キャンパスの写真家たちに迫る!早稲田大学写真部の展示から読み取る、プロカメラマンが感じた学生写真の「いま」

早稲田大学写真部の写真展「春季展」での写真作品への想いやテーマについて、ヒーコでも人気のフォトグラファー浅岡省一(@shoichi_asaoka)氏と賑やかし担当ヒーコスタッフのすーちゃん(@iamnildotcom)が見て・感じて・聞いた内容をお届けします。

キャンパスの写真家たちに迫る!早稲田大学写真部の展示から読み取る、学生写真の「いま」

新企画

写真部で活動している学生の方々にフォーカスした新企画「キャンパスの写真家たち」始動!

ヒーコ主催、プロ・アマ問わず楽しく自由に写真を撮って学校などで活動しているフォトグラファー独自の写真論や知識、写真への「想い」や写真を楽しむ方々の「今」をヒーコメンバーがレポート・対談形式で幅広く特集します。

その第一回目として、今回は早稲田大学写真部「春季展」での作品にフォーカスし、学生がどう写真と向き合っているのかを聞いていきました。

今回のインタビュアー

浅岡省一

浅岡省一(@shoichi_asaoka)。人物や商品等の広告撮影を得意とするプロフォトグラファー。夕景/夜景/雨景とモデルを絡めた作品撮りを行っており、独特の感性で光と空気感を表現する写真は多くのファンを魅了する。カメラ雑誌への寄稿や書籍の執筆、セミナー講師など守備範囲は多彩。お菓子と甘いモノ大好き。

すーちゃん

すーちゃん(@iamnildotcom)。XICOの賑やかし担当スタッフ。カメラマンとして生きていくべく日々修行中。四六時中食べ物の事を考えている自称少食のフードファイター。

「春季展」到着!

[浅岡]

さて今回はヒーコ初の試み、学生写真部の「今」を探っていこうって事で、早稲田大学写真部の展示会「春季展」に…すーちゃんが道間違えたりしたけど、ようやく到着しました!

[すーちゃん]

長い道のりでしたね…!お疲れ様でした!!!

[浅岡]

お疲れ!っていやいや、ここからだから(笑)

きっとあそこに居るのが学生写真部の子達かな?こんにちはー!

出迎えてくれた早稲田大学写真部の方々。
[松本]

ようこそ、早稲田大学写真部へ!幹事長の松本です。よろしくお願いします。

早稲田大学写真部 幹事長:松本 雛氏
[浅岡]

浅岡です。よろしくお願いします。展示されている写真についてや、皆さんの写真への想いなんかを聞いていけたらと思います。

[松本]

はい!

[すーちゃん]

すーです!よろしくお願いしますー!

展示のテーマ

[松本]

まず、展示のテーマについてはこちらのステートメントに書いています!

“この展示は、当部の定期写真展の中で毎年最初に開催するものです。「春」と銘打っておりますが、今年もひとつのテーマに絞られてはおりません。形態や雰囲気などがそれぞれ異なる、様々な作品がございます。その一瞬に何かを感じ、シャッターを切る。部員たちが思いを込め、試行錯誤しながら生み出したひとつひとつの個性ある作品をぜひご覧ください。そしてその中で、皆様のお気に入りが見つかりますことを祈っております。”(早稲田大学写真部「春季展」ステートメント一部抜粋)

※本展示の開催期間は終了しております。

[浅岡]

なるほど、ひとつのテーマに絞らず各々自由に撮影した作品なんだね。

作品について

越冬のマーチ

Photo.松本 雛
[浅岡]

この写真良いね。

[すーちゃん]

桜の花びらが手のひらから散ってゆく様が素敵ですね!

[松本]

あ、それは私の作品です(笑) ありがとうございます!

[浅岡]

へえ〜!この真ん中に書いてある「越冬のマーチ」とはどんな意味なんですか?

[松本]

この組み写真のタイトルが「越冬のマーチ」なのですが、春季展ということで視覚的に冬から春への変化を表現してみました。次の季節を待ち遠しく思ったり、移り替わってしまうと、前の季節を懐かしく思う気持ちを表現しています。

全体は左:冬、右:春となっていて、互いに一枚ずつ季節の違う写真が入っているのはそのためです。「越冬のマーチ」というキャプションは好きなアーティストのアルバムから着想を得ました。

[浅岡]

確かに、写真からどこか懐かしさを感じますね。

[松本]

それは良かったです!見る人の感情とリンクすればよいと思って常に作品を作っています。

[すーちゃん]

雰囲気が今時というか、お洒落!

