当たり前の日常を、大切なものだと思い出すために。コハラタケル | 写真家の機材

今回「写真家の機材」に登場するのは、写真家のコハラタケル(@takerukohara)さんです。被写体の瞬間を情緒的に切り取るだけでなく、今を懐かしむような視点で表現される写真が特徴のコハラさん。そんなコハラさんに、機材へのこだわりや撮影時の工夫点などについて、仕事としても作家としても活動をされている部分にフォーカスしながら、ヒーコのすーちゃんがインタビュー!

当たり前の日常を、大切なものだと思い出すために。コハラタケル | 写真家の機材

コハラタケル

Instagramでは約2年以上、女性ポートレートを中心に撮影しており、現在フォロワー数は58,000人以上。SNSのネットワークを利用した写真教室や教材販売サービスを運営するCURBONでは、ポートレートの撮影講座や編集講座の動画を全世界へ配信している。

経歴

PIXTADAY2019 古俣賞(社長賞)受賞
FUJIFILM三越展示企画チェキ展にてイメージ写真撮影担当
Adobe blog にて写真講座記事担当
NIKON web メディア「NICO STOP」にて、ポートレート記事連載中

作品紹介

撮影機材

カメラ・レンズ

  • カメラ
    • FUJIFILM GFX 50R
    • FUJIFILM X-Pro2
    • FUJIFILM X-T3
    • FUJIFILM X-T10
  • レンズ
    • FUJINON GF63mmF2.8 R WR
    • FUJINON XF56mmF1.2 R APD
    • FUJINON XF35mmF1.4 R
    • FUJINON XF16mmF1.4 R WR
    • FUJINON XF35mmF2 R WR
    • Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 SC

撮影機材について

富士フイルムの色が好き

[すーちゃん]

それではコハラさん、よろしくお願いします!コハラさんはいつもどんなカメラで撮っているんですか?

[コハラタケル]

使っているのは主に富士フイルムのX-Pro2とX-T3です。これが作品撮りのメインのカメラで、同じく富士フイルムのX-T10というカメラも使っています。それらに合わせて仕事用としてGFX-50Rを使っています。

なぜ4台も富士フイルムのカメラを持っているかというと富士フイルムの色が好きだからです!何気ない写真でもVSCOフィルムと合わせたときの色がそもそもキレイで気に入ってます。編集の色ノリがいいって僕はいつも言うんですけど、それが富士フイルムの色が好きな理由の1つですね。

あとは富士フイルムのカメラにはフィルムシミュレーションという機能が内蔵されてるので、これもポイントが高いです。僕の場合はクラシッククロームっていうちょっと彩度が落ち着いたものをよく使っているんですけど、撮って出しの色が本当に綺麗なんですよね。撮って出しの色って液晶に出るので、それが綺麗だとテンション上がります!撮影のリズムを良くしてくれる効果といいますか、そういった気持ちを盛り上げてくれるような効果をカメラに求めてるっていうのはありますね。

[すーちゃん]

フィルムシミュレーション、初めて知りましたが良い機能ですね!撮影時のテンションは、メチャクチャ上がりますし、モデルの方にも影響するものだと思います。RAW現像する方は撮って出しが完成の絵ではありませんし、簡易的にでもそういった風にできると、完成のイメージの補助となって自分にも共有するにも良さそうです!

レンズによる表現の変化

[すーちゃん]

使っているレンズもやっぱり富士フイルムなんでしょうか?

[コハラタケル]

使用頻度の高いレンズは、富士フィルムの純正レンズXF35mmF1.4 R、XF16mmF1.4 R WR、GF63mmF2.8 R WRですね。その他、Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 SCもよく使っています。

それぞれ使用するレンズとカメラの組み合わせはこんな感じです。

X-Pro2 × XF35mmF1.4 R
X-T3 × XF16mmF1.4 R WR
GFX-50R × GF63mmF2.8 R WR
X-T10 × Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 SC
[コハラタケル]

僕は、日常的な雰囲気を自分の作品に求めているので、このXF16mmF1.4 R WRレンズを使うようにしています。ただ、1回の撮影で日常っぽい写真と、ある程度ボケも生かしたような絵作りもしたいところもあって、XF35mmF1.4 Rも使うようにしてて、この2つのレンズをつけて2台持ちで撮影しています。そして、この焦点距離16mmと35mmっていうのが僕が撮りたいイメージにとても重要で、こだわりを持っている部分なんです。

例えば、僕は街中で撮ることが多いんですが、モデルさんと2人並んで街を歩いているとします。そこにちょっと可愛らしいお店があったとして「それを背景にしてモデルさんを撮りたい」ってなったときに、極端な話ですが望遠レンズを付けている場合だと、モデルさんと並んで歩いていて、良い場所を見つけてそこに立って欲しいって言ってから、カメラを構えてシャッターを切るまでの時間が望遠であればあるほど長くなってしまう。それだと、撮りたいモデルさんの表情が逃げてしまうんですよね。

一方で、先ほどお話した16mmと35mmレンズだと、そんなにモデルさんから距離を取らなくてもすぐにシャッターが切れる。以前は56mmを使っていたけど、35mmの方がいいなあって思って、35mmをメインに使ってたら、今は16mmが一番出番が多いって状態になってますね!

