小笠原滞在記 – 今の時代だからこそ小笠原諸島をおすすめする理由

ヒーコ読者の皆さん、お久しぶりです。別所隆弘(@takahirobessho)です。小笠原から帰ってきて、ひとまわりもふたまわりも大きくなって帰ってきました。もう1ヶ月経つのにまだ元に戻りません。まいったな。さて、今回は皆さんにその小笠原の魅力を、ぜひ写真目線で体験してもらいたく、ちょっとヒーコのページをお借りして、小笠原滞在記書かせてもらいます。挨拶はこの辺にして、チェケラ!

小笠原滞在記 – 今の時代だからこそ小笠原諸島をおすすめする理由

あらすじ

そもそもの始まり

今回の旅の全てを取り仕切ってくれた北村穣さんから、小笠原村の「滞在型観光促進事業」のお仕事の話をメッセージでいただいたのは2020年12月1日の午後1時12分のことだ。

僕がそのメッセージを開いたのは同日の午後9時2分頃。ちょうどその日は撮影案件で昼過ぎから21時前まで家を出ていて、帰ってきてようやくメッセージを開くことができた。メッセージを秒速で読み終わり、返事をしたのはその2分後。

“なんと!是非やりたいです。僕の仕事のスケジュール上、大学の授業を終えなくてはならないので、可能な日程は1月終わりから2月くらいになりそうですが、それでも大丈夫でしょうか?”

この時僕は小笠原のことをほとんど何一つ知らない。「とにかく遠いよね」くらいの認識だった。仕事の詳細もほとんど明らかになっていなかった。でも僕の直感が声を限りに叫んでいた。

「 迷うな、いけ!!! 」

こうして開封から2分で人生初の小笠原行きが決まったのだった。

返事をしてから、北村さんのメッセージをもう一度よく読み返してみる。

“小笠原へは週に一度、24時間かかる船便しかありません。最短だと3泊4日も可能だそうですが、今回のプロモーション目的ではこの日程だと厳しいので10日間ほどの滞在になるかと思います。”

24時間の船旅!?オッケー、それはまだ大丈夫、地球の裏側にいくとでも思えばいい。でも「3泊4日」の次が「10日間ほどの滞在」!?どうして「5泊6日」とか「7泊8日」が無いの!?でもまあ、そういうもんなんだろう、もう返事をしちゃった。あとはスケジュールを空けるだけだ!

ということで、1月30日から2月11日を旅程として決めたあと、その12日間の時間を死守する戦いがその日から始まった。

父島を見ずして結構と言うなかれ

さて、今回の記事は以下からが本番になる。でも最初に結論だけ大きな声で伝えておきたい。イタリアには「ナポリを見て死ね」という格言がある。つまり「ナポリを見ないで死んでしまったら人生勿体無いよ!!」ということで、それほどかつてのナポリは西洋では美しい場所として有名だった。日本バージョンは「日光を見ずして結構と言うなかれ」と言うのも同じ。でも僕は今日からこう言いたい。

「小笠原を見て死ね」

「父島を見ずして結構と言うなかれ」

日光結構の押韻を踏めないのが残念だが、これが結論だ、yo。異論は認めたくないけど、もし異論を唱えたいと言う方がいらっしゃったら、ぜひ下も読んでほしい。逆に、この意見に賛同してくださる方がいたら、もう記事は読まないでも全然大丈夫。代わりに、クラブハウスあたりで小笠原の魅力を語り合いましょう。

事前のまとめ

改めて、小笠原について。小笠原村の観光協会のHPから、その独特の位置付けを見てもらおう。こんな場所。

“北緯20度25分~27度44分、東経136度4分~153度59分の広大な海域に大小30余りの島々が散在する小笠原諸島。映画やニュースで有名な硫黄島や沖ノ鳥島なども含まれ、日本の排他的経済水域(EEZ)のおよそ1/3はこれら小笠原の島々によって確保されています。いずれも行政上は東京都に属しますが、主島である父島ですら空港が無く、アクセスは東京・竹芝桟橋との間に概ね6日に1便運航している定期船のみ。まさに太平洋の大海原に浮かぶ離島群と言えるでしょう。(上記URL先の小笠原村環境協会ホームページより引用)”

