東京で都市風景をミニマルスタイルで撮影している岩田量自、通称ジョニー(@johnny777)です。
私は大学を卒業後、夜間で建築を学び昨年3月まで建築設計事務所で設計業務を行なっており、これまで建築を学んで、実務を行う中で培った視点や空間感覚を活かして都市風景を撮影しています。
今回は、そんな私が都市風景を撮影する際に意識していることをお伝えしていきたいと思います。
ミニマル構図テクニック!都市風景を魅力的に見せるためのテーマやポイントをご紹介
写真の構成要素を必要最低限にする
都市風景を撮影する際、ランドマークなどに気を取られて周辺環境をあまり意識せず、漫然と撮影してしまうことはありませんか?そういった時は、写真に何を写して何を写さないのか選択すると、一気に絵的なまとまりが変わってきます。
私は写したいものをだけ写した結果、「なにかが写ってしまった」という想定外がなくなることを撮影時に意識しています。料理を作る時も必要な具材や調味料だけを使いますよね?意図せず入ってしまったものは雑味になってしまう、というのと同じです。
モダニズム建築の巨匠であるミース・ファン・デル・ローエの言葉に“Less is More”「より少ないことはより豊かなこと」というものがありますが、まさにその言葉の通り写真の構成要素をより少なくしていくことで雑味が消えすっきりとした印象の写真にすることができます。それが、私の考えるミニマルスタイルでもあります。
撮影には、撮りたいと思った理由が必ずあるはずなのでそこで何に魅力を感じたのか、魅力を伝えるにはどういう構図で、どの範囲まで写せば良いのかを考えると自ずと写したいものがはっきりしてきます。
とは言っても、カメラの画角の関係で余計なものが写ってしまうことはあるので、トリミングも効果的に行いながら最終的な構図に余計なものが写っていない状態。つまり、その写真を構成する要素が必要最低限に抑えられていることを目指すのが良いと思います。
撮影時に意識したポイント
実際に撮影したものを例に、私が意識したポイントを紹介したいと思います。
この横断歩道の写真を撮影する時に意識したことは6つです。
- 画面を横断歩道で埋める
- 横断歩道のラインを強調するために、できるだけ真上から俯瞰で撮影する
- 画面に対して人を小さく写すことで高い場所から撮っている感じを出す
- 車は入れず歩行者のみを写す
- 歩行者は画面の上下にバランスよく配置する
- 夏の暑い日だったので、アクセントとして日傘をさしている人を入れる
この中の1つでも欠けてしまうと、全く違う印象になってしまいます。
撮影テーマを横断歩道を歩いている人としたとき、
- 横断歩道はどのアングルから撮るのが良いか?
- どんな人が歩いているといいか?
- どの位置にきた時に撮ればいいか?
と大きなテーマからどんどん具体的に考えていくと自分の意図した通りに撮ることができるのではないでしょうか。
都市を構成する要素にも着目
これは香港で撮った路面電車の写真です。車体にプリントされた広告が面白かったので、それを強調するために周りの街並みはあえて映さず、構成要素を広告と乗車客だけにしました。街並みが写っていなくても、香港っぽさを感じる写真になったのではないでしょうか?
この様に都市風景全体ではなく、交通インフラや、建築単体などその都市の構成要素にフォーカスして撮影するのも楽しいのでオススメです。
平行と垂直を意識する
これまでの写真を見てお気づきの方もいると思いますが、私は基本的に平行と垂直をきっちりとした写真を心がけています。
仕事で建築の設計に携わり図面を描いたり、模型を製作する中で自然と平行と垂直を意識する様になり、写真を撮る時も平行と垂直がきっちりしていないと気持ち悪く感じる様になりました。
肉眼では真っ直ぐに見えていても、カメラで撮影すると歪んで見えたり、構え方が悪いと傾いたりしてしまいます。でも脳内イメージでは平行と垂直が整っていませんか?
そういう時は都市風景画を描くとしたら、を想像してみましょう。建物は真っ直ぐ建っている様に描きますよね。それと同じ感覚で撮ってみると、建築や都市の持つ規則性が上手く表現できます。
水平垂直を両方とも揃えて撮影できない場合は、水平だけでも揃えておくことがコツです。私自身もあおって撮影した場合は、LightroomやPhotoshopで補正をすることもあります。その場合、縦に伸びてしまい縦横比が変わってしまうので、画像を少し横に伸ばしてバランスを整えることがポイントです。
スケール感、密集感を意識する
都市の持つダイナミックなスケール感を出すには大きさの比較対象物が必要です。この写真の様に、高いビル群とその下を歩く人などを一緒に写すことで空間のスケールを把握することができるように撮影しました。
望遠レンズを使用して都市の密集感を表現
広く写す場合、広角レンズが使われることが多いですが、地上から広角レンズを使用して撮影すると、足元が写りすぎてしまうこと、パース効果で近くものは大きく、遠くのものは小さく写ってしまい都市の密集感を上手く表現できないので、私は望遠レンズを使用して撮影しています。
歩道橋や屋外階段など少し高い場所から撮影することで、低い場所から高い場所までバランスよく写すことができます。また、望遠レンズの持つ圧縮効果によって、手前から奥までギュッとまとまって都市の持つ密集感を表現することができます。
また、望遠レンズを使って撮影する際は絞りの設定にも注意しています。手前の被写体と奥の被写体が離れている場合や、自身が手前の被写体と距離が取れない場合は、絞り値が小さいとボケが出てしまい建築の持つシャープさが失われてしまいます。レンズの焦点距離を意識しながらf値を決めて撮影してみてモニターでボケが出ていないか確認しながら撮影すると良いでしょう。絞り値を大きくし、できるだけパンフォーカスに近づけることで建築のディテールもはっきりと見え、ディテールの集合体としての都市風景を写すことができます。
まとめ
- 写真を構成する要素を必要最低限に抑える
- 不要な要素が写ってしまった時はトリミングする
- 撮影テーマから具体的に考えていくことがポイント
- 都市風景全体ではなく、都市の構成要素にも着目する
- 平行と垂直を意識する
- 水平垂直を両方とも揃えられない場合は、水平だけでも揃える
- 比較対象物を写しスケール感を出す
- 望遠レンズで都市の密集感を表現する
- f値はなるべく大きくしシャープさがわかるようにする
おわりに
今回は普段私が都市風景を撮影する際に意識していることをお伝えしましたが、この記事を通してみなさんに、新しい気づきや発見があれば幸いです。