実は奥が深い、RICOH THETA Z1の魅力を徹底レビュー! 風景写真家が360度写したくなる理由。

こんにちは。フォトグラファーの藤原嘉騎(@y0shiki9)です。
今回は僕がヒーコで執筆する初めての記事ということで、撮影に必ずと言っていいほど持っていくとっておきの360度カメラ、RICOH THETA Z1ついて語っていきたいと思います。

様々な高機能を搭載しているRICOH THETA Z1は、単に記録を残すためのカメラではなく、とても操作は簡単でありながら、写真家のための本格カメラと言えるかと思います。

といっても、自分の周りを360度丸ごと写すTHETA Z1を旅行時に使えば、後からアルバムを見直した時に、まるでその場にいるような臨場感を楽しむこともできるので、実は思い出カメラとしても頭一つ抜きん出ている存在でもあります。

今回はそんな多彩な魅力を持つRICOH THETA Z1の魅力について、これまで僕が使用していたTHETA Sとの比較や、おすすめプラグインなどもあわせてたくさん紹介していきたいと思います。

面倒なことは全ておまかせ

THETA Z1は、自分の周り360度を全て撮影できるカメラです。僕の場合、作品作りの機材として使用するのはもちろん、ロケハン時に次回の撮影計画を立てる参考資料としても360度写真を役立てています。

便利な360度写真ですが、普通のカメラで表現するとなると、複数枚の画像を撮影し、自分で繋ぎ合わせるといった手間と時間が非常にかかる工程を踏まなければなりません。

THETA Z1は、この面倒な作業を瞬時かつ自動で行なってくれる頼もしいカメラです。秘密はカメラ内での高精度なスティッチング。シャッターボタンを1回押すだけで、高画質な360度写真が撮影できてしまいます。

面倒な作業を代わりにやってくれ、扱いやすいTHETA Z1

ですが、魅力はもちろんそれだけではありません。高性能だからこそできる撮影があるんです。

星空撮影もクリアに

THETA Z1があるからできること、それは星空の撮影です。

一般的に、星空や夜景、薄暗い室内での撮影につきものなのが、ノイズ問題。画面全体がざらついたようなノイズが現れた写真は、プロの作品として使用するには厳しいものがあります。正直に言うと、これまでのTHETAモデルでは景色部分にノイズが多く出てしまっていました。

しかし、この問題をTHETA Z1は解決してくれました。鍵となるのが、従来のイメージセンサーの約4倍の大きさを持つ1型センサーの搭載です。これは高級コンデジなどでも使用されている規格のセンサーで、ノイズを大幅に低減してくれる優れもの。

おかげで解像感や描写性能は圧倒的に向上しました。ノイズの出やすい星空や、夜景、薄暗い室内でも美しい画像を撮影することができるようになっています。有効画素数は2300万画素と、作品としてもまったく問題ありません。

ここで星空の撮影に関連して、THETA Z1の魅力をもう一つご紹介。

それが、THETA Z1の撮影モードの一つ、「マイセッティング」です。

天の川も押すだけ

「マイセッティング」とは、自分で設定した絞り・シャッタースピード・ISO・ホワイトバランスなどの撮影条件を記録させる機能です。

僕はこの機能を、天の川の撮影で利用しています。一回設定してしまえば、後は撮影地に着いたらマイセッティングを押すだけ。瞬時に美しい星空を撮影することができ、とても便利な機能です。

もちろん、撮影モードは「マイセッティング」の他に、「オート」「絞り優先」「シャッター優先」「ISO優先」「マニュアル」がきちんと揃っているのでご安心を。

他にも、THETA Z1には、本格一眼レフカメラと同様の機能が搭載されています。インターバル撮影の設定も可能ですし、露出違いで写真を連続撮影してくれるマルチブラケット機能もついています。このへんが風景写真家にとっては非常に嬉しいところです。

そして、先ほど「THETA Z1には、本格一眼レフカメラと同様の機能」があると言いましたが、少し訂正があります。なぜなら、THETA Z1は一眼レフでも難しい高難易度被写体を撮影できてしまうからです。

一瞬の点滅光を捉える

THETA Z1 を使用して最も衝撃だったのが、一眼レフでも難しい「ヒメボタル」の撮影ができてしまうことでした。

ヒメボタルの光は非常に弱く、一瞬の点滅光です。一眼レフでも、高感度に強いカメラで、f値の小さな単焦点レンズをつけて撮影しなければならないほど非常に難易度の高い被写体です。

その難しい被写体を、THETA Z1は見事に撮ることができてしまいました。それがこちら。

高難易度被写体、ヒメボタル

ヒメボタルの乱舞を捉えた写真です。

これまで僕が使用していたTHETA Sと比較すると、パープルフリンジもかなり低下しています。パープルフリンジとは、「被写体に強く光があたっている明るい所(高輝度部)と影になる暗い所(低輝度部)が隣り合う場所の縁に出る偽色」のことで、明るい空と木々のあたりによく発生します。