実は行政区は「東京都品川区」と言うバリバリの大都会で、島内を走っている車は全て品川ナンバー。

でもその品川の竹芝桟橋から、なんと船で24時間。おそらく同一区内の移動としては世界最長の移動時間を誇る。飛行機はなく、1週間に一度の船でしかいけない。さっき「3泊4日」の次が「10日間ほどの滞在」と、間がすっ飛んでいたのも、これが理由だ。飛行機がなく、もちろん陸路もなく、船でしかいけない上に、その船が1週間に一便と言う状況なのだ。ワオ。

だからめちゃくちゃ行くの大変。でも二つの意味でこの「行くの大変」と言うのは、違うんじゃないかと、滞在中に感じることになった。

まずは実際船に乗ってみて24時間を体験してみると、意外としんどくない。自分のnoteの方に24時間のくわしい記事を書いたけれど、割とやることがいっぱいある。写真撮ったり、ご飯食べたり、話したり、瞑想したり。本もゆっくり読める。

今回の旅にはクリエイティブコンサルタントであり、僕のデジタル系QOLを常に爆上げしてくれる市川渚さんも旅の仲間だ。そのなぎちゃんのVlog一回目はさらに参考になる。

例えば飛行機なら、本当に狭い空間に10時間以上足を畳み、エコノミー症候群を恐れながらのフライトなんて状況はザラにあるんだけど、小笠原への船便である「おがさわら丸」だと、少なくとも夜寝る時は足をまっすぐにして寝ることができる。

海が荒れている時は船酔いはしんどいかもしれないけど、それもよっぽどの悪天候の時くらいで、比較的乗り物酔いのある僕でも全然大丈夫だった。(もちろん酔い止めは飲んだんだけど。てかなぎちゃんに貰ったんだけど)

PCR検査

そしてもう一つ大事なのは、まさにこの「24時間の船旅だけ」と言う航路の限定が、コロナ時代においては「リスクヘッジ」になっているということ。

実は現在、小笠原諸島に行くには、PCR検査を受ける必要がある。もちろん理由があれば免除されるのだが、基本的にはほぼ全員、島に行く前にPCRを受ける。なんと無料。万一コロナ陽性であれば、島にはそもそも入れなくなる。

そして上にも書いたように、空路と陸路がなく、1週間に一度だけの船での旅以外は島への人間の流入経路がないため、そこさえきっちり水際対策をしていれば、コロナは入って来られないと言うわけ。ジャングルの奥地の村でさえコロナ禍で苦しむ現在の世界の状況にあって、小笠原は期せずして、その「交通上の不便さ」が最強のリスクヘッジになった。

つまり、現在小笠原諸島というのは、このコロナ禍の状況において、おそらくは世界で最も安心な場所の一つだと言える。

ほら、だんだんあなたは「もしかして、小笠原、候補かも」と思ってるかもしれない。そんなあなたに言いたい。「いつ小笠原行くの?今でしょ」(おやおや…)

写真の楽園として

さて、ヒーコに記事を書いているわけだから、写真について話をしておきたい。

今回の滞在では、小笠原諸島のメインアイランドである「父島」と、あともう一つ、ガイドさん同伴でないと入れない秘境「南島」の二つだけを10日間深掘りしてきたわけだけど、とても小さい島なので、最初は「撮影に10日間もかけたら大体全て撮り終えられるかな」とか思ってた。

