フォトグラファーこそ知っておきたい撮影にヘアメイクが大切な理由。

「大男が言った。穏やかな物言いだったが、奇妙な威圧感が空気を震わせた。」これは伊坂幸太郎さんのグラスホッパーという小説に出てくる一節です。以前同じようなことを誰かに言われたことがあるような気がしていたのですが、よくよく思い出すと「大男」というだけでした。自分でビックり鈴木悠介(@monocolors_)です。よろしくお願いします。

今回は私がフォトコーディネートで気をつけているヘアメイクを取り上げていきたいと思います。

はじめに

撮りたいイメージを実現するためのエッセンス

撮影でヘアメイクといわれると、「ちょっと苦手かも」と感じる方ももしかしたら多いのかもしれません。いきなり大男がカミソリのようにヘアメイクを語り出すのか?といわれると、そうではありません(笑)。モデルさんにヘアメイクをするわけでもありませんし、専門的なことまではわかっていません。

ただ、自分自身のイメージを再現するためには、ヘアメイクもとても大切な要素ということはわかっています。ヘアメイクに苦手意識を持たず、興味を持って取り扱うということが大事な気がしています。今回の記事では、大男がヘアメイクを敬遠することなく、そろりアプローチした自分なりの取り入れ方をお話できたらと思っています。

フォトグラファーこそ知っておきたい撮影にヘアメイクが大切な理由。

私の作品とヘアメイクの関係性

私は先述したフォトコーディネートという写真を構成する要素を分解して体系的にイメージを再現する考え方で撮影をしています。例えば、光と影、色、衣装・小物、ロケーション、被写体・ポージングなどといったものがその要素の代表例となるわけですが、おそらくこうしたことは、皆さんも撮影となると自然に考えていることではないでしょうか。私はそこに重点を置いているといった感じです。

事前にイメージを構築していく上で、どこかミスマッチな要素があったりすると、とても目立ってしまいそこから一気にイメージが崩れたりもするので、要素の一つ一つの組み合わせを見極めながらコーディネートしています。

今回のヘアメイクもその要素の一つとして重要視していて、この記事内で掲載してる写真はそうした考えのもとで撮影したものになります。ヘアメイクの詳細が全然分からない写真もあるのですが(汗)。人物を撮っている以上、フォトグラファーとしてもヘアメイクへの見聞を広げたり、その効果を狙って撮影することは、イメージをより具現化することに繋がる大切なことだと感じています。

撮影は事前のイメージ共有から始まっている

私は作品撮りのとき、いつも特定のヘアメイクさんにお願いするようにしています。その方のヘアメイクが好みなのはもちろんですが、私の作品への理解やイメージを共有しやすい関係性であることも、作品の完成度にとても大きな影響があると思っているからです。そして、こと撮影が決まるとヘアメイクの方に基本的には事前に、または現場でヘアメイクのイメージを伝えます。

イメージを伝える際は、まず今回の作品撮りがどういうイメージなのかから話していきます。その上で具体的なイメージを伝えます。例えば、イメージ画像を見てもらってコメントしたりします。相手がどんなイメージか明確に想像できるよう意識しています。

イメージを伝えるときの一例

クール、カワイイを明確に。

例えば、クールorカワイイを明確にします。これを明確にすると、まず大きな方針ができます。また、余談ですが、モデルさんにも事前にイメージを伝えています。表情・ポージングも自然とやりやすくなりますよね。

どんな光で撮影するか

メイクは光によって発色などが変わるため、詳しく説明すると相手にも伝わりやすいです。例えば、鼻筋の光を際立たせたいから、ハイライトの入れ方をイメージによって調整してほしいとお願いすることもあります。

衣装について

衣装は何着か持っていくことが私の撮影の場合多いので、実際にモデルの方の肌の色にあわせたり、会ったときの印象で決定するなど、ヘアメイク前に決めています。

また、ヘアメイク前に着替えておくことも化粧が崩れたりしないよう、また衣装と合わないメイクになってしまったということも回避できるので忘れないでおきたいポイントです。とはいえ、衣装によってかえってシワがついてしまったりということもあるので、その辺りは状況によって柔軟に対応しています。

モデルに対して寄りか引きか、メインとなるイメージについて

被写体に対して、寄り引きなどどういった撮影がメインになるかを伝えています。これを事前に伝えておくことで、例えば、足のあざなどもメイクでカバーするかしないかや、メイクへの時間の入れ方なども変わってきます。

