結婚写真の世界。フォトウェディング文化の立役者である STUDIO AQUA 代表 水間寿也× 黒田明臣 対談 | 写真と生きる

大切な写真を残すことには意味がある。あくなき挑戦を続けるブライダル業界の雄、株式会社 Decollte Photography STUDIO AQUA 代表取締役社長水間寿也氏とヒーコ黒田明臣氏の対談を引き続きお送りします。

ビジネスとアーティストの間で揺れるフォトグラファー心理と革新を続けるSTUDIO AQUAのこれからの展望まで触れていきます。

マネージャーとプレイヤー。二つの顔を持つ男 STUDIO AQUA水間寿也× 黒田明臣 対談

前回の対談はこちら

写真家とマネージャーとしての顔

[黒田]

職業フォトグラファーとして、業務に徹している方も中にはいると思うのですが、フォトグラファーというのは元来エゴイスティックというか、主張のはげしい側面があると思っていて。そういった傾向は実際にありますか?(笑)

フォトグラファーとしての個性をなくしていく従来の写真館のようなスタイルと、アーティストとしてのフォトグラファースタイルの狭間で苦労されている部分もあるのではないかと推測しています。

アーティスティックにするにしても自分の作品にしすぎても難しいじゃないですか。そこで苦労されてたりはしますか?

[水間]

ありますね。それは凄くあります。

やっぱり職業と割り切っていると言えばドライに聞こえますが、うちのカメラマンでも写真は大好きで写真を撮っている時間は凄く楽しい、ただプライベートでは写真撮りませんという子は結構一杯います。

[黒田]

そうなんですか。

[水間]

僕も実はあまり撮らないので(笑)

でもその子たちは写真が嫌いとかじゃなくてウェディングの写真は大好き、ただ普段遊びに行く際は重い機材は持っていかないみたいな感じですね。

[黒田]

今だと普通にiPhone持っていれば撮れてしまいますもんね。

そういう人はうまく前撮りの撮影とかでも上手く適合できるのかという気はしますね。

でも例えばプライベートでも滅茶苦茶撮っていて自分の世界観全開の人もいるじゃないですか。そういう子は大変じゃないですか?

[水間]

いますね。そういう子は結構悩むんですよ。壁に当たります。

[黒田]

なるほど。

[水間]

どっちのタイプの子もいるんですよね。仕事と割り切っている子はなんでもソツなくこなしちゃうけど探究心というか研究心に欠ける部分はあります。

反対にアート志向の子は探究心は凄く強いんですけど日々の業務ちゃんとせぇって感じですね(笑)

[黒田]

それ滅茶苦茶想像できますね(笑)

[水間]

大体そのパターンですね(笑)

そして前者のソツなくこなす子は女の子でパッション先行の子が男の子です(笑)

[黒田]

結構2分化しているんですね。

[水間]

そうなんですよ。「数字を作る女の子」と「夢を追う男の子」ですね。

[黒田]

わかります(笑)

でもそれ組織としては面白いかもしれないですね、両方いて。

それが多分意図してかはわからないですけれど、結果的にお客さんに対してバリュエーションの提案にもなるのかなと思いますし、実際に撮ってもらいたい人からしてみると個性が出て選択肢が増えて誰にしようか選べるというのはいいですね。

[水間]

そうですね、なのでそのアート志向の子たちには自分を指名してくださったお客さんに自分の作風を出すのはいいけど自分を指名していないお客さんにはそんなに作風を出すというよりもお客さんにちゃんとヒアリングしてお客さんの撮りたいもの撮らないとダメですよとは言っています。

お客さんは貴方の作品のモデルじゃないですよということですね。

[黒田]

本当そこだと思います。なるほど。

[水間]

結構押し付けがちになってしまうので。

[黒田]

そうですよね、フォトグラファーってそういうエゴイスティックな面がありますものね(笑)

[水間]

「貴方は作家じゃないよ。」というのは結構よく言います。

[黒田]

プロなんだよということですね(笑)