日中に森などで撮影するとTHETA Sの場合、パープルフリンジが必ず出ていましたが、THETA Z1ではかなり抑えられていました。

その証拠がこちら。

パープルフリンジをここまで抑える

これは赤枠で囲った部分を、THETA Z1とTHETA Sとで拡大比較したものです。

パープルフリンジが抑えられているのが一目瞭然ですよね。木の枝や花を見てみると解像感も格段に良くなっているのが分かります。Adobe Lightroom Classicでフリンジを消す作業も無くなり、現像時間が大幅に短縮できるようになりました。

このようにTHETA Z1は、インターバル撮影やマルチブラケット機能に加えて、高難易度被写体でも難なく撮影できる高機能が搭載されています。

しかし、驚きの新要素はまだまだありました。THETA Z1には待望のあの機能が追加されたんです。

シリーズ初のRAW撮影

THETAが発売された当初から待ち望んでいた機能、それがRAWでの撮影です。これはもう、めちゃくちゃ嬉しかったです。

RAWになったことで、ダイナミックレンジは格段に広がり、光や色の情報がかなり豊富になりました。

Adobe Lightroom Classic やPhotoshopで現像するときも、従来のJPEG現像より過度な変更に耐えられるRAW現像は柔軟で幅広い調整が可能です。

このRAWでの撮影ができるようになったことで、表現の幅が広がり、編集がもっと楽しめる作業になりました。

しかもこの編集、「THETA Z1」を使うことで、誰でも簡単にアートのような写真や動画に仕上げることができてしまいます。その方法も、ご紹介しましょう。

存分にリトルプラネット編集が使える

THETAは、複数の画像を繋ぎ合わせ、1枚の360度写真もしくは360度動画にするという高度なことをカメラ内部でおこないながら、その画像をさらに「THETA +」というスマホ編集アプリで簡単に編集できてしまいます。

PCでも編集はできますが、「THETA +」を使えばパノラマや、ミラーボール、リトルプラネット、アニメーションなど様々な編集が簡単にできます。

中でも僕のおすすめは、リトルプラネット編集です。

小人の視点を表現

これはススキの群生地に雪が降り積もった写真に、「THETA+」のリトルプラネット編集を適用したものです。小人が雪に覆われた穴ぐらから、外の世界に向かっているような視点で表現してみました。

リトルプラネット編集では、今まで想像もしなかったような面白い写真表現ができるようになります。THETA Z1で写真を撮る醍醐味の一つかもしれません。

ちなみに、リトルプラネット編集はその特性上、どうしても画像中心部が小さく圧縮され、周辺部は大きく引き伸ばされてしまいます。従来の製品では、周辺画質が落ちてしまい、作品にするには画質の荒さが目立ってしまうのが気がかりでした。

しかし、THETA Z1は違います。こちらの写真をご覧ください。

落ち葉に立体感を

これは落ち葉の赤い絨毯が広がる森の中で、日中に撮影したものです。リトルプラネット編集ですが、画像周辺部でも立体感がきちんと出ていますよね。真っ赤なフレームができ、空に吸い込まれそうな写真になっています。

こうした写真を撮るには、ロケーションと機材の配置が重要になります。まずは、落ち葉など同じものが広がる場所を探します。良い場所が見つかったら、中央に「ミニ三脚+自撮り棒+THETA Z1」をセットします。ポイントはTHETA Z1と三脚の間に自撮り棒を入れて、THETA Z1と三脚の距離を離すこと。これで画像にTHETA Z1が映り込むのを防ぐことができます。

ユニークな写真ができるリトルプラネット編集。
しかし、360度ならではの面白い編集はこれだけではありません。

パノラマでの新たな表現方法

こちらは、THETA Z1で撮影したパノラマ写真です。310枚の星空パノラマ写真をコンポジットし、星の光跡を作り出しました。1枚の平面に360度の全てを入れ込むと、こんな不思議な光跡写真が表現できます

光跡のタイムラプス動画

ちなみに、この光跡のタイムラプス動画もあるので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

こうした写真や動画は、360度カメラTHETA Z1でしか生み出すことのできない表現方法です。まだまだ未開拓部分が多い新たな分野なので、チャレンジできる余白がたくさんあるのも写真家にとっては嬉しいところ。僕も色々試してみたいと思います。

おすすめプラグイン2選

さて、ここまでTHETA Z1の多様な機能や、専用スマホ編集アプリについてお話してきました。だいぶTHETA Z1の魅力が伝えられたかなと思いますが、これらはあくまで基本機能の話です。