[浅岡]

この作品のお気に入りポイントや反省点なんかはあったりしますか?

[松本]

反省点は、私は撮影した写真から「セレクト」をしていく作業が多いため、今回の展示のために撮り下ろしたものがほとんどない点です。テーマ性を決めてから作品撮影という流れを踏んで作品を作りたいという気持ちがあって…。

気に入っている点はサイズなど組写真としてまとまりがある点ですね。

[浅岡]

なるほど。偶然撮れたものではなく、テーマという骨組みをしっかり作ってから撮るという行為に移るのが理想形なんですね。

[すーちゃん]

めっちゃしっかり考えてる。やばい。

[浅岡]

普段からこういう人の心があらわれているような情景を切り取っているんですか?

[松本]

そうですね、こういった展示作品のような情景や、記念写真が多いです。家族や友達の自然体なところとか。

[浅岡]

さっき松本さんのブックが置いてあったので見ましたが、自然な表情でこれは敢えてじゃ撮れないですね、誰でも撮れるものじゃない。

[すーちゃん]

松本さんだから撮れる距離感とか表情を大切にされてるんですね!

[浅岡]

色々聞いていきたいところだけど…他の方の作品についても触れていきます(笑)

スナップ写真

[すーちゃん]

スナップめっちゃうまい人いる。

[浅岡]

ほんとだ。

[松本]

それは、ここに居る髙橋の作品です。

髙橋 正虎氏
[髙橋]

髙橋です。ありがとうございます!

Photo.髙橋 正虎
Photo.髙橋 正虎
[浅岡]

モノクロとカラーでだいぶ違う写真の仕上げ方をしてるね。それぞれ込めている意味が違うんですか?

[髙橋]

人が道を歩いているカラー写真の方は、最近写真を上達させるには色々な人の写真を見て、真似をすることだと思い挑戦しているものの中の一枚です。TwitterやInstagramで見かけた好きな写真家さんの写真の雰囲気を自分なりに作り出してみようと意識して撮影・レタッチを行っています。

モノクロの写真は、ハロウィンの時期に抑圧された日常を過ごしている人たちが普段と異なる衣装で自分を着飾ることで、自分ではない何モノかに変身し自らを解放する数日間の渋谷を切り取った中の一枚です。この日は希薄になっている「ハレとケ」の境を明確化し、非日常を楽しむ日本独自のお祭りとなったように見えました。そうした本来のハロウィンとは大きくかけ離れた乱痴気騒ぎに興じる人の有り様を写し取り、記録したものです。

[浅岡]

じゃあカラーは習作で、モノクロは自分の感じたままに表現しているって事かな?なんとなく、モノクロの荒々しいタッチからカラーもそういう写真の仕上げになりそうなイメージだったのですが、カラーは打って変わって繊細なタッチなので意外でした。

[髙橋]

そうですね、カラーは今試行錯誤してやっています。

[すーちゃん]

(髙橋氏のブックを見ながら)カラー写真好きです!うまいなあ〜。スナップはいつも撮っているんですか?

[髙橋]

ありがとうございます。カメラ始めたての時は下手って言われて、毎日ものすごい量の写真を撮ってなんとか今に至ります(笑) なので、いつもカメラは持ち歩いてますね。あと、カメラでなくiPhoneでも撮ります。

[すーちゃん]

iPhone!!現代っ子!!!!!!!!!※髙橋氏と同い年

iPhoneで撮影したシリーズ
Photo.髙橋 正虎
[髙橋]

この写真は「手にするモノシリーズ」といって、このシリーズは全てiPhoneで撮影した写真で構成しています。入部してくる新人さんや、高いカメラがなく携帯しか持っていない人が「携帯でもこんな写真が撮れるんだ」と思ってくれればと思い作成しました。

[浅岡]

少しでも写真の楽しさを広げられる為にも、写真を撮っているんだね。素晴らしいです。

[すーちゃん]

これからはiPhoneですね!