広告撮影なんかでも作品的な面、自分がディレクションできる面もあればカンプがすでにあって、これよろしくという時もあるじゃないですか。

そこが面白いところでもあると思っているんですが。

[水間]

そうですね。

[黒田]

プロ意識と作家意識というバランスを上手くとっていかないといけないなと自分がやっていて感じるので、その話は凄くわかりますね。

そこを多分水間さん自身が今までの広告の経験とかもあってフォトグラファーとしてのマインドもわかるということで、お客さんは貴方の作品じゃないよと言えたり、コントロールができているのが良い作用になっているんじゃないかなと感じます。

[水間]

そうですね、会社も大きくなってきたけれど、なんとか監督していますね。

[黒田]

ただその、イズムというかフィロソフィーは受け継がれているのかなと思いますけどね。

[水間]

受け継がれていると思います。それは感じていますね。

[黒田]

側から見ていると何人かSTUDIO AQUAさんにも自分の知人でいるんですが、そこは理解されている気はしますね。

[水間]

嬉しいです。

[黒田]

これからも受け継がれて欲しいですね。

フォトグラファーとマネージャーの間で

[黒田]

水間さんは、ご自身もトップフォトグラファーとして社内でプレイヤーとして活動しながらマネジメントもされていると思うのですが、そのあたりの得手不得手もそうですし、心境の変化とか、あとはずっとプレイヤーでいたいとかの思いはありますか?

[水間]

正直そんなに毎日撮りたいとは思わないたちなので。

[黒田]

元々そうということですか?

[水間]

元々そうですね(笑)

[黒田]

プライベートで撮らないって言ってましたもんね(笑)

[水間]

そうですね(笑)

結構僕、今の仕事も好きです。色んな新しいこと考えて企画したりとかは好きなので。

結構対外的に色んな人と会えるのも楽しいと思ってますね。それはそれで楽しんでいます。

でもたまにお客さんに指名を頂戴して撮りに行くとそれはそれで楽しいので、全く撮らなくなるのはよくないだろうなとは思っています。

[黒田]

ではそこはある程度やりつつということなんですね。

[水間]

でないと言うことも聞いてくれなくなるでしょうしね(笑)

[黒田]

下の子たちが(笑)

[水間]

そうです(笑)

「あれ、写真撮れるんですか?」くらい言われる立ち位置になってもいいなとは思ってますけどね(笑)

[黒田]

あの人昔写真撮ってたらしいよって言われたりとか(笑)

[水間]

そうそう、それでちょっと口だして(笑)

[黒田]

(笑)それ無茶苦茶面白いですね。

そう考えるとどっちも天職というか、楽しんで仕事できているんですね、それは素晴らしいですね。

そうなるというのは想像していましたか?なるようになったという感じなんですか?

[水間]

僕元々カメラマン志望じゃなかったんですよ。どちらかというとディレクターの方が本当はなりたかったんです。

それが写真学校に行ったのがきっかけで写真の世界に入ったので、なんとなく自分の中に当時の嗜好はあるんじゃないかな。

[黒田]

ああでもそれはマッチしますね。今やられていることは結構ディレクションに近い部分があると思うので。

[水間]

大阪のスタジオとかに入った時は、え、なんでカメラマンは会議にでないの?と感じました。

企画の会議と、打ち合わせに行かないで撮るの?と漠然とですが疑問を抱きましたね。まぁそれが普通なんでね、あぁそういう世界なんだとは思いましたね。

純粋に行った方がもっといいもの撮れるんじゃないかとは感じていましたね。

[黒田]

それはかなりありますね。

[水間]

職人でしたね、カメラマンが。僕が思っていたよりもカメラマンは職人の世界でした。

ブライダルの方がある種クリエィティブかも。

[黒田]

それはあると思いますね。

どのアウトプットでもクリエイティブな上流の工程ってあるじゃないですか。業種によってはそれはアートディレクターの方が行う領域であったりとかしますよね。

[水間]

そうですね。

[黒田]

