こんにちは、フォトグラファーの岩田量自(@Blueeeees)です。
以前書いた記事ではスナップ撮影で意識したい6つの関係性についてご紹介しました。今回は、僕がそれらの関係性を意識して撮影できるようになるまで普段の散歩でコツコツとやっていたことについて、触れていきたいと思います。
スナップ写真をより楽しく!日常を”収集”しながらスキルアップするためのヒント
街に溢れる普段意識しないものを収集する
普段から自分を取り巻く環境やものに対して意識を向けることができると、徐々にそれらを関係付けられるようになってきます。そもそも意識していないものを関係付けることはできないので、まずは様々な要素に対して1つずつ意識を向けて撮影することをオススメします。
撮影するというと少しハードルが高くなってしまうので、収集する感覚で楽しみながら撮ると良いです。
何度もお伝えしたいくらい重要なのが、何か1つの要素に対してだけでも観察の目を持って意識するということ。そうすれば街に溢れる様々なものを相対的に観察の目を持って見ることができ、結果的にそれらを関係付けて撮ることができるようになります。
収集する対象
色んな質の光
まずは写真にはなくてはならない光を集めてみましょう。光を集めることは、影を集めることでもあります。
硬い光、柔らかい光、線的な光、面的な光、点的な光、そしてそれらによって作られる光と影の造形など、歩いていて見つけたものを撮ってみて、なぜそのような光や影が作られているのか考えましょう。直射日光なのか、ビルのガラスに反射した光なのか、何かを透過して来た光なのか、その光が作られた原因が分かればスナップ写真の時にも応用が効きます。
例えば、雲がない日中だと硬い光で影のエッジが強く出ることに改めて気付いたりします。
また、壁と被写体の距離の関係で手すりの影はくっきり出ているのに、スポットライトの影のエッジが柔らかくなっていることも写真から気付くことができます。
なんとなく分かっているつもりだったり言われれば分かることと、身についていることにはギャップがあるもので、自分で撮ったものを見返して分析することがとても重要です。
後ろの壁には光が当たっていなくて道路標識にだけ光が当たっているから際立って見える。ということは、街中でポートレート撮影する時にも使えるぞっ!みたいな気付きになったりします。
スナップでは35mmや28mのレンズで撮影することが多く情報量が多くなるので、広い画角の中の情報を整えたり関係付けることは難しいので、まずはパッと見て視界に納まる範囲のものから近づいて撮ると良いでしょう。まずは小さな面から始めて、徐々に空間に広げていくイメージです。
普段から光を意識していると光センサーが敏感になり、良い光やアングルを見つけられる(気づく)確率がグッと上がります。
実際に光を意識して撮影したスナップ写真が左の写真です。高架橋の隙間から差し込む光によって柔らかく照らされた歩道を通過する2台の自転車を撮影しました。
右側の自転車には壁から離れているため、光が当たらずシルエットになっていて、左側の自転車は壁に近いので光が当たって姿がはっきり見えています。直射日光でないため、このように柔らかい光になっています。直射日光の場合は右の写真のように光と影のエッジがくっきりと出ます。
普段から光を収集して知識を増やしておけば、このようにスナップ写真でも活かせます。
壁
僕はInstagramを始めたばかりのころ #ザ壁部 というタグを見つけて壁写真の面白さを知ってからはどんな時も良い壁がないかとキョロキョロと探し回っていました。
壁写真を撮りに行くことは壁を狩りに行く、というようにまさに収集する感覚でした。壁写真は平行垂直を揃えたり、大きな面として捉えるのか、要素を減らしてミニマルに捉えるのかなどの画面構成を鍛える良い練習になります。
壁にはそこに作り出される光と影の造形や壁の前の植栽など壁と何かしらの関係性が生じるものがあります。収集した壁写真の中からその関係性が見て取れるはずです。
無意識にできていた関係性も見返すことで認知、記憶、習得レベルまでどんどん高めることができるので、気になったらどんどん収集しましょう。
ガスメーターのついた壁を撮っていた時はどの範囲を写すか、ガスメーターをどの程度の大きさに写すのかなどを考えていました。
画面全体に対しての被写体の大きさのバランスを調整する訓練になり、普段の撮影でも活かされていると感じます。今でも時々ふと撮りたくなる瞬間があります(笑)
これは手前の木と奥の木の形が似ていて「モノマネ」しているようで面白かったので撮った一枚です。実像→影→実像→影という前後のリズムによって面白さが増しています。
壁ギリギリに植木が置いてあるので、影がほとんど見えず、隣にカーブミラーの影が投影されていて、実像と影の形が全く違うので面白く感じて撮った1枚です。街には至る所に壁があるので、ぜひ壁写真を収集してみて下さい。自分が好きな壁の傾向などが徐々に分かってきて、壁に対する嗅覚も鋭くなります(笑)
実際にスナップで壁を絡めて撮る際、壁から距離をとって、どの程度の範囲を画角に入れるか、人とのスケールのバランスは良いか等を考えて撮りましょう。僕は建物のスケール感を出したいので、人は小さめに写すことが多いです。
違和感を覚えるもの
違和感を覚えるもの=自分らしさなので、数多く収集して見返してみると今まで気づかなかった自分なりのモノの捉え方が見えてくると思います。
まずはじめに、何か楽しみながら収集できるものを1つ見つけましょう。
例えば看板に書かれているいろんなフォントを集めるとか、みうらじゅんのように街中の看板の文字だけで般若心経を完成させる「アウトドア般若心経」をやってみたり、落ちている手袋だけを集めてみたり、地面の隙間から生えてきている雑草を集めたりとなんでも良いので、興味を持てるものを見つけて収集してみて下さい。住宅街などに多く貼られている政治家のポスターも僕が収集しているモノの1つです。
壁一面に貼られた政治家のポスターの中にこっそりと葬儀社のポスターが紛れ込んでいたり、植栽の中に隠れていて肝心の名前が見えなかったりと、思わずツッコミたくなるようなポスターを探しては撮っています。
渋谷ではグラフティと政治家のポスターどちらが景観を損ねているのか、分からなくなりました。
壁のコーナーに無理やり貼られていたり、壁面で熾烈な戦いが切り広げられていたりと探してみると面白いモノが意外と見つかるものです。
その他にも、玄関先に並べられた植木やプランターによって作り出される玄関先の風景も収集しています。緑を欲する人間の本能が玄関先の植木として表に出てきて、面白い風景を作り出しているのをよく見かけます。
人が計画せずに、無意識に行った行為がこのような面白い街の風景を作り出すのだと思います。
1枚だけでは決して分からない面白さも、このようにまとめて体系化するとなんとなく面白くなっていきます。
さいごに
収集する対象のまとめポイント
- 色んな質の光
- 壁
- 違和感を覚えるもの
いかがでしたでしょうか。
タイポロジー的な視点で街の断片を取集することを続けると、前回の記事でもお伝えした観察の目が養われますので、ぜひ楽しみながら収集してみて下さい!