で、結論。全然無理でした。時間足りな過ぎ、小笠原、強すぎ。まあこれはもう、写真を見てもらうのが話が早い。

どうなってんのここ、っていうレベル。これを割とゆるゆる10日滞在して撮れちゃう。

しかもハイシーズンではない2月でこれ!海はもちろんのこと、特にすごいのは光のグラデーションの素晴らしさで、基本人工物が少ないので、光はあるがままの強さと明度と温度を伴って、父島の大地に降り注ぐ。ドローンで見れば、さらに「楽園感」は高まっていく。今回は一般的には許可が降りない南島でのドローン撮影も、小笠原村からの許諾を受けて撮影をさせて頂いた。

ドローンはもちろん父島でも大活躍。極め付けはやはり沈没船の空撮だ。透明度マックスの海の中に、太平洋戦争末期に沈没した船が、海底に沈んでいる。その歴史の重みが、美しい風景の中で独特の異彩を放つ。今では人気ダイビングスポットだそうだ。

おっと、誤解しないでほしい。ここまで光が美しいと、むしろ本当は人物写真が最強なのかもしれない。僕のような人物写真の素人が撮影をしても、被写体になってくれたなぎちゃんのおかげで、最高に好きな写真が撮れ放題の状況。

光がこんなにも美しいと感じた場所は、今まで他になかった。それはつまり、闇もまた濃いということ。写真は光と闇を記録する芸術である以上、この島の光を写真を愛する人たちに見てほしい。そしてその光が放つ色彩を皆さんのカメラの中に収めて欲しいと思う。

写真なしでは生きられないが、写真だけでも生きられない

そう、僕らは写真だけ撮ってたら良いわけではない。

特に今回は、僕らはコロナ後のワーケーション需要の高まりを先取りする形での「長期滞在」が仕事の形態であるからして、仕事の半分はワーケーションの「ケーション」の方、「つまり「ヴァケーション」を楽しまねばらなかったのだ。

ああ、お仕事でヴァケーションするのは本当に大変だ、ああ、大変なあ。これもお仕事なんです、お仕事で休むの大変だー()

おすすめの小笠原のグルメ

普段は家でもあまり飲まない僕も、これもお仕事、頑張って毎日毎日たくさんお酒を飲んだ。運転しなくても良いとなると、気分も楽だ。

酒好きの皆さん、いいもんたくさんありますよ。地ビールも最高ですが、特に推したいのは「島レモンサワー」。

これはお酒大好きななぎちゃんと僕の二人で、多分滞在10日間でほぼ島中の島レモンサワーを飲み切ったと思う。少なくとも、滞在しているホテルPAT INNの島レモンサワーが最終日に売り切れたのは、間違いなく我々のせい。これもお仕事、仕方なくたくさん飲みました。いやあ、大変だったー()

地理的な都合上、確かに盛りだくさんのバラエティ豊かなレストラン構成は望めないかもしれないけど、でもその代わりに、心のこもったご飯を滞在中たくさんいただくことができた。

特にPAT INNのおかあさんが作ってくれる毎朝の食事は、日替わりで和食と洋食が綺麗なプレートに乗って出てくるのだけど、それが本当に美味しかった。夜寝る前に「明日の朝ごはんなんだろう」なんてワクワクして布団に入るなんて、いつぶりのことだろう。

と言うわけで、ご飯や飲み物のことをご心配の向きも、大丈夫。緊急事態宣言中で閉まっている店も多かったけれど、それでも「ご飯に苦労した」と言う印象は全然残っていない。

むしろ、お気に入りのお店のご飯が今はもう懐かしい。写真を撮り忘れちゃったけど(そういうとこやぞ)、中華料理の「海遊」の野菜タンメンは美味しかったし、海鮮居酒屋の「CHARA」で食べた「エイヒレ」は、それだけでビール5杯はいける逸品だった。「マンタ」のお刺身は最高だったし、「リュウ天」の塩お好み焼きは、関西人の僕も唸る熟練の味だった。全部全部、またもう一度食べに戻りたい。

