「自分らしい」写真と出会うまで

こんにちは、保井崇志(@_tuck4)です。今回は写真をはじめてから、自分らしい写真と出会うまでの話を書こうと思います。

「自分らしい」写真と出会うまで

はじめに

2015年に独立してからは、国内外のクライアントとお仕事をご一緒してきました。旅の写真や、バイクや車の撮影、スマートフォンのアンバサダーを務めたり、職人さん、アーティストのポートレート撮影など、仕事内容は多岐にわたります。

じぶんはInstagramがきっかけになってプロになったという経歴のフォトグラファーです。そのため、お仕事の撮影では、自分自身でサービスを体験したり、製品を使用したり、旅に出たりと、従来のようなスタジオ撮影やセットアップではない、どちらかといえば日常生活の延長にある写真を撮っています。

お仕事を依頼してくださる企業の方からは「ご自身のいつものスタイルで撮ってください」とリクエストがあります。

「自分のスタイル=自分らしい写真」だとは思うのですが、いったいどうやってその写真にたどり着くのでしょうか。今回、改めて自分らしい写真について考えてみたのですが、結論からいいますと「自分らしい」は結果論だと思います。

写真を継続しているうちに、いつしか周りから「この人らしいスタイル」といわれるようになったので、みずから「自分らしい」を探し求めたという感覚ではありませんでした。まぁ、後付けでそれらしいことを言ったことはあるかもしれません、反省します。

写真を始めてから3年間は試行錯誤

写真を撮ることに目覚めたのが、今から10年前の2010年のこと。きっかけは姪っ子が産まれたことでした。ちょっと良いコンパクトデジタルカメラを買って、ほどなく写真を撮ることに夢中になりました。人生で初めて趣味といえるものに出会ったのです。近所の公園や、行ったお店、観光地などを気ままに撮影するようになりました。

2012年頃にInstagramを始めて、撮った写真が世界中に届く感動を知りました。アプリに魅せられた結果、デジタルカメラで撮影するよりも、むしろスマートフォンで撮って写真編集することに夢中になります。

当時のスマートフォンのカメラは解像度も低く、ボケなどの表現に頼ることが出来なかったので、「構図一本勝負」みたいなところがありました。そうなってくると問題は、他の人と同じような写真になってしまうということです。程度の差こそあれ、多くの方がここで壁にぶつかるのではないでしょうか。

じぶんの場合は、デジタルカメラでの撮影は、より「視点」に注力するという感覚を大事にしました。上の写真は2013年頃ですが、雨の日に友人に歩いてもらってその足元を撮影したり、濡れたフェンスの向こうに見える街の光が良いバランスになるようにしたり、いろいろと試行錯誤していたのが見てとれます。

焦点距離50mmの世界

ちなみにこの頃に常用していたレンズはFUJIFILMの「XF35mmF1.4 R」です。

焦点距離はとても大切です。この、35mm(フルサイズ換算50mm)という焦点距離は、わたしたちが普段目にしている光景に近い、それも少し気をつけて見ている、何かに注目しているような写真になります。

毎日街に出て新しい視点を探すことがとても楽しく、デジタルカメラの背面に現れる画面を見て、世界が広がったような気持ちになりました。あんなに小さな画面を見て世界が広がるって不思議ですね。

この時期の、毎日撮影に出ていた経験が、今のスタイルのベースになっているのだと思います。

当時の組み合わせはその「XF35mmF1.4 R」と、ボディは「X-M1」。毎日持ち歩ける軽さと、何よりデザインが好きで愛用していました。正直、カメラのスペックは気にしていませんでした。日常生活で常に手元にあるものなので、心から好きでテンションの上がるものを選ぶべきだと。それは今でもそう思っています。

ぐんぐん伸びる時期

さて、「自分らしい」は結果論と述べましたが、結局は前述したような試行錯誤をどれだけ継続するかです。自分は何に惹かれるのだろうか? 物事をどんなふうに見ているのだろうか? という自問自答です。ここに秘訣とか近道はないように思います。

そうこうしているうちに、写真を撮り始めてから4年〜5年で、自分でも驚くくらい写真が上達していきました。スポーツや楽器をされる方も、ぐんぐん伸びる時期を経験するといいます。写真も同じなんですね。

さらに、Instagramで海外の方から多くの反響をもらえたことも励みになりました。SNSのいいね数やフォロワー数は、近年は悪い側面も取り沙汰されますが、自分次第で良い付き合い方も出来るのではないでしょうか。

じぶんにとって写真とSNSは切り離せないもので、Instagramをはじめ、TwitterやTumblr、最近ではPinterestをよく眺めています。そこで見た写真がヒントになって、こんな風に撮ってみようと外に出たり、旅の行き先を決めたりしていました。

そこで撮った写真が反響をよんで、また刺激を受けて撮りに行って…。このような良い循環に入れたのはSNSのおかげです。

機材について

プロになった現在でも、あまり機材は増やしすぎないようにしています。日々、何を持って行こうか迷ってしまうストレスは避けたいのです。

現在、メインのカメラは「X-H1」で、複数のレンズと組み合わせています。最近はもっぱらズームレンズで「XF16-55mmF2.8 R LM WR」をよくつけて撮影しています。

プライベートでもカメラは手放せません。コンパクトな「X100F」を常に持ち歩いています。X100Fのレンズは23mm(フルサイズ換算35mm)です。この焦点距離もまた、目にしている光景に近いのですが、何かに注目しているのではなく「ぼんやり眺めている」ような距離感になります。

あと毎日持ち歩ける軽さ、持ち歩きたくなるデザインというのも、大きなポイントになります。実はここを軽視しなかったことが継続につながったと本気で思っています。

「自分らしい」写真と出会うまで

以前、小雨が降っていたある日の夜、浅草でタクシーに乗ったときのことです。少し渋滞していたので、運転手さんとポツポツと世間話が始まりました。話を聞いていると、この仕事を54年やってるというのです。年齢と聞き間違えたのかと驚き、「なぜそんなに続けられたんですか?」と聞いてみました。

「別に、そんなに辛くないからね」と、なんとも軽い返事がかえってきました。

てっきり、運転が好きでたまらないといった回答がくるものと予測していたので、拍子抜けしてしまいました。でも、そのくらいの気持ちだからこそ何かを継続できる、これは真理だなぁと感心したものです。

写真歴4年〜5年あたりで写真がぐんぐん伸びていったと述べましたが、これにはもちろん個人差があります。半年でそれがおとずれる人もいるし、じぶんの場合は遅かったのかもしれません。

ただ、そのエキサイティングな期間は長くはありません。何事も起こらない、上達もしない、単調な期間の方が圧倒的に長いわけです。

たいしたアドバイスではありませんが、あまり気負いせず、気長に写真と付き合っていくことをお勧めします。長く続けていると「自分らしい」が、自然と後からついてくるのでは。

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