デザイン会社さんがやっていたりして、カメラマンが末端にいると結構本当降りてくるだけですよね。

[水間]

そうですよね。

それに対して写真で表現する。まぁいわば職人ですよね。

[黒田]

その点ウェディングとか特に前撮りはクリエィティブ要素、ディレクター要素というのはカメラマンが全て持っていますもんね。

[水間]

そうですね、規模は凄く小さいんですがそういうことですね。

凄くクリエィティブだなとはやって一番感じました。あ、面白いなと。提案も自分からお客さんにしますし。

[黒田]

確かにそうですね、だから前撮りとかを撮られているカメラマンの方は実際の商業の世界に入ってみるとあれ、ちょっと違うんだけどなとか幻滅するポイントはあるんじゃないかなと思いますね。

ウェディング、特に前撮りでいうとフォトグラファーが自分の理想としている工程を全部自分の責任でできるというのは面白いでしょうね。

[水間]

それは凄く思いましたね。よっぽどクリエイティブだなこっちの方がと。

だから結構楽しかったですね。

[黒田]

そう思います、単純にハウススタジオとか借りてもここから光入ってこういうライティングしてとか考えるのは楽しいじゃないですか。

こういうスタジオがあって撮る人の顔が分かっていればこうやって撮ろうかなとか考えるでしょうし。

[水間]

そうですね、小道具とかも自分たちで準備しますし。今いるこのスタジオも自分たちで内装とか考えたんですよ。

プライベートでお店に行っても床材とか滅茶苦茶見ます(笑)

[黒田]

なるほど、デザインとか(笑)

[水間]

そうです。Pinterestとかもよく見てますね、だから”店舗デザイン”とか沢山入っています(笑)

[黒田]

Pinterestって優秀すぎますよね(笑)わかります。

[水間]

そういうのは楽しいですね。

[黒田]

そうですよね、勿論お客さんもそういうクリエィティブな要素の中に入りたいって思うでしょうし。

フォトグラファーが結構行き着くところな気はしますね。

[水間]

そこまでするのが好きな人は凄く向いていると思います。

[黒田]

確かにそうですね。

そしてお客さんにも目の前で喜んでもらったりとか。

[水間]

そうですね、レスポンスが早いです本当に。

[黒田]

広告撮っててもわからないですもんね(笑)

[水間]

ありがとうって言われないですからね(笑)

[黒田]

なんならクライアントのフロントの人にちょっと言われてメールで飛んでくるくらいですもんね(笑)

”評判良かったです”みたいな感じで。

[水間]

手紙とかも貰いますし、貰うと嬉しいんですよね。

[黒田]

それはいいですね。

[水間]

”本当に撮って良かったです”とか”撮りに行くまではそんな写真いらないと思っていたけど撮って良かったです”とか貰うと嬉しいですね。勿論スタッフ皆貰っていますし、それが一番の醍醐味ですよね。

[黒田]

貢献できている感じがしますよね。

[水間]

泣いてくれたりもするわけですから。その一枚の写真で。

[黒田]

感動を与えられるって素晴らしいことですよね。間違いないですね。

[水間]

いや本当にそうですね。

写真を残すことの意味について

[黒田]

今もうデジタルの時代になってから長いですが、それが世の中に浸透するのって相当な時間を要するじゃないですか。

ようやくこのパソコンだったりとかディスプレイを我々がイージーに見れるようになってきて思い出を振り返りやすくなっているなと感じていて、そうなった時に写真を残すということがわりと当たり前になってきているといいますか。

[水間]

そうですね。

[黒田]

Instagramで食べた料理を撮るとかも結局同じことだと思いますし。そこをより美しく、クリエイターだったりとか世界観がある人たちの手で残すということをやっているわけじゃないですか。

それを残す方法が写真という手法なのかはわかりませんが、残すことの意味をどういう風に捉えているのかというところと、前撮りを悩んでいる人たちに向けて何かありますか?