[浅岡]

いやそういう意味ではないと思うよ(笑)

髙橋さんは結構写真に対してこだわりがあるのかなと思うんですが、もっとこうしたいとかって感じている事はありますか?

[髙橋]

そうですね、カラー写真において最近ローキー現像にハマっており、暗めの写真が多いです。それがモニターやiPhoneで確認した写真と、実際にプリントした時の調子が大きくかけ離れていた点が大いに反省するところです。また、カラーの質感や構図などまだまだだなと感じる部分が多々あります。

[浅岡]

暗い写真は本当、印刷が大変ですよね…(笑) モノクロ写真は何かこだわっている所があるんですか?

[髙橋]

モノクロ写真に関しては全て28mmの単焦点で撮影しているのですが、極力被写体との距離を縮めその人達の一瞬の表情を収められるように撮れたことが気に入っています(モノクロ写真のブックを指しながら)。また、渋谷のスナップではありながらあまり硬調な白黒写真にならないように気をつけましたね。

[浅岡]

なるほどね!良いですね。どんどん上を目指して行って欲しいです。今後写真を仕事にしていこうとかって思ってるんですか?

[髙橋]

それは…今迷っています(笑)

[浅岡]

お、これはまた色々と話が聞けそう(笑)

[すーちゃん]

またおいおい詳しく聞いていきますか!

印象に残った一枚

[すーちゃん]

まだまだ沢山の素敵な展示作品が並んでいました!まとめていくつか抜粋して紹介させていただきます。

作品タイトル:朝
撮影者:笠井 拓実 / 大学2年生
使用カメラ:Nikon D7200
写真に込めた想い:なんの変哲も無い、年に365回訪れる「朝」
気に入った点・反省した点:会期中にパネルが反ってしまったので、次はもっと丈夫な展示にしたいです。
カメラをはじめたきっかけ:親が使わなくなったカメラ(Nikon D40)があったため。

満開の桜

作品タイトル:満開の桜
撮影者:岡内 祐治 / 大学3年生
使用カメラ:PENTAX K-5IIs
写真に込めた想い:この写真は天理教の本部で撮影したものです。見た瞬間に満開の桜が目に飛び込みました。坂口安吾に「桜の森の満開の下」という作品がありますが、そのタイトルからまず連想する光景はまさにこれだと思いました。実際の安吾の作品はこんなほのぼのしたものではないんですが。
気に入った点・反省した点:様々な色の桜が咲いているところがポイントです。また、バックに写る天理教関連のレトロな建物もジブリ作品に出てきそうな雰囲気でかなり気に入りました。
カメラをはじめたきっかけ:元々鉄道が好きで、父が家族用や旅行用として使っていたカメラを鉄道の記録のために使ったこと。

welcome aboard

作品タイトル:welcome aboard
撮影者:樫山 大樹 / 大学3年生
使用カメラ:Nikon D7200
写真に込めた想い:ターミナル駅に佇む夜行列車と鉄道員が醸し出す、ある種荘厳な空気感を伝えたいという思いでタイトルをつけました。
気に入った点・反省した点:右上から差し込んでくる光には個人的に満足しています。ややアンダー目に撮ってしまい、印刷する段になって少し苦労したので、そこが反省点です。
カメラをはじめたきっかけ:祖母の持っていたカメラを触らせてもらったこと。

春の誘い

作品タイトル:春の誘い
撮影者:星野 雄飛 / 大学2年生
使用カメラ:Nikon D7000
写真に込めた想い:写真から音が聞こえてくるような世界観を作ろうと思って撮りました。
気に入った点・反省した点:街灯に照らされた桜の色や空の色、警報機の赤色など作品全体の雰囲気はうまく表現できましたが、星のコンポジットの精度を上げられたらもっと良かったと反省しています。
カメラをはじめたきっかけ:元々鉄道に乗るのが好きだったのですが、飽きてしまって今度は撮ってみようと思いはじめました。
[浅岡]

全体的にスナップ写真と、風景写真が多かったね。ポートレートがほとんどいなかったのが意外です。

[すーちゃん]

ですね!皆さんそれぞれ写真が好きな気持ちが伝わってくるような作品ですね〜!