モデルのポージングについて

被写体が止まっていることが多いのか、動くことが多いのか、またはその両方なのかなど、どういったポージングの傾向になるかを伝えます。止まっていることが多いようであれば、ヘアセットが崩れにくいことや、動くことが多いなら多少崩れても良いようなヘアにしようなど、事前に撮影に合わせたヘアメイクがしやすくなると思っています。

また、撮影にも同行してもらっているので、撮影中にヘアメイクさんが注視するポイントを事前に本人に把握してもらっていることも大事にしたいポイントです。

参考イメージを提示する

前述でも少し触れましたが、これはされている方も多いのではないでしょうか。私の場合は、いろんな写真を見せすぎて、どのヘアメイクにすればいいかわからないとかえって混乱させる場合もあるのかなと思っているので、参考イメージはケースにもよりますが、数枚程度なことが多いように感じます。どのポイントが良いと思ったのかも添えておくと華丸です、いや大吉です。

伝える時の注意事項

ここでポイントになってくるのが、一通り話した上でヘアメイクの方の考えを聞いてみるということです。ヘアメイクさんの専門的なフィルターを通して、新たな提案が出たときは、その考えに委ねることも多々あります。作品のイメージを共有でき、信頼している方だからこそできることでもありますよね。

また、わからないことも同様にヘアメイクの方に聞いたりして相談することも強くオススメします。そのほうが自身の勉強にもなります。わからないながらなんとなくこうする!と決めて言い切ってしまうと、それが「指示」となってそのまま実行された場合、相談していた方がより元々のイメージに近づけたということにもなりかねないので伝えるときは注意したいポイントです。

撮影前に伝えておいたほうが良いこと

さきほどヘアメイク前に共有する〜と説明しましたが、当日になってから言っては間に合わないことも多々あります。そういったことは事前に伝えておく必要があると思います。

例えば、現場に来てもらってから、イメージと全く違うヘアメイクや衣装で合流した場合(メイクしてから合流する場合)に、もうそれを解決することは難しい、というような状況もたくさん起こり得ます。

自分ではどうにもできない範囲について

自分の力だけではどうにもできないことがたくさんあります。

  • ヘアメイク、またヘアメイク用品
  • 肌のコンディション
  • メイクや髪の崩れ

 

これらは、事前の共有によってモデル・ヘアメイクの方におこなってもらう準備で100%ではなくとも多少カバーすることが可能です。全く共有なしで当日にあのヘアメイクをやってほしい、この髪型に直してほしいと言った時にそれを叶える材料がないと、おこなうことは難しいですよね。

自分にはコントロールできない範囲にも、事前に共有し協力してもらうことで手が届くようになるので、すべて自分のできる範囲だけにこだわらず一緒に撮影をおこなっていくことを心がけると、作品の幅もより広がることに繋がっていくように感じます。

まとめ

役割分担で、広がる作品

作品作りは、自分で全部やるんだ!という意気込みも大切だと思いますが、こと人物を撮影する場合、確実に一人ではないことも確かなことです。任せるところは任せる、という信頼もまた、作品作りのにはとても大切なように私は思います(もちろん、作風にもよるところではあると思います)。一人では至らなかったパフォーマンスに行き着いて、新たな何かに出会える可能性が高まるかもしれません。

そう考えると、茶碗目一杯の炊きたての白米が、目前の回鍋肉とこれからまさに運命共同体となるあの瞬間、そうして想像を超える感動の味を迎えにいくというシーンに酷似していると、思わず例えたくなってしまいます。大好きです、白米×回鍋肉。

自分ができる範囲を把握するということ

自分の力が発揮できる範囲を把握すると、相手にやってもらいたいことを伝えやすくなると思います。

例えば、自分はフォトグラファーで、撮影知識においてはチームの中で一番あるとします。カメラの使用方法やライティングなど、そこは私に任せてもらう範囲です。一方で、ヘアメイクはどうでしょうか?私に一番知識やスキルがあるかといわれるとそれはNOです。そういったところを冷静に切り分けていくと、自ずと自分で決める部分、相談しながら決めていく部分や委ねる部分などが切り分けられてくると思います。そうして撮影環境を整えていくことが、それぞれの役割に全力で注力できたからこその作品を生むことに繋がるのではないのかと思います。

今回は私のフォトコーディネートにまつわるヘアメイクが大切な理由の紹介でした。事前にイメージするものを撮影することが前提となるお話ではありましたが、何か参考になる点があったらうれしいです。

それではそろそろ誰かが大男と呼びそうな雰囲気がしてならないので今日はここまで。ビックマンゴーズオン。鈴木でした。また。

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