[水間]

そうですね、そうはいってもずっとアルバムを売っていきたいと思っています。

デジタル、データという時代になっていますけれどね。凄くアルバムはオススメしています。

紙で見て欲しい、形として残したいというのはコンセプトとしてありますね。

[黒田]

そうですね、デジタルで残すというよりも、より残すことの大切さに我々が再確認した時に紙としてだったり、有形のものとして残るということがよりフォーカスされてくるのかなと思います。

[水間]

そうだと思います。

そういう意味でいうと震災はかなり大きいと思いますね。

これは震災に限らずですが、家に災害を受けた人が家に戻ってきてまず探すのがアルバムらしいです。思い出がなくなっちゃいますからね。

[黒田]

たしかにそうですね。なくなったらきついですよね。

[水間]

そうなんですよ。だから結婚式って幸せな時間でしょう。意外にそういう時ってその写真がいかに重要かあんまりわからないんですよ。その時楽しいですし。

でも10年20年経った後にもしその写真が1枚もなかったら大分寂しいと思います。

そこに気付くのって先の話なんですよね。

[黒田]

たしかにそうですね。なんでしょう、保険じゃないですが(笑)

やっとかないとみたいな部分はありますね(笑)

[水間]

だからそう、何かしら残した方がいいと思いますね。

[黒田]

紙とか。そうですね。

本当に結婚して思い出の写真もなかったら相当きついですよね。いや確かに、残しておいたほうがいいですね。

今後のSTUDIO AQUA

[黒田]

現在の店舗は全国網羅されているんですか?

[水間]

主要都市は店を出していますね。

[黒田]

今後も展開されていく予定はあるんですか?

[水間]

展開しますね。とりあえず東京近郊はもう少し増やそうとしています。

本当はもっと地方にも目を向けたいんですよね、店を出すとなるときついかもしれませんが。

[黒田]

出張等でしょうか。

[水間]

出張とか、旅とかですね。

日本って絶景一杯あるじゃないですか。

[黒田]

本当そうですよね。絶景だらけだと思います。

[水間]

地方の人はもっと来て欲しいと考えているんですよ。海外の人にも来て欲しいし。そうなってくると僕たちの写真って凄く相性がいいと思うので。

そういう地方と協力しながら、絶景で写真撮ったりできたらいいなと思っています。そうしたらその写真を撮った場所が思い出の場所になるわけじゃないですか。

[黒田]

そうですね。

[水間]

たとえその時初めて行った場所であったとしても思い出の場所になる。そうしたら子供ができ、1周年とか2周年記念の時にまた行こうとなるじゃないですか。

[黒田]

たしかに。そしてここでこういうの撮ったんだよとか、楽しそうですね。

[水間]

そうなったら地方の人も喜びますよね、もう1回来てくれますから。そういう人が一杯増えれば街も潤いますし。

[黒田]

活性化に繋がりそうですね。

[水間]

日本の中のアナザースカイ計画です(笑)

[黒田]

(笑)

アナザースカイ計画いいですね。

[水間]

第二の故郷をどんどん作るという計画です(笑)

[黒田]

写真で作っていくということですね。

[水間]

それは地方の人にとっていいんじゃないかなと。

[黒田]

なるほど、地方再生とブライダルという組み合わせはいいですね、関わる人全員がハッピーになるような試みだと思います。

これからもSTUDIO AQUAさんには独自の視点から新しい試みを繰り返し写真サービス業の新時代を開拓し続けていただきたいです。

本日はありがとうございました!

[水間]

ありがとうございました!

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プロフィール

水間寿也

株式会社Decollte Photography代表取締役社長
大学卒業後、写真専門学校、印刷会社 フォト事業部、アシスタントを経てカメラマン、個人事務所、西 弘志氏師事、デコルテ代表と知り合いウェディングカメラマンに転向、スタジオ事業部立ち上げに関わり現在に至る

クレジット

制作 出張写真撮影・デザイン制作 ヒーコ http://xico.photo/
カバー写真 黒田明臣
出演 水間 寿也
Biz Life Style Magazine https://www.biz-s.jp/tokyo-kanagawa/topics/topics_cat/artsculture/

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