写真部について

[すーちゃん]

大学の写真展って普段あまり見る機会がなかったので新鮮です!皆さんの本気度がとても伝わってきました!ところで、気になったのですが「カメラ」とか「印刷」とかって自費でやってるんですか?

[松本]

うちの部では、カメラの貸し出しはありません!なのでカメラとレンズは私物です。もちろん私物同士の貸し借りはありますが。もしかしたら他の大学と比べてカメラが無いのは珍しいかもしれません。ちなみに、「プリンター」はあるので、あまり大きすぎないサイズであれば印刷は部のプリンターを使っています。

あと、部室にPCもあるので、部室で写真を現像する人もいますね。髙橋はよく使ってます(笑)

[髙橋]

もはや定位置になりつつありますね(笑)

[すーちゃん]

部室で印刷し放題なのはとても良いですね!いっぱい試せる(笑) カメラも部のみんなで貸し借りできるなら良いですね〜^^

[浅岡]

カメラや機材とかの情報源ってどこから得てるんですか?

[松本]

それは私の場合あまり機材に興味がないので、部室で機材に詳しい部員が喋っているのを聞いてそうなんだ〜って知る感じです(笑) ほとんど部員から聞きますね。

[髙橋]

僕はひたすら作例サイト見ますね。人の作品を参考にカメラやレンズを選びます。

[浅岡]

なるほどなるほど。

[松本]

よかったら部室見ますか?結構内装が面白いです。

[すーちゃん]

面白い!?いきます!

[浅岡]

すーちゃん落ち着いて(笑) そしたら連載二回目のほうで部室にお邪魔させて頂こうかなと!引き続きよろしくお願いします。

[すーちゃん]

楽しみ〜!写真部についてもっと根掘り葉掘り聞いていきますね!よろしくお願いします!

[松本]

こちらこそよろしくお願いします。お待ちしておりますね^^

展示風景

[すーちゃん]

展示風景を少しだけおすそ分け!心地の良い静けさの中、来場者の方々が真剣に写真を見ていました♫

展示参加者一覧

星野 雄飛/笠井 拓実/樫山 大樹/岡内 祐治/松本 雛/A.T/H.M/Go Ito/井上 さや/森 隆慶/T.I/髙橋 正虎

松本 雛

松本 雛。早稲田大学写真部 幹事長を務める。一枚一枚を丁寧に撮ることを大事にしている。使用するカメラは【デジタル】CanonEOS6D【フィルム】Nikon F4,Pentax SP,Autoboy,OLYMPUSPENEE3など、撮影によって使い分けている。空を撮った写真を中学の友達に褒められてからカメラをはじめる。

髙橋 正虎

髙橋 正虎。早稲田大学4年生。写真部所属。神奈川県から学校までの通学路でも欠かさずカメラを持ち歩きスナップ写真を撮り歩く毎日。使用するカメラはSONY α7R II ILCE-7RM2。花と夕焼けが撮りたくてカメラをはじめる。

Instagram:@faucontiger

写真部の活動内容

早稲田大学写真部 公式サイト

早稲田大学写真部 公式サイトはこちらから!

早稲田大学写真部 公式サイト

Twitter(@wphoto101)でも活動を発信されています♫

今回のまとめ

  • 早稲田大学写真部では、カメラに制限は無く、デジタルカメラ・フィルムカメラ・iPhone全てに積極的
  • 部の中でも機材の情報交換をしている
  • 機材の知識関係なく、部の皆が写真を楽しんでいる
  • 色んな写真のジャンルを、皆が認め合っている印象
  • 部室が面白いらしい

最後に

[すーちゃん]

今回は早稲田大学写真部の展示の中でも小さい規模のものだったみたいですが、とても刺激を受けました!皆さんそれぞれ、写真にとても真剣に取り組んでましたね!

[浅岡]

そうだね〜。ちゃんと部活で後輩を育てていこうとか、写真の楽しさを広めたい!って気持ちで活動してるのが伝わってきたね。

[すーちゃん]

今回紹介しきれなかった事や人も次回では紹介していきたいですね!

おまけ

[すーちゃん]

早稲田大学近くのたい焼き屋さん、ここのたい焼き美味しい!

[浅岡]

油断すると火傷します(笑)

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