品撮影で使用するアクリル板について書いていきたいと思います。ご紹介する作品は全て「re-flection」というシリーズのものです。

フィルターの効果で生み出す幻想的なポートレート撮影術!光の捉え方や構図で変わる作品表現。

事の始まり

まずは、アクリル板を使ったポートレートシリーズがなぜ生まれたのかについてお話ししたいと思います。

この「re-flection」というシリーズを始めた当時、自分は20年以上のアメリカでの生活に区切りを付けて日本に戻って来たばかりでした。そして独自の作風を模索していた時に、ネットで見かけたDavid BellmereDamon Lobleという二人のフォトグラファーの作品と出会いました。

彼らの作品は画面上に不思議な光に包まれ、その向こう側に自然体でリラックスしている裸の女性がいるという作品でした。その光の捉え方や構図の絶妙さなどが相まってとても素晴らしい作品で自分でも同じような感じで撮ってみたいと思いました。

彼らの作品を何枚も見ながら調べている内に、その不思議な光の効果というのはガラスに写った光越しに撮影をしている事が解ったのです。

Model : Nikki
Instagram : @kittenmouth

アクリル板

使用方法は単純で、アクリル板でレンズの前に配置しそこに映り込む光越しに撮影をするだけです。

ここで注意していただきたいのは、レンズに対して真正面にアクリル板を配置すると、自分やカメラが写り込んでしまいます。それを避けるためにはアクリル板を上下左右に動かして角度をつけなければならなりません。

ある程度レンズから距離を置いて、さらに角度をつけて撮影するので必然的に大きなサイズのアクリル板が必要になります。僕が使っているものは東急ハンズで購入した大きさが大四つ切り(11×14インチ)程度のものですが、かなりの大きさがあります。

Model : Trish
Instagram : @trish_davis9

アクリル板を使用した撮影

この撮影風景を見ていただけるとわかるように、アクリル板を用いた撮影をする際には自分なりの創意工夫があります。

それをする前は右手にカメラ、左手にアクリル板を持って、ファインダーを覗きながらアクリル板を動かし、よい角度を見つけても、その位置に固定したまま撮影をするというのは至難の業でした。

そこで自分が見つけたのは、DINKUMというフレキシブルアームの両端にクランプがついた製品。これを使うと一脚とアクリル板を繋いで固定しながら自由に角度をつけて撮影ができるようになったのです。

ボケと距離を考える


アクリル板を使っての撮影でもう一つ考慮しなければいけないのは、映り込みをどの程度ボカすかということです。そのためにはいくつかの要素をコントロールしなければいけません。

まず一つ目は映り込みがどの程度はっきり出るかという要素です。これは絞りの値を調整することでコントロールします。しかし、同時に考えなければいけないのは対象との距離です。

この撮影のスタイルの場合、被写体と写り込みの風景、この二つの対象が存在します。これがどちらも同じ程度の距離だった場合、被写体にピントを合わせるという事は同時に映り込みの風景にピントを合わせることになり、ボケにくくなる訳です。

Model : Sayu
Instagram : @sayu_watanabe

映り込みの限界

この撮影を続けるうちに、ハウススタジオを使う事が多くなってきました。しかし当時使っていたハウススタジオは棚や机、椅子などがあまりなく、壁や天井が白という所だったのでアクリルに映り込む物がほとんどないのです。反射越しに撮影する事に限界を感じ始め、他の方法はないかと考え始めました。

ミストグラデーション

その時に見つけたのがLEEというフィルター会社のミストグラデーションフィルターでした。

これはミスト系のフィルターですが、名前の通りグラデーションがかかっています。そのグラデーションをホルダーの回転とフィルター自体をスライドさせることで、ミストの効果がどの方向へ強くなってくるかをコントロールする事ができます。

このフィルターを使うときのポイントですが、個人的には光が差し込む方向、もしくは画面に映っている窓のある位置に対してミストの効果が強くなるように調整すると差し込んだ光によるフレアが起こったような感じになります。

また、写したくない背景をミストによって隠すということもやり方の一つと言えます。他にも何もない壁でもこの効果をいれる事で強い光が差し込んでいるような効果をつける事ができます。

また敢えてホルダーには装着せず手持ちにして、レンズとの距離を少しだけ離して少し映り込みを入れて撮影するというやり方も試していました。

ホルダーは2枚フィルターを装着できるので違う効果のものを重ねる事も可能です。

Model : Trish
Instagram : @trish_davis9

まとめ

  • アクリル板を用いて幻想的な光を演出
  • 撮影時にはアクリル板はフレキシブルアームなどで固定する
  • 写り込みのボケ具合は絞りでコントロールできる
  • 被写体と映り込む背景の距離を注意する
  • 写り込みがいまいちならミストグラデーションを使用
  • 光源の方向にミスト効果を強くかける

フィルターと共に幅広い作品づくりへ

いかがだったでしょうか。アクリル板の写り込みを用いた作品はとても幻想的な写りをするので、是非とも実践していただきたい手法の一つです。またこれがきっかけになって他のフィルターや写り込みなどへもアプローチしていくと、作品作りの幅が一層広がって、楽しい写真ライフを過ごせるのではないでしょうか。

今回この記事で紹介したものは数あるフィルターの中のほんの一部に過ぎませんが、少しでもご興味いただければ幸いに思います。

展示情報

今回、記事の中で紹介した「re-flection」シリーズの作品を展示する運びとなりました。このチュートリアル記事を読んで、少しでも「re-flection」シリーズの作品に興味をお持ちになった方は、是非お越しください。

展示 : 小林修士写真展「re-flection」
日時 : 2月28日(金) – 3月8日(日) 13:00-19:00
場所 : 神保町画廊
住所 : 東京都千代田区神田神保町1-41-7安野ビル1階
電話 : 03-3295-1160

小林修士写真展「re-flection」

記事中に登場した機材はこちら

DINKUM clamp-to-clamp

ミストグラデーションフィルター

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