THETA Z1の魅力はまだまだあります。それがプラグインによるオリジナルのカスタマイズです。

THETA Z1には、本体にプラグインを入れることで機能を拡張できるという独特の面白さがあります。

360度カメラには多くのメーカーが参入していますが、プラグインソフトがあるのはTHETAだけ。リコー純正プラグインのほか、世界中の企業や個人が開発したプラグインが豊富にあり、それらを入れることで自分好みのオリジナルTHETA Z1に進化させることができます。

今回は、色々なプラグインを試してみた僕の個人的おすすめプラグインを2つ紹介したいと思います。

それが、「Time Shift Shooting」と「Dual Fisheye Plugin」です。

「Time Shift Shooting」

1つ目の「Time Shift Shooting」は、THETAのフロント側とリア側の2つのレンズを片方ずつ時間をずらしてシャッターを切るようにできるプラグインです。撮影していないレンズ側に移動することで、撮影者が映り込まない写真を撮ることができます。素敵な風景だけ撮りたい!と思うときに、活躍してくれます。

「Dual Fisheye Plugin」

2つ目の「Dual Fisheye Plugin」には複数の撮影モードがあります。
中でも特に凄いのが「HDR-DNG」。これを使えば、シャッターボタンを1回押すだけで、1EV差の写真を3~9枚の設定した枚数で撮影し、1枚のDNGファイルとして生成してくれます。

具体例を見てみましょう。

こちらは、HDR-DNG (-1EV,0,+1EV)と1枚撮りのDNGを並べてみたものです。

太陽部分を見てください。1枚撮りのDNGは白飛びしていますが、HDR-DNG(-1EV,0,+1EV)は太陽部分の雲もきちんと捉えることができているのが分かります。

このプラグインを入れなくても、先述したTHETA Z1にもともとあるマルチブラケット機能で複数枚撮影し、後からHDR合成することもできますが、意外とけっこうな時間がかかります。

その点、「Dual Fisheye Plugin」であれば1回シャッターボタンを押すだけで、撮影と合成を瞬時に行ってくれるので、ブラケティング撮影をする写真家の方には本当におすすめしたいプラグインです。

注意点

ただし、ここで注意が一つ。このプラグインを起動すると、TEHTAのスマホアプリとの連動が途切れ、シャッター操作やプレビュー確認ができなくなります。急にスマホアプリが表示されなくなっても、故障ではないので大丈夫です。

撮影するときは、三脚にTHETA Z1を固定し、本体のシャッターボタンを押します。10秒後に撮影が開始されるので、その間に木陰や岩陰に隠れてください。

ちなみにAndroidスマホユーザーの場合は、「Dual Fisheye PluginRemote」というプラグイン専用の有料アプリがあります。シャッター操作や絞りなどの調整ができるので、ぜひ試してみてください。

※Dual Fish eye プラグイン、及びプラグイン専用の有料アプリは、パートナープラグイン・アプリです

写真だけでなく動画も圧巻

私はフォトグラファーなので、ここまではどうしても写真の話ばかりになってしまいました。しかし、写真だけでなく、動画の領域においても可能性が非常に高いのがTHETA Z1の魅力、ということも最後に付け加えておきたいと思います。

例えば、360度の空間音声も含めた4K動画は圧巻です。

THETA Z1には4方向にマイクが搭載され、それぞれが独立して音を記録するので、360度映像と音声がリンクした臨場感溢れるVRの世界を作り出すこともできます。

動画クリエイターの方にとっても刺激溢れるカメラだと思うので、色々研究してみるのも良いかもしれません。

まとめ

THETA Z1 は、従来のTHETAシリーズとは別物と言っても良いほど進化したと思います。特に、今までとは一味違う撮影ができるようになったのが一番の魅力かもしれません。

例えばこちらの写真。

これは、建物をTHETA Z1で撮影し、リトルプラネットで編集したものです。身近にある建物がリトルプラネットを活用することで、今まで想像もしていなかったこんなユニークな形で表現することができます。

それを知って外に出かけてみると、街中は「ここでTHETA Z1を使ったらどうなるだろう?」というポイントに溢れていることに気づきます。

ハッシュタグ「 #まるごと写したい思い出」

もし気に入ったポイントを見つけたら、ぜひ試してほしいのが、ハッシュタグ「 #まるごと写したい思い出」です。これは、THETA Z1を使って360度写したいポイントや思いを共有するための場であり、実際にTHETA Z1で撮影したら面白そうなものばかり投稿されています。多くの人が個性豊かな写真をたくさん載せているので、タグを検索して眺めるだけでも面白く、参考になります。

これは!と思うポイントを見つけたら、スマートフォンでも一眼レフカメラでミラーレスカメラでも何でも良いので、ぜひ写真に残し、ハッシュタグをつけて投稿してみてはいかがでしょうか?

使用機材

THETA Z1

RICOH THETAの写真がもっとみたい方はこちら!

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