[すーちゃん]

コハラさんの写真の距離感ってすごく被写体が自然体で印象的だなって思っていたんですが、そうして切り取られていたんですね!求める絵に最短でたどり着くためにスピード感を求めた結果だったっていうのは、納得です!もはや身体の一部と化して撮影されてるような気がしてきました。自分も「撮りたいと思った瞬間から撮るまでに時間がかかる」ことが課題なので、そういった選択も今後はしてみようかなと思いました。

カメラの見た目による被写体への影響力

[すーちゃん]

X-Pro2とGFXだと見た目も変わってくると思いますが、被写体と距離感の近いレンズを選ばれている分、カメラの見た目も被写体に影響があるように感じます。その辺りは意識されて使用しているんですか?

[コハラタケル]

意識してます!

カメラの見た目によって被写体に反応の違いがあるっていうポイントが、僕のこだわりというか、すごく大切にしていることなんです。僕はファインダーの位置を意識してカメラを選んでいます。

例えば、モデルさんを撮る時、ファインダーの位置が中央にあるとほとんど僕の顔が隠れちゃうんですが、左端にファインダーがあれば僕の顔が見えるから、撮ってるときに笑ったりするとその表情がモデルさんにも見えやすい。それによって、モデルさんの表情がちょっと和らいだり、自然な感じを出してくれたりします。逆に、GFXの方だと被写体の方も、撮られるっていう意識が強くなる。その点でX-Pro2を愛用しているというのもありますね。

機材を選ぶ際は、どのようにその場の空気感を演出できるかという視点も大切にしています。

[すーちゃん]

写真を撮っている方の表情が全く見えないのと、少しでも垣間見えて楽しそうにしているのが伝わってくるって、大きな違いですよね!コハラさんのスタイルに、色味とサイズ感が両立している富士フィルムだからこそ、今の機材を選ばれているっていうことがよく分かりました。

仕事と作品の違いについて

写真を仕事にしたきっかけ

[すーちゃん]

コハラさんは現在フリーランスフォトグラファーとして活動されていますが、写真を仕事にした経緯について教えてもらえませんか?

[コハラタケル]

元々フリーでライターをしていたんですけど、正直単価が厳しいところがあって、今後フリーでこの先ずっとやっていくって考えた時に、何かの分野において影響力がないと厳しいなっていうのは感じていて、そこで写真を選んだんです。そして、まずInstagramを始めました。それまで全くSNSをやってなかったんですけど、力を入れて、ある程度フォロワーも増えて、家族写真の撮影登録サイトとかにも登録させてもらって。写真だけで完結するような仕事が増えていって今に至るっていう流れですね。

最適な機材チョイス

[すーちゃん]

仕事の撮影と作品撮りの機材は使い分けているようですが、具体的にどういった面が仕事と作品撮りで重視されるのでしょうか

[コハラタケル]

仕事では、一般のお客さんに家族写真として特徴的な色味とか、ピントが甘いような表現とかをしても、撮り手側の意図が伝わらない可能性もあると思うので、それでGFX-50Rを使って、綺麗にしっかりと解像度も高いものを提供するようにしています。

作品撮りについては、割と特徴的な色味とか、ピントをわざと甘くしたような表現も大切にしているこだわりではあるので、X-Pro2とX-T3を使うようにしてますね。

[すーちゃん]

確かに、家族写真ってなるとやはりちゃんと顔が写っていて、どの場所で、いつ撮ったものなのかという説明的な要素が重要になってきますよね。仕事と作品の表現方法に合わせて機材を使い分けるって大切ですね!

自分にとっての良い作品と機材の関係性

[コハラタケル]

僕にとっての良い作品って、言葉で説明できないような瞬間なんですよ。

例えばモデルさんに「右手でピースして」って伝えたとして、そしたら僕のゴール地点って、ピースを完全にしてる状態じゃないんですよね。ピースをして「いいよ」って言ってからの数秒間ぐらいを撮りたいんです。

「ピースをして欲しい」って言って撮った写真って、言葉で説明できるじゃないですか。でもそのピースをする前の中途半端な動作って、言葉で説明するのがとても難しいと思うんですよね。そういった言葉にできない瞬間を重要だと思っていて、それが僕にとっての良い作品なんだと思っています。

[すーちゃん]

言葉にはできない瞬間を切り取るってとても素敵ですね!コハラさんのその瞬間って、被写体にカメラというフィルターが完全に掛かり切るギリギリ一歩手前の時間というか、瞬間な気がしました。そしてその瞬間を良い作品としている視点とそのこだわりに脱帽です!