「違う、そうじゃない」

でもここまで書いて、僕の中のリトル鈴木雅之が「違う違う、そうじゃ、そうじゃない」と言う。そうじゃないんだ、小笠原の真の魅力は。

もちろん、嘘はついてない。ここまで書いたことの全ては、僕の心の中のリトル鈴木雅之がどんなに「そうじゃない」って歌おうと、本当のこと。

PCRでコロナフリーの島内状況、最初は慄いていた24時間の船旅も実はそんなにしんどくない、島は絶景だらけ、というよりも全てが絵になる空間、数は多くないけどとても美味しいご飯。そういうものは全て本当、一ミリも嘘じゃない。

小笠原の真の魅力

でも一番伝えたいことは、小笠原に着いた瞬間から感じていた、心が休まる感じ。

流れる時間が数字の牢獄から解き放たれ、光とともに移り行く自然なものになった感覚。朝の光とともに起きて、太陽の動きをみながら海を眺め、夕焼けになるとゆっくりと変わっていく色合いとともに1日の終わりを感じ、夜には満点の星が覆う空の下で眠る。

数字とルールに縛られる日常

僕らは都会にいる限り、決して数字として刻まれる時間を忘れることができない。

朝の9時に始業、11時にはオンラインミーティング、12時から15分だけランチを取って、12時半からはインタビュー。それが終われば前日から持ち越した写真の現像、さらにクライアントの撮影案件が16時からの夕焼け指定でそのために移動した後、19時に帰宅。ようやく一息つく頃にはもう21時。再び山積みの執筆作業の山を少しずつこなしながら毎日が過ぎる。

ADOじゃなくても、「うっせぇわ!!!」って叫び出したくなっちゃう、それが僕らの日常。普通だとずっと思っていた数字とルールに縛られる世界。

小笠原に来て最初の24時間を過ごした時、1日ってこんなに豊かなグラデーションのある時間だったのだと気づいた。いや違う。そもそもそういうものであることを、ずっとずっと忘れていた。

昔、子どもの頃、裏山に作った秘密基地の壊れた屋根の隙間から見えた、綺麗な星空のことを思い出した。時間も忘れて基地に潜んでいる間に訪れた夜、闇に怯えながら隙間から覗く星に心を癒された。まだ「時間」も「ルール」も知らない子どもの頃に見た夜空を、小笠原の空に見つけた気持ちになった。やあ、久しぶり。

でも、そんなゆるやかな時間が小笠原に流れているのは、この「場所」が特別だからじゃない。

時空間として定義されている物理的諸条件は、都会だろうと田舎だろうと、都市だろうと地方だろうと全て同じ。

一方、人間が「流れる時間」として感じるその速度は、周りの人の時間との同期によって生まれるものだ。僕ら都市に住む人間の時間が忙しく感じるのは、僕ら全員がその時間をそのように「流す」ことに同意しているから。事細かに刻限をきめ、その数字通りに動くように同意しているから。世界をレディメイドに作り上げているのは、僕らがそのように同意しているから。全て僕らが、自分自身を追い込んでいる。

小笠原の流れる時間が都会とちがう理由

小笠原にゆったりとした時間が流れているのは、その空間に住んでいる地元の人たちが同意している時間がそのようなものだからだ。

場所じゃない、人がここを作っている。この特別な小笠原の空間を作っている。じゃあそれはどんな時間なんだろう?それはここまでの写真を見てもらえれば、多分わかってもらえたんじゃないかと思う。

自然とともに流れる時間と生きる人々の中では、時間もまた自然へと帰っていく。

もしあなたが、少し疲れているなら、この場所に来るといい。

ここには多分、あなたがどこかに置き忘れてきた時間と空間を見つけることができるはずだ。

2分で決めた今回の小笠原のお仕事は、その枠組みを軽く超え出て、僕の人生の特別な記憶として刻まれることになった。そんな旅が皆さんを待っている。

別所隆弘氏の小笠原滞在記を読みたい方はこちら

小笠原滞在記 Day 1 & 2 「旅とは人生である(のかもしれない)」

市川渚氏の小笠原滞在記Vlogはこちら

小笠原諸島でワーケーション DAY1-2

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