なんでもない道で撮るということ

[すーちゃん]

ところで、コハラさんは「なんでもない道」をテーマに作品を撮ってらっしゃいますが、そこへのこだわりやそのきっかけはありますか?

[コハラタケル]

僕20代の後半まで、建設関係の職人やってたんですよ。ちょうど27歳くらいの時に東日本大震災があって、仕事の関係で現地に行くことになって、そこでいろんな体験をしました。結局、1年くらいでまた関東に戻ってくることになったんですけど、戻ってきてから自問自答したんですよね、いろんなことに対して。現地での生活で、自分が学んだことって結局何だったんだろう?って考えた時、見えてきた答えは「普通を大切にする」ってことだったんですよね。

確かに、日常を大切にしなさいって昔から言われてると思うんですけど、そのありがたみをずっと維持するのって中々難しかったりして。

でも写真に残したら、もしかしたら普通を大切にしなくちゃいけないという気持ちを忘れないまま生活できるんじゃないだろうかと思ったんですよね。絶景スポットではない、みんなが通勤や通学、買い物に行く途中とかに使うような道で、写真を撮ることによって日常の大切さや、当たり前の大切さを忘れないようにしたい。この「こだわり」で撮った写真を通して、例えば、SNSなどで誰かが何かを感じ取ってくれたら嬉しいと思って”なんでもない道”で写真を撮っています。

[コハラタケル]

#なんでもないただの道が好きっていうハッシュタグを作ったのも、普通の道でも面白いことをやって撮ってみようという人が増えてくれたりしたら、日常を大切にしてほしいという僕の気持ちにいつかどこかのタイミングで気づいてくれるかもしれないなあという思いからでした。

でもどこかのタイミングで来ると思うんですよね。工事とかで「あの道無くなっちゃったね」とか「あそこでいつも写真撮ってたのに」とか。それも普通のなんでもない道で写真を撮っておけば、どこかのタイミングで気づくかもしれないので。あれ、なんか普通の道って思ってたけど、意外と自分にとっては大切な場所だったんだなあっていう、そこから日常の大切さみたいなのにリンクすると嬉しいなと思ってるんです。

[すーちゃん]

体験を通して、日常を大切にするために向き合った結果、あのテーマに繋がってるんですね!そこをコハラさんだけの視点にされずに、写真を見てくれる方に日常を大切にする気づきになってくれたらというところにも、このテーマで撮影を続けられてるこだわりを感じます。

作品ギャラリー

まとめ

今回のまとめ

  • 撮りたい瞬間を逃さないようカメラと広角レンズは2台体制
  • ファインダーの位置によって生じる被写体への影響力を考慮してカメラを選択している
  • 仕事では撮り手側の色はあまり見せないようにしている
  • いい作品とは言葉で説明できないような瞬間にある
  • フリーで活動していくためには影響力が必要
  • 日常を大切にするためにも写真を撮り続けている

撮影機材一覧

使用カメラ

使用レンズ

何気ない日常を残すということに対する情熱

コハラさんは日常にある幸せを未来に残すという強い一本の芯のような意志を持って写真を撮られているように感じます。

「自分の写真」を仕事にする

また、作家性を生かして撮影の仕事としても受けている、という事もとても良いなあと思いました。仕事だと、どうしてもクライアントの要望に沿ったものにしたり、自分を曲げないといけないような場面も出てきますが、「自分じゃないと撮れない写真」「自分が撮りたいテイストの写真」で仕事をされている(そういう風に撮ってと依頼がくる)のは純粋に羨ましいというか、理想的だなあと感じます。CtoC(個人間取引)だからこ生まれる暖かさというものもきっとある気がしていて、コハラさんの優しい性格が一人一人と向き合うという仕事の仕方にとてもマッチしているようにも、勝手ながらに思いました。

写真に込められたメッセージ

そして、TwitterやInstagramでお見かけしていた「#なんでもないただの道が好き」のタグには、願いとも言えるメッセージが込められていた事がとても印象深いです。当たり前の日常を、大切なものだと思い出すきっかけがコハラさんの写真にはたくさん詰まっています。

沢山お聞きしたお話を全て掲載すると超ロングインタビューになってしまうので割愛させて頂きましたが、とってもアツイインタビューでした!

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